不動産の売却や購入などをしたときは、所有者の情報を明らかにするために「登記」をする必要があります。
それは登記をする不動産が共有持分である場合も同様です。
では共有持分における登記費用はどのような内訳で、どれくらいの金額がかかるのか気になるのではないでしょうか。
この記事では、共有持分における登記費用をわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
※本記事の解説は2020年10月時点の税率で算出しています。

- 共有持分の登記にかかる主な費用は「登録免許税」と「司法書士報酬」の2つ。
- 登記を自分ですると費用を抑えられる。
- 持分移転登記と所有権移転登記のいずれも費用は同じ。
共有持分の登記にかかる主な費用は「登録免許税」と「司法書士報酬」の2つ
登記にかかる費用は主に登録免許税と司法書士への報酬の2つです。
しかし、登記によっては土地家屋調査士への依頼が必要となり、報酬が発生する場合もあります。
登録免許税は登記の種類によって金額が変わり、軽減措置もあるのでまずは自分がどの登記をするのか調べましょう。
登記目的別の登録免許税と軽減措置
登記をする不動産が共有持分だとしても、基本的な方法や必要書類などは通常の登記と変わりません。
ただし登記の対象が共有持分の場合、登記費用は持分割合に応じて納めることが登録免許税法で定められています。
登録免許税法第3条
登記等を受ける者は、この法律により登録免許税を納める義務がある。この場合において、当該登記等を受ける者が二人以上あるときは、これらの者は、連帯して登録免許税を納付する義務を負う。引用:e-Govポータル「登録免許税法第3条」
登録免許税は基本的に以下の式で求めます。
- 登録免許税=課税標準×税率
売買や相続のとき、課税標準額は不動産の価額と同じです。(不動産の価額=固定資産の評価額でもあります)
住所変更登記や抵当権の抹消といったときの課税標準は「不動産の個数」となり、不動産1個につき1,000円です。
また、登録免許税は売買金額とは関係なく固定資産の評価額(市役所等が決定)をベースに計算します。
登録免許税を求める際の税率や軽減措置は、登記の種類や不動産の状況によって変わりますので詳細は国税庁のページを参考にしてください。
参照:国税庁
所有権移転登記の登録免許税
既に誰かが所有したことのある不動産の所有権を移転させるときは、所有権移転登記が必要です。
中古の住宅や誰かが所有していた土地の売買などが当てはまります。
所有権移転登記に必要な登録免許税は以下のとおりです。
- 不動産の価額×20/1000
登記する不動産が土地の場合、令和3年3月31日までに登記をすれば税率が15/1000に軽減されます。
所有権保存登記の登録免許税
新築の住宅など、今までに誰も所有していない不動産を取得するときは、所有権保存登記が必要です。
所有権保存登記に必要な登録免許税は以下のとおりです。
- 不動産の価額×4/1000
次の条件を満たしていれば、税率が1.5/1000となる軽減措置が受けられます。
個人が、令和4年3月31日までの間に住宅用家屋を新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合の保存登記引用:国税庁
ただし、登記をしたあとで証明書を提出しても軽減措置は受けられないので注意しましょう。
また、新築建物だと市役所等が出す固定資産の評価額がない場合がありますが、このときは建物の床面積をベースに固定資産の評価額を算出します。
詳しくは法務局のページを参考にしてください。
参照:法務局ホームページ
抵当権設定登記の登録免許税
住宅ローンを組む場合など、不動産に抵当権を設定するときは抵当権設定登記が必要です。
抵当権設定登記に必要な登録免許税は以下のとおりです。
- 債権金額×4/1000
下記の条件を満たしていれば、税率が1/1000に軽減されます。
個人が、令和4年3月31日までの間に住宅用家屋の新築(増築を含む。)又は住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合において、これらの住宅用家屋の新築若しくは取得をするための資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記引用:法務局ホームページ
また、軽減措置は新築に限らず中古の不動産でも同様の条件です。
司法書士への報酬
司法書士への報酬は司法書士と依頼者との間で決まりますので一概に金額は出せませんが、相場は6~10万円程度です。
通常の登記であれば相場の中で収まることが一般的ですが、共有持分の登記をする場合、事務所によっては共有者全員へ報酬を請求するので割高になるケースもあります。
見積もりの際に「共有持分の登記」をする旨をきちんと伝えるのがよいでしょう。
土地家屋調査士への報酬がかかる場合もある
登記によっては、土地家屋調査士への報酬がかかる場合があります。
土地家屋調査士への依頼が必要なのは主に「表題登記」と「地目変更登記」をするときです。
この2つの登記は、司法書士に依頼をすることもできますが、土地家屋調査士のほうが精通していることが一般的です。
土地の用途を変更するなら地目変更登記が必要
地目変更登記とは、登記簿に登録された用途と別の用途へ変更するためにする登記です。(例:農地として登記されている土地を宅地として利用したい)
地目変更登記は、土地の利用用途に変更があったときから一ヵ月以内におこなう必要があります。期限を過ぎると10万円以下の過料が発生するので注意しましょう。
地目変更登記は通常の登記よりも専門的な項目が多く、自分で登記をするのはなかなか大変な作業となります。
特に農地を農地以外に変更する場合、農地法の知識も絡んでくるので土地家屋調査士に依頼をするのがおすすめです。
また、地目変更登記に登録免許税はかかりません。
建物を新築したら建物表題登記が必要
建物表題登記とは、新築住宅など初めて登記される不動産を新規で登記するものです。
建物表題登記は建物の完成、または購入後一ヶ月以内に必ず行わなければならず、登記を怠ると10万円以下の過料を支払うことが不動産登記法で定められています。
また、建物表題登記に登録免許税は課せられません。
持分移転登記と所有権移転登記の費用は同じ
持分移転登記と所有権移転登記の違いは、登記をする元の不動産が単独名義か共有名義であるかです。
そのため、登記費用に相違はありません。
持分移転登記と所有権移転登記の区別については、以下の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。

登記費用を安くするには自分で登記をする
登録免許税は登記をする際に必ず納めなければならない税金です。
そのため、登記費用を抑えたいときは司法書士への報酬を交渉してみるか、費用の安い司法書士事務所へ依頼をするのがよいでしょう。
また、登記は司法書士に頼らず自分でもできます。
この項目では、司法書士に依頼をせずに自分で登記をする方法を解説していきます。
登記を自分でするときの手順
登記を自分でするときの手順は次のとおりです。
②申請書を作成する
③申請書と必要書類を提出する
④法務局から登記完了証及び登記識別情報を受け取る
建物表題登記と地目変更登記以外に申請期限のある登記はありませんが、登記をしないままだと前の所有者が抵当権を設定してしまうなどのトラブルに発展する可能性があります。
登記を自分でするときは、複雑な作業が多く後回しにしてしまいがちですが早めに登記をするのがおすすめです。
さらに詳細な登記の流れは法務局のページを参考にしてください。
参照:法務局ホームページ
登記に必要な書類と費用
登記に必要な書類とその発行手数料は、基本的に以下のとおりです。
- 住民票・・・300円
- 固定資産税評価証明書・・・300円
- 印鑑登録証明書・・・450円
必要書類は登記原因によって異なります。
また、発行手数料は自治体によって違う場合もあるので、詳細は管轄の自治体に問い合わせをしてみてください。
司法書士に依頼するのが確実で早い
ここまで説明したように、司法書士に依頼しなくとも自分で登記ができます。
ただし、法務局では基本的に窓口で登記の申請内容に関するチェックはしていないので、書類や記入内容に間違いがあったときは再度法務局に出向かなければなりません。
また、法務局は平日しか登記申請を受け付けていません。
オンライン申請などもありますが(下記参照)、手続きに不安があったり平日に時間が取れない場合は、司法書士に依頼する方が確実に早く手続きを進められるのでおすすめです。
参照:法務局ホームページ
状況別に登記費用例を紹介
マイホームを新築購入した場合と不動産を相続した場合の登記費用を見てみましょう。
今回は軽減税率やその他諸費用は考慮せず、登録免許税のみを算出しています。
マイホームを新築購入したときの登記費用例
新築のマイホームを3,000万円で購入した場合の登録免許税は約21万円です。
※建物の価額が2,000万円、土地の価額が1,000万円と想定。
内訳は以下のとおりです。
- 新築建物の登録免許税:2,000万×3/1000=6万
- 土地の登録免許税:1,000万×15/1000=15万
司法書士に依頼する場合は報酬としてさらに6~10万円程度の費用がかかります。
単独名義不動産を共有名義不動産として相続したときの登記費用
3,000万円の単独名義不動産を子供2人が1/2ずつ相続した場合の登録免許税は約12万円です。
内訳は以下のとおりです。
- 登録免許税:3,000万×4/1000=12万
登記にかかる金額は持分割合に応じた金額を支払うのが一般的です。
また、司法書士に依頼する場合は報酬としてさらに6~10万円程度の費用がかかります。
相続による土地の所有権移転登記は免税措置があるので、国税庁のページを参考にしてください。
参照:国税庁
共有持分を名義変更するときも登記が必要
共有持分の名義変更をするときも登記が必要です。
名義変更は、その不動産を管轄する法務局へ申請をします。
管轄の法務局と自宅が離れているときなどは、郵送やオンライン申請がおすすめです。
名義変更の明確な理由が必要
平成17年に不動産登記法が改正され、名義変更の登記申請をする際に「登記原因証明情報」という書類の添付が義務となりました。
登記原因証明情報には、名義変更が必要となった原因を詳細に記載しなければなりません。
登記原因の主な例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 離婚によって共有持分をAがBへ財産分与した
- AがBへ売却した
- Aの死亡により財産をBが相続した
共有名義を単独名義に変更する方法
共有持分の贈与や売買において契約書の作成は義務となっていませんが、後のトラブルを防ぐためにも契約書を作成するのがおすすめです。
また、共有持分の放棄は他共有者の同意なくできますが、登記には他共有者の協力が必要なので事前に通知をするのがよいでしょう。
共有名義から単独名義に変更する方法は様々ですが、その中でも共有者間でできる代表的な方法を3つ説明します。
共有持分を贈与する
共有持分を他共有者へ贈与することで単独名義にできます。
贈与とは、金銭などの対価なく無償で相手に財産を分け与えることです。
贈与をすると贈与税が発生しますが、年間に贈与された財産の合計額が110万円以下であれば控除が適用されるので活用するとよいでしょう。
共有持分を売買する
共有持分を共有者同士で売買することで共有名義から単独名義にできます。
この場合、共有者同士で自由に金額設定ができますが、市場相場よりも大幅に低い金額に設定してしまうと贈与税が課せられることがあるので注意しましょう。
登記するときの登記原因には「売買の経緯」を記載します。
共有持分を放棄する
共有持分の放棄によって共有名義から単独名義にできます。
共有持分を放棄すると、放棄した持分は他共有者へ持分割合に応じて帰属します。
つまり、他共有者は意図せず新たに共有持分を受け取ることとなるのです。
放棄によって不動産を取得すると税法上は贈与とみなされるため、贈与税が発生することがあるので注意が必要です。
また、共有持分放棄後の登記は他共有者の協力が必要なので覚えておきましょう。

共有持分の登記費用は基本的に持分割合に応じて負担する
登記をする不動産が共有持分だとしても、基本的な手順や費用、必要書類などは通常の登記と変わりません。
ただし、登記費用は持分割合に応じて支払うことが登録免許税法で定められています。
登記にかかる費用は主に登録免許税と司法書士への報酬ですが、費用を抑えたいときは司法書士へ依頼をせずに自分で登記することもできます。
登録免許税は登記のときに必ず課せられる税金ですが、軽減措置もあるのでこの記事を参考にうまく活用するとよいでしょう。
軽減措置は、登記前に申請をしないと受けられない場合もあるので、申請前に国税庁のホームページや法務局の窓口で確認しましょう。