土地と建物の持分割合は揃えるべき?持分割合を揃える方法も解説します!

土地建物 持分 揃える

不動産を複数人で共有する場合、各共有者がもつ所有権を「共有持分」といい、共有持分の持分割合は法務局で登記する必要があります。

不動産を共有している人・これから相続する人のなかには「土地と建物で持分割合を揃える必要はあるの?」と疑問に思う人も多いです。

結論からいうと、土地と建物で持分割合が揃っていなくても問題ありませんが、取得費用の割合と持分割合が揃っていないと、権利の大きさを巡ってトラブルが起きやすいです。

また、そもそも不動産を共有名義にしておくと、トラブルになる可能性が高いので、避けたほうが好ましいです。土地と建物の持分割合を揃えるよりも、共有持分を売却するなど「共有名義の解消」を検討しましょう。

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この記事のポイント!
  • 土地と建物の持分割合は揃えなくても問題ない。
  • 持分割合を決めるときは「購入時の出資割合」か「相続時の遺産分割」で決まる。
  • 不動産は共有名義にすること自体にリスクがあるので早いうちに解消したほうがよい。
目次
  1. 土地と建物の持分割合は揃えなくても大丈夫
  2. 土地と建物の持分割合を揃える方法
  3. 不動産は共有名義にすること自体にリスクがある
  4. 土地と建物の持分割合を揃える必要はないが共有不動産のリスクには注意しよう

土地と建物の持分割合は揃えなくても大丈夫

「土地と建物の持分割合は揃えるべきか」と悩む人もいますが、結論からいえば「必ずしも揃えなくてもよい」といえます。

土地と建物は別々の財産なので、名義が違っていても法律的に問題はありません。同じように、持分割合が揃っていなくても問題はないといえます。

土地と建物の持分割合は揃えても揃えなくても、どちらでも構いません。購入時の状況や相続人の数など、個々の事情によって決めるとよいでしょう。

登記制度において土地と建物は別の財産

日本の登記制度において、土地と建物は別々の財産として管理されています。

不動産の権利関係は、法務局で管理する登記簿に記載されます。登記簿上では土地と建物は別々の財産として個別に記載され、名義変更も別個に申請可能です。

ちなみに、海外では「建物は土地の附合物」とされ、建物だけで売買や贈与をできない国があります。

土地と建物を別々の財産として管理するのは、日本の登記制度の特徴といえるでしょう。

別の財産なので持分割合も別々に設定できる

登記簿上は別の財産なので、土地と建物で持分割合を揃える義務はありません。

例えば「土地の持分割合を1:2、建物の持分割合を2:3」としても構いませんし、あるいは「建物は共有名義にするけど土地は単独名義にする」といったケースもあります。

土地と建物を別々に登記するため、不動産売買では土地・建物それぞれの購入費用を「だれが」「どのように」負担したか、明確にしておく必要があるので注意しましょう。

土地と建物の持分割合を揃えなくてもデメリットはない

「義務はなくても、土地と建物の持分割合が揃っていないことでなんらかのデメリットはないの?」と思う人も多いでしょう。

しかし、土地と建物の持分割合を揃えなくても特別なデメリットはないので安心してください。

ただし、節税や相続の関係で持分割合を揃えたほうがよい場合や、反対に揃えないほうがよい場合もあります。

どちらにしても、個々の事情によってベストな選択は異なるので、迷ったときは税理士や弁護士といった各方面の専門家に相談してみるとよいでしょう。

持分割合を決めるときは「購入時の出資割合」か「相続時の遺産分割」が基準

そもそも、共有不動産における持分割合はどのように決まるのでしょうか?

持分割合は、不動産を購入するときにどれだけ出資したかで決めるのが一般的です。2人で半額ずつ出資したのであれば、それぞれの共有持分は1/2ずつになります。

出資した金額とは違う持分割合を登記することもできますが、その場合は差額に対して贈与税が発生するので注意しましょう。

ただし、贈与税における110万円の基礎控除を利用して出資割合とは異なる持分割合で登記する場合もあります。

相続の場合、遺産分割の割合によって持分割合が決まります。

遺言書で指定された共有持分の配分や、遺産分割協議によって決定した割合で相続しましょう。

持分割合を「揃えるべきか」「揃えないべきか」は個々の状況次第

土地と建物で持分割合を揃えたほうがよいか、それとも揃えないほうがよいかは、個々の状況次第です。

重要なのは、購入時の出資費用にあわせて持分割合を登記することです。贈与税を支払ってまで、出資費用と異なる持分割合を設定する必要性は低いでしょう。

あえていえば、相続時は土地と建物の持分割合が揃っていたほうが、遺産分割はしやすくなるといえます。

また、親子が共同で住宅を購入する場合、土地と建物の費用負担を変えたほうが節税に繋がります。費用負担を変えることで、結果的に土地と建物の持分割合が揃わなくなるケースはあるでしょう。

「土地や建物の相続人が複数いるケース」は揃えたほうがよい

将来的に土地と建物を相続する人が複数いる場合、土地と建物の持分割合は揃えておいたほうが遺産分割をしやすくなります。

土地と建物で持分割合が異なると、資産価値の計算も複雑になります。「土地と建物それぞれ1/2ずつの共有持分」という割合であれば、計算がしやすいでしょう。

ただし、共有名義のまま不動産を相続すると、トラブルが非常に起こりやすくなります。相続時は、そもそも共有状態を解消するほうがおすすめです。

「親子が共同で住宅を購入するケース」は揃えないほうがおすすめ

親子が共同で住宅を購入する場合、親が建物の共有持分を多く取得し、子供は土地の共有持分を多く取得するほうがお得です。

なぜなら、建物は経年劣化で資産価値の低下は避けられないのに対し、土地は価値が下がりにくいからです。

相続時、遺産の価値が低ければ相続税も安くなります。親が死亡したとき、購入時から価値の変わらない土地を相続するより、経年劣化で価値の下がった建物を相続するほうが税負担を抑えられるでしょう。

ただし、住宅ローンは「土地のみの購入」では借り入れられません。住宅を購入する人しか住宅ローンを契約できないようになっています。

そのため「親が建物を買い、子供が土地を買う」というように、土地と建物で費用負担を完全にわけてしまうと、子供が住宅ローンを組めないので注意しましょう。

土地と建物の持分割合を揃える方法

実際に土地と建物の持分割合を揃えたい場合、具体的になにをすればよいでしょうか?

持分割合を揃えるタイミングがいつなのかによって、取るべき方法も違います。具体的には、次の3つの状況が考えられるでしょう。

  • 不動産を購入するときに土地と建物の持分割合を揃える
  • 所有している土地と建物の持分割合を揃える
  • 相続時に土地と建物の持分割合を揃える

それぞれの状況別に、土地と建物の持分割合を揃える方法を紹介していきます。

不動産を購入するときに土地と建物の持分割合を揃える方法

土地や中古住宅を購入するとき、もしくは新規で住宅を建てる場合、持分割合を揃える方法は次の2つです。

  • 1.土地と建物の購入費用を均等に負担する
  • 2.贈与税を支払って持分割合を揃える

購入費用の出資割合にあわせて持分割合を登記するのが原則なので、基本的には「土地と建物購入費用を均等に負担する」方法がおすすめです。

購入費用を均等に負担できない場合は、出資割合と持分割合の差額分を贈与し、贈与税を支払う方法があります。

1.土地と建物の購入費用を均等に負担する

単純に土地と建物それぞれの購入費用を均等に負担すれば、持分割合も揃えられます。

夫婦なら、住宅ローンや貯金、親からの資金援助※から出資する金額が同じになるよう調整し、土地と建物のそれぞれを半額ずつ負担しましょう。

※親から受けた資金援助は、その子供の費用負担に計算されます(妻の親から援助を受けた分は、妻の費用負担として持分割合を計算)。
ちなみに「住宅取得等資金贈与の非課税」という制度を利用すれば、住宅購入の資金援助を目的とした親からの贈与が最大700万円非課税になります。

参照:国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

2.贈与税を支払って持分割合を揃える

費用負担を均等にできない場合、贈与税を支払うことで持分割合を揃えられます。

贈与税は、贈与があった年の翌年2月1日から3月15日の間に税務署で申告しましょう。

ちなみに、事実に反する内容の登記を申請してしまった場合、所有権の更正登記で修正できます。

「費用負担は均等にしたのに持分割合を間違えて登記してしまった」という場合、法務局で速やかに更正登記を申請しましょう。

共有持分 更正登記 【間違った登記はすぐ修正!】共有持分における更正登記の方法や書類&費用を解説!

所有している土地と建物の持分割合を揃える方法

すでに所有している土地や建物に関して持分割合を揃えたい場合、次の2つの方法で変更が可能です。

  • 1.持分割合の差分を共有者へ贈与する
  • 2.持分割合の差分を共有者間で売買する

共有者への贈与は、不動産を購入するときに持分割合を揃えるときと考え方は同じです。共有者だからといって特別なことはありません。

共有者間での売買も通常の不動産取引と基本は同じですが、価格設定には注意が必要です。市場価値より低い価格で売買すると、贈与税が余計に発生する恐れがあります。

1.持分割合の差分を共有者へ贈与する

不動産を購入するときに持分割合を揃える方法と同じく、贈与税を支払うことで持分割合を揃えられます。

土地と建物の持分割合が揃うように、法務局で持分一部移転登記※を申請しましょう。

※持分一部移転登記:自分の共有持分から一部だけ移転(名義変更)する登記。自分の持分をすべて移転する場合は「持分全部移転登記」が必要。
共有持分 一部移転 共有持分の一部移転が必要なのはどんなとき?登記の区別方法をわかりやすく解説

2.持分割合の差分を共有者間で売買する

共有者の間で、共有持分を売買することも可能です。

通常の不動産取引と同じように売買契約書を交わし、贈与のときと同じく法務局で持分一部移転登記を申請しましょう。

ただし、共有者間で共有持分を売買するとき、身内だからと売買価格を安く設定しないようにしましょう。

市場価格と実際の売却価格が大きく異なる場合、差額に対して贈与税が課されます。

不動産鑑定士に住宅を鑑定してもらうなど、不動産の正しい価値を調べてから売買するとよいでしょう。

参照:国税庁「著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」

相続時に土地と建物の持分割合を揃える方法

相続時に土地と建物の持分割合を揃える場合、次の2つの方法があります。

  • 1.遺言書で「だれが」「どれくらいの共有持分を」相続するのか指定しておく
  • 2.遺産分割協議で持分割合を揃えるように話し合う

遺言書による指定は、被相続人となる「現在の共有持分権者」が取れる方法です。遺された相続人がトラブルにならないよう、あらかじめ配分を指定しておきます。

遺産分割協議は「将来の共有持分権者」である遺された相続人が取れる方法です。協議がスムーズに進めば問題はありませんが、意見がまとまらず協議が長引くケースや、裁判に発展するケースもあるので注意しましょう。

1.遺言書で「だれが」「どれくらいの共有持分を」相続するのか指定しておく

遺言書で、土地と建物の持分割合が揃うように「相続する人」と「共有持分の配分」を指定できます。

被相続人が遺産分割の割合を決めておけば、相続人が争うこともありません。

しかし、遺言書の書式が間違っていたり、配分が各相続人の遺留分※に反している場合、遺言書は無効になってしまいます。

遺言書を作成するときは弁護士と相談し、正しい書式や内容で作成しましょう。

※遺留分:各相続人に最低限保障される遺産の取り分。

2.遺産分割協議で持分割合を揃えるように話し合う

遺言書がない場合、もしくは遺言書の内容に不満がある場合、相続人全員の同意によって遺産分割の割合を決定できます。

全体で公平になるようにしたうえで、土地と建物の持分割合が揃うように分割しましょう。

遺言書の場合と同様、各相続人の遺留分を侵害しないよう注意が必要です。話がまとまらない場合、弁護士に相談して仲裁をしてもらうのもよいでしょう。

遺産分割協議とは 相続発生時における遺産分割協議の基礎知識と流れを解説!遺産分割は相続人全員で協議しよう!

不動産は共有名義にすること自体にリスクがある

土地と建物の持分割合は、揃えても揃えなくてもどちらでも構わないと解説しました。

しかし、そもそも不動産を共有名義にすること自体が、大きなリスクに繋がります。

共有名義の不動産は、管理や使用・処分に共有者との話し合いが必須です。ことあるごとに確認を取るのは非常に手間がかかり、意見が対立してトラブルになる可能性も非常に高いといえます。

また、費用負担が共有者間で不平等であったり、1人に占有されていてほかの共有者がまったく利益を受けられないケースも少なくありません。

共有名義の解消は「共有持分専門の買取業者」に相談しよう

トラブルの起こりやすい不動産の共有名義は、できるだけ早いうちに解消すべきです。

共有状態を放置することで、肉親であっても裁判沙汰になる恐れがあります。裁判になれば手続きに時間を取られますし、余計な費用も発生します。

そこで、共有状態を解消する1つの方法として「自分の共有持分を売却する」という方法がおすすめです。

共有持分は自分の判断のみで売却できるため、共有者とすでにトラブルになっていても事前に相談することなく、共有名義を解消できます。

共有持分専門の買取業者であれば「共有持分の取引ノウハウ」が豊富なので、最短数日で高額買取も可能です。無料査定を利用して、共有名義の解消について相談してみるとよいでしょう。

土地と建物の持分割合を揃える必要はないが共有不動産のリスクには注意しよう

土地との持分割合を揃える必要性と、具体的な方法を解説しました。

土地と建物の持分割合は揃っていなくても問題はありません。取得費用の負担割合と同じになるよう、登記申請するとよいでしょう。

持分割合は揃えたい場合、土地と建物の取得費用を同じ割合で負担するか、共有持分の贈与や売買で調整しましょう。相続時は、遺言書や遺産分割協議で持分割合を揃えられます。

ただし、そもそも不動産を共有名義にするのは、共有者間でのトラブルが起こりやすく危険です。トラブルになった場合は、共有持分の売却などで「共有名義の解消」を検討しましょう。

土地と建物の持分割合についてよくある質問

土地と建物の持分割合は揃える必要がありますか?

いいえ、揃える必要はありません。土地と建物の持分割合が異なっていても問題はなく、ペナルティもありません。

そもそも、土地や建物の持分割合はどのように決めるのでしょうか?

新たに土地や建物を購入する場合、取得費用の負担割合と同じになるよう決めるのが一般的です。相続の場合は、遺言や遺産分割協議で決まった割合にしたがって分割します。

取得費用の負担割合と持分割合を同じにしないと、どうなりますか?

差額分が贈与とみなされ、贈与税を納める必要があります。ただし、贈与税の基礎控除110万円を利用すれば、相続税を抑えつつ取得費用と違う持分割合を登記できます。

土地と建物の持分割合を揃える場合と揃えない場合、どちらがお得でしょうか?

親子が共同で住宅を購入するケースは、相続税の節税に繋がる可能性があります。個々の条件次第でどちらがお得かは異なるので、税理士と相談することをおすすめします。

土地や建物の持分割合は、どこで申請すればよいでしょうか?

不動産所在地を管轄する法務局で登記申請をおこないます。申請書の作成などに不安がある場合は、司法書士に相談するとよいでしょう。

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