住宅ローン控除とは?控除額・適用条件・申請方法をわかりやすく解説

住宅ローン控除とは わかりやすく

家の購入時などに利用できる「住宅ローン控除」という制度を聞いたことがある人は多いでしょう。

しかし「いつ・誰が・どの程度、住宅ローン控除を受けられるか?」を説明できる人は少ないです。

適用条件や計算方法などの仕組みを覚えておけば、住宅ローン控除額を自力で計算できますし「自分が住宅ローン控除の対象か?」も確認できます。

この記事では、住宅ローン控除を受けられる条件、控除額や申請方法まで、わかりやすく解説します。

この記事のポイント!
  • 住宅ローン控除とは、毎年の所得税・住民税が安くなる制度。
  • 住宅ローン控除額は原則「住宅ローン残高×負担割合×1%」または上限額40万円。
  • 住宅ローン控除を受けるには、必要書類を税務署に提出すればOK。

住宅ローン控除とは毎年の所得税・住民税が安くなる制度

「住宅ローン控除」とは、住宅ローンを利用して家を購入した場合、一定の金額が所得税・住民税から控除される制度のことです。

年末時点での住宅ローン残高に応じた金額が、毎年の所得税から控除されます。

また、住宅ローン控除額が所得税を上回る場合、残った差額は翌年の住民税から控除されます。

控除される期間は入居時から原則10年間

住宅ローン控除により、所得税・住民税が控除される期間は原則10年間です。

ここでいう10年間とは、家を取得した時点ではなく、入居した時点から10年間を指すため注意しましょう。

また、税制改正による消費税の引き上げに伴って、住宅ローン控除の適用期間が13年間まで延長されるケースも存在します。

具体的には、消費税率10%が適用される住宅を取得して、2022年12月31日までに入居した場合、控除期間が13年間に延長されます。

住宅ローン控除でいくら税金が安くなる?

住宅ローン控除を利用すると、いくら税金が安くなるのでしょうか?

原則として、住宅ローン控除額は「住宅ローン残高×負担割合×1%」で計算できます。

ただし、住宅ローン控除額には上限があり、40万円までしか控除が受けられません。

この項目では、住宅ローン控除の控除額について解説していきます。

控除額は「住宅ローン残高×負担割合×1%」

住宅ローン控除の控除額は、以下の計算式で求められます。

年数 控除額
1〜10年目 住宅ローン残高×負担割合×1%
11~13年目 建物の価格×1/3×2%

11年目以降は「住宅ローン残高×負担割合×1%」と「建物の価格×1/3×2%」のうち、安いほうの控除額が適用されます。

ここでいう「住宅ローン残高」とは、購入時点での残高ではなく、毎年の年末時点での住宅ローン残高の金額を指します。

また、夫婦など2名以上で住宅ローンを返済する場合、それぞれが実際に負担している分しか、住宅ローン控除が受けられないため注意しましょう。

例えば、住宅ローン残高が6,000万円でも、半分しか負担していない場合、1人あたり3,000万円分の住宅ローン控除しか受けられません。

住宅ローン控除額の上限は原則40万円

住宅ローン控除額には、原則40万円の上限額が定められています。

ちなみに家の種類によって、住宅ローン控除の上限額は異なります。

種類 上限額
一般住宅 40万円
長期優良住宅 50万円
消費税非課税で取得した住居 20万円

先ほど紹介した「住宅ローン残高×負担割合×1%」の金額が40万円を上回る場合でも、原則40万円までしか控除を受けられないため注意しましょう。

住宅ローン控除額のシュミレーション例

住宅ローン控除額がいくらになるのか、実際の例を見ていきましょう。

まずは、住宅ローン控除額が上限額40万円を下回るケースです。

・住宅ローン残高=3,000万円
・住宅ローン名義人=夫のみ

この場合「住宅ローン残高×負担割合×1%」の計算結果は以下のとおりです。
・住宅ローン控除額:3,000万円×1%=30万円

この場合、上限額40万円を下回るため、住宅ローン控除額は30万円です。

続いて、住宅ローン控除額が上限額40万円を上回るケースです。

・住宅ローン残高=5,000万円
・住宅ローン名義人=夫のみ

この場合「住宅ローン残高×負担割合×1%」の計算結果は以下のとおりです。
・住宅ローン控除額:5,000万円×1%=50万円

しかし、上限額40万円を上回るため、住宅ローン控除額は40万円になります。

どんな時に住宅ローン控除が受けられる?

住宅ローンを利用して家を購入しても、必ず控除が受けられる訳ではありません。

住宅ローン控除には適用条件があり、それを満たす場合のみ控除が受けられます。

この項目では、住宅ローン控除を受けられる人物・条件を解説していきます。

住宅ローン控除の対象はローンの名義人のみ

住宅ローン控除を受けられる人物は、住宅ローンを借入した名義人です。

例えば、登記上は夫婦名義の家でも、住宅ローンの名義人が夫1人の場合、夫しか住宅ローン控除を受けられません。

逆にいえば、住宅ローンの名義人が2人いる場合、2名分の住宅ローン控除が受けられます。

共有名義の住宅ローンなら控除を二重に受けられる

共有名義で住宅ローンを組む場合、住宅ローン控除を二重に受けられます。

例えば、夫婦2人で共有名義の住宅ローンを組む場合、最大80万円まで住宅ローン控除を受けることが可能です。

・住宅ローン残高=9,000万円
・負担割合=夫4,500万円:妻4,500万円

この場合「住宅ローン残高×1%」の計算結果は以下のとおりです。
・夫の控除額:4,500万円×1%=45万円
・妻の控除額:4,500万円×1%=45万円

夫婦それぞれの計算結果は上限額40万円を上回るため、住宅ローン控除額は40万円ずつです。

しかし、夫婦で二重に住宅ローン控除を受けられるので、控除額は合計80万円になります。

ちなみに共有名義の住宅ローンとは、以下2種類の組み方を指します。

種類 解説
ペアローン型 夫婦で1つずつ別々にローンを組む
連帯債務型 夫婦で1つのローンを一緒に組む

連帯債務型と似ていますが、連帯保証型の住宅ローンの場合、1名しか住宅ローン控除を受けられないため、住宅ローンの組み方には注意しましょう。

種類 住宅ローン控除
ペアローン型 2人とも受けられる
連帯債務型 2人とも受けられる
連帯保証型 1人しか受けられない

住宅ローン控除を二重に受ける方法は、以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。

住宅ローン控除 共有持分 連帯債務 住宅ローン控除を最大限受ける方法!連帯債務型は共有持分の割合に注意

住宅ローン控除が適用される条件

住宅ローン控除を受けるには、次のような適用条件を満たす必要があります。

  • 住宅ローンの返済期間が10年以上
  • 登記簿上の専有面積が50㎡以上
  • 物件取得後、6ヵ月以内に入居した
  • 控除を受ける年の合計所得が3,000万円以下など

ただし、3種類のケースによって、住宅ローン控除の適用条件は多少異なります。

  1. 新築住宅の購入時
  2. 中古住宅の購入時
  3. リフォーム・増築時

それぞれのケースを順番に見ていきましょう。

新築住宅購入時の適用条件

新築住宅を購入した場合、住宅ローン控除の適用条件は以下のとおりです。

  1. 住宅の引渡し日から6ヵ月以内に居住した
  2. 対象となる住宅に対して10年以上にわたるローンがある
  3. 特別控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下である
  4. 対象となる住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の1/2以上が自身の居住用である
  5. 「居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例」などの適用を受けていない
    (居住した年と前後2年ずつを含めた合計5年間)

上記の条件をすべて満たさない限り、住宅ローン控除が受けられないので、必ず覚えておきましょう。

参照:「認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」(国税庁)

中古住宅購入時の適用条件

中古住宅を購入した場合、以下の基準を1つでも満たしている必要があります。

  1. 住宅性能評価書を取得している
    (耐震等級1以上)
  2. 耐震基準適合証明書を取得している
  3. 既存住宅売買瑕疵保険に加入している
  4. 築年数が一定年数以下である
    (木造の場合は20年以下・耐火建築物の場合は25年以下)

上記に加えて、新築住宅購入時の適用条件も満たす必要があるので注意しましょう。

参照:「中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」(国税庁)

リフォーム・増築時の適用条件

住宅をリフォーム・増改築した場合、以下の工事に1つでも該当している必要があります。

  1. 増改築、建築基準法に規定する大規模な修繕または大規模な模様替えの工事
    (壁・柱・床・はり、屋根または階段のいずれか1つ以上)
  2. マンションの専有部分の床、階段または壁の過半についておこなう一定の修繕・模様替えの工事
  3. 家屋・マンションの専有部分のうちリビング、キッチン、浴室、トイレ、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床、または壁の全部についておこなう修繕・模様替えの工事
  4. 耐震改修工事
    (現行の耐震基準への適合)
  5. 一定のバリアフリー改修工事
  6. 一定の省エネ改修工事

リフォーム・増改築の場合も、新築住宅購入時の適用条件を満たす必要があるため注意しましょう。

参照:「増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」(国税庁)

他の控除・特例と併用できない場合もあるため注意

住宅ローン控除は他の控除・特例と併用できないケースもあるため注意が必要です。

以下の制度は、住宅ローン控除と併用できません。

  • 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
    (軽減税率の特例)
  • 居住用財産の譲渡所得の特別控除
    (3,000万円の特別控除)
  • 特定の居住用財産の買換え・交換の特例
  • 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え・交換の特例

購入した新居に住み始めた年および前後2年を含めた5年間に、上記いずれかの控除・特例を受けた場合、住宅ローン控除が受けられません。

「自分が住宅ローン控除の適用条件を満たしているか?」を確認したい場合、最寄りの税務署や国税庁に問い合わせるとよいでしょう。

参照:「国税に関するご相談について」(国税庁)

どうすれば住宅ローン控除を受けられる?

住宅ローン控除を受ける場合、以下の手順で国税庁に申請をおこないましょう。

  1. 必要書類を準備する
  2. 必要書類を税務署に提出する

必要書類を準備・提出するだけの簡単な手続きで、自分1人でもおこなえるのでご安心ください。

それぞれの手順を順番に解説していきます。

1.必要書類を準備する

まずは、住宅ローン控除の申請に必要な書類を準備しましょう。

住宅ローン控除の申請における、必要書類は以下のとおりです。

必要書類 入手先
確定申告書(A) 税務署
国税庁のサイト
本人確認書類
(マイナンバーカードなど)
市町村役場など
建物・土地の登記事項証明書 法務局
建物・土地の不動産売買契約書の写し 不動産会社
源泉徴収票 勤務先
残高証明書 住宅ローン借入先
耐震基準適合証明書又は住宅性能評価書の写し
(一定の耐震基準を満たす中古住宅の場合)
不動産会社
認定通知書の写し
(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合)
不動産会社

これらの必要書類は、以下の場所で取得できます。

  • 税務署
  • 法務局
  • 不動産会社
  • 住宅ローンの借入先

参照:「確定申告書などの様式・手引き」(国税庁)

2.必要書類を税務署に提出する

続いて、必要書類を税務署に提出しましょう。

住宅ローン控除における必要書類の提出先は、居住地を管轄する税務署です。

なお、2年目以降は自分で申請しなくても、勤務先の年末調整で手続きができます。

年末調整のタイミングで、以下の書類を勤務先に毎年提出しましょう。

  • 残高証明書
  • 住宅借入金等控除証明書

住宅ローン控除の申請期限は翌年1月1日から5年間

初めて住宅ローン控除を受ける場合、確定申告が必要になります。

通常、確定申告の期間は毎年2月16日~3月15日ですが、住宅ローン控除を受ける場合、申告する年の翌年1月1日から5年間いつでも申告できます。

もし確定申告を忘れてしまった場合でも、期限内であれば住宅ローン控除をいつでも申請できるので、忘れずに還付申告をしておきましょう。

適用条件を満たす時は忘れずに住宅ローン控除を利用しよう

適用条件を満たす場合、住宅ローン控除を利用することで毎年の所得税・住民税を安くできます。

「住宅ローン残高×負担割合×1%」が控除されるため、返済の苦しい人ほどお得になる制度です。

まずは適用条件を確認して「住宅ローン控除が受けられるか?」を確認することをおすすめします。

もし不明な点があれば、最寄りの税務署で教えてもらえるので、気軽に相談してみるとよいでしょう。

住宅ローン控除に関するよくある質問

住宅ローン控除とは何ですか?

毎年末の住宅ローン残高に応じて、毎年かかる所得税・住民税が控除される制度です。

住宅ローン控除の適用期間は何年間ですか?

住宅ローン控除の適用期間は原則10年間です。一定条件を満たす場合、適用期間が13年間まで延長されます。

住宅ローン控除額はいくらですか?

「住宅ローン残高×負担割合×1%」または「建物の価格×1/3×2%」のうち、安いほうの金額です。ただし、上限額を上回る場合、原則40万円までしか控除が受けられません。

住宅ローン控除が適用される条件は何ですか?

「住宅ローンの返済期間が10年以上」「登記簿上の専有面積が50㎡以上」「物件取得から6ヵ月以内に入居する」「控除を受ける年の合計所得が3,000万円以下」といった条件があります。

どうすれば住宅ローン控除を受けられますか?

確定申告書などの必要書類を準備して、税務署に提出しましょう。2年目以降は年末調整でも手続き可能です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です