相続にあたって、不動産の共有持分を相続する人は少なくありません。しかし、実際に共有持分をどうやって分けるか、やり方がわからない人も多いでしょう。
共有持分に限らず、相続財産の分け方は「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つに分けられます。
遺言書や遺産分割協議によって、上記のなかから具体的な分け方を選び、合わせて相続割合も決定します。
まずは相続人や相続財産の調査からはじめ、他の相続人と協力しながら公平な分割をしていきましょう。
なお、共有持分はもっているだけでトラブルに巻き込まれやすいので、早めに売却しておくのもおすすめです。共有持分専門の買取業者なら、最短2日で買い取ることもできるので、売却を検討する際は相談してみましょう。
- 相続時の共有持分の分け方は「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つ。
- 具体的な分け方は、遺言書の内容に従うか遺産分割協議で決定する。
- 共有持分はトラブルになりやすいので、売却など共有名義を解消するのがおすすめ。
相続で共有持分を分ける方法
相続で共有持分を分ける方法は、次の4つに分けられます。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 共有分割
なお、共有持分は「不動産の所有権の一部」なので、分割方法は不動産と基本的に同じです。
つまり、相続財産が「被相続人の持っていた共有持分」でも「被相続人の単独名義不動産」でも、分け方は上記の方法で共通していると考えましょう。
現物分割|共有持分を切り分けて分割する方法
現物分割とは、財産をそのままの状態で分割する方法です。共有持分の場合、共有不動産を持分割合に沿って切り分ける方法になります。
不動産全体を物理的に分けることになるので、切り分けやすい土地の場合に使われる方法です。建物の場合、1棟を別々に切り分けるのは困難なため、現物分割はほぼ使われません。
なお、現物分割をするには権利者全員の同意が必要です。相続財産が「被相続人の持っていた共有持分」の場合、相続人以外の共有者とも話し合いが必要になるケースがあります。
代償分割|単独名義にする代わりに金銭などで清算する方法
代償分割とは、誰かが単独名義で共有持分を相続する代わりに、他の相続人へ金銭などを支払う分割方法です。「他の相続人が持つ相続分を買い取る」と考えるとわかりやすいでしょう。
支払うのは金銭とは限らず、他に自分が保有している不動産であったり、有価証券や車といった別の資産でも大丈夫です。相続する共有持分と同じ程度の資産価値があれば、どんな財産で清算しても問題ありません。
具体的にどんな資産で清算するのか、現金の場合は一括払いか分割払いかなど、詳しい内容は話し合いで決定します。
なお、支払える資産がない人や、そもそも共有持分の取得を望んでいない人に、無理やり共有持分を押し付けることはできないので覚えておきましょう。
換価分割|売却して現金で分割する方法
換価分割とは、共有持分を売却し、現金で分割する方法です。1円単位で分割できるので、もっとも公平に共有持分を分けられます。
相続人全員が換価分割に同意したうえで相続登記を済ませ、名義を被相続人から相続人に変えてから売却します。
なお、共有持分のみ売却する場合、一般的な不動産会社では取り扱いを断られることがほとんどです。
共有持分の売却は特殊な不動産取引になるため、専門的な知識が必要になります。共有持分専門の不動産業者に相談し、スムーズかつ高値で売却しましょう。
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換価分割をするときの相続登記は誰名義にすれば良い?
共有持分を売却できるのは名義人のみなので、換価分割をするときは先に相続登記を済ませる必要があります。このとき気になるのが、誰の名義に変更するかです。
結論をいうと、換価分割における相続登記は売却に必要な手順の1つでしかないので、誰の名義にしてもかまいません。代表者1名を決めて、その人の名義に変更しましょう。
なお、相続財産が「被相続人の単独名義不動産」の場合、相続人全員の共有名義にする方法も考えられます。
相続財産 | 換価分割時の相続登記 |
---|---|
「被相続人の持っていた共有持分」の場合 | ・一旦代表者1名の名義にしてから売却 |
「被相続人の単独名義不動産」の場合 | ・一旦代表者1名の名義にしてから売却 もしくは ・相続人全員の共有名義にしてから売却 |
ただし、共有名義で相続すると、売却時に全員の署名・捺印や立ち会いなどが必要となるため、手続きが面倒になります。
手間を省くのであれば、代表者1名の単独名義にして、その人が売却手続きをおこなったほうがよいでしょう。
共有分割|共有名義で相続する方法
共有分割は、相続する不動産を共有名義にして相続する方法です。相続財産が「被相続人の単独名義不動産」の場合に使われます。
共有相続は一見すると公平な分割が可能で、相続登記のときに持分割合を設定するだけなので面倒な手続きも必要ありません。
しかし、共有名義不動産は管理や処分でトラブルになりやすく、例え親族間での共有でも、訴訟に発展するケースがあります。基本的には共有分割を避けて、他の方法で分割するとよいでしょう。
トラブルなく共有持分を分けるコツ
相続でトラブルなく共有持分を分けるコツは、次の2つです。
- 代償分割や換価分割で分ける
- 被相続人が生前のうちに話し合っておく
代償分割や換価分割は共有名義を回避・解消できるので、共有不動産の管理に関するトラブルを防げます。
また、まだ相続発生前であるなら、被相続人となる親などと話し合っておくことも、相続トラブルを防ぐうえで効果的です。
コツ1.代償分割や換価分割で分ける
最初に紹介した4つの分割方法のうち、トラブルを防げるのは代償分割や換価分割です。
現物分割 | 共有名義は避けられるが、現物分割することで資産価値が大幅に下がったり、そもそも現物分割ができないパターンがある |
---|---|
代償分割 | 共有名義を避けられるので、相続する人が自由に共有持分や不動産を管理・処分できる |
換価分割 | 共有持分や不動産を完全に手放すため、管理方法などで揉める心配がない |
共有分割 | 共有状態の不動産は管理・処分に共有者との話し合いが必要であり、意見が対立して揉めやすい |
共有持分を取得すると、不動産全体の使用方法の決定や、定期的な修繕、税金の負担など、共有者とトラブルになる要素は多々あります。
また、不要なので売却したいと思っても、他の共有者全員から同意を得る必要があります。
共有名義は多くのトラブルを抱える可能性があるので、相続のタイミングで回避・解消するのが得策といえるでしょう。
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コツ2.被相続人が生前のうちに話し合っておく
まだ被相続人となる人(親や祖父母など)が生きているなら、相続人全員を交えて事前に話し合っておくのもよいでしょう。
被相続人の希望となれば、相続人から不満が出る可能性も低くなります。共有持分の分け方について、後から揉める事態を防げるでしょう。
また、相続財産に対する認識をすり合わせることができるので、相続発生時に「他の相続人が財産を隠しているのでは?」といった疑いが発生することを防げます。
相続発生時は葬儀の準備などで何かと忙しいですが、事前に話し合っておくことでスムーズな遺産分割を実現できるでしょう。
相続で共有持分を分ける具体的な流れ
ここからは、実際に相続が発生した際、どのような動きをすればよいのか解説します。
具体的な流れは次の通りです。
- 相続財産と相続人の調査
- 遺言書の確認
- 遺産分割協議【遺言書がない場合】
- 相続登記
- 相続税の申告・納付
流れに沿って、それぞれの手順を見ていきましょう。
1.相続財産と相続人の調査
相続発生時、つまり被相続人が死亡したら、まずは相続財産と相続人の調査をおこないましょう。
相続財産は、被相続人の持つすべての資産と債務です。現金・不動産・車といったプラスの財産と、借金・ローンといったマイナスの財産のすべてを調べます。
自宅で通帳や契約書類を探すなど、地道に相続財産を確認していく必要があります。財産がわかれば、すべて一覧できるよう財産目録を作成しましょう。
相続人は、法律で定められた相続権を持つ人です。被相続人の配偶者は必ず相続人となり、その他は「子供 > 直系尊属 > 兄弟姉妹」の順番で相続権を持ちます。
相続人の状況によって、誰がどれくらいの法定相続分を持つかは変わります。具体的には、下記の表の通りです。
相続人 | 相続順位※1 | 法定相続分※2 |
---|---|---|
子供(死亡している場合は孫) | 第1順位 | 配偶者がいる場合:1/2 配偶者がいない場合:1 |
直系尊属(親もしくは祖父母) | 第2順位 | 配偶者がいる場合:1/3 配偶者がいない場合:1 |
兄弟姉妹(死亡している場合はその子供) | 第3順位 | 配偶者がいる場合:1/4 配偶者がいない場合:1 |
配偶者 | 順位は関係なく必ず相続人となる | 配偶者しかいない場合:1 第1順位で相続する場合:1/2 第2順位で相続する場合:2/3 第3順位で相続する場合:3/4 |
※1:上位の相続順位に該当する人がいる場合、下位の順位の人は相続権を持たない。上位の相続人がいない、もしくは相続放棄をしたときに、1つ下の相続順位に相続権が発生する。
※2:該当する順位の人が複数いる場合、その人数で割って計算する(子供が2人いる場合、第1順位の相続分をさらに1/2にするなど)。
例えば、配偶者と子供2人がいる場合、法定相続分は「配偶者1/2」「子供1/2(それぞれ1/4)」となります。
上記の例の場合、子供がどちらも死亡している、もしくは相続放棄をした場合、1つ下の順位である直系尊属に相続権が移ります。法定相続分は「配偶者2/3」「直系尊属1/3」です。
一方、配偶者がいなくても相続順位は変わらないため、子供の相続分が1(それぞれ1/2)となります。
参照:e-Govポータル「民法第887条、889条、890条、900条」
所在不明の相続人がいるときはどうする?
絶縁状態であるなど、相続人の所在がわからないケースもあるでしょう。遺産分割協議をおこなうには相続人全員と連絡を取る必要があるため、捜索しなければいけません。
捜索は、戸籍や住民票を取り寄せ、現在の居住地にあたるまで調査します。同じ相続人であれば、利害関係者ということで所在不明者の戸籍や住民票を取得可能です。
また、弁護士に依頼すれば、代わりに捜索作業をおこなってもらえます。各種書類を確認したり、役所へ行く手間が省けるので、スムーズに捜索したいときは弁護士に任せましょう。
被相続人が離婚していたり隠し子がいた場合はどうなる?
被相続人が離婚しており、前の配偶者との間に子供がいるケースもあります。
この場合、元配偶者は相続権を持ちませんが、前妻・前夫との子供は相続権を持ちます。「前配偶者との子供」という事実に関係なく、通常の子供と同じ法定相続分です。
一方、被相続人に愛人や内縁の妻がおり、その人との間に隠し子がいた場合、認知しているかどうかがポイントとなります。
被相続人が生前認知していた、もしくは遺言で認知した場合、隠し子も通常の子供と同じように相続人になります。しかし、認知されていなかった場合、隠し子に相続権はありません。
2.遺言書の確認
次に、被相続人が残した遺言書を確認します。遺言があるかどうかわからない場合、相続人は遺言書の有無を調べなければいけません。
公正証書遺言書(国の機関で遺言の有効性が証明された遺言書)があれば、公証役場に行って「遺言検索システム」を使うことで、遺言の有無を調べられます。
自分で書いた遺言など、公正証書遺言以外のものは、自力で探すしかありません。自宅や銀行の貸金庫、法務局など、保管場所として可能性のあるところを探しましょう。
なお、公正証書遺言以外の遺言書、もしくは「遺言書情報証明書」が交付されている遺言書以外は、相続人だけで開封せず家庭裁判所で検認をおこなう必要があります。
検認をおこなわずに遺言書を開封してもその内容が無効になるわけではありませんが、5万円以下の過料に処される恐れがあります。
参照:裁判所「遺言書の検認」
遺言書があればその内容通りに遺産分割をするのが原則【例外あり】
遺言書では、誰がどの財産を相続するかや、相続人以外の人に相続(遺贈)させることを指定できます。遺言書が見つかった場合、遺産分割はその内容通りにおこなうのが原則です。
ただし、下記の条件を満たせば、遺言書とは違う内容で遺産分割ができます。
- 遺言書で遺産分割協議が禁止されていない
- 相続人および受遺者※1の全員が合意していること
- 遺言執行者※2が同意していること
※1受遺者:相続人以外で遺言により財産を受けとる人
※2遺言執行者:被相続人に指定され、遺言の内容を実行する人
上記の条件をクリアすれば、遺言書があっても次のステップである遺産分割協議をおこなうことが可能です。
3.遺産分割協議【遺言書がない場合】
遺言書がない場合、遺産分割協議によって分割方法を話し合います。
協議には相続人全員が参加しなければいけませんが、必ず顔を合わせて協議する必要はないので、電話や手紙などでやり取りをおこなうことも可能です。
ただし、遺産分割協議書を作成するときは、相続人全員の署名と押印が必要となります。
遺産分割協議の進め方や、遺産分割協議書の作成方法については、下記の関連記事も参考にしてください。
相続発生時における遺産分割協議の基礎知識と流れを解説!遺産分割は相続人全員で協議しよう! 遺産分割協議書は相続人が作れる!ひな形通りの正しい書き方や作成依頼先も解説協議がまとまらなければ調停・審判へ移行する
遺産分割協議で話がまとまらない場合、遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることが可能です。
遺産分割調停は、裁判官と調停委員を間に挟んでおこなう話し合いで、第三者が間に立つことで冷静な話し合いを促す制度です。
調停はあくまで相続人の合意を形成することが目的なので、誰か1人でも反対者がいれば不成立となります。
遺産分割調停が不成立となったときにおこなうのが遺産分割審判で、裁判官が当事者の主張や証拠を確認した上で、公平な分割方法を決定します。
審判は裁判官の判断でトラブルの解決方法を決定する手続きのため、審判が確定すると、当事者は自分の意思に関係なく、その内容に従わなければいけません。
参照:裁判所「遺産分割調停」
4.相続登記
遺産分割の方法が決まったら、法務局で相続登記をおこない、共有持分の名義を変更します。申請先は共有不動産の住所地を管轄する法務局になります。
管轄の法務局が遠い場合、郵送やオンラインでの申請も可能です。
相続登記申請書の書き方や、必要な添付書類は下記の記事で解説しているので、参考にしてください。
相続登記申請書の記載例をひな形を使って解説!必要書類や登記申請の方法も説明します参照:法務局「不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)
登記申請は「共有持分を取得する人」がおこなう
相続人が複数いると「登記申請は誰がおこなうのか」で悩む人もいるかと思います。結論からいえば、登記申請をおこなうのは「共有持分を取得する人」です。
相続登記に限らず、共有持分の名義変更は当事者がおこないます。通常の売買や贈与であれば、元々の所有者と、新しい所有者が共同で申請しなければいけません。
一方、相続の場合は元々の所有者がすでに死亡しているため、新しい所有者が単独で申請をおこないます。
5.相続税の申告・納付
相続登記が完了したら、相続税の申告と納付が必要になります。申告先は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署です。
相続税の計算方法は少々複雑で、下記の手順で計算しなければいけません。
- 課税価額(課税の対象となる相続財産や贈与財産などの合計)を算出
- 上記1から基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)をマイナス※
- 上記2を法定相続分通りに分割したと仮定し、各相続人の「仮の取得金額」を算出
- 上記3で計算した仮の取得金額から、各相続人の「仮の相続税額」を算出
- 上記4で計算した仮の相続税額を合算
- 上記5を実際の分割割合に応じて各相続人・受遺者に割り振って課税
※基礎控除を差し引いた時点で課税価額が0円以下になる場合、相続税は課税されない
最初に「相続財産を法定相続分通りに相続した」と仮定して各人の「仮の税額」を計算し、それを合算した上で実際の分割内容に応じて割り振る、という計算になります。
なお、上記の手順4で仮の相続税額を計算するとき、適用される税率は下記の通りです。
仮の取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参照:国税庁「相続税の計算」
参照:国税庁「相続税の税率」
相続税の申告期限は相続発生から10ヶ月以内が原則
相続税は、被相続人が死亡したと知った日から10ヶ月以内に申告しなければいけません。期限が過ぎた場合は、加算税や延滞税がかかってしまいます。
しかし、なんらかの理由で10ヶ月以内の申告がむずかしい場合は、次の2つの対処方法があります。
- 申告期限の延長を申請する
- 概算や法定相続分に従った内容で仮申告しておく
申告期限の延長は、被相続人の死亡を知るのが遅くなった場合や、すぐに二次相続が発生した場合など、特殊な事情があるときに認められます。
一方、概算や法定相続分での仮申告は「相続財産の確定に時間がかかる」「遺産分割協議が長引いている」といったケースで使われる方法です。
仮申告の後、正式に遺産分割が終了してから修正申告をおこなえば、延滞税や加算税を課されずに済みます。
ただし、「配偶者の税額軽減の特例」など、相続税軽減の各種特例については、仮申告の段階で適用されません。
これらの特例を受けるためには、仮申告のときに「配偶者の税額軽減の特例」を提出し、3年以内に修正申告をおこなう必要があります。
参照:国税庁「遺産分割が行われていない場合の各種特例の適用手続」
共有持分を相続するときにかかる費用
共有持分を相続する際、相続税以外にも次の費用が必要です。
- 登記費用
- 弁護士・司法書士報酬
- 税理士報酬
- 土地家屋調査士報酬【土地を分筆する場合】
- 固定資産税
上記のうち必ずかかるのは登記費用と固定資産税で、弁護士・司法書士・税理士・土地家屋調査士は、各種手続きを依頼しない場合は不要です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
登記費用
登記費用の内訳は「必要書類の取得」と「登録免許税」に分けられます。
必要書類は戸籍や住民票などで、1枚ずつで見れば300~500円程度です。相続人の人数や取得先の自治体によって変わりますが、合計でも数千円程度に収まる場合が多いでしょう。
登録免許税は、登記申請にかかる手数料のようなもので、相続登記をおこなう共有持分の価額によって決まります。税率は、土地・建物ともに0.4%です。
弁護士・司法書士報酬
相続手続きは、弁護士や司法書士に依頼することが可能です。どちらも法律の専門家ですが、対応可能な業務に違いがあります。
弁護士 | 司法書士 | |
---|---|---|
相続人・相続財産の調査 | ◯ | ◯ |
遺産分割協議の調整 | ◯ | ☓ |
調停・審判の代理人 | ◯ | ☓ ※書類作成のサポートは可能 |
遺産分割協議書の作成 | ◯ | △ ※不動産の登記に関連するものに限る |
相続登記 | △ ※可能だが専門ではなく、司法書士に任せる場合が多い |
◯ |
弁護士のほうが対応できる業務は幅広いのですが、司法書士のほうが報酬を安く抑えられる傾向にあります。分割方法が相続人の話し合いでスムーズに決まり、トラブルの心配がない場合は、司法書士に相談するとよいでしょう。
ただし、具体的な報酬額は案件の内容によってバラバラで、統一された基準はありません。
共有持分の相続登記だけなら6万円程度で収まることもありますが、調停や審判をおこなう場合は100万円~200万円程度の支払いが発生する可能性もあります。
依頼する弁護士・司法書士によって料金体系も変わるため、事前に見積もりを出してもらい、内容を細かくチェックしましょう。
税理士報酬
相続税の申告も、専門家である税理士に任せることができます。税理士に依頼すれば、正確な申告ができるだけでなく、節税のアドバイスをもらうことも可能です。
ただし、税理士報酬についても統一された基準はなく、依頼する税理士によって費用は変わります。
よくある例の1つが、すでに廃止されている「税理士報酬規定」と似た料金体系を設定しているパターンです。下記の表のように、遺産総額に応じて段階的に報酬額を設定しています。
遺産の総額 | 基本報酬10万円に下記の金額を加算 |
---|---|
5,000万円未満 | 20万円 |
7,000万円未満 | 35万円 |
1億円未満 | 60万円 |
3億円未満 | 85万円 |
5億円未満 | 110万円 |
7億円未満 | 135万円 |
10億円未満 | 170万円 |
10億円以上 | 180万円 |
1億円増すごとに | 10万円を加算 |
また、遺産総額の0.5%~1%程度としている税理士も多いようです。
いずれにしろ、個々の案件で必要な費用は変わるため、税理士に依頼する際も事前の見積りはしっかり確認しておきましょう。
土地家屋調査士報酬【土地を分筆する場合】
土地の現物分割をする場合、土地家屋調査士に現地の測量や、分筆登記(1つの土地を2つに切り分ける登記)の手続きを依頼することになります。
土地家屋調査士への報酬は25万円~100万円が相場で、隣地との境界が不明瞭だったり、土地の形状がいびつだったりすると、より高くなってしまう恐れがあります。
共有持分の分筆については下記の関連記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
共有持分にそって土地を分筆する手順|分筆のメリットとデメリットも解説!共有持分を相続するときの注意点
共有持分を相続するときは、分け方以外にも次の注意点を押さえておきましょう。
- 共有持分だけでなく「すべての相続財産」を考慮して分けることが重要
- 相続対象の不動産に住んでいても優先的に相続できるわけではない
- 相続放棄をするなら「相続開始の3ヶ月間以内」がリミット
- 共有持分は相続後もトラブルが起こりやすい
これらの注意点も把握しておくことで、後悔しない相続をおこなえるでしょう。
共有持分だけでなく「すべての相続財産」を考慮して分けることが重要
相続は、共有持分だけでなく現金や車、有価証券など、すべての相続財産をまとめて分割方法を考える必要があります。
すべての相続財産を相続人の数で分割することもあれば、「相続人Aが不動産を相続する代わりに現金は相続人Bがもらう」というように、財産の種別で分ける場合もあります。
共有持分だけで考えるのではなく、相続財産全体が公平に分けられるよう決めなければいけません。
相続対象の不動産に住んでいても優先的に相続できるわけではない
相続人のうち誰かが相続対象の不動産に住んでいても、その人が優先して相続できるわけでないので注意しましょう。
例えば、父親が亡くなり、相続人が同居していた兄と、別居している妹だとします。この場合、同居していたからといって兄が優先して家を相続できるわけでなく、妹にも同様の相続権があります。
これは不動産が父と兄の共有名義であっても同じです。例えば、父の共有持分が1/2だった場合、法定相続分通りに分ければ相続後の家は「兄3/4、妹1/4」の共有名義になります。
兄が家をすべて取得したいなら、他の相続財産を妹に譲ることで分割割合を公平にするか、妹の相続分相当の金銭を支払う必要があります。
相続放棄をするなら「相続開始の3ヶ月間以内」がリミット
「共有持分はいらないから相続放棄したい」という人も多いと思いますが、その場合は期限に注意しましょう。
相続放棄の期限は、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内と定められています。期限を過ぎると、相続を承認したとみなされ、後から変更ができません。
ただし、相続財産の確定が遅れるなどの理由があれば、3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てることで期限の延長をすることができます。
共有持分は相続後もトラブルが起こりやすい
共有持分自体の問題として、トラブルの起こりやすさがあげられます。共有者と意見が対立したり、権利関係が複雑になったりして、訴訟にまで発展するトラブルが起こりやすいのです。
- 売却や建て替えがしたいけど共有者に反対される
- 共有者が修繕費や税金を支払わない
- 共有者に不動産を占有される
- 相続の繰り返しで共有者が増えて把握しきれない
共有持分をもっていると、上記のようなトラブルが起こりやすくなります。
共有名義でさえなければこのようなトラブルも起こり得ないので、共有名義は可能な限り早く解消するのがおすすめです。
トラブルを避けるなら売却がおすすめ
トラブルを避けたい、あるいはすでに起こっているトラブルから解放されたいなら、共有持分を売却することを検討してみましょう。自分の共有持分であれば、他の共有者の同意がなくても売却可能です。
とくに、共有持分専門の買取業者に相談すれば、早ければ2日程度というスピーディーな売却ができます。
共有持分専門の買取業者は、買い取った共有持分を活用・収益化する方法を熟知しているので、積極的な買取をおこなえます。
また、弁護士と連携している場合が多く、トラブルが起こっていても自社で権利関係を調整できるので、共有者と揉めている共有持分でも対応可能です。
高く、スムーズに共有持分を現金化するなら、ぜひ共有持分専門の買取業者に相談してみましょう。
共有持分の相続は売却がもっとも手っ取り早い
共有持分を相続するときは、他の相続財産も考慮しつつ、全体で公平になるよう分けることが大切です。
また、自分の希望ばかり主張せず、お互いに譲り合いながら話し合うことが、スムーズに遺産分割を進めるコツです。
相続人全員が納得できるよう、全員でよく話し合って分け方を決めましょう。
相続時の共有持分についてよくある質問
「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」という4つの分け方があります。遺言書や遺産分割協議によって、具体的な分け方や割合を決定しましょう。
財産をそのまま分ける方法で、共有持分の場合、相続した共有持分の割に応じて不動産を切り分け、別の名義にする方法となります。建物は切り分けるのが困難なため、土地の場合に使われる分割方法です。
1人が相続財産の共有持分をすべて取得する代わりに、他の相続人へ相応の金銭などを支払う分け方です。「他の相続人の相続分を買い取る」と考えるとわかりやすいでしょう。
相続財産である共有持分を売却し、現金で分割する方法です。1円単位で分けられるので、公平な分割がしやすくなります。
相続対象の不動産を、複数の相続人の共有名義にする分け方です。共有者となった各相続人は、共有持分を取得することになります。