自己破産とは借金の支払い義務を免除できる手続きですが、代わりに破産者の財産はすべて差し押さえられてしまいます。
不動産の共有者が破産すると、その人の持つ共有持分は差し押さえられた後、競売にかけられます。競売で落札されれば第三者と共有状態になっていしまい、不動産全体の管理・運用に支障をきたすかもしれません。
対処法としては、自分が破産者の共有持分を買い取るか、自分も共有持分を売ってしますかのどちらかになります。いずれにしろ、トラブルに巻き込まれないためには共有名義の解消がおすすめです。
自分も売却する場合、一般的な不動産会社では共有持分を取り扱ってもらえないことが大半なので、専門の買取業者に相談しましょう。
なかでも、弁護士と連携した買取業者なら、自己破産や競売など法的な問題に対しても適切なサポートをしてもらえるのでおすすめです。
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- 自己破産したら「破産者名義の財産」のみが競売にかけられる。
- 自分以外の共有者が自己破産したら「任意売却」か「持分の買取」がおすすめ。
- 自己破産前なら「任意売却」を検討しよう。
自己破産したら「破産者名義の財産」のみが差し押さえられる
自己破産とは国が認めた、借金の支払い義務を免除するための手続きです。
自己破産をおこなう際は不動産や車など、高価な財産はすべて差し押さえられます。
もしも、共有不動産の所有者が自己破産すると、共有不動産そのものが破産物件となり、差し押さえられてしまうのでしょうか?
結論から述べると、自己破産で差し押さえられるのは「破産者名義の財産」だけです。
そのため、共有不動産そのものではなく、破産者名義の共有持分のみが差し押さえられます。
ちなみに、自己破産しても以下の財産は手元に残せます。
- 破産手続き後に得た財産
- 差し押さえ禁止財産(衣食住に必要なものや、仕事に必要なものなど)
- 99万円以下の現金
- 自由財産の拡張分
- 破産管財人が放棄した財産
「破産者名義の共有持分」が競売にかけられる
自己破産すると、差し押さえた財産を管理するため、裁判所によって破産管財人が選任されます。
そして、売却益から借金を返済するため、差し押さえられた財産は破産管財人によって、競売にかけられることが一般的です。
家が共有されているとき、各共有者は「家の所有権(=持分)」を分け合っていると考えられます。
そして、自己破産で差し押さえられるのは、破産者名義の財産のみです。
そのため、不動産が共有状態であるなら「破産者名義の共有持分」のみが競売にかけられます。
このとき、弟が自己破産したとしても、差し押さえられるのは「弟の共有持分」のみです。
共有持分の買主(第三者)と兄で「1/2ずつ」分け合うことになります。
共有物分割請求によって物件全体が競売にかけられる恐れもある
自己破産すると、差し押さえられた財産は破産管財人に移転します。
破産管財人は、差し押さえた財産を売却することで、借金をできるだけ返済しようとするのが原則です。
ただし、破産者の共有持分だけを競売にかけても、なかなか売れないケースが多くあります。
そのような場合、破産管財人は「共有物分割請求訴訟」を起こすことにより、不動産を強制的に分割できます。
共有物分割請求が提起されると、不動産を強制的に分割するために、共有名義の物件全体が競売にかけられてしまいます。
「自分以外の共有者」が自己破産したらどうなる?
これまで説明した通り、自己破産したとき差し押さえられるのは、破産者名義の共有持分のみです。
ですので、自分以外の共有者が自己破産したとしても、自分の持分を失うことはありません。
しかし、他共有者の自己破産によって、さまざまなリスクも生まれるため注意が必要です。
以下の項目から、それぞれのリスクと対処法を確認していきましょう。
第三者との共有状態になる
破産者の共有持分は、競売にかけられることが一般的です。
共有持分が競売にかけられ購入されると、破産者の共有持分は「共有持分の購入者(第三者)」のものとなります。
弟の共有持分は競売にかけられ、それを見知らぬ人Cさんが購入しました。
このとき、兄の持分1/2、Cさんの持分1/2の共有不動産となります。
兄は所有権を失わないため、住み続けることはできますが、管理・処分に制限がかかってしまいます。
例のように、第三者と不動産を共有することになります。
ちなみに、一般の人が共有持分のみを購入するケースは多くありません。
競売に出された共有持分のみを購入するのは、投資家や不動産会社がほとんどです。
不動産の管理・処分を自由におこなえなくなる
不動産を管理・処分するには、共有者の同意が必要と定められています。
行為の名前 | 必要な持分割合の同意 | 主な例 |
---|---|---|
保存行為 | 持分割合に関わらず単独で可能 | 不動産の修繕、不法入居者の明け渡し請求など |
管理行為 | 過半数(持分割合の1/2超) | 不動産の使用方法や使用者の決定、短期の賃貸借契約など |
変更(処分)行為 | 全員(全持分) | 不動産の売却、建て替え、抵当権設定、長期の賃貸借契約など |
そのため、第三者が共有者になってしまうと、自由に不動産の管理・処分をおこなえません。
例えば、共有不動産全体を売却したいと思っても、共有者である「持分の買主」の同意が必要になります。
コミュニケーションが取りづらい他人との共有状態は、管理や売却がスムーズにいかない恐れもあります。
民法251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
引用:e-Govポータル、民法251条
民法252条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
引用:e-Govポータル、民法252条
ただし、自分の共有持分だけであれば、共有者の同意がなくても売却は可能です。
「共有者が第三者になってしまいトラブルになっている」「早めに売却して共有名義を解消したい」という場合は、共有持分のみの売却も検討してみましょう。
専門の買取業者に相談すれば、他共有者と関わることなく、スムーズに共有持分を売却できます。
共有物分割請求によって共有状態の解消を求められる恐れがある
破産者が所有する持分のみの売却が困難な場合、破産管財人によって「共有物分割請求」を提起される恐れがあります。
共有物分割請求がおこなわれると、必ず共有状態の解消がおこなわれます。
民法256条
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。
引用:e-Govポータル、民法256条
また、共有物分割請求にはによる不動産の分割方法には3種類あり、以下のようになっています。
- 「現物分割」=共有不動産を物理的に分ける
- 「代償分割」=共有者間で金銭を授受する
- 「換価分割」=共有不動産を売却して分け合う
建物がある場合、現物分割は困難ですので、代償分割か換価分割が検討されます。
ですので、共有物分割請求が提起されると、破産者の持分に応じた価額を支払えないかぎり、換価分割され物件全体が競売にかけられてしまいます。
共有物分割請求については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説自分以外の共有者が自己破産したときの対処法
これまで説明した通り、自分以外の共有者が自己破産したら、第三者との共有状態になってしまったり、共有物分割請求を提起される恐れがあります。
もしも、実際に他共有者が自己破産した場合、どうすればよいのでしょうか?
対処法は「共有不動産の所有を続けたいか」によってかわってきます。
次の項目から、それぞれ見ていきましょう。
共有不動産の所有を続けたいなら持分を買い取る
破産管財人や持分の買主と不動産を共有していると、共有不動産を自由に扱えません。共有物分割請求を提起される可能性もあります。
そこで、共有不動産の所有を続けたいなら持分を買い取るのがおすすめです。
破産管財人や、共有持分の買主から「持分を買い取りませんか?」といった連絡がくるケースもあります。
自分の資産に余裕があるのならば、共有持分を買い取り単独所有にするとよいです。
他人との共有状態を避けられるため、不動産の管理・処分行為も自由におこなえるなど、メリットはさまざまです。
共有不動産が必要ないなら任意売却をする
共有不動産が自分にとって必要ないなら、破産管財人と協力し、売却するとよいでしょう。
その際は「任意売却」という特殊な売却方法を取る必要があります。
抵当権が残っている不動産は売却できないことが原則ですが、借入先(金融機関)の合意があれば、不動産を売却できます。
任意売却は競売よりも高く売れることが一般的です。
そのため、共有不動産を必要としない場合は、共有不動産を任意売却するとよいです。
自己破産前なら「任意売却」を検討しよう
物件が共有名義のときに自己破産する場合、事前に家を任意売却することをおすすめします。
任意売却には、競売と比べたとき以下のようなメリットがあります。
- 競売よりも高く売却できる
- 「同時廃止事件」となり手続きの費用や時間を減らせる
ただし、任意売却には法的な知識と、債権者との交渉が必要となります。
任意売却を検討するなら、まずは弁護士と連携した不動産会社に相談してみましょう。法律と不動産の両面から適切なサポートができるので、スムーズに任意売却できる可能性があります。
【メリット1】競売よりも高く売却できる
任意売却における最大のメリットは、競売よりも高値で売却できることです。
一般的に、家が競売にかけられてしまうと、相場価格の7割程度でしか売却できません。
一方で、任意売却であれば、相場価格と変わらない価格で売却できます。任意売却によって得られた売却金は、借金の返済に充てられます。
そのため、他共有者への負担も少なくなるのです。
【メリット2】「同時廃止事件」となり手続きの費用や時間を減らせる
自己破産は「同時廃止事件」と「管財事件」といった2種類の手続きがあります。
- 管財事件・・・弁護士から「破産管財人」が選任され、差し押さえられた財産が管理される自己破産。
- 同時廃止事件・・・破産者の財産が少ないときの手続きのこと。申立と同時に破産の手続きが完了する。
管財事件の場合は、自己破産の手続きに1年近くかかるとされており、破産管財人への予納金も必要になります。
一方で、任意売却によって家を現金化していると「同時廃止事件」となります。
同時廃止事件では破産管財人も必要ないため、予納金の用意も必要ありません。
また、同時廃止事件は3ヵ月程度で手続きが完了することがほとんどです。
そのため、任意売却をおこない「同時廃止事件」にすることで、手続きにかかる費用や時間を減らせます。
共有不動産を所有しているなら自己破産前に任意売却を検討しよう
自己破産は、借金の支払い義務を免除するための国が認めた手続きです。
しかし、自己破産をすると物件は差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。
このとき差し押さえられるのは「破産者名義の共有持分」だけです。
なお、自己破産に伴い、不動産を手放す場合は任意売却がおすすめです。任意売却のために、まずは弁護士と連携した不動産会社へ相談してみましょう。
共有者の自己破産においてよくある質問
自己破産とは借金をゼロにしてもらう手続きです。ただし、自己破産をおこなうには不動産や車など、高価な財産はすべて手放さなくてはいけません。
自己破産で差し押さえられるのは「破産者名義の財産」だけです。そのため、共有不動産そのものではなく、破産者名義の共有持分のみが差し押さえられます。
自分以外の共有者が自己破産したとしても、自分の持分を失うことはありません。しかし「第三者との共有状態になる」「共有物分割請求を提起される」といった恐れがあります。
共有不動産の所有を続けたいなら持分を買い取るべきです。一方、共有不動産が必要ないなら任意売却を検討するとよいでしょう。なお、任意売却をおこなう際は、法律に詳しい不動産会社へ相談すべきです。弁護士と連携した不動産会社はこちら→
借入先(金融機関)の合意をもらって、抵当権が残っている家を売却する方法のことです。競売よりも高く売却できたり、自己破産手続きの費用や時間を減らせるメリットがあります。