共有名義の土地は、利用・管理・処分に他共有者の同意が必要なので、共有者間で意見が対立し、うまく活用できないまま維持費だけ支払っている状態の人も多いでしょう。
また、共有者それぞれの所有権である「共有持分」は需要が低いので、そのまま売り出しても市場価値は大きく下がります。
しかし、共有名義の土地を分筆して、単独名義の土地にすれば高値で売却できます。
土地を分筆するには、土地家屋調査士に相談するとよいでしょう。土地の測量から土地分筆登記までスムーズに手続きしてくれます。
また、分筆後の土地を売却するときや、共有者とトラブルになって分筆がむずかしい場合は「弁護士と連携した共有持分の専門買取業者」に相談しましょう。無料査定を利用すれば、売却に向けた適切なアドバイスをもらえます。
- 共有名義の土地は共有持分にそって分筆できる。
- 土地の分筆は土地家屋調査士に相談しよう。
- 土地を分筆すれば共有持分の状態より高値で売りやすい。
共有名義の土地は共有持分にそって分筆できる
共有名義の土地は、共有者それぞれに共有持分があります。
共有持分とは、各共有者の所有権です。土地全体に対して何割の所有権をもっているかを表します。
そして、分筆は土地を切り分ける手続きです。「筆」とは土地の数え方で、一筆の土地を複数に分割するのが分筆です。
共有持分にそって分筆し土地を単独名義にすれば、自分の思いどおりに管理や利用ができるようになります。
土地上に建物があっても分筆は可能
土地の分筆は、土地上に建物があっても可能です。
基本的には「建物のある土地」と「建物のない土地」ができるように分筆しますが、建物が2つの土地にまたがるような分筆もできます。
ただし、土地上に建物がある場合、分筆後の地番にあわせて建物の所在地を変更しなければいけません。変更は法務局で申請します。
2つの土地にまたがる建物の所在地は、出入口のある土地の地番を用いる場合や、建物面積の広い土地の地番を用いる場合があります。
市街化調整区域の土地など分筆できない場合がある
土地によっては、分筆ができない場合もあります。
実務上、分筆は0.01㎡の土地まで切り分けられますが、市街化調整区域では一筆の土地の最低面積が定められている場合があります。
具体的な面積は各自治体によって異なりますが、おおむね一筆で100㎡が最低条件です。
市街化調整区域以外でも自治体ごとに条件を定めている場合があるので、役所の宅地開発課などで確認してみましょう。
分筆できない共有持分でも専門買取業者なら買取可能
敷地面積の問題など、さまざまな理由で分筆できない土地があります。
分筆できなければ共有持分はそのまま維持するしかなく、処分に困る人も多いでしょう。
しかし、共有持分専門の買取業者であれば、分筆できない土地の共有持分でもそのまま買取れます。
無料査定を利用して、共有持分の売却に向けたアドバイスを聞いてみましょう。
弁護士と連携した買取業者なら、共有者とトラブルになっているような土地でもスムーズかつ高額で買取り可能です。
共有持分にそって土地を分筆する手順と流れ
共有持分にそって土地を分筆するときの具体的な流れは、次のとおりです。
- 土地家屋調査士に相談する
- 登記簿上の境界や現地の状態を調査する
- 分筆案を作成する
- 現地に境界標を設置する
- 土地分筆登記をおこなう
- 所有権移転登記をおこなう
土地の分筆に必要な期間は、隣地との境界が明確になっているかどうかで異なります。早ければ10日程度、長ければ2~3ヶ月かそれ以上かかります。
1.土地家屋調査士に相談する
まずは土地家屋調査士に、土地の分筆手続きを依頼しましょう。
土地の分筆には、専門的な測量技術や図面作成の知識が必要です。制度上は自分で測量できますが、一般的には専門家に依頼します。
土地家屋調査士は、土地分筆の専門家です。測量から図面作成、土地分筆登記など、土地分筆に必要な手続きをおこなえます。
2.登記簿上の境界や現地の状態を調査する
土地分筆の依頼を受けた土地家屋調査士が、土地の現状を調査します。
法務局や役所で、次のような資料を取得します。
- 公図:土地のおおまかな位置や形状を表した図面
- 地積測量図:一筆の土地に対する測量結果を表した図面
- 登記事項証明書:不動産の所在地や面積、所有者や権利関係を記した資料
上記のような書面上の調査だけでなく、現地調査もおこないます。隣地所有者に立ち会ってもらいながら「書面上の境界」と「実際の土地の使用状況」がずれていないかなど確認します。
隣地との境界が明確でなければ境界確定測量をおこなう
隣地との境界が明確になっていない場合や、書面上の境界と実際の使用状況にずれがある場合、分筆すべき土地の範囲がわかりません。
そこで、境界が明確になっていない場合は「境界確定測量」をおこないます。境界確定測量では、自分と隣地所有者の立ち会いのもと、境界を決定します。
共有名義の場合は、共有者全員で立ち会うのが基本です。ただし、代表者のみの立ち会いで済ませる場合もあります。
3.分筆案を作成する
分筆案を作成し、土地をどのように切り分けるか決定します。
案とはいえ、役所や隣地所有者に対する説明資料として使うものです。土地家屋調査士に依頼して正確な分筆案を作成してもらいましょう。
また、分筆後の土地の形状がいびつであったり、接道義務(土地が道路に接していなければいけない範囲)に違反していると、資産価値が下がってしまいます。
共有持分にそって土地を分筆する場合、面積だけで判断するのではなく、形状や接道義務などにも配慮が必要です。
4.現地に境界標を設置する
土地の分筆案が決定したら、境界の目印となる「境界標」を現地に設置します。
境界標を設置する際は、分割案に問題がないか役所や隣地所有者にあらためて確認してもらいます。土地家屋調査士に依頼していれば間違いもないので、確認もスムーズに終わるでしょう。
境界標はコンクリート杭や金属鋲など、移動や損傷がしにくいものを使います。
5.土地分筆登記をおこなう
境界標の設置後、法務局で土地分筆登記をおこないます。
土地分筆登記に必要な書類は、次のとおりです。
- 登記申請書
- 境界の確認できる書類(境界確認書や道路境界確定証明書など)
- 地積測量図
- 現地案内図
土地分筆登記は自分でも申請できますが、測量を依頼した土地家屋調査士にそのまま代行してもらうのが一般的です。
6.所有権移転登記をおこなう
土地分筆登記をおこなえば土地の分筆は完了しますが、じつはこの時点では、分筆後の土地それぞれを共有している状態です。
土地の名義を単独名義にする場合、分筆後の土地の共有持分を交換する所有権移転登記が必要になります。
所有権移転登記は自分でも申請できますが、司法書士に依頼したほうがスムーズに手続きできるのでおすすめです。
土地の分筆にかかる費用
土地の分筆に必要な費用は、大きくわけると「土地家屋調査士への報酬」と「所有権移転登記の費用」の2つです。
どちらも具体的な金額は、土地の広さによって変わります。隣地との境界が明確であるかどうかなど、物件ごとの事情にも左右されます。
土地を分筆するときは、事前に土地家屋調査士の見積もりをしっかりと確認しておきましょう。
土地家屋調査士の報酬は25万円~100万円が相場
土地家屋調査士の報酬は、25万円~100万円です。
- 測量費:10万円以上
- 境界標の設置費:10万円以上
- 土地分筆登記の費用:5万円程度
- 筆界確認書の作成費:10万円程度
- 官民境界確定図の作成費:10万円程度
土地分筆登記は、上記の報酬以外に実費として登録免許税(分筆後の土地の数×1,000円)かかります。
隣地との境界が明確で境界確定測量をしない場合、筆界確認書や官民境界確定図は不要になり、その分費用も安くなります。
所有権移転登記の費用は5万円~10万円程度
分筆後の土地を単独名義にするには、所有権移転登記が必要です。費用はおおむね5万円~10万円かかります。
- 登録免許税:土地の価格の4/1,000
- 司法書士報酬:5万円程度
上記のほか、必要書類の取得費が必要です。
分筆で共有持分を単独名義にするメリットとデメリット
土地を分筆することで、どのようなメリットとデメリットがあるのか気になる人は多いと思います。
そこで、共有名義の土地を分筆するメリットとデメリットを3つずつ紹介します。
土地の共有持分をもっている人は、これらのメリットとデメリットを比較して分筆を検討し、土地のよりよい活用に役立ててください。
【メリット1】共有状態を解消できる
土地分筆の最大のメリットは、共有関係を解消できることです。
共有名義の土地は、管理や処分に共有者との話し合いが必要です。意見が対立してトラブルになり、裁判沙汰になるケースも少なくありません。
土地を分筆して共有状態を解消すれば、各自の好きなように土地を管理・処分できるようになります。
【メリット2】土地を分筆すると高値で売れやすい
土地を分筆すると、共有持分の状態より高値で売却しやすくなります。共有持分の売却価格は「本来の価値の半額」が相場であるのに対し、分筆後の土地は本来の価値のままで売却可能です。
共有持分のみを取得しても、土地の利用には共有者との協議が必要であり、わざわざ購入するメリットは少ないといえます。自然と需要が低くなり、市場価値も下がります。
しかし、単独名義の土地であれば自由に利用できるため、市場価値も下がりません。
そのため、共有持分のまま売り出すより、土地を分筆してから売却したほうが高値で売りやすくなるのです。
共有持分の売却相場はいくらになる?売却価格を決める要因や高く売る方法も解説します!【メリット3】土地を異なる用途で使用できる
土地を分筆すれば、それぞれ異なる用途で使用が可能になります。
「家を2つ建てられる」といった単純な使い分けだけでなく、登記簿に記載する地目(土地の用途)も別々に設定可能です。
住居を建てるための「宅地」や、農耕地である「田」「畑」など、地目には複数の種類があります。地目が変われば土地の評価額も変わります。
各土地の用途にあわせて、適切な地目に設定しておきましょう。
【デメリット1】分筆には共有者の同意が必要
土地に分筆には、共有者全員の同意が必要です。
共有名義の土地の分筆は、民法251条における「共有物の変更行為」にあたるため、共有者が1人でも反対していると分筆できません。
民法第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
そのため、土地を分筆したいときは共有者全員と交渉する必要があります。
共有者が反対する場合は「共有物分割請求」で土地の分割を交渉しよう
共有者が土地の分筆に反対する場合、共有物分割請求によって土地の分割を求めることができます。
共有物分割請求がおこなわると、共有者は全員、共有物の分割に向けて話し合わなければいけません。
共有者同士での話し合いがまとまらない場合、訴訟を起こして裁判所の判決によって分割方法を決定します。
ただし、共有物分割請求は必ずしも自分の希望どおりに分割できるとは限りません。
土地を分筆する「現物分割」のほか、土地を売却してどの利益をわける「換価分割」や、共有者間で共有持分と金銭を交換する「代償分割」になる場合もあります。
共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説【デメリット2】土地の面積や形状によっては価値が下がる
分筆後の土地の面積や形状によっては、共有持分の状態より市場価値が下がる恐れもあります。
分筆前の土地が小さい場合や、所有している共有持分が少ない場合、分筆後の土地が狭くなって利用価値も失われてしまうかもしれません。
また、分筆後の土地がいびつな形になったり、道路に接している部分が少ない場合も、市場価値は下がってしまいます。
分筆して価値が下がるなら「共有持分のまま売却」がおすすめ
共有持分の状態より資産価値が下がってしまうような分筆は、損失になってしまうので避けたほうがよいでしょう。
しかし、現状維持では共有持分を持て余してしまい、維持費だけかかってしまう状況の人もいると思います。
そのため、分筆がむずかしい土地の共有持分は、そのまま売却してしまうとよいでしょう。
共有持分専門の買取業者であれば、分筆して価値が下がるような土地でも高額買取りが可能なので相談してみましょう。
土地の分筆には数ヶ月の期間が必要ですが、共有持分の買取りであれば最短数日で処分できるので、急いで売却したい人にもおすすめです。
【デメリット3】住居のない更地が発生すると固定資産税が高くなる
分筆によって「建物のない土地」が発生すると、固定資産税が高くなるので注意が必要です。
土地の固定資産税は、住居があると減額される特例があります。特例では1/3~1/6に減額されるのですが、更地になると特例の対象から外れてしまいます。
住居がないほうの土地を取得した人が、個体資産税の金額に驚いたというケースは少なくありません。
分筆後の利用方法を事前に計画しておこう
「とにかく共有状態を解消したい」と焦って分筆をせず、事前に分筆後の利用方法を考えておきましょう。
固定資産税は毎年1月1日の状態を参照して課税されるため、分筆から住居の建築までを年内に終わらせれば固定資産税は増額されません。
売却する場合も同様で、分筆の同年中に土地を売却すれば固定資産税を気にする必要はなくなります。
共有持分の状態より分筆をしたほうが価値は高くなり売却しやすくなる
土地の分筆をすれば、土地の共有持分を単独名義の土地にできます。
共有持分は利用しづらく、一般的な需要も低いといえます。売却相場は本来の価値の半額になり、仮に売り出してもなかなか売れません。
しかし、土地を分筆して単独名義にすれば、自由に利用できるため本来の価値で売却しやすくなるでしょう。
土地の利用方法について共有者間でトラブルになっているときなど、土地の分筆を検討してみるとよいでしょう。分筆すれば共有状態が解消されて、管理も処分も自由におこなえます。
共有持分の分筆についてよくある質問
分筆とは、1つの土地を複数に切り分ける手続きです。共有名義の土地を分筆すれば、共有状態を解消して単独名義の土地にできます。
共有状態を解消して自由に管理や処分ができるほか、共有持分のまま売却するより高値で売りやすくなるのが最大のメリットです。ただし、分筆後の土地があまりにも小さい場合は、逆に価値が下がるので注意しましょう。また、土地の分筆には共有者全員が同意していなければならないので、反対される場合は交渉や訴訟をする必要があります。
土地分筆業務の専門家である土地家屋調査士に相談しましょう。土地の測量から登記申請まですべて代行してくれます。ただし、土地を分筆しただけでは「分筆後の複数の土地を共有している状態」なので、分筆後は司法書士に所有権移転登記を依頼する必要があります。
土地の面積や個別の事情によって変動しますが、土地家屋調査士の報酬は25万円~100万円、所有権移転登記の費用は5万円~10万円程度が相場です。
土地は面積だけでなく、形状や道路と接している面積などでも価格が変わります。そのため「共有持分の比率」と「分筆後の土地の価格比率」がずれないように気をつけましょう。