共有持分のある不動産は家族信託で運用・管理・処分しやすくできる!家族信託のメリット・デメリットも徹底解説

共有持分 信託

相続をきっかけに、共有名義の不動産を所有するケースは珍しくありません。

しかし、共有名義の不動産は、使用や処分に際して他共有者の同意が必要なケースがほとんどで、活用が難しいのが現実です。

そんな共有不動産の問題を解決する方法として有効なのが「家族信託」という制度です。

家族信託を利用することで、共有不動産を運用・管理・処分する人を統一でき、不動産を活用しやすくできます。

不動産が既に共有名義となっている場合も、共有名義にするか迷っている場合も、どちらにも対応可能なので、他共有者と話し合い家族信託の利用を検討するとよいでしょう。

なお、既に他共有者とトラブルが発生している場合は、自分の持分だけ売却して共有不動産に関するトラブルを回避する方法もおすすめです。

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この記事のポイント!
  • 共有不動産は使用・処分に際して他共有者の同意が必要なことが多く、活用しづらい問題点がある。
  • 家族信託を利用することで共有不動産を運用・管理・処分する人を統一でき、共有不動産を活用しやすくなる。
  • 家族信託の利用が難しい場合、自分の持分だけ売却すれば共有不動産に関するトラブルを回避できる。

共有不動産における3つの問題点

一つの不動産を複数の人が共同で所有する場合、各共有者がその不動産に対して有する所有権の割合を「共有持分」といいます。

これは、例えば不動産の「右半分」が共有者Aの所有で「左半分」が共有者Bの所有という意味ではなく、不動産全体の所有権をAとBが1/2ずつ有しているという意味になります。

それぞれの共有者は不動産全体について、自身の持分に応じた権限の範囲内で、使用や処分が可能です。

第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

引用:e-Govポータル「民法第249条」

とはいえ、実際には不動産の使用や処分に際して、他共有者の同意が必要なケースがほとんどであり、共有不動産の使用や処分は極めて困難といえます。

共有不動産における問題点は、主に以下の3つです。

  1. 不動産の使用・処分に際して他共有者の同意が必要なことが多い。
  2. 権利関係が複雑なため不動産の処分・管理が困難。
  3. 共有持分だけを売却すると売却価格が安くなる。

次の項目から、それぞれの問題点について詳しく見ていきましょう。

1.不動産の使用・処分に際して他共有者の同意が必要なことが多い

前述したように、共有者は共有持分に応じた権限の範囲内で、共有不動産全体を使用・処分できます。

例えば「建物を修繕する」など、共有不動産の現状を維持するための行為は、各共有者が単独で実行できます。

一方で「賃貸借契約の締結」など、共有不動産の性質は変えずに利用や改良する行為は、実行するために共有持分の価格の過半数から同意を得なければなりません。

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

引用:e-Govポータル「民法第252条」

つまり、不動産を賃貸に出したり、改良のためにリフォームをするには、自身が単独で持分の過半数を有していない限り、他共有者の同意を取り付ける必要があるということです。

さらに「建物の解体や建て替え、不動産の売却」など、共有不動産の性質を変更する行為は、共有者全員の同意がなければ実行できません。

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

引用:e-Govポータル「民法第251条」

例えば、以下のような行為は不動産の処分に該当するため、実行するには共有者全員の同意が必要です。

  • 長期の賃貸借契約を結ぶ。
  • 不動産を売却する。
  • 不動産に抵当権を設定する。

2.権利関係が複雑なため不動産の処分・管理が困難

親が所有していた不動産を兄弟2人で相続し、共有不動産となった場合、兄弟の仲が良好であれば、最初のうちはそれほど問題はないかもしれません。

しかし、例えば兄が亡くなり、兄の子供3人が共有持分をさらに共有で相続すると、不動産の共有者は一気に4人に増えます。

共有者の数が増え権利関係が複雑になると、例えば以下のような点についてトラブルが発生する可能性が高まります。

  • 固定資産税や不動産の修繕費を誰が・いくら負担するのか。
  • 誰が不動産に住むのか。

また、共有者同士が疎遠となり、例えば不動産を処分したくても、共有者の1人と連絡が取れないせいで売買契約が締結できないというケースも珍しくありません。

3.共有持分だけを売却すると売却価格が安くなる

前の項目で、共有不動産を売却するには共有者全員の同意が必要とお伝えしましたが、自分の持分だけであれば、共有者の同意がなくても売却できます。

ただし、前述したとおり共有不動産は使用や処分に際して制限が多く、不動産市場での需要は少ないのが現実です。

仮に共有持分を売却できたとしても、売却価額は相場に比べてかなり安くなる可能性が高いでしょう。

例えば、3,000万円の価値がある不動産をAとBが1/2ずつ共同で所有していたとします。

この場合、Aが自身の共有持分のみ売却すると、単純に2で割った1,500万円ではなく、それ以下の500万円でしか売れないかもしれないということです。

また、Bからすると共有者がAから全く知らない赤の他人へ変わるため、不動産の使用・処分について同意を得るのが難しくなり、不動産全体の用途が限定される恐れがあります。

その結果、Bの共有持分も価値が下がることになりかねないのです。

家族信託で共有不動産を運用・管理・処分する人を統一できる

前述したように、共有不動産は使用や処分に際して制限が多く、活用するのが極めて困難です。

しかし、家族信託を利用すれば、共有不動産を運用・管理・処分する人を統一できるため、不動産の活用がしやすくなります。

家族信託とは、共有者もしくは共有者の家族のうち1人が受託者となって、共有不動産の運用・管理・処分をおこない、それによって得た利益を信託契約で定められた受益者に渡す方法です。

家族信託には「委託者」「受託者」「受益者」の3つの立場があります。

「委託者・受託者・受益者がすべて別」の場合の家族信託の概要

■委託者
自分の財産(共有不動産など)を信託財産に設定し、その運用・管理・処分する権利を受託者に与えます。

※信託財産・・・家族信託の対象となる財産。

■受託者
信託財産を運用・管理・処分し、それによって得た利益を受益者に渡します。

受託者になれるのは基本的に委託者の家族のみですが「何親等内でなくてはならない」といった厳密な決まりはなく、従兄弟や内縁の妻などでも可能です。

ただし、司法書士や弁護士などが受託者になることはできません。

また、受託者が受益者と同じ人になるケースもあります。

■受益者
信託財産の運用・管理・処分によって発生した利益を、受託者から受け取ります。

受益者は信託契約の際に委託者が決定しますが、基本的に委託者もしくは委託者の家族になるケースがほとんどです。

なお、受益者となる人に障害がある場合は、司法書士に受益者の後見人となってもらい、受託者から後見人に利益を渡すケースもあります。

「委託者兼受益者」の場合の家族信託

例えば共有者のうち1人が受託者となり、他の共有者が委託者兼受益者となることで、共有不動産を運用・管理・処分する人を統一することも可能です。

家族信託をおこなう手順

家族信託をおこなう一般的な手順は、以下のとおりです。

  1. 信託財産・受託者・受益者など信託契約の内容を決定する。
  2. 信託契約の内容を書面化した信託契約書を公正証書で作成する。
  3. 法務局にて登記申請をおこなう。

家族信託をおこなうには公正証書や不動産の登記に関する専門知識が必要なため、家族信託や不動産の登記に詳しい司法書士など、専門家へ相談するとよいでしょう。

家族信託にかかる費用

司法書士や弁護士などの専門家へ依頼して家族信託をおこなう場合、費用相場はおよそ50~100万円です。

■相談・コンサルティング料
30~80万円(信託財産の価格によって異なる)

相談・コンサルティング料の価格例
信託財産の価格 相談・コンサルティング料
1億円以下 価格の1%
1億円~3億円 価格の0.5%

■公正証書の作成代行費用
公正証書作成を専門家に依頼した場合の費用です。

10~15万円

■公正証書の作成手数料
公正証書作成の手数料として公証人へ支払う費用です。

3~10万円(契約の内容や信託財産の価格によって異なる)

■登録免許税
法務局へ納める税金です。

不動産価格の0.4%(土地については2021年3月31日まで0.3%の軽減税率を適用)

■司法書士への登記依頼費用
専門家に信託の登記を依頼した場合、別途報酬がかかるのが一般的です。

最低でも10万円~15万円(専門家ごとに異なる)

上記金額はあくまでも目安で、信託財産の価格や契約内容によりかかる費用は異なるので注意してください。

家族信託のメリット

家族信託を利用するメリットは、共有不動産を運用・管理・処分する人を統一できることだけではありません。

家族信託を利用するメリットは、主に以下のとおりです。

  • 共有者の体調や判断能力に左右されずに共有不動産を運用・処分できる。
  • 共有者が亡くなっても受託者が共有不動産を運用・管理・処分できる。

次の項目から、それぞれ詳しく見ていきましょう。

共有者の体調や判断能力に左右されずに共有不動産を運用・処分できる

家族信託を利用すれば、受託者以外の共有者が体調を崩したり、判断能力が低下したとしても、共有不動産の運用・処分が可能です。

例えば、共有者の1人が認知症を患い判断能力が不十分な状態に陥った場合、共有者全員の同意が必要な建物の解体や建て替え、不動産の売却ができなくなってしまいます。

この場合、成年後見制度を利用すれば、認知症の共有者に代わって成年後見人が財産管理や契約をおこなえます。

しかし、成年後見人の選任には数ヶ月の時間を要するうえに、成年後見人となる人は家庭裁判所が決めるため、家族以外の第三者が選任される可能性もあるのです。

さらに、不動産を売却する場合は家庭裁判所の許可が別途必要なケースも多く、手続きは極めて複雑になります。

その点、家族信託を利用すれば、受託者の判断のみで信託財産を運用・処分できるので、受託者以外の共有者の体調や判断能力に左右されずに、共有不動産を運用・処分できます。

共有者が亡くなっても受託者が共有不動産を運用・管理・処分できる

家族信託を利用する場合、他共有者が亡くなり相続が発生したとしても、原則として受託者は変わりません。

亡くなった共有者が持つ委託者や受益者としての権利を、相続人が相続するだけです。

よって、相続によって共有者が増え権利関係が複雑になったとしても、受託者が一貫して共有不動産を運用・管理・処分できます。

家族信託のデメリット

家族信託は共有不動産を活用しやすくできる大変便利な制度ですが、一方で、家族信託を利用するデメリットも存在します。

家族信託を利用するデメリットは、主に以下のとおりです。

  • 「誰を受託者にするか」について共有者間でトラブルになりやすい。
  • 他共有者の同意を得ることが難しい。
  • 税務申告の手間が増す。
  • 信託契約の内容が遺留分を侵害すると他相続人とトラブルになる恐れがある。

次の項目から、それぞれ詳しく見ていきましょう。

「誰を受託者にするか」について共有者間でトラブルになりやすい

家族信託において、受託者は共有不動産全体を運用・管理・処分する権利を得られるため、メリットの多い立場といえます。

とくに共有者の中から受託者を選ぶ場合には「誰を受託者にするのか」について、共有者間でトラブルになる恐れがあります。

信頼して共有不動産を託せる家族がいない場合には、無理に家族信託を利用するのではなく、後述する「家族信託以外で共有不動産の問題を解決する方法」を検討するとよいでしょう。

他共有者の同意を得ることが難しい

信託契約を結んだ後は、受託者の判断のみで信託財産の運用・管理・処分が可能ですが、信託契約を結ぶ際には、共有者全員から同意を得る必要があります。

とくに共有者が多い場合は、受託者の選定で揉めたり、家族信託を利用すること自体に反対する人も出てくるかもしれません。

共有者全員に納得してもらうには、家族信託の制度をよく理解したうえで、根気強く説明することが大切です。

なお、共有者全員から同意を得ることが難しい場合は、後述する「家族信託以外で共有不動産の問題を解決する方法」も検討してください。

税務申告の手間が増す

信託契約の期間中は、受託者が税務署へ、以下のような書類を毎年提出しなければなりません。

  • 信託の計算書
  • 信託の計算書合計表

そのため、通常の確定申告よりも手間がかかります。

信託契約の内容が遺留分を侵害すると他相続人とトラブルになる恐れがある

相続が発生した際に、信託契約の内容が遺留分を侵害していると、他相続人とトラブルになる恐れがあります。

遺留分とは、遺言でも侵害できない一定割合の相続財産を指します。

遺留分を有するのは、配偶者・子・直系尊属(被相続人の父母、祖父母)であり、兄弟姉妹は対象になりません。

信託契約により、法定相続人が遺留分未満の財産しか相続できない場合は、遺留分を侵害しており「遺留分侵害額請求」をされる恐れがあります。

このようなトラブルを防ぐために、家族信託を利用する際は、信託契約の内容が遺留分を侵害しないように配慮しなければなりません。

適切な内容で信託契約書を作成するには法律の専門知識が必要なため、司法書士や弁護士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

遺留分とは 遺留分とは?遺留分が認められる法定相続人の範囲や割合を徹底解説

家族信託以外で共有不動産の問題を解決する方法

ここまで、共有不動産の問題点や、共有不動産の問題を解決する方法として有効な「家族信託」についてお伝えしてきました。

家族信託は共有不動産を活用しやすくできる便利な制度である反面、他共有者の同意を得ることが難しいなど、必ずしもすべての人にとって利用しやすい制度とはいえません。

そこで、この項目では「家族信託以外で共有不動産の問題を解決する方法」について詳しくお伝えします。

自分の持分だけ売却する

「自由に使用や処分ができない共有不動産は所有していても煩わしいだけなので、早く処分してしまいたい」と考える人もいるかもしれません。

そのような場合は、自分の持分だけ売却することを検討してみてください。

前述したように、共有不動産を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分だけなら許可なく売却できます。

自分の持分を売却することで共有関係を解消し、共有不動産に関するトラブルを未然に防ぐことも可能です。

ただし、共有持分は不動産市場での需要が少なく、売却価額が相場に比べてかなり安くなる傾向があります。

共有持分をできるだけ高く売りたいなら、共有持分専門の買取業者へ相談するとよいでしょう。

専門の買取業者なら、通常の不動産業者が敬遠するような共有持分も、高値で買い取ってくれる可能性が高いです。

まずは自身の所有する共有不動産の状況を伝えて、具体的な査定価格を確認してみてください。

他共有者の持分を買い取る

まとまった購入資金を用意でき他共有者の同意を得られるなら、他共有者の持分を買い取り共有関係を解消するのも一つの方法です。

他共有者の持分を買い取ることで不動が単独名義になれば、使用・処分を自由におこなえるようになります。

また、単独名義にした後、不動産を相場価格で売却することも可能です。

共有不動産は家族信託を利用して運用・管理・処分する人を統一しよう

共有不動産には、不動産の使用・処分に際して他共有者の同意が必要なことが多いなど、さまざまな問題があります。

しかし、家族信託を利用することで、共有不動産を運用・管理・処分する人を統一できるため、その問題を解決することが可能です。

共有不動産を所有している人は、早い段階から他共有者と話し合い、家族信託の利用を検討するとよいでしょう。

相続により共有者が増えると権利関係が複雑になり、不動産の管理や処分がますます難しくなります。

なお、他共有者の同意が得られないなどの理由で、家族信託の利用が困難な場合は、自分の持分だけ売却して共有関係を解消することで、共有不動産に関するトラブルを避けられます。

共有持分は需要が少なく売れにくいため、専門の買取業者へ相談して売却するのがおすすめです。

通常なら相場よりかなり安い金額で取引される共有持分も、共有持分専門の買取業者なら高値で買い取ってもらえる可能性が高いでしょう。

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