家を購入する際、夫婦の共有名義で住宅ローンを組むことで、住宅ローンを二重に受けられます。
しかし、住宅ローン控除を二重に受ける場合「いくら控除が受けられるか?」を知らない人も多いでしょう。
住宅ローン控除額は原則「住宅ローン残高×負担割合×1%」で計算できます。
ただし、住宅ローン控除額には原則40万円という上限額が定められているため、夫婦それぞれの負担割合によっては損をしてしまう恐れもあります。
なるべく住宅ローンの控除を多く受けたい場合、夫婦それぞれの住宅ローン負担額や持分割合を1/2ずつ均等になるように設定するとよいでしょう。
- 共有名義における住宅ローン控除額には、2パターンの計算方法がある。
- 共有名義の住宅ローン控除額は「住宅ローン残高×負担割合×1%」で計算するのが基本。
- 住宅ローン控除を多く受けたい場合、夫婦間の持分割合は1/2ずつがおすすめ。
共有名義における住宅ローン控除額の計算方法
共有名義における住宅ローン控除額を求める場合、2パターンがあります。
- 住宅ローン残高×負担割合×1%
- 建物の価格×1/3×2%(11~13年目のみ)
2パターンの計算結果のうち、もっとも小さい金額が住宅ローン控除額となります。
基本的には「住宅ローン残高×負担割合×1%」が適用されるケースが多いですが、計算結果が40万円を上回る場合、上限額の40万円までしか住宅ローン控除が受けられません。
それぞれの計算方法を、1つずつ解説していきます。
住宅ローン控除を受けられる条件などを詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
住宅ローン控除とは?控除額・適用条件・申請方法をわかりやすく解説【パターン1】住宅ローン残高×負担割合×1%
1つ目の計算パターンは「住宅ローン残高×負担割合×1%」です。
住宅ローン控除における基本的な計算式で、控除が適用されてから10年目までは原則この計算方法が適用されます。
ただし、共有名義で住宅ローンを負担している場合、住宅ローン残高の全額ではなく各人が負担している負担割合の分しか適用されないため注意しましょう。
例えば、住宅ローン残高が4,000万円でも、夫婦で半分ずつ負担しているのであれば、1人あたりの控除額は2,000万円に1%をかけた金額である20万円です。
ちなみに、住宅ローン控除額の計算に用いられるのは、毎年12月31日時点での住宅ローン残高なので、控除額は毎年減っていく計算になります。
参照:「認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」(国税庁)
【パターン2】建物の価格×1/3×2%(11~13年目のみ)
2つ目の計算パターンは「建物の価格×1/3×2%」です。
住宅ローン控除の適用から11〜13年目は、上記の計算式も追加されて、合計3パターンの計算方法が存在することになります。
このパターンの計算方法では、年末時点での住宅ローン残高ではなく、購入時点における建物の価格を基準に計算をおこないます。
例えば、4,000万円の家を全額住宅ローンで購入した後、10年間で半分の2,000万円を返済した場合でも、購入時点における建物の価格である4,000万円を基準に計算します。
住宅ローン控除の上限額は40万円
住宅ローン控除における上限額は40万円です。
先述した「住宅ローン残高×負担割合×1%」の計算結果が40万円を上回る場合、原則として上限額である40万円までしか住宅ローン控除が受けられません。
わかりやすくいうと「住宅ローン残高×負担割合」が4,000万円を上回る場合、いくら住宅ローン残高が高くても、住宅ローン控除額は上限である40万円にされてしまいます。
ちなみに、住宅ローン控除における上限額は原則40万円ですが、購入した住居の種類によって多少異なるため注意しましょう。
種類 | 上限額 |
---|---|
一般住宅 | 40万円 |
長期優良住宅 | 50万円 |
消費税非課税で取得した住居 | 20万円 |
夫婦なら住宅ローン控除を二重で受けられる
住宅ローン控除を受けられる人物は、住宅ローンを借入した名義人です。
つまり、夫婦の共有名義で家を購入した場合、住宅ローン控除が二重で受けられます。
1人で住宅ローン控除を受ける場合、上限額の40万円しか控除を受けられませんが、2人で住宅ローン控除を受ければ、最大80万円まで控除を受けることも可能です。
目安としては、住宅ローンの負担額が4,000万円を上回る場合、夫婦の共有名義で借入したほうが控除を多く受けられるので、覚えておくとよいでしょう。
共有名義における住宅ローン控除額の計算例
計算方法を把握したところで、実際に計算例をみていきましょう。
今回は先述した計算方法にあわせて、3種類のケースを確認していきます。
- 上限額40万円を下回る場合
- 上限額40万円を上回る場合
- 住宅ローン控除の適用から11年目以降
それぞれのケースを、具体例と共にみていきましょう。
【ケース1】上限額40万円を下回る場合
1つ目のケースは、計算結果が住宅ローン控除の上限額40万円を下回る場合です。
・負担割合=夫1/2:妻1/2
この場合「住宅ローン残高×負担割合×1%」の計算結果は以下のとおりです。
・夫の住宅ローン控除額:5,000万円×1/2×1%=25万円
・妻の住宅ローン控除額:5,000万円×1/2×1%=25万円
夫婦それぞれの計算結果は上限額40万円に満たないので、住宅ローン控除額は25万円ずつになります。
ただし、夫婦で二重に住宅ローン控除を受けられるので、住宅ローン控除額は夫婦合計で50万円となります。
【ケース2】上限額40万円を上回る場合
2つ目のケースは、計算結果が住宅ローン控除の上限額40万円を上回る場合です。
・負担割合=夫1/2:妻1/2
この場合「住宅ローン残高×負担割合×1%」の計算結果は以下のとおりです。
・夫の住宅ローン控除額:9,000万円×1/2×1%=45万円
・妻の住宅ローン控除額:9,000万円×1/2×1%=45万円
夫婦それぞれの計算結果は上限額40万円を上回るため、住宅ローン控除額は40万円ずつとされてしまいます。
ただし、夫婦で二重に住宅ローン控除を受けられるので、住宅ローン控除額は夫婦合計で80万円になります。
【ケース3】住宅ローン控除の適用から11年目以降
3つ目のケースは、住宅ローン控除の適用から11〜13年目の場合です。
・現在の住宅ローン残高=2,500万円
・負担割合=夫1/2:妻1/2
この場合「住宅ローン残高×負担割合×1%」の計算結果は以下のとおりです。
・夫の計算結果:2,500万円×1/2×1%=12.5万円
・妻の計算結果:2,500万円×1/2×1%=12.5万円
一方で「建物の価格×1/3×2%」の計算結果は次のようになります。
・夫の計算結果:3,000万円×1/3×2%=20万円
・妻の計算結果:3,000万円×1/3×2%=20万円
このケースでは、もっとも少ない金額である12.5万円が住宅ローン控除額となります。
ただし、夫婦で二重に住宅ローン控除を受けられるので、住宅ローン控除額は夫婦合計で25万円になります。
3パターン目の計算方法が追加されますが、共有名義で住宅ローンを組む場合「建物の価格×1/3×2%」が「住宅ローン残高×負担割合×1%」を下回るケースは少ないです。
住宅ローン控除をもっとも多く受けられる持分割合とは?
なるべく多く住宅ローン控除を受けたい場合、共有名義の持分割合はどうするべきなのでしょうか?
結論からいうと、もっとも多く住宅ローン控除を受けるには、夫婦それぞれの持分割合を1/2ずつに設定しましょう。
夫婦間の持分割合を1/2ずつにすれば、夫婦双方が上限額である40万円まで住宅ローン控除を受けられる可能性を最大限まで高められます。
ただし、夫婦間における住宅ローンの負担割合と持分割合が異なると、その差額に贈与税が課せられるため注意が必要です。
最後は、共有名義の不動産で住宅ローン控除を受ける場合における、おすすめの持分割合について解説していきます。
持分割合を夫婦で1/2ずつにするのがベスト
なるべく多く住宅ローン控除を受けたい場合、夫婦の持分割合を1/2ずつに設定するのがベストです。
なぜなら、夫婦間の持分割合を1/2ずつに設定すれば、夫婦双方が上限額での住宅ローン控除を受けられる可能性が高いからです。
この場合、夫婦ともに上限額である40万円まで控除を受けられるため、住宅ローン控除額は夫婦で合計80万円となります。
しかし、住宅ローン残高8,000万円を夫5:妻3の割合で負担することで、持分割合を夫5/8:妻3/8と設定してしまったとします。
この場合、夫は上限額である40万円まで控除を受けられますが、妻は30万円しか控除を受けられないので、10万円も損をしてしまうのです。
このように持分割合を1/2ずつに設定しない場合、受けられる控除額が少なくなってしまうケースもあるので気をつけましょう。
住宅ローンの負担割合と持分割合が異なると贈与税がかかる
住宅ローンの負担割合と共有持分の持分割合が異なると、その差額が「みなし贈与」と扱われて、贈与税が課税されてしまうため注意しましょう。
例えば、住宅ローン残高4,000万円を夫6:妻4の割合で負担しているのに、持分割合は夫1/2:妻1/2で設定したとします。
この場合、持分割合1/2を取得するために必要な2,000万円に対して、1,600万円しか負担していない妻は「夫から400万円の贈与を受けた」と見なされてしまいます。
・夫の持分取得に負担すべき額=2,000万円(4,000万円×1/2)
・妻が負担している住宅ローン残高=1,600万円(4,000万円の4/10)
・妻の持分取得に負担すべき額=2,000万円(4,000万円×1/2)
⇒妻が負担するべき差額である400万円を負担していない
不要な贈与税を課されないためにも、夫婦それぞれの住宅ローン負担割合と共有持分の持分割合は、割合が同じになるように設定しましょう。
参照:「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」(国税庁)
住宅ローン控除を多く受けるなら持分割合1/2の共有名義がおすすめ
共有名義で住宅ローンを組むことで、住宅ローン控除を二重に受けられます。
住宅ローン控除の計算方法には3種類ありますが、基本的には「住宅ローン残高×負担割合×1%」で計算可能です。
ただし、住宅ローン控除額には上限があり、1人あたり原則40万円までしか控除が受けられない点に注意が必要です。
なるべく多く住宅ローン控除を受けたい場合、夫婦それぞれのローン負担額および持分割合を1/2ずつにして、双方が上限額まで控除を受けることをおすすめします。
住宅ローンの負担割合および持分割合の設定を誤ると、受けられる控除額が減ってしまい、損をしてしまうので注意しましょう。
住宅ローン控除の計算に関するよくある質問
「住宅ローン残高×負担割合×1%」または「建物の価格×1/3×2%」のうち、もっとも低い金額が住宅ローン控除額となります。ただし、住宅ローン控除額が上限額である40万円を上回ることは原則ありません。
共有名義の場合でも住宅ローンの名義人であれば、住宅ローン控除を二重に受けることが可能です。
住宅ローン控除における上限額は原則40万円です。ただし、長期優良住宅の場合は50万円、消費税非課税で取得した住居の場合は20万円になります。
住宅ローンの負担割合および持分割合を夫婦で1/2ずつにして、双方が上限額まで住宅ローン控除を受けるのがベストです。
住宅ローンの負担割合と持分割合が異なると、その差額分が「みなし贈与」と扱われて、贈与税がかかってしまいます。