共有物分割請求とは、共有不動産など「共有物」の分割をほかの共有者に対して求める手続きです。
共有物分割請求があると、共有者全員が分割に向けて協議しなければいけません。協議で話がまとまらないときは訴訟に発展し、最終的には裁判所の判決で分割方法が決められます。
そのため、共有物分割請求による共有名義の解消は拒否できないといえるでしょう。
請求があったときは誠実に対応し、具体的にどう分割するか話し合うことをおすすめします。訴訟には費用や時間がかかりますし、自分たちで分割方法を決めたほうが納得しやすいでしょう。
また、共有名義の解消には共有物分割請求だけでなく「共有持分の売却」もおすすめです。協議がまとまらず、かつ訴訟も避けたい場合は、専門買取業者の持分買取も検討してみましょう。
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- 共有物分割請求による共有名義の解消は拒否できない。
- 共有物分割請求は協議・調停・訴訟の順番に進んでいく。
- 訴訟になると分割方法も判決で強制的に決められる。
- 分割に向けて共有者同士の協議に応じるか、自分の共有持分を売却するのがおすすめ。
共有物分割請求による共有名義の解消は拒否できない
結論からいうと、共有物分割請求が起こされると共有名義の解消は拒否できません。
共有物分割請求には3つの段階があり、当事者間での協議、調停委員を交えた調停、そして訴訟と進んでいきます。
訴訟まで進むと、裁判官の判決により分割方法を決定します。判決には強制力があるので拒否できません。
訴訟にまで発展すれば共有名義の解消は避けられないため、協議の段階で拒否する意味がありません。分割方法について交渉するためにも、協議の段階で誠実に対応すべきでしょう。
共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説共有物分割請求は共有者であればだれでも請求できる
共有名義の不動産などを共有物といい、共有物の分割を求めるのが「共有物分割請求」です。
共有物の分割を求める権利は民法に規定されており、共有者であれば、持分割合※に関わらずいつでも共有物の分割を請求できます。
自分が共有持分を1/10しかもっておらず、相手が9/10の共有持分をもっている共有者でも、共有物分割請求を申し入れられます。
民法第256条
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。(後略)
「共有物分割禁止特約」があると分割を請求できない
上記の項目で紹介した民法第256条ですが、条文には続きがあります。続きの部分では「共有物の分割を禁止する特約」を定められるとしています。
民法第256条
(前略)ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
共有者全員が同意すれば、期間が5年以内の「共有物分割禁止特約」を定められます。5年ごとに共有者が話し合って全員が同意すれば、特約の更新も可能です。
また、特約について法務局で登記しておけば、共有持分の相続や売買があっても特約は引き継がれます。
共有物分割請求の流れ
すでに解説したとおり、共有物分割請求は3つの段階にわかれます。
- 協議
- 調停
- 訴訟
当事者間の協議で解決できれば理想的ですが、具体的な分割方法で意見がわかれたり、分割自体に反対する人がいる場合、裁判所での調停や訴訟に進みます。
それぞれの段階について、流れにそって詳しく見ていきましょう。
1.協議
最初は、当事者である共有者で協議をおこないます。
訴訟をするには「当事者間で協議をしたがまとまらなかった」ことが条件なので、協議は必ずしなければいけません。
協議では共有者全員が分割方法に同意しなければならず、1人でも意見の違う人がいると成立しません。
2.調停
調停は、トラブル解決のために裁判所が仲介して、当事者間の合意を成立させるための手続きです。共有物分割請求の場合は、簡易裁判所に申し立てます。
裁判官や調停委員が話し合いを進行し、客観的な立場から当事者の歩み寄りを促して和解を目指す手続きです。
裁判所が強制力のある決定を出すわけではなく、あくまで「調停委員を挟んだ話し合い」といえます。
調停は必須ではないため、協議で話がまとまらなかった場合は調停をせずに訴訟を起こしても構いません。
ただし、調停は訴訟より費用や時間がかかりません。「大筋で合意しているが細かい分割方法で対立している」といった場合、調停の申し立てを検討してみるとよいでしょう。
参照:裁判所「民事調停手続」
3.訴訟
訴訟は、裁判所に訴えて判決を出してもらい、トラブルを解決する手続きです。「相手方の住所地」か「共有不動産の所在地」を管轄する地方裁判所に提起します。
裁判のなかで和解になる場合もありますが、最後まで和解できなかった場合は裁判所の判決によって分割方法を決定します。
訴訟が提起されてから判決にかかる期間は、半年~1年ほどです。
参照:裁判所「民事訴訟」
訴訟まで発展すると「判決による分割」を強いられる
共有物分割請求が訴訟まで発展すると、最終的には判決によって分割方法を決められます。
判決が出ると、その結果を拒否することはできません。
そのため、共有物分割請求の最初の段階である協議を拒否しても、共有物の分割は避けられないといえます。
結果的に分割するのであれば、下手に拒否して時間をかけるより、早いうちに話し合って自分たちで分割方法を決めたほうがよいでしょう。
判決による分割方法は3種類ある
共有不動産の分割方法には、次の3種類があります。
現物分割 | 不動産を持分割合にそって物理的に切りわけ、各共有者の単独名義にする |
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価格賠償 | 共有者のだれか1人がすべての共有持分を取得し、ほか共有者へ持分割合に応じた賠償金を支払う |
換価分割 | 不動産を競売にかけ、落札代金を持分割合にそって分割する |
上記のうち、個々の事情にあわせて適切な分割方法を裁判官が決定します。
訴訟では特定の分割方法を選べない
訴訟になれば共有物の分割は拒否できませんが、それに加えてもう1つ注意点があります。
訴訟では裁判官が適切な分割方法を決めるため、当事者の好きな方法を選べません。
自分たちの希望は裁判のなかでいえますが、最終決定権は裁判官にあります。例え訴訟を提起した原告であっても、自分の思いどおりに分割できるとは限らないのです。
3つの分割方法のうち、現物分割は主に土地に対する分割方法で、建物ではほとんど使われません。価格賠償に関しては、共有者のだれか1人に賠償金を支払える資金力が必要です。
上記の2つは条件が厳しいため、共有不動産を競売にかける換価分割がもっとも多いケースとなっています。
共有物分割請求の申し入れを受けたときはどうすべき?
共有不動産の分割を拒否できないとして、実際に共有物分割請求の申し入れがあったときにどんな対応をすればよいでしょうか?
共有者の分割請求に応じたくない場合、自分自身が共有不動産をどのようにしたいかで取るべき対応も変わります。
- 不動産は手放したくない
- 不動産を手放してもよい
それぞれの場合における、具体的な対応を解説していきます。
不動産を手放したくなければ相手の共有持分を買い取る
不動産を手放したくなければ、相手の共有持分を買い取るのがよいでしょう。
購入資金を用意できない場合、分割払いなどの交渉をしてみましょう。共有者同士であれば、ある程度の融通は利かせてくれるかもしれません。
ただし、相手も不動産を手放したくないと考えている場合、買取価格も多少高めに設定する必要があります。
とはいえ、共有持分のみを売り出す場合の市場価格は、本来の価値から半額程度に下がります。
「市場価格は半額になるのが相場である」と説明してから本来の価値での買取を提示すれば、売買契約も成立しやすいでしょう。
共有持分の売却相場はいくらになる?売却価格を決める要因や高く売る方法も解説します!共有名義を維持したければ不動産の利用方法や維持費の負担を見直してみる
「不動産は手放したくないけど、共有名義も維持したい」という場合、現状の利用方法や維持費の負担割合を見直してみるとよいでしょう。
共有不動産に住んでいるのが自分1人であれば、共有者に家賃を支払う(すでに支払っている場合は金額を上げる)ことを提案してみるのも手段の1つです。
ほかにも、固定資産税や修繕費を多めに負担する、賃貸物件なら設備のチェックや草むしりなど普段の管理を自分がおこなうのもよいでしょう。
共有名義を維持するためには、相手にとってのデメリットを減らしつつメリットを提示するのが有効です。
不動産を手放してよければ共有持分を売却する
不動産を手放してもよければ、共有持分を売却するとよいでしょう。
共有者に売却するのもよいのですが、相手に購入できるだけの資金がない場合や、関係性が悪いため売却したくないという場合もあると思います。
そういった場合、共有持分専門の買取業者に買い取ってもらう方法がおすすめです。
専門買取業者であれば「共有持分を活用するノウハウ」も豊富にもっているため、高額買取と最短数日での現金化が可能です。
共有持分の売却に共有者の同意はいりません。専門買取業者の無料査定を利用して、具体的な価格や売却に向けたアドバイスを聞いてみましょう。
訴訟によって競売にかけられると一般的な売買より安価になる
共有持分の売却をおすすめする理由に、訴訟による換価分割のデメリットがあります。
換価分割になると不動産全体を競売にかけて、落札代金を持分割合に応じて分配します。
しかし、競売の落札代金は一般的な不動産売買より大きく下がるのが一般的です。
訴訟にかかる費用や時間のコストも考えると、競売にかけられるより自分で共有持分を売却したほうがお得になる場合が多いでしょう。
自分が共有物分割請求をしたときに相手が非協力的な場合の対処法
ここまでは「共有物分割請求をされた側」の視点で解説してきました。
しかし、反対に自分が共有物分割請求をしたとき、相手が非協力的で困っているという人も多いでしょう。
「訴訟までいけば共有物の分割は拒否できない」と解説しましたが、相手がそれを理解していない、もしくは理解しようとせず協議に応じないケースもあります。
相手が非協力的な場合の、具体的な対処法を見ていきましょう。
協議の申し入れは内容証明郵便で証拠を残しておく
まず、協議の申し入れは内容証明郵便を使いましょう。
申し入れ自体に決まった形式はないので、電話で伝えたり直接会って申し入れたりしても、その後の協議は有効です。
しかし、訴訟を提起する場合は「協議をした」もしくは「協議を申し入れたが拒否された」という客観的な証拠が必要です。
そのため、文書の内容や日付、差出人と名宛人を証明できる内容証明郵便で証拠を残しておくとよいでしょう。
相手から「協議をしていない」といわれても、内容証明郵便の控えが証拠となって訴訟の提起が可能になります。
相手に「訴訟になった場合のデメリット」を説明する
相手が非協力的な原因として、共有物分割請求のことをしっかり理解していない可能性があります。
この記事で解説したように、訴訟に発展すれば最終的に共有不動産の分割は避けられないことや、競売になった場合は市場価格より大きく値段が下がることを説明してみましょう。
相手が共有物分割請求のことを理解すれば、前向きな対応が返ってくる可能性も高くなります。
「共有持分の売却」も検討する
共有不動産の場合、共有者同士の関係性が悪いケースも少なくありません。
その場合は相手も感情的になっており、共有物分割請求のことを説明しても協力してくれない恐れがあります。
また、共有者と協議するのを面倒に思う人や、連絡するのもストレスに感じる人もいるでしょう。
これらの場合、共有者間で共有名義の解消をするより、自分の共有持分だけ売却することも検討してみましょう。
共有持分の売却は自分の意思のみでできるので、共有者と関わらずに共有名義を解消できます。
専門買取業者に買い取ってもらえば共有者と関わらずに共有名義を解消できる
共有持分の売却はおすすめできる方法ですが、通常の不動産売買とは勝手が違います。一般的な不動産会社では取り扱いを断るケースも少なくありません。
共有持分を売りたいと思っても、どこに相談すればよいのかわからない人も多いでしょう。
そこで相談すべきなのは、共有持分専門の買取業者です。専門買取業者なら共有持分に関する知識と実績が豊富にあるので、高額かつスピード買取を実現できます。
とくに、弁護士と連携した買取業者であれば、トラブルなくスムーズに共有持分を現金化できるでしょう。
無料査定を利用して、共有持分の売却に向けた具体的なアドバイスをぜひ聞いてみましょう。
共有物分割請求はお互いが納得できるよう誠実に話し合おう
共有物分割請求は、訴訟まで進めば共有物の分割を拒否できません。
しかし、訴訟では判決によって強制的に分割方法が決められてしまい、費用や時間のコストもかかってしまいます。
おすすめは、お互いが納得できるように協議の段階でしっかり話し合うことです。
どうしても話し合いがまとまらないときは、共有持分の売却といった方法も検討してみるとよいでしょう。
共有物分割請求についてよくある質問
共有物分割請求とは、共有不動産といった共有物の分割を求める手続きです。共有者であれば持分割合に関わらず請求できます。
いいえ、共有物分割請求は拒否できません。共有者全員が共有物の分割に向けて協議し、当事者たちだけで話がまとまらない場合は裁判所の判決によって分割方法を決められます。
まず、当事者である共有者間で協議します。協議で共有者全員の同意が揃わない場合は裁判所に訴訟を提起し、分割方法を決めてもらいます。訴訟の前に、調停を申し立てて話し合いを継続することも可能です。
協議に参加し、お互いが納得できる分割方法を話し合うのが一番です。協議をしたくない場合は、共有持分専門の買取業者に持分を買い取ってもらうのもおすすめです。
協議を申し入れるときは、内容証明郵便を使いましょう。訴訟を提起するときに「協議を申し入れたが話し合いで解決できなかった」ということを証明する必要があり、証拠として内容証明郵便の控えが使えます。