共有不動産を所有していると、一部の共有者が勝手に物件を占有してしまうトラブルは少なくありません。「勝手に占有されているのだから訴訟を起こして明け渡し請求をしたい」という人も多いでしょう。
しかし、他共有者が共有不動産を不当に占有している場合でも、明け渡し請求が認められるケースは限られます。なぜなら、共有者に対して明け渡し請求を認めてしまうと、その共有者の「不動産を利用する権利」を侵害してしまうからです。
一部のケースを除いて、共有者に共有不動産を明け渡してもらえる可能性は低いといえます。そのため、明け渡しではなく「共有物分割請求」や「共有持分の売却」などで共有名義を解消するとよいでしょう。
とくに、共有持分の売却は自分の判断のみで実行可能であり、共有者の同意は入りません。共有持分専門の買取業者なら、共有者とトラブルを抱えている共有持分でもそのまま買い取れます。
占有されて利用できない共有不動産を持ち続けるより、自分の持分を早めに現金化して、資産を有効活用しましょう。
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- 他共有者が共有不動産を占有している場合、明け渡し請求が認められるケースは少ない。
- 共有不動産の明け渡し請求が認められるケースは、大きく分けて4種類。
- 共有不動産の明け渡し請求が認められない場合、自分の共有持分を他共有者や専門買取業者に売却しよう。
共有不動産を占有されても明け渡し請求は認められにくい
共有不動産は共有者全員で共同所有している「共有物」なので、管理行為・変更行為をおこなうには、基本的に他共有者の合意を得る必要があります。
行為 | 必要条件 |
---|---|
保存行為 | 共有持分を有していること |
管理行為 | 持分割合における過半数の合意 |
変更行為 | 共有者全員の合意 |
一方で、すべての共有者には、共有不動産の全体を使用できる権利が認められています。
民法第249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
共有不動産を占有するだけであれば「保存行為」に含まれる可能性が高いため、明け渡し請求によって、共有不動産から占有者を強制的に追い出すことは難しいです。
他共有者に対する明け渡し請求の裁判例
実際の裁判でも、他共有者に対する明け渡し請求が認められなかった判例は多いです。
例えば、1966年5月19日の最高裁判所の判決でも、共有不動産の明け渡し請求は認められませんでした。
判決を要約すると、以下のとおりです。
- 過半数の持分をもつ多数持分権者でも、過半数に満たない少数持分権者に対して、共有不動産の明け渡しを当然に請求できるものではない
- 多数持分権者が少数持分権者に対して共有不動産の明け渡しを求めるには、その理由を主張・立証しなければならない
「正当な理由」があれば、共有不動産の明け渡しが認められますが、使用方法の合意を得ていないことは、裁判所のいう「正当な理由」には該当しません。
逆にいえば、共有者同士で使用方法を決めたにも関わらず、その内容を無視して共有不動産が占有されている場合であれば、明け渡し請求が認められる可能性は高いでしょう。
共有不動産の明け渡し請求が認められるケース
共有不動産の明け渡し請求が認められるケースは、以下のとおりです。
- 共有者間の決定を無視して占有している場合
- 実力行使で共有不動産を占有している場合
- 使用方法の協議を拒否して占有している場合
- 他共有者の合意なく建物を建築している場合
事前に共有者間で決定した共有不動産の使い方に反する場合や、実力行使によって共有不動産を半強制的に占有している場合などは、明け渡し請求が認められる傾向にあります。
各ケースを1つずつ見ていきましょう。
1.共有者間の決定を無視して占有している場合
1つ目は、共有者間の決定を無視して、他共有者が共有不動産を占有している場合です。
原則として、共有不動産の使用方法は共有者間で協議して決定します。
共有者同士で決定した使用方法を無視して、一部の共有者が共有不動産を占有した場合、明け渡し請求が認められます。
2.実力行使で共有不動産を占有している場合
2つ目は、他共有者が実力行使をおこない、共有不動産を占有している場合です。
例えば、共有不動産をA・Bの2名で共同所有しており、Bの明確な合意はなかったものの、Aは長年に渡って共有不動産を占有していました。
この場合、Bが実力行使をおこない共有不動産を占有すると、AからBに対する明け渡し請求が認められるケースが多いです。
「実力行使」とは、具体的に以下のような内容を指します。
- Aが反対していても、強引に不動産へ入居した
- Aの生活用品を一方的に家から持ち出した
- Aに無断で家の鍵を変更して、立ち入れないようにした
強引な手段で共有不動産を占有した場合、共有持分権の濫用として、明け渡し請求が認められます。
3.使用方法の協議を拒否して占有している場合
3つ目は、使用方法の協議を拒否して、他共有者が共有不動産を占有している場合です。
共有不動産を占有している側の持分割合が少なく、その占有者を退去させたい側の持分割合が過半数を超える場合、使用方法について占有者側の意見は採用されません。
このとき、使用方法の協議そのものを占有者が拒否することで「協議はおこなわれていない」と主張して、共有不動産の占有を続けようとするケースもあります。
しかし、占有者が協議を拒否しても、持分割合における過半数の合意があれば、共有不動産の明け渡し請求は認められます。
4.他共有者の合意なく建物を建築している場合
4つ目は、共有者全員の合意がないのに、共有不動産に建物を建築している場合です。
他共有者の合意を取らないまま、一部の共有者が共有不動産に建物を建築している場合、その建物が未完成であれば、明け渡し請求が認められます。
実施途中でも建築工事の差止めと原状回復を請求できるので、建築途中の建物を撤去させることが可能です。
ただし、明け渡し請求が認められるのは建築途中の場合のみで、建物が完成してしまうと、地代に相当する金銭の請求しか認められないため注意しましょう。
共有不動産の明け渡し請求が認められない場合の対処法
共有不動産の明け渡し請求が認められない場合、以下の対処法があります。
- 共有物分割請求をおこなう
- 占有者に自分の持分を売却する
- 占有者に共有不動産の使用料を請求する
- 買取業者に自分の持分を売却する
共有不動産の占有に対する使用料を請求したり、共有持分を売却することで共有状態を解消する方法などがありますが、どの対処法が適しているかはケースによって異なります。
それぞれの対処法を順番に見ていきましょう。
1.共有物分割請求をおこなう
1つ目は、共有物分割請求をおこなう方法です。
共有物分割請求とは、共有状態を解消するための手続きで、共有者同士や裁判所を交えた話し合いをおこないます。
段階 | 解説 |
---|---|
共有物分割請求 | 共有者間でのみ話し合う |
共有物分割調停 | 裁判所の調停委員を交えて話し合う |
共有物分割訴訟 | 裁判官が共有不動産の分割方法を決定する |
最終的には、裁判所が共有不動産の分割方法を決定するので、共有者同士の話し合いがまとまらなくても、強制的に不動産の共有状態を解消できます。
共有物分割請求について知りたい場合、以下の記事もあわせて参考にしてください。
共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説2.占有者に自分の持分を売却する
2つ目は、占有者に自分の共有持分を売却する方法です。
共有持分とは、各共有者が共有不動産に対して有している断片的な所有権のことで、それぞれが持つ権利の大きさは1/2や1/3といった分数で表されます。
共有不動産は共有者全員で共同所有する共有物なので、他共有者の合意がないと売却できませんが、共有持分は各共有者が単独所有しているものなので、自由に売却できます。
共有者同士で持分を売買することも可能なので、占有者に共有持分を買取してもらうことで、あなたと占有者それぞれに以下のメリットがあります。
人物 | メリット |
---|---|
あなた | 複雑な権利関係から解放される | まとまったお金が得られる |
占有者 | 共有不動産に対する権利を大きくできる |
ただし、共有持分を占有者に売却する場合、トラブルの起きやすい個人間売買ではなく、きちんと不動産会社を間に介して売却することをおすすめします。
3.占有者に共有不動産の使用料を請求する
3つ目は、占有者に共有不動産の使用料を請求する方法です。
占有者のせいで共有不動産を使用できない他共有者は、一般的な賃貸物件の家賃のように、共有不動産の使用料を占有者に対して請求できます。
ただし、占有者が長期間に渡って共有不動産を無償で使用していた場合、黙認していたと扱われてしまい、使用料の請求が認められない場合もあるため注意が必要です。
そのため、占有者に対して共有不動産の使用料を請求する場合、占有状態が始まってから、なるべく早いタイミングで手続きするように注意しましょう。
4.買取業者に自分の持分を売却する
4つ目は、買取業者に自分の共有持分を売却する方法です。
他共有者に共有持分を売却できるように、一般の買主や不動産会社に売却することも可能ですが、なかなか買主が見つからずに売れ残りやすいため注意が必要です。
- 「占有者に共有持分の売買を拒否された」
- 「占有者に持分を買取できる程のお金がない」
上記のような場合におすすめしたいのが、共有持分専門の買取業者に自分の持分を売却する方法です。
共有持分専門の買取業者であれば、買主を探す手間がかからない上、あなたの持分を最短数日で高額買取してもらえます。
まずは無料査定を利用して、自分の共有持分がいくらで売れるか確かめてみましょう。高値で売却できれば、他の不動産の購入費用に回すなど有効活用が可能です。
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共有不動産を占有された場合は専門家に相談しよう
共有不動産を勝手に占有された場合、占有者に対して明け渡し請求ができますが、請求が裁判所に認められるケースは非常に少ないです。
共有不動産の権利を手放したくない場合、共有物分割請求を起こしたり、占有者に共有不動産の使用料を請求する方法をおすすめします。
一方で、共有不動産が必要ない場合、共有持分を売却することで、勝手に共有不動産を占有するような他共有者との、面倒な共有関係も解消してしまう方法も有効です。
共有不動産を勝手に占有された場合、まずは不動産会社や弁護士といった専門家に相談して、占有者への今後の対応に関するアドバイスをもらいましょう。
共有不動産を占有された場合のよくある質問
共有不動産を占有された場合、他共有者に対する明け渡し請求は可能ですが、裁判所が明け渡し請求を認めるケースは少ないです。
「共有者間の決定を無視して占有している場合」「実力行使で共有不動産を占有している場合」「使用方法の協議を拒否して占有している場合」「他共有者の合意なく建物を建築している場合」上記いずれかのケースであれば、共有不動産の明け渡し請求が裁判所に認められます。
「共有物分割請求をおこなう」「占有者に自分の持分を売却する」「占有者に共有不動産の使用料を請求する」「買取業者に自分の持分を売却する」といった対処法があります。
共有持分は各共有者が単独所有している占有物なので、他共有者の合意がなくても自由に売却できます。
明け渡し請求だけでなく持分売却も視野に入れて、不動産会社や弁護士などの専門家に相談しましょう。