マンションの敷地権を詳しく解説!専有部分と土地の共有持分について関係性を把握しよう

共有持分 敷地権

マンションの区分所有者は、専有部分だけでなく「共有部分である土地を使用する権利」も一緒にもっています。

販売元がマンションを所有地の上に建てたのならば「所有権」を、借地のうえに建てたのであれば「借地権」を区分所有者たちは共有しています。

これらの「土地を使用する権利の共有持分」と専有部分をまとめて登記したものが「敷地権」です。

敷地権が設定されていると「専有部分と土地の共有持分は分離して処分できない」と覚えておきましょう。

また、敷地権が設定されていないようなマンションは需要も少ない傾向にあります。トラブルなくスムーズに取引が可能な、弁護士と連携した買取業者に直接買取してもらうことをおすすめします。

>>【敷地権がなくても売れる!】共有持分の買取相談窓口はこちら

この記事のポイント!
  • 敷地権とは、区分所有建物において「建物の所有権」と「土地の共有持分」を一緒にした登記の形態。
  • 敷地権の目的は登記事務を簡潔にし、わかりやすくすること。
  • 敷地権により、専有部分と土地の共有持分は分離して処分できない。
  • 古いマンションでは、敷地権を設定しないところもある。

敷地権とは「建物の所有権」と「土地の共有持分」を一緒にした登記の形態

建物と土地は本来、別の財産です。売買などの処分は別々におこなえますし、不動産の権利関係を記録する「登記簿」でもわけて記載します。

しかし、マンションのような区分所有建物で建物と土地の権利がバラバラだと、権利関係が複雑となりトラブルの発生リスクも高まります。

そのため、マンションでは建物の所有権と土地の共有持分※を一緒に管理する「敷地権」の登記が義務付けられているのです。

※共有持分:不動産を複数人で共有しているときの「共有者それぞれの所有権」を指す言葉

下記の条文からわかるように、マンションの権利関係を登記申請すると、登記官の権限で敷地権も設定されます。

不動産登記法第46条
登記官は(中略)職権で、当該登記記録中の所有権、地上権その他の権利が敷地権である旨の登記をしなければならない。

引用:e-Govポータル「不動産登記法第46条」

分譲マンションなど区分所有建物には3つの権利がある

敷地権をより深く理解するためには、区分所有建物における権利関係について知識が必要です。

マンションにおいて区分所有者がもつ権利は、次の3つにわけられます。

  • 1.専有部分の所有権
  • 2.共用部分の共有持分
  • 3.土地の共有持分(敷地利用権)

これら3つの権利は、マンションの管理組合が特別に規約を定めない限り「別々に処分できない」とされています。

参照:e-Govポータル「建物の区分所有等に関する法律 第15条、第22条、第27条」

1.専有部分の所有権

専有部分とは、区分所有者が単独で所有している部分をいいます。一般的には住居部分、より正確には「天井・床・壁などで囲まれた内部空間」のことです。

「所有する目的を満たすための建物部分」ともいいかえられます。

ちなみに、バルコニーや玄関扉、窓ガラスなどは、じつは専有部分ではなく共用部分です。これらのように、実際には自分しか使わないような共用部分を「専有使用部分」といいます。

2.共用部分の共有持分

共用部分とは、すべての区分所有者が共有している建物部分や設備をいいます。

廊下やエレベーターなど「区分所有者が共同で使用する部分」や、電気や水道の設備といった「専有部分に属さない設備」が共有部分です。

区分所有者はそれぞれが「共有部分の共有持分」をもっています。共有部分の持分割合は、各区分所有者のもつ専有部分の割合(床面積の割合)と同じです。

3.土地の共有持分【敷地利用権】

敷地利用権は少し複雑な権利ですが、簡単にいえば「専有部分を所有するために必要な土地の権利」です。

建物が存在し、利用するためには土地が必要です。より正確には「土地を使用できる権利」が必要になります。

土地を使用できる権利には、所有権や借地権(地上権と賃借権)があります。区分所有者は、これらの「土地を使用できる権利」も共有しているとされるのです。

「土地を使用できる権利」を共有しているということは、区分所有者は土地の権利に関する共有持分をもっていることになります。

つまり、敷地利用権とは区分所有者がそれぞれもっている「土地の所有権もしくは借地権の共有持分」を指します。

所有権・共有持分・敷地利用権と敷地権の違い

さまざまな権利がいくつもあって混乱しやすいので、所有権・共有持分・敷地利用権と敷地権の定義を整理しましょう。

所有権 不動産を所有する権利
共有持分 各共有者がもつ、土地の所有権や借地権
敷地利用権 区分所有建物の専有部分を所有するとき、建物がある土地の共有持分を指す言葉
敷地権 専有部分の所有権と敷地利用権をまとめた登記の形態

所有権や共有持分は権利そのものを指すのに対し、敷地利用権は「専有部分に関連する土地の共有持分」の呼び方、敷地権は所有権と敷地利用権を1セットにしたときの呼び方と考えましょう。

敷地権と敷地利用権の目的は登記事務をわかりやすくすること

敷地権と敷地利用権は、登記表示をシンプルにして登記事務をわかりやすくするために定められたものです。

敷地権のなかった時代、区分所有建物も通常の不動産と同じように土地と建物の登記を別々に管理していました。

登記が別々であれば、名義の移転も個別に可能です。結果、マンションの「専有部分だけ」「土地の共有持分だけ」の売買が可能になり、頻繁に登記を書き換えることになります。

登記を何度も書き換えるとミスが起きやすくなりますし、権利関係が複雑になることで当事者同士の勘違いや行き違いによるトラブルが増えてしまいます。

そのため、1983年の区分所有法改正によって専有部分と敷地利用権の分離処分を禁止し、2つを敷地権としてまとめて管理するようになったのです。

専有部分の所有権を移転すれば土地の共有持分も移転される

敷地権として一元管理することで、登記手続きもまとめて手続きできるようになりました。

したがって、マンションを売却する際に専有部分(建物の区分所有権)の名義を移転すれば、敷地利用権(土地の共有持分)の名義も一緒に移転されます。

実際の登記事務においては、名義移転の記録は区分所有建物の建物登記簿のみに記載し、土地の登記簿には記載しないようになっています。

登記申請をするときは「敷地権付き区分建物」用の申請書を使う

登記で使用する申請書は、法務局のホームページでダウンロードできます。

登記の理由によって申請書も細かくわかれていますが、登記名義人の住所移転と氏名変更をする場合は「敷地権付き区分建物の場合」となっているものを使用しましょう。

登記は自分でも申請できますが、申請書の作成や必要書類の準備に不安がある場合は、司法書士に相談するのもおすすめです。

共有持分 登記 不動産の登記申請とは?登記申請が必要なタイミングや状況別の登記種類を解説します

参照:法務局「不動産登記の申請書様式について」

敷地権の課税は「敷地全体の評価額」に「敷地権割合」をかけて計算する

敷地権割合とは、文字どおり「区分所有者がもっている敷地権の割合」です。各専有部分の床面積を、すべての専有部分の床面積で割って算出します。

敷地権割合=各専有部の床面積÷専有面積の総床面積

敷地権割合は、土地の共有持分(敷地利用権)の課税額を算出する際に使います。固定資産税も相続税も、敷地全体の課税標準額に敷地権割合と税率をかけて計算します。

敷地利用権の課税額=敷地全体の評価額×敷地権割合×税率

ただし、実際に申告する際は奥行価格補正・側方路線影響加算といった調整や、各種控除の適用など、専門知識が必要です。

税申告に関しては、税理士に相談して正確な計算をしてもらうのがよいでしょう。

不動産 評価 【共有持分の価格を知ろう】共有不動産の評価基準を徹底的に解説します!

古いマンションには敷地権の設定がないケースもある

敷地権は、1983年の区分所有法改正で制定されました。

それ以前に建築されたマンションも、大多数は区分所有法改正にあわせて敷地権を設定しています。

しかし、なかには敷地権が設定されないまま現在まで残っているものがあるので注意しましょう。

敷地権の設定がないマンションの問題点

敷地権の設定がなくても、売買取引自体は可能です。

敷地権が設定されていない場合でも専有部分と敷地利用権の分離処分は禁止されているため、実際のマンション売買において大きなトラブルとなるケースはないでしょう。

しかし、下記2つの問題点を抱えている可能性が高いといえます。

  • 1.登記簿の取得や確認に手間がかかる
  • 2.管理組合がうまく機能していない恐れがある

それぞれの問題点について、詳しく解説していきます。

1.登記簿の取得や確認に手間がかかる

敷地権の設定がなく、専有部分と敷地利用権が別々の場合、登記簿の情報を取得したいときは個別に申請しなければいけません。

また、敷地権の設定がない場合、土地の登記簿には「土地上の建物を所有する人全員」が記載されます。

区分所有者が全員記載されてしまうため情報も多くなり、確認に手間がかかるでしょう。

2.管理組合がうまく機能していない恐れがある

既存のマンションが改めて敷地権を設定するには、管理組合が主導して区分所有者の同意を得る必要があります。

特別な事情がない限り、敷地権の設定を放置しているマンションは管理組合がうまく機能していない恐れがあります。

敷地権が設定されなかった経緯にもよりますが、管理組合が機能していないと、敷地権だけでなく日々の管理や修繕も適当になっているかもしれません。

古いマンションを購入するときは敷地権が登記されているか確認しよう

1983年以前からある古いマンションを購入するときは、マンションの敷地権を確認するとよいでしょう。

そうすれば、敷地権の設定がないマンションの問題点は回避できます。

敷地権については、不動産の所在地を管轄する法務局から登記事項証明書(登記簿謄本)を閲覧・取得すれば確認できます。

登記簿は公開されているものなので、不動産と直接関わりのない人でも取得可能です。オンラインの登記情報提供サービスもあるので利用してみましょう。

参照:法務局「管轄のご案内」

参照:財団法人民事法務協会「登記情報提供サービス」

専有部分と土地の共有持分が常に同じ権利設定となるよう注意しよう

敷地権の設定がないマンションを購入する際は、専有部分と土地の共有持分が同じ権利設定となるよう気をつけないと、トラブルの元となります。

とくに、所有者の名義や抵当権の設定には注意が必要です。

専有部分と土地の共有持分で所有者が違ったり、抵当権が実行されて専有部分と土地の共有持分どちらかが差し押さえられてしまうと、賃料請求や立ち退き請求といったトラブルになるかもしれません。

敷地権が設定されていれば所有者の名義や抵当権の設定も一元化されますが、敷地権の場合はすべて個別に設定するため、権利の内容に気をつけましょう。

敷地権のないマンションを売却するなら買取業者に相談がおすすめ

敷地権のないマンションを所有している場合、権利関係が複雑になっていたり、管理組合が機能せずトラブルになっているケースが多いでしょう。

築年数が古いと、単純に経年劣化で価値が下がってしまうという問題もあります。

そのようなマンションは売却しにくく、仲介業者にも相談しても買主が現れなかったり、仲介そのものを断られて困っている人は多いと思います。

そこで、敷地権のないマンションを売却するときは、仲介業者ではなく買取業者に相談しましょう。

とくに、弁護士と連携した共有持分の専門買取業者であれば、区分所有建物の権利関係に関する豊富な知識があるうえ、直接買い取るので高額・スピード買取が可能です。

トラブルがある物件でも現状のまま買い取ってもらえるので、無料査定を利用して売却の具体的なアドバイスを聞いてみましょう。

現代のマンションは敷地権によって「専有部分と土地の分離処分」が禁止されている

敷地権は、権利そのものではなく「マンションの専有部分と土地の共有持分をまとめた登記の形態」です。

敷地権によって専有部分と土地が一体になって管理されており、分離処分はできません。

マンションを売却したいとき、専有部分と土地の共有持分を一緒に売却する必要があると覚えておきましょう。

反対に、マンションを購入するとき敷地権の設定がないようであれば、登記手続きが複雑になるかもしれず、加えて管理組合も機能していない恐れがあるので注意しましょう。

敷地権に関してよくある質問

敷地権とはどんな権利ですか?

敷地権とは、区分所有建物において「建物の所有権」と「土地の共有持分」を一緒にしたものです。権利そのものというより、権利の登記形態を指す言葉です。

敷地権が設定されると、どのような違いがあるのでしょうか?

敷地権が設定されることで登記事務がシンプルになり、手続きが簡略化されます。具体的には、建物部分の名義変更をすれば土地部分の名義変更も一緒におこなわれます。また、敷地権によって建物部分と土地部分を分離して処分することが禁止されています。

敷地利用権という言葉を聞いたのですが、敷地権とは違うのですか?

はい、違います。敷地利用権は区分所有建物における「土地の共有持分」そのものを指し、建物の所有権と土地の共有持分をまとめた「登記の形態」である敷地権とは別のものです。

敷地権割合という言葉を聞いたのですが、これはなんですか?

敷地権割合とは、区分建物のなかにある全専有部分のうち、各専有部分がどれくらいの割合になるかを表します。区分所有者の固定資産税や相続税を算出する際、敷地全体の課税標準額に敷地権割合をかけて計算します。

敷地権のないマンションはありますか?また、敷地権が設定されていないと不都合はありますか?

敷地権は1983年の区分所有法改正で制定されたものなので、法改正前からあるマンションでは敷地権の設定をしていない場合があります。登記簿の記録内容が複雑である恐れと、マンションの管理組合がうまく機能しておらず敷地権の設定を放置している可能性があるでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です