共有持分を相続するときは、法務局で登記申請をおこなう必要があります。
登記を済ませなければ、権利の移動が公に認められません。未登記のまま放置すると、将来トラブルが発生したとき、相続による権利の移動を証明できなくなります。
登記には法律の知識が必要であり、財産の内容や遺産分割方法によって必要な手続きが異なります。共有持分の場合は「持分全部移転登記」が必要です。
ミスがあると修正等で費用や手間がかかるため、弁護士などの専門家と相談しつつ確実な登記をおこないましょう。
また、相続と同時に共有持分を売却するのであれば「弁護士と連携した共有持分買取業者」に相談するのがおすすめです。相続手続きから持分買取までまとめてサポートしてもらえるので、スムーズに共有持分を現金化できます。
- 共有持分を相続したら持分全部移転登記をする。
- 遺産分割方法によって登記の仕方が異なるのでそれぞれ押さえよう。
- 相続後のトラブルは遺産分割協議であらかじめ回避しよう。
共有持分相続時に必要な持分全部移転登記の手順と費用
登記にもいくつか種類がありますが、共有持分を相続した場合は「持分全部移転登記」をする必要があります。
登記をするとき、単独所有の不動産である場合は「所有者移転登記」のみで問題ありませんが、共有持分の場合は加えて「持分移転登記」をします。
さらに共有不動産の相続が発生した場合、持分すべてが移転するので「持分全部移転登記」が必要です。
相続後に自分で登記するときの手順
登記は複雑な手続きや作業も多いため、司法書士へ依頼するケースが多くありますが自分でおこなうこともできます。
共有持分全部移転登記は、所有権移転登記と記入方法が違う部分があるので注意しましょう。
また自分で登記するときは、書類の有効期限にも注意が必要です。
1.必要書類を集める
まずは必要書類を集めます。
共有持分全部移転登記に必要な書類は以下のとおりです。
- 登記申請書
- 登記事項証明書
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
場合によっては必要となる書類
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書を提出する場合)
- 相続人全員の戸籍謄本
のちの項目で詳しく説明しますが、遺産分割方法によって必要となる書類も変わってくるので提出前にしっかりと確認しましょう。
2.遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議によって遺産分割をした場合、遺産分割協議書の作成が必須です。
共有持分を相続した場合、持分割合も忘れずに記載しましょう。
また、遺産分割協議書は相続人全員が合意した証明になるため、相続人全員の押印が必要です。
押印は実印でなければならず、印鑑証明書も一緒に提出します。
遺産分割協議書は相続人が作れる!ひな形通りの正しい書き方や作成依頼先も解説3.相続登記申請書類を作成する
共有持分を相続した際、登記の目的は「〇〇持分全部移転」と記載します。
〇〇に入るのは被相続人の名前です。
そして持分を相続する人の名前の前に「持分◯/◯」などと持分割合を記載します。
また、土地と建物で持分が違う場合などは、相続人の名前の前に「持分後記記載の通り」などと記載し、不動産表示欄で持分を記載すれば問題ありません。
4.法務局へ書類を提出する
必要な書類がすべて揃い、記入が完了したら相続した不動産を管轄する法務局へ提出します。
法務局の窓口は平日しか受け付けていないため、遠方に住んでいたり平日の申請が難しい場合は郵送での申請も可能です。
また、オンラインでの申請であれば、平日の夜9時まで受け付けているので忙しい場合は活用するのもよいでしょう。
オンライン申請の詳細は法務省ウェブサイトを参考にしてください。
参照:法務省ウェブサイト
登記にかかる費用
登記にかかる費用は、大きくわけて以下の3つです。
- 登録免許税
- 必要書類の取得費
- 司法書士への報酬
登録免許税は、通常の登記と計算方法が異なるのでとくに注意しましょう。
それぞれ説明していきます。
登録免許税
一般的に、登録免許税を求める計算式は以下のとおりです。
- 課税標準額×4/1000(税率)
課税標準額は基本的に固定資産税評価額と一致し、毎年届く固定資産税の納税通知書で確認できます。
ただし、持分全部移転登記をする場合の登録免許税は持分割合に準じます。
例えば、相続する持分が1/3の場合は以下のように求めるので注意しましょう。
- 課税評価額×1/3(持分)×4/1000(税率)
必要書類の取得費
登記のために必要な書類の発行手数料は、基本的に以下のとおりです。
- 住民票・・・300円
- 固定資産税評価証明書・・・300円
- 印鑑登録証明書・・・450円
自治体によって違う場合もあるので、詳細は管轄の自治体に問い合わせをしてみてください。
司法書士への報酬
登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬が発生します。
金額は依頼する事務所によって異なりますが、相場は30,000円から50,000円だといわれています。
煩雑な手続きが多いため司法書士に依頼するのが一般的ですが、費用を抑えたい場合などは前の項目を参考に、自分で手続きをすることも可能です。
手続きにおいて気になることがある場合は、法務局に問い合わせると詳しい話を担当者から聞けることもあります。
遺産分割方法によって登記の仕方が異なる
どのような方法で遺産分割をしたかで登記の仕方や必要な書類が異なります。
遺産分割の方法は大きくわけて以下の3つです。
- 遺言書に基づく方法
- 遺産分割協議で決める方法
- 法定相続分に基づく方法
遺産分割協議は相続人が揃う貴重な機会です。
全員の同意や印鑑が必要な事項もあるのでしっかりと押さえ、後で訂正のないようにするとよいでしょう。
【遺言書に基づいて遺産分割する場合】遺言書の提出が必要
遺言書の内容に基づいて遺産分割する場合、登記の申請には遺言書の提出が必要です。
逆に、遺産分割協議書や相続をする人以外の戸籍謄本等は不要となります。
公正証書遺言(公証役場で公証人によって作成される遺言書)であればそのまま提出が可能ですが、自筆証書遺言(自分で作成した遺言書)の場合は提出の前に家庭裁判所で検認の手続きが必要なので注意しましょう。
【遺産分割協議で遺産分割する場合】相続人全員の印鑑証明が必要
遺産分割協議をおこない、法定相続分と異なる割合で遺産を分割することになった場合、相続人全員が押印した遺産分割協議書を提出します。
それにともなって、相続人全員の印鑑証明書が必要です。
また、住民票は遺産を相続する人のみの提出で問題ありませんが、戸籍謄本は相続人全員分必要なので注意しましょう。
【法定相続分に基づいて遺産分割する場合】相続人のだれかが単独で登記可能
法定相続分に基づいて遺産分割する場合、相続人のだれかが単独で登記できます。
ただし、単独で登記申請をした場合、登記識別情報通知が申請した人にしか発行されません。
登記識別情報とは、登記所が無作為に選んだ12桁の英数字からなるもので、いわゆる権利証と同じ働きをします。
登記識別情報通知は再発行ができず、単独で登記すると他共有者は登記識別情報通知を手に入れることができないので注意が必要です。
また、印鑑証明書などは必要なく、相続人全員の戸籍謄本と住民票を提出します。
遺産分割協議で相続後のトラブルを回避する3つのポイント
相続後のトラブルを回避するには、遺産分割協議がとても重要です。
遺産分割協議では話し合うことも多く、不動産は「とりあえず共有にする」となることも少なくありません。
共有にするのなら持分割合や不動産を利用するときのルールなどもしっかりと決め、相続人全員が内容を把握した上で押印しましょう。
また、遺産分割協議の段階で共有関係を解消するのも将来のトラブル回避に繋がります。
遺産協議書を正確な内容で作成する
遺産協議書は、遺産協議の内容を証明する重要な書類です。
また、法定相続分に準じて遺産分割をしない場合は、登記の際に法務局に提出が必要な書類でもあります。
細かいことでも、相続人全員の合意が取れた証明として書面に残しましょう。
とくに、不動産を共有にする場合は持分割合の記載がとても重要です。
相続登記は期限を決めて必ずする
相続後の登記には、いつまでにしなければならないという期限がありません。
実際に登記しないままの不動産も多くあります。しかし、登記しない間に相続を繰り返すことで権利関係が複雑になってしまったり、不動産の売却が自由にできなくなってしまう可能性があります。
遺産分割協議の際に、誰がいつまでに登記の申請をする、としっかり決めておきましょう。
権利の細分化を防ぐには誰か一人が不動産を相続する
不動産を誰か一人が相続して単独名義にすることで、将来的に権利が細分化するのを防ぐことができます。
単独名義の不動産であれば、売却や活用も自由にできるというメリットもあります。
遺産分割協議で相続人が全員合意するようであれば、遺産分割協議の段階で不動産を単独名義とし、共有関係を解消するのもよいでしょう。
遺産分割方法による登記方法の違いを把握しておこう
共有持分を相続したら「持分全部移転登記」をおこないます。基本的には「所有権移転登記」と登記の方法や必要書類は同じですが、一部記入方法が違うので迷ったらこの記事を参考にしてみてください。
また、登記に必要な書類が遺産分割方法によって変わるので、しっかりと押さえておきましょう。
登記には期限がなく、遺産分割協議がまとまった後も先延ばしにしてしまうことが多くあります。しかし、のちのトラブルを防ぐためにも期限を決め、登記は必ずしましょう。
なお、相続後に共有持分の売却を検討しているなら、最初から弁護士と連携した買取業者に相談するのもおすすめです。
当サイトでは、弁護士と連携した共有持分専門業者を紹介しています。相続から売却まで包括的なサポートが受けられるうえに、一般的な不動産業者では難しい共有持分の高値での売却も可能なので、まずは気軽に無料相談を利用してみてください。
共有持分の相続でよくある質問
共有持分とは、複数人が共有する不動産において「各共有者がどれくらいの所有権をもっているか」を指すものです。「持分1/2」というように、割合で表記します。
相続登記とは、相続によって発生した不動産の権利変更を、法務局で申請する手続きです。相続登記をおこなうことで、不動産が相続人のものになったことを第三者に主張できます。
相続登記をしないと、登記簿上の名義は被相続人(亡くなった人)のままです。共有持分の売却ができないほか、担保設定ができないなどの問題があります。また、共有不動産の管理には共有者間の話し合いが必要ですが、亡くなった人の名義を残しておくことで話し合い自体ができなくなります。
自分でも申請可能です。基本的には、共有持分を引き継ぐ全員が申請します。代行してもらいたい場合は、登記の専門家である司法書士に相談しましょう。
まず、登録免許税として「課税標準額(共有持分の評価額)×4/1000」がかかります。他には、必要書類の取得費として数百~数千円、司法書士報酬として3万~5万円ほどの費用があります。