初めて不動産を売却する人は、売却の流れが分からず不安に思うことも多いでしょう。
不動産を売却する際は不動産業者に仲介を依頼するのが一般的ですが、売主自ら不動産売却の流れを把握しておくことは、契約時や契約後のトラブルなどを防ぐために重要です。
当記事では「不動産売却の流れ」及び「不動産売買契約の流れ」について詳しくお伝えします。
これから不動産の売却を検討している人は、スムーズかつ有利な条件で売却手続きを進めるためにぜひ参考にしてください。
- 不動産売却と売買契約の流れは?
- 不動産売買契約当日の流れと必要なものは?
- 決済・引渡し当日の流れと必要なものは?
不動産売却の流れ
不動産売却の一般的な流れを知っておくことで、初めて不動産を売却する人でもスムーズに売却手続きを進められるでしょう。
以下が、不動産売却の一般的な流れです。
- 売却相談
- 売却不動産の事前調査・価格査定
- 媒介契約の締結
- 売却活動
- 売買契約
- 決済・引渡しの準備
- 決済・引渡し
次の項目から、各項目の内容について詳しく見ていきましょう。
1.売却相談
不動産売却では、自身の所有する不動産の相場や住宅ローンの有無、売却目的などによって、売却価格や売出しのタイミングを慎重に見極める必要があります。
そのため、不動産売却を考える際、まずは不動産業者へ売却相談に行き、専門家からアドバイスをもらうのがおすすめです。
売却相談の際は、売却不動産の相場について教えてもらえる他、売却金額から諸費用を差引いた場合、売却後の手取り金額がいくらになるか目安を立ててもらえます。
諸費用とは、以下のような不動産売却時にかかる諸経費や税金のことです。
- 仲介手数料
- 測量費用
- 建物解体費用
- 引越費用
- 登記関係費用
- 住宅ローン
- 売買契約時の印紙税
- 所得税・住民税
また、売却金額や引渡し時期などの希望条件を整理し、具体的な販売方法や販売期間を教えてもらうことも可能です。
不動産売却時にかかる登記費用に関しては、以下の記事もあわせて参考にしてみてください。
不動産売却にかかる登記費用はいくら?計算方法や支払方法を解説2.売却不動産の事前調査・価格査定
売却相談で希望条件を整理したら、不動産業者に売却する不動産やその周辺環境の調査を依頼し、より正確な査定価格を算出してもらいましょう。
不動産の種別などにより異なりますが、価格査定に伴い調査する内容は主に以下のような項目です。
調査項目 | 内容 |
---|---|
権利関係の調査 | 所有権、抵当権、賃借権、地上権、地役権など |
法令上の制限に関する調査 | 建築基準法、都市計画法など |
利用可能な設備 | 上下水道の前面道路および敷地内配管 ガスの前面道路配管 電力の状況など |
【マンションの場合】 管理状況の調査 |
管理形態、管理方式、管理費・修繕積立金の変更、建物修繕、管理規約、使用細則など |
不動産業者は上記調査の結果に加え、近隣の取引事例・売出事例・市況の動向・売主の要望を考慮し、販売方法を提案してくれます。
3.媒介契約の締結
不動産の売却を決断したら、不動産業者と媒介契約を結び、正式に仲介を依頼しましょう。
媒介契約は不動産業者へ仲介を依頼する際に、売主が受けられるサービスやかかる手数料などを明確にするもので、主に以下3つの種類があります。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
自己発見取引 | 不可 | 可能 | 可能 |
同時に依頼できる不動産業者の数 | 1社のみ | 1社のみ | 複数社に依頼可能 |
売主への進捗報告 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | なし |
REINSへの登録 | 5日以内 | 7日以内 | なし |
契約期間 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 | 法律による制限なし※ |
※標準媒介契約約款では3ヶ月以内
専属専任媒介契約・専任媒介契約の場合、窓口は1社ですがREINSへの登録によって、物件情報が全国の不動産業者の間で共有され、幅広く買い手を探せます。
一方で、一般媒介契約の場合、REINSへの登録義務はないものの複数業者への依頼が認められており、自分で見つけた買主との直接取引も可能という自由度の高さが特徴です。
よって、信頼できる不動産業者1社に売却活動を任せたい人は専属専任媒介契約や専任媒介契約を、自ら積極的に売却活動をおこないたい人は一般媒介契約を選ぶとよいでしょう。
また、媒介契約締結時に「物件状況等報告書」や「設備表」の記入をおこなうこともあります。
物件状況等報告書は、売却する物件の建物・土地・周辺環境などについて売主が知っている事柄を買主に伝えるための資料で、例えば以下のような事柄について記入します。
- 雨漏り
- シロアリ被害
- 給排水管の故障
- 腐蝕
- 増改築
- 近隣との申合わせ事項
- 境界について
- マンション管理に関する事項など
また、設備表は売却する物件の設備の有無や状況、どのような状態で買主へ引渡すかを伝えるための資料で、例えば以下のような事柄について記入します。
- 給湯関係
- 空調関係
- 水廻り関係
- その他設備など
その他にも、販売方法の確認や役所などでの調査に関する委任状を作成する場合もあります。
4.売却活動
媒介契約締結後は、不動産業者が各種媒体を利用した販売活動をおこないます。
- 不動産業者ホームページへの掲載
- SUUMOやアットホームなどの不動産ポータルサイトへの掲載
- 不動産業者に登録している購入希望者への紹介
- 新聞折込広告・ポスティング広告の実施
- オープンハウス、現地案内会の開催
- REINSへの登録
また、販売活動期間中は、媒介契約締結時に定めた頻度で不動産業者から進捗報告を受け、状況を分析して販売方法の見直しなどをおこないます。
進捗報告の内容は不動産業者によって異なりますが、概ね以下のような内容です。
- 広告活動の状況
- 購入検討者の反響状況
- 不動産サイトでのアクセス状況
- 近隣の競合不動産の動向
- 今後の販売活動計画
さらに、購入希望者が見つかれば内覧をおこない、実際に物件を見て検討してもらいます。
もし、購入希望者から購入の意思表示があれば、まず以下のような内容が記載された不動産購入申込書を提示してもらいます。
購入価格 | 売出価格を前提に買主の資金計画に基づいた希望価格。 |
---|---|
融資の利用予定 | 融資利用の有無と予定金額。 |
支払条件 | 【手付金】売買契約締結時に受領。売買価格の5〜10%程度が目安。 【内金】手付金の金額や引渡しまでの期間により設定されることがある。 【残代金】売買価格 −(手付金+内金) |
スケジュール | 【契約日】買主の契約締結希望日。 【決済日】買主が売買代金の支払いが可能な期日。 【引渡し日】原則、決済日と同日だが、1週間程度の引渡し猶予期間を設ける場合がある。 |
その他の条件 | 売買契約締結に際し、希望条件があれば記載される。(解除条項、停止条件など) |
提示された不動産購入申込書の内容を基に、不動産業者を通して価格や引渡し日など条件の調整をおこないます。
5.売買契約
条件について売主・買主双方が合意すれば売却活動は終了し、売買契約に移ります。
なお、売買契約には主に以下のようなものが必要となります。
金銭など | 仲介手数料の半金 収入印紙(売買価格によって異なる) |
---|---|
書類など | 登記関係書類(登記済証または登記識別情報通知書) 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの) 身分証明書 固定資産税納税通知書 実印 |
ケースによっては上記以外の書類が必要となることもあるので、担当者とよく確認のうえ早めに準備しておきましょう。
また、媒介契約締結時に作成した物件状況等報告書・設備表の内容を再確認し、相違点があれば最新の状況に更新します。
不動産売買契約当日の流れ
以下が、不動産売買契約当日の一般的な流れです。
- 重要事項説明書の読み合わせ
- 売買契約
- 署名・捺印、手付金の受領
売買契約に先立ち、以下のような取引に関わる重要な事項を、宅地建物取引士が買主に対して説明し、書面を交付します。
- 権利関係
- 法令上の制限
- マンションの管理状態
- 契約解除に関する事項
- 「建物状況調査」実施の有無および内容など
重要事項説明の後に、売買契約書・物件状況等報告書・設備表の読合わせをおこないます。
契約内容や不動産の現況、設備の有無および不具合の有無を確認します。
なお、特約が付記されている場合は、解除条項が含まれることがあるので、内容をよく理解しておきましょう。
契約内容を確認したらすべての書類に署名・捺印をおこない、買主から手付金を受領したら契約成立です。
6.決済・引渡しの準備
契約成立後は決済・引渡しに向けてさまざまな手続きが必要になります。
売買契約成立後、まずおこなうべきなのは「既存の住宅ローン完済と抵当権の抹消」です。
売却不動産に住宅ローンの残債がある場合は、既存の住宅ローンを完済し抵当権の抹消手続きをしなければなりません。
抵当権抹消登記に必要な書類を作成するのには2週間程かかるので、決済日が決まったらすぐに借入先の金融機関へ連絡しましょう。
加えて、土地・戸建などの取引の際には必要に応じて「測量」が必要になります。
測量が必要な場合、費用が発生するうえに手続き完了まで3ヶ月以上かかる場合があるので、事前に測量の手配をしましょう。
さらに、居住中の不動産を売却する場合には、決済日までに引っ越しを完了させておく必要があります。
引っ越しには、業者の手配や引っ越し準備以外に以下のような各種手続きも必要になります。
- 役所へ転出・転入届を提出
- 印鑑登録の消去
- 電気・ガス・水道会社へ転居届を提出
- 郵便物転送の手配
- 金融機関・身分証明書の住所変更
このように、決済・引渡しに伴う手続きは多岐に渡り、しっかりとスケジュール管理をおこなうことが重要です。
不動産業者によっては引越し業者や測量の手配をおこなってくれる場合もあるので、うまく活用するとよいでしょう。
7.決済・引渡し
売買契約時と同様、決済時にはさまざまな書類が必要となります。
書類など | 登記関係書類(登記済証または登記識別情報通知書) 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの) 住民票 買主様に引継ぐ書類(建築・分譲時のパンフレット、管理規約、設備の取扱説明書・保証書、建築確認通知書、境界確認書、測量図など) 身分証明書 鍵一式 |
---|---|
費用 | 登記費用(抵当権抹消登記などがある場合) 仲介手数料の半金 |
印鑑など | 実印 銀行印 通帳(ローン返済口座のもの) |
ケースによっては上記以外の書類が必要となることもあるので、担当者とよく確認のうえ早めに準備しておきましょう。
なお、決済・引渡しの前に、売主と買主が双方立会いのもと、売却不動産が売買契約時に交わした物件状況等報告書・設備表に記載通りの状態か確認します。
- 物件状況等報告書の記載内容(雨漏りやシロアリの害、マンション管理に関する事項など)
- 設備表の記載内容(設備の有無、故障・不具合の有無を確認)
- 隣地との境界標の確認(土地・戸建)
物件状況等報告書・設備表の記載内容と相違ないと確認できれば、決済・引渡しの手続きに移ります。
決済・引渡し当日の流れ
以下が、決済・引渡し当日の一般的な流れです。
- 登記申請の書類確認
- 残代金受領・固定資産税などの精算
- 鍵・関係書類の受渡し
- 売却不動産の引渡し
まずは、所有権移転登記などの申請をおこなうため、登記を代行する司法書士に必要書類を渡し、登記申請を依頼します。
登記申請の書類確認が済んだら、売買代金の残代金を受領し、固定資産税や(マンションの場合)管理費などの精算をおこないます。
精算が終われば鍵や関係書類など引継ぐべきものを買主へ引渡し、売主は登記費用や仲介手数料を支払って、決済・引渡しの手続きは完了です。
まとめ
当記事では「不動産売却の流れ」及び「不動産売買契約の流れ」について詳しくお伝えしました。
不動産売却にはさまざまな書類が必要であり、手続き項目も多岐に渡ります。
なかには準備に数ヶ月を要するものもあるので、スケジュール管理も含めて入念な準備を心がけましょう。
事前確認を怠ると、最悪の場合は契約解除となる恐れもあります。
この記事の内容をよく確認し、ぜひスムーズかつ有利な条件で売却手続きを進めるための一助としてください。
不動産売買契約の流れについてよくある質問
以下が、不動産売却の一般的な流れです。
・売却相談
・売却不動産の事前調査・価格査定
・媒介契約の締結
・売却活動
・売買契約
・決済・引渡しの準備
・決済・引渡し
3〜4ヶ月が一般的ですが、1年以上かかる場合もあります。
以下が、不動産売買契約当日の一般的な流れです。
・重要事項説明書の読み合わせ
・売買契約
・署名・捺印、手付金の受領
売買契約には主に以下のようなものが必要となります。
・仲介手数料の半金
・収入印紙(売買価格によって異なる)
・登記関係書類(登記済証または登記識別情報通知書)
・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
・身分証明書
・固定資産税納税通知書
・実印
売却不動産に住宅ローンの残債がある場合は、既存の住宅ローンを完済し抵当権の抹消手続きが必要です。また、必要に応じて測量をおこないます。手続き完了まで数週間〜数ヶ月かかることもあるので、早めに準備しておきましょう。