「買戻特約」とは、不動産の売主が、将来的に買い戻すことを決めておく特約のことです。共有不動産における各共有者の所有権である「共有持分」の売買でも、買戻特約を付けることは可能です。
しかし、実際に共有持分の売買で買戻特約が付けられることはあまり多くありません。共有持分の売買はただでさえ需要が少ない上に、買戻特約を付けてまで買い取ろうとする人は少ないからです。
基本的に、共有持分は買戻特約付きで売却するより、完全に処分してしまったほうが売りやすくなります。
共有持分を売却したい場合、専門買取業者に高額で買取してもらうとよいでしょう。
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- 共有持分は買戻特約付きで売買できる。
- 買戻特約の期限は10年以内。
- 名義変更の際に買戻特約を登記する。
- 共有物の分割や競売によって買戻せる対象物が変わる場合がある。
共有持分は買戻特約付きで売買できるの?
買戻特約とは、売主が将来的に対象不動産を買戻す(売買契約を解除する)ことを条件にした不動産売買の方法です。
民法第597条
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(中略)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
特約で定めた期間内であれば、売主は売却時の代金と契約にかかった費用を支払うことで、不動産を買戻せます。
それでは、共有持分(共有不動産における各共有者の所有権)を売買したいとき、買戻特約を付けることはできるのでしょうか?
共有持分は買戻特約付きで売買可能
共有持分の売買においても、売主と買主が合意していれば買戻特約は付けられます。
登記しておけば、他の共有者など、売買の当事者以外にも買戻特約を主張可能です。
反対に、登記していなければ「買戻す約束だった」と主張できません。のちほど解説する共有物の分割や競売になったときに、トラブルとなる恐れがあります。
共有持分を買戻特約付きで売買するメリットとデメリット
共有持分を買戻特約付きで売買すると、買主と売主の双方にメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
買主 | 「共有持分による収益」を得つつ将来的には現金へ戻せる | 物価の変動によって損をする恐れがある |
売主 | 将来的に不動産を買戻せる | 共有持分を売りにくくなる |
上記のメリットとデメリットについて、より詳しく解説していきます。
【買主のメリット】「共有持分による収益」を得つつ将来的には現金へ戻せる
買主としては、収益物件の共有持分を買戻特約付きで購入すれば、将来的に現金に戻しやすくなるというメリットがあります。
不動産投資において重要なポイントの1つが、出口戦略です。収益物件を購入するときは、対象の物件が将来的に売れるのか、売れるとしたらいくらになるかを考慮する必要があります。
買戻特約付きなら、購入したときの費用がいずれ返ってくるので、初期投資を回収できます。買戻されるまでに家賃収入があれば、トータルで利益を得られるのです。
ただし、共有持分の家賃収入は「不動産全体の家賃収入×持分割合」で計算して分配されるため、単独名義より得られる利益は少ない点には注意が必要です。
しかし、共有持分の取得にかかった費用がほぼ確実に返ってくることを考えると、リスクの少ない不動産投資といえるでしょう。
【買主のデメリット】物価の変動によって損をする恐れがある
買主のデメリットは、物価の変動による損失があげられます。不動産の資産価値が上がっても下がっても、買主にリスクが発生します。
不動産の資産価値が上昇しても、買戻し価格は「売買時の代金」のままです。500万円で購入した共有持分が1,000万円まで値上がりしても、500万円で買戻されてしまいます。
不動産の資産価値が下落した場合、売主が買戻しをおこなわない恐れがあります。買戻特約は「売主が買戻しをおこなう権利」を設定するものなので、買主側から買戻しを強制できません。
【売主のメリット】将来的に不動産を買戻せる
売主のメリットは、文字どおり不動産を買戻せる点があげられます。通常の売却であれば、一度売った不動産を再び購入するのは困難です。
買戻特約付きで売買した場合、一時的に共有持分を手放すことにはなりますが、買戻す権利があるので、実質的には不動産の処分を避けつつまとまった資金を取得できます。
そのため、売却代金を元手に資産を増やし、資金に余裕ができてから買戻すという運用が可能です。
【売主のデメリット】共有持分を売りにくくなる
買戻特約は、買主が限定されてしまうことがデメリットといえます。
不動産市場において、将来的に買戻されてしまう物件をあえて購入する人は少数派です。不動産を購入するときは、完全に自分の所有物にするのが基本的な考え方といえるでしょう。
需要が少なくなれば当然売りにくくなり、売却価格も下がってしまう恐れがあります。
共有持分を買戻特約付きで売買するときの注意点
共有持分を買戻特約付きで売買する場合、次の2点には注意しましょう。
- 買戻しのできる期間は10年以内にする
- 名義変更の際に買戻特約を登記する
この2点を守らなければ、買戻特約が無効になってしまいます。
買戻しのできる期間は10年以内にする
買戻特約で設定できる期間は、法律で10年以内までとされています。
また、最初に期間を定めなかった場合、5年以内に買戻されなければ特約は無効となります。
期限が過ぎてしまえば、特約の延長もできないので注意しましょう。
ただし、これらはあくまで「特約の有効期限」です。特約が無効になっても、当事者間の合意による買戻しを妨げるわけではありません。
民法第580条
買戻しの期間は、10年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、10年とする。
2 買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない。
3 買戻しについて期間を定めなかったときは、5年以内に買戻しをしなければならない。
名義変更の際に買戻特約を登記する
買戻特約を付けて共有持分を売買するときは、名義変更の登記をするとき、買戻特約についても申請しなければいけません。
買戻特約が登記されることで、第三者にも特約の存在を主張できるようになります。
例えば、買主が共有持分を転売した場合でも、買戻特約が登記されていれば買戻せます。登記されることによって、買戻特約が第三取得者(転売された共有持分の購入者)にも引き継がれるのです。
不動産の登記申請とは?登記申請が必要なタイミングや状況別の登記種類を解説します共有持分の買戻特約で必ず知っておくべき法律上のルール
共有持分とは、共有物(共有不動産)において、各共有者の所有権がどれくらいあるのかを指すものです。
そして、共有不動産は「共有物分割請求」により、権利関係の変化が起こりえます。権利関係の変化は、買戻しの対象にも影響をおよぼします。
少しむずかしい話ですが、共有持分を買戻特約付きで売買するときは必ず押さえておくべきルールです。次の項目から、わかりやすく解説していきます。
共有物の分割や競売により「権利関係が変化する可能性」がある
共有物(共有不動産)は、共有者のだれかが希望すれば分割しなければいけません。共有者のだれかによる分割請求を「共有物分割請求」といいます。
共有物分割請求では、以下のように共有物を分割します。
現物分割 | 共有物を持分割合にそって切り分け、各共有者の単独名義にする |
---|---|
代償分割 | 共有者間で共有持分と金銭を交換する(共有者間での持分売買) | 換価分割 | 共有物を売却して、売却益を持分割合に応じて分配する(現金による分割) |
また、共有者間の話し合いで分割方法に和解できなければ、訴訟を提起することになります。
裁判でも和解ができない場合、最終的には裁判官の判決によって共有物を競売にかけて、強制的に換価分割がおこなわれます。
買戻特約があっても、共有物分割請求は妨げられません。分割や競売によって、買戻しをおこなう前に共有持分が現金化されたり、単独名義になる可能性があるのです。
共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説分割や競売が「どのようにおこなわれたか」で買戻しできる対象物が変わる
共有物分割請求によって権利関係が変化した場合、買戻特約については次のように規定されています。
民法第584条
不動産の共有者の一人が買戻しの特約を付してその持分を売却した後に、その不動産の分割又は競売があったときは、売主は、買主が受け、若しくは受けるべき部分又は代金について、買戻しをすることができる。ただし、売主に通知をしないでした分割及び競売は、売主に対抗することができない。
つまり、分割や競売がおこなわれた場合、買戻せるのは「分割や競売の結果、買主が取得した不動産もしくは代金」ということです。
その後、分割や競売によって買主が600万円の代金を取得すれば、500万円で600万円を買戻すことになり、売主は差し引き100万円の利益を得られます。
反対に、分割や競売の代金が400万円であれば、売主は差し引き100万円の損失となります。売主の買戻しは強制ではないので、損失になるケースで現金の買戻しはほぼおこなわれません。
また、条文にあるとおり、売主に知らせずおこなわれた分割や競売は、そもそも無効になります。
競売によって買主が不動産を落札したときは「不動産全体の買戻し」も可能
共有物分割請求による競売では、共有者も入札が可能です。競売がおこなわれ、買主が不動産を落札する結果もありえます。
買主が落札した場合、共有物分割請求をおこなったのが買主であるなら、売主は「不動産全体の買戻し」も可能とされています。
第585条
前条の場合において、買主が不動産の競売における買受人となったときは、売主は、競売の代金及び第583条に規定する費用を支払って買戻しをすることができる。この場合において、売主は、その不動産の全部の所有権を取得する。
2 他の共有者が分割を請求したことにより買主が競売における買受人となったときは、売主は、その持分のみについて買戻しをすることはできない。
「共有持分の買戻し」に必要な支払いに加えて、競売による不動産の落札代金を支払えば、売主は共有物分割請求をおこなわずに不動産全体を取得できます。
ただし、条文にあるとおり、競売が「買主以外の共有物分割請求」によるものだと、買戻せる対象は共有持分のみです。
共有持分を高く売りたいなら買戻特約は付けないほうがよい
共有持分の買戻特約は売主にとってメリットもありますが、もしも「高額で共有持分を売却したい」と考えているのであれば、買戻特約を付けないほうがよいでしょう。
「売主のデメリット」の項目でも触れましたが、不動産を購入する目的のほとんどは「不動産の所有」です。将来的に買戻されるのがわかったうえで、わざわざ購入する人は少ないでしょう。
買戻特約が実際に使われるのは、不動産業者が転売防止の目的でマンションに設定する場合や、公共団体などが分譲した土地の用途を制限する(住居を建てなければ土地を買戻すなど)場合です。
「共有持分を売却して資金を用意したい」という目的であれば、将来的な買戻しは考えないほうが高く売れますし、売却期間も短くなります。
共有持分自体が売りにくく相場も低い傾向にある
そもそも、共有持分の価格相場は低くなりがちです。共有持分だけ売り出した場合、本来の価値から半額以下まで安くなることも珍しくありません。
共有持分をもっていると、不動産の管理について共有者全員と話し合わなければいけません。話し合いには手間がかかりますし、意見が対立して必要な修繕ができないなどのケースもあります。
共有者のだれかが不動産を占有したり、家賃収入を独占して裁判沙汰になることもあります。
共有持分はトラブルが非常に起こりやすいため、需要が低くなってしまうのです。買戻特約を付ければますます売りにくくなるので、買主が見つからない可能性は高いといえるでしょう。
共有持分の売却相場はいくらになる?売却価格を決める要因や高く売る方法も解説します!高額かつすぐに現金化したいなら専門の買取業者がおすすめ
普通に売り出しても需要の低い共有持分ですが、売却するなら可能な限り高く売りたいのが正直なところでしょう。
ただし、一般的な仲介業者に相談しても、取り扱い自体を断られるケースが少なくありません。
しかし、共有持分専門の買取業者であれば、積極的に共有持分を買取ってもらえます。
専門買取業者なら、自社で直接買取をおこない、その後の活用・収益化までの方法を確立しているので、高額かつスピード買取が可能です。最短48時間で現金化できるケースもあります。
無料査定も依頼できるので、まずは売却に向けた具体的なアドバイスを聞いてみるとよいでしょう。
共有持分の買戻特約付売買は「共有持分を担保にお金を借りる」のと同じ
共有持分は買戻特約付きで売買できますが、実際におこなわれるケースは少ないといえるでしょう。
そもそも、買戻特約がある場合の売買は、実態としては「共有持分を担保にしてお金を借りる」のと同じです。
共有持分を担保にするローンもあるので、そちらのほうが買主を探すより簡単に資金を準備できるでしょう。
しかし、そもそも共有持分はもっているだけでトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
専門買取業者に高額で売却し、共有状態から完全に抜け出したほうがよいといえるでしょう。
共有持分の買戻特約についてよくある質問
「売主が将来的に不動産を買戻す権利をもつこと」を条件とした売買方法です。買戻特約を設定していれば、売主は対象の不動産を「売却したときの代金と、売買契約にかかった費用」を支払って買戻せます。
はい、付けられます。買主と売主の双方が合意していれば、期限を決めて買戻特約を設定できます。
買主のメリットは、将来的に共有持分の売却(買戻しによる現金化)が高確率で可能な点です。売主側のメリットは、実質的に不動産の処分をせずに資金を取得できる点です。
買主のデメリットは、物価の上昇によって本来の価値より安い値段で買戻されるリスクや、物価の下落により売主が買戻しをおこなわないリスクです。売主のデメリットは、買戻特約を付けた共有持分は売りにくくなるという点です。
売主が買戻す前に、分割や競売によって権利関係が変わる可能性があります。権利関係が変わることで、買戻せる対象物も変わるので注意しましょう。