共有物分割後に瑕疵が見つかったら契約不適合責任はどうなる?事例や対処法を解説

共有物分割後 契約不適合責任

共有名義の不動産において、物理的な切り分けや売買で共有状態を解消することを共有物分割といいます。

そして、共有物の分割後、物件に瑕疵が見つかるなどで不動産を取得した人に損失が発生する場合もあります。

通常の不動産売買では、買主から売主に対して契約不適合責任(契約内容の不備に対する損害賠償など)を請求できるのですが、共有物分割でも同様の請求が可能です。

共有物の分割後に瑕疵が発覚した場合は、まずは弁護士に相談して、他共有者に対してどの程度の損害賠償などを請求できるか聞いてみましょう。

また、事前に契約不適合責任のトラブルを避けたい場合は、ホームインスペクションを受けたり、不動産の買取業者に物件を売却して「換価分割」をおこなうことをおすすめします。

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この記事のポイント!
  • 共有物の分割でも契約不適合責任は成立する。
  • 他共有者に対して持分割合に応じた請求が可能。
  • トラブルを防ぐには分割前に不動産の現状を把握しておくことが大切。

共有物分割と契約不適合責任の法律上の関係性とは?

共有物分割と契約不適合責任の関係性を説明するには、共有物分割の手続きが、法律上どのように取り扱われるかを知る必要があります。

共有名義の不動産を分割する方法には、次の3種類があります。

  • 現物分割・・・不動産を物理的にわける方法
  • 代償分割・・・共有者の1人が他共有者に代償金を支払い、不動産全体を取得する方法
  • 換価分割・・・不動産を売却して売却益をわける方法

上記の分割手続きは、法律上の取り扱いから次のように言い換えられます。

法律における分割手続きの取り扱い
分割手続きの種類 法律上の取り扱い
現物分割 共有者同士の持分の交換※
代償分割 共有者同士の持分の売買
換価分割 共有者全員と第三者の売買

※現物分割でおこなわれる土地の分筆は、土地を切り分けて「2つの共有名義の土地」を作り、その後にそれぞれの土地持分を交換するという流れでおこなう。詳しくは下記の記事を参照。

共有持分 分筆 共有持分にそって土地を分筆する手順|分筆のメリットとデメリットも解説!

契約不適合責任は、売買・交換契約における目的物(引き渡される品物)が契約内容と異なるときの責任をルールにしたものです。

現物分割や代償分割は共有者同士の交換・売買契約と同じとみなされるので、契約不適合責任の対象になるのです。

また、換価分割も「共有者全員と第三者の売買契約」が、契約不適合責任の対象となります。

共有物分割と契約不適合責任_pc

なお、契約不適合責任は買主が不動産会社の場合は適用されません。

そのため、契約不適合責任によるトラブルを避けたい場合は、物件を直接買い取る不動産買取業者に相談するのがおすすめです。

参照:弁護士法人瑞穂中央法律事務所「【共有物分割×瑕疵担保責任|法的性格=有償契約】」

共有物分割後に瑕疵が発見されたときは共有者間の契約不適合責任が成立する

民法では、共有物分割でだれかが損失を負ったとき、共有者全員が持分割合に応じて責任を負うと定めています。

民法第261条
各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。

引用:e-Govポータル「民法第261条」

条文の「売主と同じく担保の責任を負う」という部分が、共有者間での契約不適合責任が成立する法的根拠です。

「共有物の分割後、取得した不動産に瑕疵※が発覚して損失を受けた」という共有者は、他の共有者に対して次のような請求が可能です。

※瑕疵・・・不動産のもつ欠点や欠陥。物理的な劣化・損傷だけでなく、心理的な瑕疵や法的な瑕疵もある。

  • 建物の修理や設備の代替品を求める「追完請求」
  • 代償金の減額を求める「代金減額請求」
  • 損失の穴埋めを金銭で求める「損害賠償請求」
  • 共有物分割を取り消す「契約解除」

上記の請求を受けた各共有者は、それぞれがもっていた持分割合に応じて修理費用や賠償金を負担します。

契約不適合責任で請求できる行為の詳しい内容や、どんな瑕疵が契約不適合責任にあてはまるのかは、下記の関連記事で詳しく解説しています。

契約不適合責任とは 契約不適合責任とは【売主の責任範囲】を定めたもの!具体的な内容や瑕疵担保責任との違いを解説します

判決による共有物分割は契約不適合責任があっても解除できない

契約不適合責任で請求できる行為に「契約解除」があると解説しましたが、共有物分割請求訴訟の判決によって分割がおこなわれた場合、契約解除はできないので注意しましょう。

共有物分割請求訴訟とは、文字どおり訴訟によって共有物の分割を求める手続きです。共有者同士の話し合いで分割に合意できない場合、訴訟がおこなわれます。

訴訟ではまず和解が成立するか検討されますが、共有者同士の意見が平行線で和解が難しい場合、判決によって分割方法が決定されます。

判決は、当事者の合意のもと結ばれる契約とは異なり、裁判官による強制力をもった決定です。契約解除(分割の取り消し)を認めてしまうと、裁判そのものを否定することになります。

そのため、判決による共有物分割では、契約不適合責任を根拠にした分割の取り消しはできないとされています。

共有物分割請求 訴状 共有物分割請求の訴訟や訴状作成は弁護士へ依頼を!共有物分割請求訴訟の基礎知識をわかりやすく解説

損害賠償や代金減額はできる

判決による共有物分割で認められないのはあくまで契約解除(分割の取り消し)だけで、その他の契約不適合責任は請求できます。

例えば、判決によって代償分割をおこなったところ、後から不動産に瑕疵が発見され、資産価値が訴訟時より大きく下がったとします。

この場合、分割の取り消しはできませんが、不動産を取得した共有者が他共有者に対して、代金の減額およびその返還を求めることは可能です。

共有物分割に伴う契約不適合責任の事例と対処法

ここからは、共有物分割において契約不適合責任が発生する事例を詳しく解説していきます。

共有物分割に伴う契約不適合責任の事例としては、次のものがあります。

  • 事例1.土地の分割後に埋設物が見つかったとき
  • 事例2.建物の分割後に雨漏りなどの欠陥が見つかったとき
  • 事例3.「共有物分割後の不動産売却」で契約不適合責任を追及されたとき
  • 事例4.換価分割で買主から契約不適合責任を追及されたとき

これらの事例において、どの部分が契約不適合責任の対象となるのか、具体的にどんな請求をするのかなど解説していきます。

ただし、ここでの解説はあくまで一般的な解釈であり、実際は個々のケースで大きく判断が変わります。詳しくは、不動産問題に詳しい弁護士に相談しましょう。

事例1.土地の分割後に埋設物が見つかったとき

土地には、かつてその土地にあった建物の地下室や建築基礎、浄化槽や瓦・がれきといった残置物が埋まっている場合があります。

これらの埋設物は土地がもつ物理的な瑕疵とみなされ、事前に埋設物の有無について当事者間で確認していなければ、契約不適合責任の対象です。

共有物分割においては、代償分割で土地全体を自分の単独名義にした後、じつは土地に埋設物があったというパターンがあります。

また、現物分割で土地を切り分けた結果、自分が取得した部分に埋設物が見つかったケースもあります。

【対処法】持分割合に応じた撤去費用を他共有者に請求する

共有物分割で取得した土地に埋設物が見つかった場合、撤去費用を他共有者に請求しましょう。

ただし、請求できるのは持分割合に応じた金額までです。もともとの土地が2人で1/2ずつの共有だったとしたら、他の共有者に請求できるのは撤去費用の半額までです。

埋設物の撤去費用は、埋まっているものの種類や大きさによって金額が変わります。

目安額は次のとおりですが、コンクリート作りの地下室などは数百万円になるケースもあります。費用を抑えたければ、複数の解体業者に見積りを依頼して金額を比較しましょう。

  • 浄化槽・・・約10~20万円
  • 過去の建築廃材・・・約10~30万円
  • 過去の住宅の基礎・・・約20〜40万円
  • 古い井戸・・・約10~20万円

出典:株式会社リプロ「住宅解体における地中障害物の種類と撤去費用」

事例2.建物の分割後に雨漏りなどの欠陥が見つかったとき

建物は、老朽化や災害時の損傷によって瑕疵も発生しやすいといえます。

建物の瑕疵の例には、次のようなものがあげられます。

  • 雨漏りや水道管の水漏れ
  • 壁や柱、基礎部分のひび
  • シロアリ被害

代償分割で建物全体を自分の単独名義にした後、これらの瑕疵が発見されるというケースがあります。

【対処法】持分割合に応じた修理費用を他共有者に請求する

共有物分割後に建物の瑕疵が見つかった場合は、土地の埋設物のときと同様、持分割合に応じた修理費用を他共有者に請求しましょう。

瑕疵の種類によって必要な工事も異なるため、修理費用もケースごとに変わります。雨漏りの場合だけで見ても、費用相場は5万円から200万円と幅があります。

出典:ホームプロ「雨漏りの修理・リフォームにかかる費用相場と日数、業者の選び方を紹介」

建物の瑕疵の場合も、修理をおこなう前に複数の修理業者から見積りを取り、価格を比較するとよいでしょう。

また、建物を貸し出す予定や、第三者に売却する予定だった場合、瑕疵によって得られなかった利益を請求することも可能です。

例えば、代償分割で建物を取得後、月15万円で貸し出す予定だったとします。
しかし、代償分割の後に瑕疵が発覚し、その修理のために貸し出しの開始が3ヶ月遅れました。
この場合、瑕疵がなければ得られるはずだった「15万円×3ヶ月=45万円」を損失したということになり、他共有者に持分割合に応じた損害賠償を請求できます。

事例3.「共有物分割後の不動産売却」で契約不適合責任を追及されたとき

共有物分割で自分が不動産を取得した後、瑕疵に気づかないまま第三者に転売するケースもあります。

転売後の買主が瑕疵に気づけば、当然ながら自分が契約不適合責任を追及されることになります。

しかし、もともとは共有名義の不動産であることから「自分1人で瑕疵の責任を取るのは不公平ではないか」と思う人もいるでしょう。

この場合、転売後の買主から請求された損害賠償や修理費用は、他共有者にも請求できます。

【対処法】他共有者に対して損害賠償を請求する

転売後の契約不適合責任で自分が支払った金銭は、他共有者に損害賠償として請求できます。

例えば、転売後の買主から契約不適合責任を問われ、損害賠償や修理費用で300万円を支払ったとします。
他共有者に対して、自分が支払った300万円のうち、持分割合に応じた金額を損害賠償として請求可能です。

転売後に自分が支払った損害賠償は、そもそも共有物分割の段階で瑕疵がなければ(契約不適合がなければ)発生しなかった損失なので、他共有者に請求が可能とされるのです。

事例4.換価分割で買主から契約不適合責任を追及されたとき

最後に、換価分割をおこなったときに買主から契約不適合責任を追及されたケースを解説します。

換価分割は「共有者全員と第三者の売買契約」となるため、契約不適合責任の追及も共有者全員が受けることになります。

換価分割後に瑕疵が見つかり、買主から追完請求や損害賠償請求などがあれば、共有者全員が連帯して負担するのが原則です。

【対処法】共有者全員が持分割合に応じて修理や損害賠償を負担する

換価分割で契約不適合責任を追及された場合、建物の修理や設備の代替品を求められたり、損害賠償を請求されます。

これらにかかる費用は、各共有者が持分割合に応じて支払います。

また、売却代金の減額を求められた場合は、減額分も各共有者で振り分けて負担しなければなりません。すでに支払われている分は、持分割合に応じて買主へ返還しましょう。

契約解除を求められた場合は、支払われていた売却代金は買主へ全額返還します。

共有物分割後の契約不適合責任を防ぐ方法

契約不適合責任を防ぐには、不動産の現状にあわせた適切な契約条件を結ぶことが重要です。

当事者同士が不動産の現状をしっかりと把握し、同意の上で契約を結べば、契約不適合責任に関するトラブルも発生しません。

具体的には、次の2つの方法を取れば契約不適合責任を防げます。

  • 方法1.ホームインスペクションで不動産の瑕疵を調べておく
  • 方法2.不動産の買取業者に買い取ってもらう

方法1.ホームインスペクションで不動産の瑕疵を調べておく

ホームインスペクションは「住宅診断」ともいい、不動産の状態を調べる検査です。

劣化や損傷が有無だけでなく、将来的に必要な修理の種類やタイミング、耐震性に問題がないかなどを調査できます。

ホームインスペクションの費用は建物の構造や検査項目で異なりますが、一般的には5万~12万程度で、各検査業者ごとにオプションをつけるなどの料金体系を取っています。

共有物分割の前に、共有者全員で費用を負担しホームインスペクションをおこなえば、契約不適合責任をめぐってトラブルになるリスクを下げられます。

参照:さくら事務所ホームインスペクション「ホームインスペクション費用の相場はいくらくらい?」

方法2.不動産の買取業者に買い取ってもらう

換価分割に伴って不動産を売却するとき、不動産買取業者に依頼することで契約不適合責任を回避できます。

不動産会社には仲介業者と買取業者があり、仲介業者は不動産の買主を探す業者です。売買契約自体は不動産の専門知識がない人と結ぶため、後からトラブルを起こされるケースも少なくありません。

しかし、買取業者は不動産のプロが物件を直接買い取るため、自社で不動産の状態を正確に調査できます。

不動産の買取業者は物件の現状を正確に把握した上で買い取るため、後から契約不適合責任を追及される心配がないのです。

共有持分専門の買取業者なら自分の持分だけ売却することもできる

不動産買取業者のなかには、共有持分を専門に買い取る業者もあります。

自分の共有持分だけなら、他共有者の同意がなくても売却が可能です。いつでも自由に、自分の共有持分を売却できます。

共有物の分割をめぐって、他共有者とトラブルになるケースは少なくありません。分割方法で揉めていたり、代償金の金額で合意できないといった悩みをもつ人も多いでしょう。

共有持分専門の買取業者に自分の持分だけ売却すれば、最短2日程度で現金化することもできます。

「すぐに共有持分を現金化したい」「共有者と揉めていて分割の話が進まない」といった場合は、専門の買取業者に自分の持分を売却することも検討してみましょう。

共有物分割は不動産の現状を共有者全員で把握しておくことが大切

共有物の分割後に契約不適合責任でトラブルにならないためには、不動産の現状を把握した上で、全員が納得できる分割をおこなうことが大切です。

事前にどんな瑕疵があるのかわかった上で分割したのであれば、後からトラブルになることもありません。

分割後、自分が不動産を取得したときに瑕疵が見つかった場合は、他共有者に対して持分割合に応じた追完請求や損害賠償請求をしましょう。

実際に契約不適合責任を請求するときは、不動産問題に詳しい弁護士へ相談するとよいでしょう。

共有物分割と契約不適合責任についてよくある質問

共有物分割とはなんですか?

共有物分割とは、共有名義の不動産において、物理的な切り分けや売買で共有状態を解消する手続きのことです。

契約不適合責任とはなんですか?

契約不適合責任とは、売買契約などで契約内容と目的物の品質や数量が適合しない場合、買主から売主へ請求できる責任です。

共有物分割でも契約不適合責任は成立しますか?

はい、共有物分割でも、契約不適合責任は成立します。法律上、共有物分割は共有者同士で持分を売買・交換したことになるので、通常の不動産売買と同じように契約不適合責任の対象となります。

契約不適合責任が成立するとなにができますか?

建物の修理や設備の代替品を求める「追完請求」や、代償金の減額を求める「代金減額請求」、損失の穴埋めを金銭で求める「損害賠償請求」や共有物分割を取り消す「契約解除」が可能です。

契約不適合責任のトラブルを防ぐ方法はありますか?

事前に不動産の状態をしっかりと把握してから、共有物分割をおこないましょう。ホームインスペクションを受ければ、不動産の瑕疵を調べることが可能です。

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