共有名義の住宅ローンには、単独名義にはないメリット・デメリットがあります。
控除額・借入額を増やせますが、処分・管理に制限がかかることから、トラブルが起きやすくなってしまうのです。
これらのデメリットは、根本的に解消できないものであるため、住宅ローンの共有名義はおすすめできません。
この記事では、住宅ローンを共有名義にするメリット・デメリットや、共有名義を避けて住宅ローンを組む方法を紹介しています。
もしも「親子・夫婦の共有で住宅ローンを組まなければ、家を買えない」といった事情の場合は、メリット・デメリットをよく理解してから、共有名義で住宅ローンを組むとよいでしょう。
- 控除額・借入額を増やせるのが、住宅ローンを共有名義にするメリット。
- 住宅ローンの共有名義には、避けられないデメリットが多い。
- 住宅ローンの共有名義は「共同出資で購入する必要があるとき」以外は避けるべき。
住宅ローンを共有名義にするメリット
親子・夫婦などで資金を出し合って住宅ローンを組むと、共有名義になります。
住宅ローンを共有名義にするメリットには、以下のようなものがあります。
- 住宅ローン控除を共有者の数だけ受けられる
- 住宅ローンの借入額を増やせる
- 年齢制限を気にせず借入できる(親子共有の場合)
次の項目から、それぞれのメリットを順番にみていきましょう。
不動産を共有名義にするメリットとデメリット|共有名義は解消すべき?メリット1.住宅ローン控除を共有者の数だけ受けられる
不動産を購入するときは、住宅ローンを借りるケースがほとんどです。
そして、住宅ローンを複数人で購入したときは、共有者の数だけ住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除では、年末の住宅ローン残高にあわせて、各年の所得税を控除できます。
住宅ローン控除額は以下の式で計算できますが、上限額は40万円までです。
なお、住宅ローンを共有名義にするときは、借り入れた人それぞれが控除を受けられます。
1人でローンを組んでいた場合は、住宅ローン控除額は上限の40万円です。(5,000万円×1%=50万円)
一方で、この住宅ローンが「夫と妻で2,500万円ずつ借り入れたローン」であれば、それぞれが控除を受けられます。
そのため、控除額は「夫25万円+妻25万円=50万」となります。
住宅ローンを共有名義にすることで、控除額が高くなるのです。
参照:国税庁「認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
メリット2.住宅ローンの借入額を増やせる
新たに不動産を購入するとき、収入合算することで、住宅ローンの借入額を増やせます。
住宅ローンの審査基準は「年間返済額が年収の25~35%」となっている金融機関がほとんどです。
そのため、親子・夫婦などで年収合算すれば借入上限を上げられます。
誰か1人では借入希望額に届かない場合でも、複数人あわせれば借入希望額に届く場合は、とくに有効活用できるでしょう。
メリット3.年齢制限を気にせず借入できる(親子共有の場合)
高齢になるほど、住宅ローンは組みづらくなります。
住宅ローンにおける審査基準の1つに「申込時に45歳」「完済時に80歳」といったものが設定されていることが多いからです。
そこで、親子が共同でローンを組むと、子供の年齢に応じて審査を受けられるため、年齢制限を気にせず借入できるようになります。
なお、子供にとっても親と共同で住宅ローンを組むことで、借入可能額を増やすこともできます。
住宅ローンを親子共有名義で組む方法|ローンの組み方別メリット&デメリットを解説!住宅ローンを共有名義にするデメリット
ここまでは、住宅ローンを共有名義にするメリットを見てきました。
しかし、住宅ローンを共有名義にするときは、以下のようなデメリットに注意しなければなりません。
- 不動産の処分・管理に他共有者の同意が必要になる
- 持分割合を出資割合に揃えないと贈与税が発生する
- 片方の収入がなくなると返済できないリスクがある
- 離婚時にトラブルとなりやすい(夫婦共有の場合)
次の項目から、順番にみていきましょう。
デメリット1.不動産の処分・管理に他共有者の同意が必要になる
共同で資金を出し合って住宅ローンを購入したとき、その不動産は「共有不動産」となります。
共有不動産を管理・処分するには、他共有者の同意が必要です。
もしも、1人でも管理・処分行為に反対する人がいると、共有不動産の扱いを巡ってトラブルになってしまいます。
以下の記事では、共有不動産を処分する方法を詳しく説明しているので、参考にしてみてください。
共有不動産を現金化する方法とは?売却方法や現金化した後も住み続ける方法を解説デメリット2.持分割合を出資割合に揃えないと贈与税が発生する
共有名義で住宅ローンを組んだとき、各共有者は共有不動産に対して「共有持分」を所有することになります。
そして、共有持分の割合は、出資割合に揃えなければなりません。
もしも、共有持分の割合と出資割合を合わせなければ、差額分に贈与税が発生してしまいます。
このとき、夫と妻の持分割合は「夫9/10:妻1/10」と考えられます。
もしも「夫1/2:妻1/2」と登記してしまうと、差額が夫から妻への贈与と扱われてしまうのです。
デメリット3.片方の収入がなくなると返済できないリスクがある
住宅ローンを共有名義にするということは「2人で返済していく」ことが前提になっています。
しかし、働き盛りの人であっても、なんらかの理由で失職したり、収入が下がってしまうリスクがあります。
住宅ローンが共有名義だと、出産や入院、転職・退職などで2人の収入が落ちてしまったとき、返済が苦しくなってしまうのです。
月々の返済額がぎりぎりにならないよう借入額を調整したり、もしものときに備えて貯金や保険(傷病保険や収入保険など)を用意しておきましょう。
デメリット4.離婚時にトラブルとなりやすい(夫婦共有の場合)
住宅ローンを夫婦の共有名義にする場合、離婚時にトラブルとなる恐れがあります。
離婚時の財産分与が複雑になり、離婚協議が長引いてしまうかもしれません。
なお、離婚時に住宅ローンが残っている場合は、さらに権利関係が複雑になるので注意が必要です。
離婚をしても、住宅ローンの名義人を変更することは困難なため「どちらが家に住み続けるか?」といった内容でトラブルになってしまいます。
また、離婚する場合でも連帯保証人・連帯債務者の解除は不可であるため、権利関係が離婚後も続いてしまう恐れもあります。
離婚時に関する共有持分・住宅ローンについては、関連記事も参考にしてみてください。
【離婚時における自宅の財産分与】自宅はどうなる?財産分与の方法を状況別に詳しく解説 離婚時の財産分与で住宅ローンを折半する方法を状況別に解説します住宅ローンの共有名義におけるデメリットを避けるのは困難
住宅ローンを共有名義にするメリット・デメリットを紹介してきました。
住宅ローンを共有名義にすることで、借入額を増やせるメリットもありますが、デメリットも多くなってしまいます。
しかし、住宅ローンを共有名義にするデメリットを根本的に解消するのは、困難だといえます。
不動産の処分・管理を巡るトラブルは、不動産が共有名義である限り、いつでも起こりえるからです。
共同出資で購入する必要があるとき以外は単独名義がおすすめ!
住宅ローンを共有名義にすることで起こりうるトラブルは、裁判沙汰となってしまうケースもあります。
いまは、夫婦間・親子間の仲が良好だったとしても、共有不動産の扱いを巡って、関係が悪化してしまうかもしれません。
そのため、住宅ローンを共有名義にすることは、避けるべきです。
単独名義にしておくことで、共有者間での無用な争いを避けられます。
「親子・夫婦の共有で住宅ローンを組まなければ、家を買えない」といった事情がない限り、不動産・住宅ローンは単独名義にしておきましょう。
共有名義にならない住宅ローンの組み方
共有名義で住宅ローンを組むと、さまざまなトラブルの原因となるため避けるべきです。
そこで、この項目からは、共有名義にならない住宅ローンの組み方を2つ紹介していきます。
- 単独名義
- 連帯保証型
次の項目から、順番にみていきましょう。
なお、住宅ローンを共有名義にするリスクを承知のうえで、共有名義を選びたい人は以下の記事を参考にしてみてください。
夫婦や親子で住宅ローンを組む「連帯債務」を解説!メリット・デメリットや共有名義のリスクも紹介します1.単独名義
住宅ローンを1人のみで組むと、単独名義になります。
単独で住宅ローンを組むことで、共有名義と比べると権利関係がわかりやすく、トラブルになりにくいです。
単独で十分な収入が求められるため、専業主婦(夫)がいる世帯におすすめです。
2.連帯保証型
連帯保証型とは、主たる債務者ではない人が、連帯保証人となって住宅ローンを借り入れる制度です。
連帯保証人には、主たる債務者が返済できなくなったとき、はじめて返済義務が発生します。
つまり、主たる債務者が返済を続けられる限り、連帯保証人に返済請求されることはありません。
また、収入合算も可能なので、借入可能額を増やすこともできます。
収入合算を利用したら持分はどうなる?持分割合の決め方や注意点を解説します住宅ローンの共有名義は「共同出資で購入する必要があるとき」以外は避けよう
住宅ローンを共有名義にすると、控除額・借入額を増やせるメリットがあります。
しかし、共有名義にはさまざまなデメリット・リスクもあります。
これらのデメリットを根本的に解消するのは、困難だといえるので、住宅ローンの共有名義は避けるべきです。
「親子・夫婦の共有で住宅ローンを組まなければ、家を買えない」といったケース以外では、住宅ローンの共有名義は避けるようにしてください。
住宅ローンの共有名義についてよくある質問
控除額・借入額を増やせるといったメリットがあります。
権利関係が複雑になることがデメリットです。裁判になるケースもあり、解決に時間や費用がかかる恐れもあるでしょう。
残念ながら、住宅ローンにおける共有名義のデメリットを避けることは困難です。不動産の処分・管理を巡るトラブルは、不動産が共有名義である限り、いつでも起こりえるからです。
住宅ローンを共有名義にすることは、避けるべきです。ですので、共有者間での争いを避けるためにも、単独名義がおすすめです。
この記事を参考に、メリット・デメリットをよく理解してから、共有名義で住宅ローンを組むとよいでしょう。