相続発生時における遺産分割協議の基礎知識と流れを解説!遺産分割は相続人全員で協議しよう!

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、相続が発生したときに相続人全員で「遺産の分割方法」を決める話し合いです。

遺言書がない場合、遺産相続の方法や割合を相続人同士で協議します。また、遺言書があってもいくつかの条件を満たしていれば、遺産分割協議によって分割方法を決められます。

遺産のなかに不動産があると、分割しにくいため話し合いがこじれてしまい、遺産分割協議が長引く要因になりやすいでしょう。

相続人の共有名義にする方法もありますが、共有名義の不動産は管理や処分で共有者間の話し合いが必須なため、トラブルになりやすいのでおすすめしません。

遺産に不動産がある場合、売却して現金で分割する方法がおすすめです。弁護士と連携した共有持分専門の買取業者に相談して、遺産分割協議のサポートから不動産の売却まで相談してみましょう。

>>【弁護士と連携した買取業者】共有持分の買取査定窓口はこちら

この記事のポイント!
  • 遺産分割協議とは「相続人全員」でおこなう遺産の分け方を決める話し合いのこと。
  • 遺産分割協議に法的な期限は存在しないが、相続開始から10ヶ月以内におこなうとよい。
  • 遺産分割協議をおこなった場合は「遺産分割協議書」を作成するとよい。

目次
  1. 遺産分割協議とは「相続人全員」でおこなう遺産の分け方を決める協議のこと
  2. 遺産分割ですべきは「相続人の確定・相続財産の確定・協議の実行」の3つ
  3. 遺産分割協議をおこなったら「遺産分割協議書」を作成しよう
  4. 協議がまとまらない場合まずは遺産を分割せずそのまま相続税申告をしよう
  5. 遺産分割協議は必ず「相続人全員」の同意を得る必要がある

遺産分割協議とは「相続人全員」でおこなう遺産の分け方を決める協議のこと

相続発生時に遺言書がない場合、遺産相続の方法や割合を相続人同士で協議して決めなけらばなりません。

相続人同士で遺産の相続割合を決める協議のことを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議では、不動産や預貯金といった遺産の分割方法や、相続する不動産の扱いなどを協議します。

また、遺産分割協議は「相続人全員」が参加するように法律で定められています。

もしも、協議に参加しなかった相続人が1人でもいると、その協議結果は無効となるので注意しましょう。

相続権利を持つ人(法定相続人)は法律によって定められている

被相続人の「法定相続人」でないと、遺産分割協議に参加できず、遺産を相続できません。

法定相続人とは、民法によって定められた、遺産を相続する権利を持つ人です。

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず法定相続人になります。

また、配偶者以外は被相続人の「子供」「両親」「兄弟」などが法定相続人になり得ます。

法定相続人(法定相続分)については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

法定相続分とは 法定相続分とは?遺産分割における法定相続分の割合と優先順位をわかりやすく解説します

相続人全員が結果に納得すれば遺産分割協議によって自由に相続割合を決められる

法定相続分に基づいて遺産分割する場合は、法律で定められた割合通りにしか遺産分割できません。

しかし、遺産分割協議をおこなった場合、相続人全員が納得できる協議結果であれば、自由に遺産の相続割合を決められます。

ですので、遺産の内容や各相続人の状況を考慮して協議をしましょう。

例えば、協議の結果、以下のような相続割合にすることも可能です。

被相続人
相続人 妻、子供2人
相続割合 妻が不動産すべて
子供が預貯金を等分

全ての遺産を均等に分割するのではなく、相続人全員にとって有利になるように遺産分割することが重要です。

遺産分割協議は相続人全員がお互いの意見を尊重しあい、全員が納得できる相続割合を決めるとよいでしょう。

相続人全員の同意が得られれば電話やメールで協議してもよい

遺産分割協議において、唯一法律で定められているのは「相続人全員が協議に納得している」ことです。

ですので、遺産分割協議は実際に対面しての協議だけではなく、電話やメールでの協議も認められています。

もしも、相続人が多かったり、遠方に住む相続人がいる場合は、状況に応じて電話やメールなどで遺産分割協議をするとよいでしょう。

公的な遺言書があれば遺産分割協議をおこなう必要はない

遺言書には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があります。

被相続人による遺言書が「公正証書遺言」である場合は、遺産分割協議をおこなう必要がありません。

「公正証書遺言」とは、公証人によって作成される、法的な強制力を持つ公的な遺言書のことです。

ただし、以下の条件を満たしていれば、公正遺言書があっても遺産分割協議によって相続割合を決められます。

  • 被相続人が遺産分割協議による遺産分割を禁じていない
  • 相続人全員が、遺言書の内容を知ったうえで遺産分割協議による分割に同意している
  • 相続人以外の人が受遺者の場合、その受遺者が同意している
  • 遺言執行者がいる場合は、遺言執行者の同意がある

遺言書の内容によらず、遺産分割協議で相続分割したい場合は、他の相続人に相談してみるとよいでしょう。

※公証人・・・中立の立場から、ある事象を法律をもとに明示する公務員のこと。

遺言書が「自筆証書遺言」の場合は遺産分割協議が必要になる可能性が高い

被相続人による遺言書が「自筆証書遺言」である場合は、遺産分割協議が必要になる可能性が高いです。

「自筆証書遺言」とは、被相続人本人が作成した遺言書のことをいいます。

自筆証書遺言である場合は、記入ミスや記載漏れなどが多く、法的な書類として認められないケースがほとんどです。

もしも、被相続人の死亡後に遺言書が発見されたら、遺言書が公的なものであるかどうかの確認を裁判所に依頼しましょう。

不動産を共有する相続はトラブルの原因になりやすいので避けよう

遺産に不動産が含まれる場合、その不動産を相続人複数で共有して相続できます。

このように、共有されている不動産のことを「共有不動産」といいます。

しかし、不動産を共有しての相続はおすすめできません。

なぜなら、不動産の共有は、後々に不動産の扱いを巡ってトラブルになりやすいからです。

ですので、不動産は共有状態にせず、相続人誰か1人の単独名義で相続すべきだといえます。

共有不動産については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

共有不動産とは 共有不動産とは?不動産共有におけるトラブル例と私道の共有持分をわかりやすく解説

遺産分割協議に期限は存在しないが相続開始から10ヶ月以内におこなうとよい

遺産分割協議には、明確な期限はありません。

また、遺産分割協議には強制力もないため、遺産分割協議をしなかったことによる罰則などもありません。

しかし、遺産分割協議をせず遺産を何年も放置してしまうと、将来的にトラブルの原因となってしまいます。

ですので、相続税申告のタイミングにあわせて「相続開始から10カ月以内」に遺産分割協議をおこなうとよいでしょう。

相続税の納付・申告は「被相続人の死亡日」をもとに起算される

相続税の納付・申告は「被相続人の死亡日」から10カ月以内におこなう必要があります。

被相続人の法的な死亡日は、死亡診断書か死体検案書の「死亡したとき」の記載によって決まります。

死亡診断書か死体検案書の「死亡したとき+10カ月」をもとに、相続税の申告期限を把握し、あわせて遺産分割協議をおこなうとよいでしょう。

遺産分割ですべきは「相続人の確定・相続財産の確定・協議の実行」の3つ

遺産分割の方法として、法律で決められている流れや手順はありません。

しかし、遺産分割においてすべきことは、ある程度決まっています。

大きく分けて「相続人の確定・相続財産の確定・協議の実行」の3つです。

次の項目から、それぞれの具体的な内容を解説します。

相続人は遺産分割協議の前に確定させる

まず、遺産分割協議をおこなうには、全ての相続人を確定させる必要があります。

相続人を確定させることは親族からすると一見、意味がないことかもしれません。

しかし、被相続人に隠し子がいて、誰もそれを知らなかったというケースも稀にあります。

もしも、認知されていない相続人が協議後に判明すると、その遺産分割協議は無効になってしまいます。

被相続人の「出生から死亡まで」全ての戸籍謄本を取得する

あとから相続人が増えるといったトラブルを防ぐためにも、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本が必要になります。

戸籍謄本とは、戸籍に登録されている全員の身分事項を証明する書類のことです。

戸籍謄本は被相続人の本籍地のある役所で取得できます。

被相続人が本籍地を転々としている場合は、最終地の記載がある戸籍謄本から元の本籍地まで遡り、その移動前の市区町村役場で戸籍謄本を取得しましょう。

これを繰り返して、出生時までの戸籍謄本を取得する必要があります。

被相続人が所有するすべての遺産を確定させる

相続人を確定させたら、被相続人の遺産もすべて確定させます。

被相続人の所有不動産をすべて把握している場合は、課税明細書を用意しましょう。

課税明細書とは、固定資産税などが課税されている不動産の状況を明示している書類のことです。

課税明細書は毎年のはじめに送付される、固定資産納税通知書に同封されています。

被相続人の所有財産が不明なら「名寄帳」で確認できる

被相続人が多くの不動産を所有している場合や、所有不動産を把握できていない場合は名寄帳を用意しましょう。

名寄帳とは、市区町村が管理する固定資産・不動産を所有者ごとにまとめた書類のことです。

名寄帳は市町村の役所(東京23区の場合は各区の都税事務所)で取得できます。

名寄帳の取得手数料は地域によってさまざまなので、まずは被相続人が所有していた不動産のある市区町村に相談するとよいでしょう。

相続人全員で遺産分割協議をおこなう

書類をもとに「すべての相続人」「すべての遺産」を確定できたら、相続人全員で遺産分割協議をおこないます。

遺産分割協議は必ず、被相続人の戸籍謄本をもとに、確定させた相続人全員でおこないましょう。

遺産分割協議を平等かつ円滑に進めるために、弁護士に依頼をして立ち会ってもらうのがおすすめです。

相続を機に、親族同士で不仲となってしまうケースは少なくありません。まずは一度、弁護士に遺産分割協議についてのアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。

遺産分割協議をおこなったら「遺産分割協議書」を作成しよう

遺産分割協議をおこなっただけでは、第三者に対して効力を発揮できません。

ですので、遺産分割協議の内容を明示するためにも「遺産分割協議書」を作成しましょう。

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果や内容を記載した書類のことです。

なお、遺産分割協議書自体に作成義務はありませんが、不動産の登記時や銀行預貯金の相続時に遺産分割協議書の提出を求められるケースが多いです。

遺産分割協議書の詳しい作成方法はこちらの記事で紹介していますので、ご参照ください。

遺産分割協議書 書き方 遺産分割協議書は相続人が作れる!ひな形通りの正しい書き方や作成依頼先も解説

協議がまとまらない場合まずは遺産を分割せずそのまま相続税申告をしよう

「被相続人の死亡から10カ月」という相続税申告期限は、どのような理由があっても延長できません。

もしも、期限内に相続税申告しないと、延滞税や加算税が課せられてしまい、余計な出費が増えてしまいます。

ですので、10カ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合、まずは法定相続分通りに遺産分割をおこなったと申告しましょう。

その上で、遺産分割協議が成立した後に、その遺産分割協議の結果通りに再申告するとよいでしょう。

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
引用:e-Gov法令検索 民法第909条 

相続人での遺産分割協議が整わない場合「遺産分割調停」をしよう

相続人同士での話し合いがこじれてしまい、遺産分割協議が整わないこともあるかもしれません。

どうしても遺産分割協議が整わない場合「遺産分割調停」を裁判所に申し立てましょう。

遺産分割調停とは、家庭裁判所でおこなわれる、調停員を介した話し合いのことです。

遺産分割調停では、調停員だけでなく裁判官も話し合いのサポートをしてくれるため、法律に基づいた公平な問題解決を目指せます。

もしも、遺産相続の際に相続人同士でトラブルになってしまったら、まずは弁護士に相談して調停に進むべきかのアドバイスを求めるとよいでしょう。

遺産分割協議は必ず「相続人全員」の同意を得る必要がある

遺産相続が発生したときは遺産分割の手順を把握し、遺産分割協議を必ず「相続人全員」でおこなうことが最も重要です。

遺産分割協議は、対面だけでなく電話やメールでの参加も可能です。

遺産分割協議をおこなった場合は、遺産分割協議書もあわせて作成すると、後々の手続きをスムーズに進められます。

もしも、遺産相続において相続人同士のトラブルが起きてしまったら、早めに弁護士へ相談してのちの関係悪化を回避するとよいでしょう。

遺産分割協議のよくある質問

遺産分割協議とはどんな手続きですか?

遺産分割協議とは「相続人全員」でおこなう、遺産の分け方を決める協議のことです。遺産分割協議をおこなうことで、不動産や預貯金といった遺産の分割内容を決定します。

遺産分割協議に期限はありますか?

遺産分割協議そのものに期限はありませんが、相続税の申告は「相続開始から10カ月以内」となっています。申告期限の延長など対策もありますが、可能な限り10ヶ月以内に遺産分割協議と税申告を終わらせましょう。

遺産分割協議の前にすべきことはありますか?

「相続人の確定」と「遺産の確定」をおこないましょう。後から相続人や遺産が追加されると、手続きが滞ります。

遺産分割協議のやり直しはできますか?

原則できません。ただし、相続人全員の同意による場合や、分割内容に問題がある場合はやり直せるケースもあるので、弁護士に相談することをおすすめします。

遺産分割協議でどうしても話がまとまらない場合、どうすればよいですか?

弁護士と相談のうえ、調停や訴訟をおこないましょう。第三者や裁判所による「客観的な観点」から解決することが重要です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です