「誰も使わない空き家を売却したい」という人は多いでしょう。しかし、空き家が共有不動産の場合、売却するには共有者の同意が必要です。
共有者が売却に反対している場合や、そもそも連絡がつかない状態だと、空き家の売却はできません。
共有者との交渉や、連絡がつかないときの捜索で時間をかけたくないなら、自分の共有持分だけ売却すればすぐに共有関係から抜け出せるのでおすすめです。
とくに、弁護士と連携した買取業者なら、持分売却と合わせて共有者との交渉など面倒なことをすべて任せられます。
「空き家を今すぐ売却したい」「とにかく面倒事は避けたい」という人は、ぜひ弁護士と連携した買取業者の無料査定を受けてみましょう。
- 共有不動産の売却には共有者全員の同意が必要。
- 空き家は売れにくくても工夫次第で売却できる。
- 「空き家の売却」特有の特別控除や補助制度がある。
- 空き家で共有不動産!こんな物件でも売却できるの?
- 空き家となっている共有不動産を売却する方法
- 共有者が空き家の売却に積極的でない・所在がわからないときの対処法
- 空き家が売れないときの対処方法
- 共有不動産の空き家を売却するときに利用できる控除・制度
- 共有不動産の空き家はなるべく早く処分しよう
空き家で共有不動産!こんな物件でも売却できるの?
誰も使う予定がない家などが共有不動産となっていることがたまにあります。
相続をしたが管理する人がおらず、そのまま空き家になっている物件は早めに売却か処分をしなければ、後々権利者がわからなくなるなど厄介な状況になり得ます。
そもそも、そのような共有空き家物件は売れるのか疑問に感じる人も多いかと思いますが「売り方を工夫すれば売却可能」です。
状態としては、共有不動産なんだけど誰も住んでいないという、共有不動産分野においては比較的ありがちな物件ということを踏まえ「共有不動産専門の買取業者」に相談するのが最適でしょう。
共有者がわかっているのなら、全員で売却。共有者がわからないのであれば、相談する不動産業者の力も借りて持分売却をするなどで対処が可能です。
空き家となっている共有不動産を売却する方法
共有不動産は、利用していなくても毎年固定資産税や都市計画税が課税されます。また、維持費も必要でしょう。
そのため、売却を考えているのであれば、なるべく早めに行動するのがおすすめです。
まずこの項目では、空き家となっている共有不動産の基本的な売却方法をお伝えします。
共有者全員で空き家を一括売却する
共有不動産はを売却するには、共有者全員の同意が必要です。
また、共有不動産は共有者全員で一括売却するのが一番価値が高く、高値で売れやすいです。
そのため、他共有者へ売却を提案してみるとよいでしょう。
売却後は、売却利益を共有持分の割合に応じて分配するのが一般的です。
共有者の持分を買取ってから売却する
他共有者の持分を買取ってから単有不動産として売却する方法があります。
以下の場合は、他共有者に買取を持ちかけてみるとよいかもしれません。
- 他共有者が売却活動に積極的でない
- 他共有者が共有不動産の扱いに興味がない
- 他共有者が売却活動に参加するのが困難
共有不動産は共有持分だけ所有していても活用が難しく、売却価格も相場より低くなってしまいます。
そのため、他共有者が共有持分を持て余しており、買取に応じてもらえるケースは多いです。
また、共有者によっては「相場より高値での買取なら応じる」といわれることもあるでしょう。
その場合は、一括で売却したときの利益と比べて損失がなければ、応じるのもひとつの手段です。
まずは一度、共有不動産全体で売却したときの価格を査定してもらうとよいでしょう。
また、共有者同士の売買において売却価格は自由に決められますが、相場と大幅に違う価格を設定すると差額が贈与とみなされる場合があります。
年間に受ける贈与の額が110万円以下であれば控除が受けられるため、上手く活用するとよいでしょう。
自分の共有持分のみを売却する
共有不動産全体ではなく、自己の持分だけなら自由に売却できます。他の共有者に許可を取る必要もありません。
以下のような状況であるなら、自己持分のみの売却をおすすめします。
- 共有者が多すぎて連絡を取るのが面倒
- 共有者と関わりたくない
- なるべく早く共有持分を現金化したい
相場としては本来の価値より安くながちですが、共有持分専門の買取業者なら収益化のノウハウや専門知識が豊富なため、高額で買い取ってもらえる可能性が高いです。
また、共有持分専門の買取業者は訳あり物件についても知識が豊富であることも多く、状態の悪い空き家であっても積極的に買取していることが多いです。
無料での相談や査定が可能な専門業者もありますので、一度、お持ちの空き家について問い合わせてみてはいかがでしょうか。
共有者が空き家の売却に積極的でない・所在がわからないときの対処法
前述したように共有名義の不動産を売却するときは、必ず共有者全員の同意が必要です。つまり、共有者の1人でも反対していたら売却できません。
民法第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
また、契約締結や引き渡しにおいても、原則として共有者全員の印鑑・署名や立ち会いが必要です。しかし、共有者が高齢だったり遠方だったりするとそれも難しくなります。そもそも共有者がどこにいるかわからず、連絡すらままならないこともあるでしょう。
この項目では、共有者が売却に積極的でないときや、連絡の取れない共有者がいるときの対処法を1つずつ紹介していきます。
共有者が売却に同意しているけれど売り手がなかなか見つからず困っているというときは、この次の項目で対処法をお伝えしているのでそちらをご覧ください。
共有者が売却に迷っているなら「空き家の放置」にどんなリスクがあるか説明してみよう
空き家は誰も活用できていない不動産であり、管理に携わるのも面倒だという方は少なくありません。
しかし、問題が起きてしまうと、管理以上に余計な手間や費用がかかります。
また、共有者が売却に迷っていて話が進まないという人もいるでしょう。
そんな腰の重い共有者を動かすには、空き家の放置にどれほどのリスクがあるか説明するとよいでしょう。どのリスクも共有者全員が平等に負担するものだと伝え、決して他人事ではないと理解してもらうのが最初の一歩です。
【空き家放置のリスク①】不法投棄・不法占拠など犯罪の温床になる
空き家は犯罪の温床となるリスクが高いといわれています。ゴミの不法投棄や不審者による不法占有のほか、薬物栽培や詐欺グループのアジトに使われたケースもあります。
こうした犯罪に使われた不動産は、いざ売却しようとしても価値が下がります。いわゆる「いわくつきの物件」となり、なかなか買い手がつかない恐れがあるのです。
犯罪に使われないようにするには定期的な様子見も有効ですが、その場しのぎでしかありません。不審者と鉢合わせする危険性もありますし、遠方にある物件だと見に行くだけでも困難でしょう。
【空き家放置のリスク②】倒壊や火事で賠償責任を負う可能性がある
空き家は放置すると劣化していきます。劣化すると、地震や台風などの災害で家屋が倒壊したり、屋根や雨戸などが飛ばされてしまうリスクが生じます。これらの影響で誰かが怪我したり、近隣の住宅や車を壊してしまうと、その賠償責任は法律上、倒壊した空き家の所有者にあります。
民法第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
空き家が火元になった火事で近隣に被害がでた場合、法律上では賠償責任はないとされています。
ただし、所有者に「重大な過失」があるときは別となっており、これには明確な線引がありません。そのため放火による火事でも、管理を怠った所有者が賠償責任を問われる可能性があるのです。
失火責任法
民法第709条の規定は失火の場合にはこれを適用せず。ただし失火者に重大なる過失ありたるときはこの限りに在らず。
条件付きではありますが空き家向けの火災保険もあるので、売却まで時間がかかるときはそちらも検討してみましょう。
【空き家放置のリスク③】「特定空き家」に指定されると罰金や行政代執行の可能性がある
2015年より施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、適切に管理が行われていない空き家に対して自治体が直接調査したり、安全や衛生上問題がある場合は「特定空き家」に指定できるようになりました。
特定空き家に指定されると、自治体から空き家の状態を改善するように通知されます。
それを無視していると、固定資産税の特例が外され土地の税率が跳ね上がったり、最大50万円の罰金を課されてしまいます。
第十五条 国及び都道府県は、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。
最終的には、自治体が強制的に建物の解体や草木の伐採をおこないます。これらの費用は所有者に請求されるうえ、自分たちで業者を探すより高額となるのが一般的です。
固定資産税などを滞納すると、給料や財産を差押えられる恐れもあるので、自治体からの通知は必ず対応しましょう。
直接的な売却活動に協力できない共有者は「委任状」を作成してもらう
共有者の中には、遠方に住んでいたり時間が取れなかったりで、話し合いの場に出られない人もいるでしょう。
そのようなとき、他の共有者に自分の決定権を委任可能です。委任された人は委任した共有者の代わりとして、売却の意思決定や売買契約を締結できます。
共有者でなくとも、法律の専門家や信頼できる親族に委任可能です。誰に委任するにしても「委任状」の作成は必要なので、まずは弁護士や司法書士に相談してみましょう。
「共有の空き家に興味がなく話もしたがらない共有者」には共有物分割請求をしよう
共有者ではあるのに、まるで「自分は関係ない」という感覚の人もいるでしょう。「相続で共有持分を取得したけど、その不動産に直接関わったことがない」というケースもあるので、仕方ないかもしれません。
共有者と話し合いすらできない場合、共有状態の解消を求める「共有物分割請求」という方法があります。共有持分を持っていれば誰でも請求可能で、請求を受けた側はこれを拒否できません。
共有物分割請求には、以下の段階があります。
- 共有者同士で話し合う
- 裁判所に任命された調停委員を挟んで話し合う
- 「共有物分割請求訴訟」のよって裁判で分割方法を決定する
共有物分割請求訴訟では、以下の3つからもっとも公平な解消方法を裁判所が選びます。
- 「現物分割」・・・共有不動産そのものを別々の不動産に切りわける。建物においては均等な分割が難しいのであまり使われない。
- 「代償分割」・・・共有者間で共有持分を売買する。誰かが代表してすべての持分を購入すれば単独名義の不動産となるので、その人が自由に処分できる。
- 「換価分割」・・・共有不動産を売却し、売却益を分配する。裁判所命令による競売にかけられた場合、市場価格より売却益が下がる可能性がある。
共有分割請求に関しては、以下の記事も参考にしてください。
共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説「売却価格に納得しない」共有者がいるときも共有物分割請求は有効
売却の同意が得られても、共有不動産の売り出し価格で揉める場合があります。そのような場合に分割請求すれば、納得してもらえる可能性があるでしょう。
調停に進めば裁判所の調停委員が間に入るので、感情的にならず、各自の主張をまとめやすくなります。
裁判になると、裁判官が妥当と思われる解消方法の判決を示します。判決には強制力があるので、納得がいかなくても受け入れざるをえません。
また、裁判になったときの手間を嫌い、協議や調停の段階で相手の共有者が譲歩するケースも多いです。
意思決定能力がない共有者は「成年後見制度」を利用する
共有者が認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分であり、不動産の売却に必要な意思決定ができない場合があります。そういったとき、本人の判断を補佐したり、代わりに意思決定をおこなう制度が「成年後見制度」です。
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。
- 任意後見制度・・・判断能力のあるうちに本人が後見人を決めておく。公正証書の作成が必要。
- 法定後見制度・・・判断能力が衰えた後に四親等以内の家族が申立てる。後見開始まで約3~4ヶ月かかる。
成年後見制度に必要な手続きや書類はとても複雑なので、実際に利用する際は弁護士などの専門家への相談をおすすめします。
後見人が財産のすべてを自由に使えるわけではない
成年後見人になったからといって、後見を受ける本人の財産を好き勝手に使えるわけではありません。後見人はあくまで「本人の生活・財産と利益を守る行為」しかできません。
任意後見人の場合、その行為を監督する「任意後見監督人」が家庭裁判所で選任され、後見人が適切に本人を保護・支援しているかを見られます。
法定後見制度の場合は、本人の判断能力の程度によって後見人に与えられる権利も異なります。
また、後見人の選任は本人を取り巻く一切の事情から判断されるため、申立人がそのまま後見人になるとは限りません。家族や親戚ではなく、弁護士などが選ばれることもあるため注意しましょう。
他共有者の所在がわからず協議できないときは弁護士に相談しよう
長い間放置された空き家だと、共有者と連絡が取れなくなるケースも頻繁に起こります。中には、そもそも共有者の顔すら知らないこともあり得るのです。
空き家を売却するには、まずは共有者を探さなければいけません。登記簿などから自分で調べられますが、弁護士に調査を依頼するほうがスムーズに調べられるでしょう。
弁護士は「職務上請求」といって、職務に必要であれば戸籍や住民票を自由に調査可能です。共有者が見つるだけでなく、そのまま共有不動産の売却について交渉もしてくれるので、交流のない共有者と話し合う手間を省けます。
【共有者の調べ方①】登記簿上の所在地を確認する
共有者の所在を調べるには、まず登記簿上の所在地を確認します。共有不動産の登記簿には共有者全員の住所が載っているので、それが最初の手がかりです。
共有不動産の売却時などにも必要なので、登記簿謄本(登記事項証明書)を交付してもらうことをおすすめします。法務局であれば、全国どこの窓口でもを交付できます。また、オンラインでの交付請求や郵送での受け取りも可能です。
登記内容の閲覧だけなら、一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」でも可能です。閲覧ごとに自分の情報を入力する「一時利用」か、登録料を支払って利用者情報を保存する「個人利用」を使いましょう。
参照:登記情報提供サービス
【共有者の調べ方②】住民票を交付請求する
登記簿で共有者の住所がわかれば、そこの市町村に住民票があるはずです。他の自治体へ引越していたり、死亡していれば住民票の除票に記載があります。
住民票や除票の取得は本人や家族のほか、共有持分権者にも「自己の権利を行使する目的」であれば認められます。また、弁護士などは先に説明した「職務上請求」によって取得可能です。
住民票から本籍地がわかれば、戸籍の附票を取り寄せて、これまでの移動の履歴を確認できます。
【共有者の調べ方③】共有者が亡くなっていたら戸籍から相続人を確認する
所在地を調べた結果、既に共有者が亡くなっているケースもあります。その場合は、共有者に相続人がいるか調べましょう。
相続の順位は、配偶者がいればその人は必ず相続人になります。配偶者以降の法定相続順位は以下のとおりです。
- 子(死亡している場合は孫)
- 親(死亡している場合は祖父母)
- 兄弟姉妹(死亡している場合は甥姪)
結婚や転籍の回数によって、取得する戸籍の数も増えていきます。甥姪にまで範囲を広げると、調査にかかる時間や手間は決して少なくありません。
他共有者が「見つからない」「死亡していて相続人もいない」という場合は「財産の管理人」を選任する
どれだけ調査しても共有者が見つからない、もしくは死亡しており相続人もいない場合は、家庭裁判所に申立して財産の管理人を選任してもらいます。
- 共有者の所在が不明・・・「不在者財産管理人」を選任し、家庭裁判所の許可を得て不動産を売却する
- 共有者が死亡・・・相続人もいなければ「相続財産管理人」を選任し、相続手続きの代行をしてもらう
このように、仮に他共有者が見つからなくても、共有不動産を売却する方法は残されているのです。
不在者財産管理人・相続財産管理人の選任方法については、以下の記事を参考にしてください。
不在者財産管理人とは?仕事内容や選任方法をわかりやすく解説 相続財産管理人とは?必要なケースや選任方法をわかりやすく解説空き家が売れないときの対処方法
空き家を売りに出してもなかなか買い手がつかない、というのはよく聞く話です。特に長年誰も使っていない空き家は、そもそもの資産価値が低く需要も少ない傾向にあります。
持ち続けるだけで維持費はかかる以上、売却に時間がかかるのは「損失」ともいえます。しかし、空き家を早く売るにはそれなりの工夫も必要です。
「空き家が売れない問題」の解決する主な方法を紹介します。これらの方法から、自分の状況にあった対策を見つけていきましょう。
空き家が建っている土地の境界を確定しよう
古い空き家の場合、建っている土地の境界がわからない場合があります。
このような不動産は隣接地の所有者と土地の範囲で揉めるケースが多く、境界があやふやな不動産は購入者としてはなるべく避けたい不動産です。
土地の境界があやふや、もしくは数十年前の古い記録であるならば、最新の技術であらためて測量することをおすすめします。
土地の売買を前提に測量を依頼するなら登記業務ができる土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
隣接地の所有者にも立会いをお願いしなければならないので、日程調整を考えると、測量を依頼するのは早いほうがよいでしょう。
袋地にある空き家を売るときは通行権の確保が重要
古い空き家は、公道と直接つながっていない土地に建っていることがあります。このような立地を袋地(ふくろち)といい、空き家を利用するために他の人の土地を通る必要があります。
袋地を囲む土地を囲繞地(いにょうち)といい、袋地の所有者は囲繞地を通る通行権を確保しなければいけません。そこで民法では、公道に出るために必要な「囲繞地通行権」を保証しています。
民法第210条
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
ただし、無制限に通行できるというわけではなく、必要最低限かつ損害の少ない方法に限られます。必要最低限の基準は事例によって異なり、通行の目的や土地の面積、地域性にも左右されます。
民法第211条
前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
また、通行によって囲繞地の所有者になんらかの負担が発生するのであれば、償金を払わなければいけません。
民法第212条
第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。
しかし、袋地と囲繞地がもともと1つの土地であり、分筆によってわかれたものならば償金は不要とされています。
民法第213条
分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない
自動車での通行など、土地に対する負担が大きい通行を希望するときは囲繞地通行権では認められない可能性があります。
そうした場合は、囲繞地の所有者と協議して通行に関する契約を別に結ぶ必要があるでしょう。通行権の確保に必要な交渉や取り決めは、売却前にあらかじめ済ませておくほうが売れる可能性を上げられるでしょう。
再建築不可な空き家は隣人か専門買取業者に売却を持ちかけてみる
建物がある敷地は、幅が4メートル(特定の地域では6m)以上ある道路に、2m以上接している必要があります。これは消防車や救急車などの緊急車両の走行を妨げないようにするためです。
建築基準法第42条
「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員4メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、6メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。
建築基準法第43条
建築物の敷地は、道路(中略)に2メートル以上接しなければならない。
古い空き家は、この「接道義務」を満たしていないことがあります。
そのような物件を「再建築不可物件」といい、取り壊すと新しく建物を建てられないため売れにくいのが現状です。
このような物件は、隣接している土地の所有者に売却を持ちかけるとよいでしょう。隣接地の所有者にとっても土地が大きくなることは得なので、交渉に応じてもらえる可能性があります。
また、再建築不可物件であっても「訳あり物件専門の買取業者」であれば買取をしている可能性が高いです。
相場と変わらない価格での取引ができるケースも多いため、急いで取り壊したりなどする前に一度問い合わせてみるとよいでしょう。
自治体が仲介する「空き家バンク」を活用する
国や各自治体も空き家の対応に取り組んでおり、空き家の所有者と利用したい人をつなげる「空き家バンク」サービスが徐々に普及しています。
地方へ移住希望の人や、自分で建物をリノベーションしたい人など、空き家に対する需要は少なくありません。空き家バンクはそのような人たちに直接アプローチする場なので、一般的な不動産の売買より購入希望者が見つかりやすいです。
空き家の所在地である市町村の自治体に、空き家バンクなどの相談窓口がないか問い合わせてみましょう。
住宅としての需要が低いなら別の活用方法を考えてみよう
空き家のままでどうしても売れないのであれば、住宅以外の活用方法がないか考えてみましょう。
多少の初期費用がかかっても、需要にあった活用ができれば収益が見込めます。自分で経営してもよいですし、事業として軌道に乗れば空き家のままより高く売れる可能性もあります。
初期投資に必要な資金があるときは、副業や老後の収入源としてぜひ検討してみましょう。
資材置場や太陽光発電など居住用途以外での活用
郊外や過疎地でも始めやすいのが、資材置き場や太陽光発電などの居住以外の用途での活用です。
建築業や農業・林業などの資材置き場は、都市部より地代の安い郊外のほうが需要にも合っています。うまく利用者を見つければ、長期的な収入が見込めるでしょう。
投資として、太陽光パネルを設置して電気を売ることも選択肢の1つです。自治体によっては補助金が出るため、初期投資を抑えて事業を始められます。
ただし、継続したメンテナンスが必要であったり、発電量が天候に左右されるため、赤字になる恐れがある点は注意しましょう。
多少アクセスが悪くても高齢者向け住宅なら需要がある
サービス付き高齢者向け住宅は、医療・介護などの高齢者向けサービスと賃貸が一緒になった住宅です。
立地が郊外でも、安心して暮らせるサービスのついた住宅へ入居を希望する高齢者は少なくありません。
事業者として登録するには各種条件がありますが、建物の建設・改修費用の補助や税制の優遇など、支援制度が設けられています。
会社設立や外部介護サービスの契約などハードルは高いですが、今後も需要が拡大していく分野なので、大きな収益を得られる可能性があるといえます。
「自分で工夫する余裕がない」ときは買取専門業者に買い取ってもらう
空き家を売りやすくする方法や、住宅以外での活用方法をいくつか提案しました。しかし、紹介した方法を実行すのが難しい人もいると思います。
そのようなときは、不動産の買取専門業者に買取してもらうことをおすすめします。
買取専門業者であれば、長期的な収益を見込んで高額買取が可能です。ほとんどは査定から契約まで数日で終わるので、手早く空き家の問題から離れられます。
ただし、長期間放置された空き家のような「訳あり物件」は、一般的な大手の不動産会社では取り扱わないか、安く買い叩かれることも少なくありません。
もし買取を依頼するなら、そういった「訳あり不動産」に強い業者に買取依頼したほうが、高く売れる可能性は上がります。
お持ちの空き家がいくらで売れるのか、まずは訳あり物件専門の買取業者へ無料査定を依頼してみてはいかがでしょうか。
共有不動産の空き家を売却するときに利用できる控除・制度
不動産の売却にあたっては、高額な税金を負担しなければなりません。それと同時に、空き家の売却にかかる税金の軽減する控除や、費用の補助制度があります。
それらの控除は、税務署からわざわざ教えにきてくれないため、自分で調べて活用しなければ受けられません。知らないままに税金を申告すると、本来よりも高い納税額になってしまいます。
この項目では空き家の売却に関わる控除と、税金とは別に受けられる補助金の制度を見ていきましょう。
「相続で取得した住宅の特別控除」で譲渡所得税を抑えよう
不動産の売却には譲渡所得税がかかり、その計算方法は次のようになります。
空き家売却の場合、いくつかの条件を満たせば売却価格から3,000万円を控除できます。
- 相続で取得した建物
- 2016年4月1日から2023年12月31日の間の売却(※今後の法改正で変更される可能性があります)
- 1981年5月31日以前に建築された建物
- 相続の開始の直前において被相続人のみが居住していたもの(※要介護認定を受けて老人ホームなどに入っていても、この条件を満たす場合があります)
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却価格が1億円以下であること
- 売った家屋や敷地について、ほかの特例や控除を受けていないこと
このほかにも細かい条件があるので、控除を利用する場合は税理士に相談するとよいでしょう。
自分のマイホームを売るときの控除の特例と合算されることに注意
自分が住んでいるマイホームの売却・建て替えにあたり、売却価格から3,000万円を控除できる特例があります。
これと空き家売却の特例は併用可能ですが、その上限額は1年の間で合算されるため注意が必要です。なるべく多くの控除を受けたい場合は、売却する年を変えたほうがよいでしょう。
売却する年をずらせば合算もされず、この特別控除の上限は3,000万円×2=6,000万円となります。
空き家解体費用の相場と補助金制度
立地や空き家の状態によりますが、古い建物をそのまま売るより、取り壊して更地にするほうが売れやすい場合があります。
空き家を解体するときの費用は、一般的に以下のとおりです。
- 木造住宅・・・1坪4万円程度
- 鉄筋コンクリート造・・・1坪6万円程度
ただし、地域や解体のしやすさによって大きく変わります。
自治体によっては、この解体費用を補助する制度を設けていることがあります。あくまで一部の自治体だけで、補助の金額も異なるため、詳細は空き家の所在地である市町村に問い合わせてみましょう。
更地にすると固定資産税の特例が外れて跳ね上がることに注意しよう
土地を更地にするにして売り出すときに気をつけなければいけないのが、固定資産税の増額です。
更地にすると「住宅用地の特例」を受けられなくなるため、最大で1/6減額されていた課税額が本来の税額に戻ります。
課税は1月1日時点の不動産の状態から計算されるため、更地にして売るのであれば、1月1日までに売却を終わらせておくのが得策といえます。
固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|
小規模住宅用地(200平方メートル以下の部分) | 6分の1 | 3分の1 |
一般住宅用地(200平方メートルを超える部分) | 3分の1 | 3分の2 |
共有不動産の空き家はなるべく早く処分しよう
不動産は持っているだけで多くの維持費がかかります。
住宅として使用していたり、収益を得られるように活用しているのであれば必要経費ですが、空き家として持っているだけでは負担になるだけです。
また、共有不動産はいざ処分しようと思っても、共有者との話し合いが必要です。全員の同意が取れず、処分までの道のりが長期化することも珍しくありません。
これらのことから、共有不動産の空き家はできるだけ早めに売却するべきだといえます。その売却益から別の不動産を買ったり、現金として蓄えておくなど、資産を有意義に活用するとよいでしょう。
空き家の共有不動産についてよくある質問
はい、必要です。空き家になっている不動産であっても、共有名義なら共有者全員の同意がなければ売却できません。
登記簿上の住所から、住民票や戸籍を調べて探す方法があります。「共有不動産の売却について話し合うため」という目的であれば、共有者の住民票や戸籍を調査できます。また、弁護士に同様の調査を依頼することも可能です。
家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てましょう。家庭裁判所に許可を貰えれば、不在者財産管理人の権限で不動産を売却できます。
共有者に相続人がいれば、共有持分の権利も相続人に引き継がれます。相続人がいない場合、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立て、家庭裁判所の許可のもと売却しましょう。
自分の共有持分(共有不動産における各共有者の所有権)を、共有持分を専門としている買取業者に買い取ってもらうとよいでしょう。弁護士と連携している専門買取業者なら、共有不動産に関する権利関係の調整も得意なので、高額買取が可能です。→弁護士と連携した買取業者はこちら