「他共有者がローンの支払を怠ったために共有持分が差し押さえられた」
「共有者が共有持分を借金の担保にしていた」
このような理由で共有持分が競売にかかることがありますが、競売になっても「共有持分のみを買い取る人はあまりいない」と思う人は多いのではないでしょうか。
しかし、共有持分を運用して利益を出そうとする不動産業者や投資家が存在し、競売に参加してくるケースはよく見られます。
では、他共有者の共有持分が第三者に渡るとどうなるのでしょうか。
この記事では共有持分が競売となってしまったときに起こりうることや、その対処法をわかりやすく解説していきます。

- 共有持分が競売かけられたときに起こりうるトラブルと解決法を知っておこう。
- 他共有者の持分が落札されたら共有関係から抜けるのがおすすめ。
- 競売にかけられる前に対処するのがベスト。
他共有者の共有持分が第三者に落札されると起こりうること
競売にかけられた共有持分を落札するのは、主に不動産業者や投資家です。
共有持分を利用する目的で落札する人はほとんどいません。
では、共有持分を買い取った不動産業者や投資家は次にどのような行動に移るのでしょうか。
共有持分が競売にかけられた場合に起こりうることを説明していきます。
落札者から持分の買取や売却を持ちかけられる
不動産業者や投資家が利益を出す方法の一つとして、共有持分を落札した価格よりも高値で売却することがあります。
共有持分は、持分だけ持っていても活用や売却が自由にできません。
そこで持分をすべて所有して活用しようと考えたり、上記を理由に共有者へ買取を持ちかけることが予想されます。
通常であれば適正な価格での買い取りを持ちかけられるため、そこで売却するのも一つの解決方法です。
しかし、中には悪質な不動産業者や投資家もおり、著しく低い価格での買い取りを持ちかけられることもあるため注意しましょう。
不動産業者や投資家からの買取請求に強制力はありませんが、プロである不動産業者や投資家との交渉は不利であることが一般的です。
共有物分割請求訴訟を起こされる
不動産業者や投資家からの買取請求を拒否した場合に、共有物分割請求訴訟を起こされる可能性があります。
共有物分割請求権は共有者全員に認められた共有物の分割を求める権利のことです。
基本的には共有者から共有物分割請求をされたのちに話し合いの場を設けますが、話し合いで解決できないようであれば訴訟に進みます。
とくに共有者が身内ではなく利益を出すことを目的とした第三者の場合、話し合いによる解決が難しく訴訟になってしまうケースが多くあります。
訴訟の結果次第では不動産全体を競売にかけることにもなりかねません。
共有物分割請求については、こちらの記事をご覧ください。
共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説
他共有者の共有持分が競売にかけられたときの解決方法
他共有者の共有持分が競売となり、第三者の手に渡ってしまうと買取請求や訴訟を持ちかけられる可能性があるのは前述したとおりです。
ただ、なるべくなら訴訟などという事態は避けたいと思う人が多いのではないでしょうか。
そのためには、競売にかけられる前などなるべく早い時点で対処することが望ましくなります。
共有持分が競売となってしまったときの解決法について説明していきます。
競売にかけられる前であれば持分を任意売却で買い取る
他共有者の持分が差し押さえられそうなことが事前にわかっているなら、競売にかけられる前に他共有者の持分を任意売却で買い取り、自分の持分とする方法があります。
共有持分が差し押さえられる前であれば、不動産を取引することは自由なので共有者から直接買い取れます。
この場合、共有者間での交渉により自由に価格設定ができますが、あまりに市場相場よりも低く設定してしまうと贈与とみなされ、贈与税が発生することがあるので注意しましょう。
詐害行為取消となる可能性がある
詐害行為取消権とは、債務者が十分な返済資金を確保しないまま財産を処分したときに、その処分を債権者が取り消せる権利です。
債権者が不動産を担保にしており、かつ債務者が不動産を売却してしまうと返済ができなくなることを知った上で任意売却をしてしまうと、債権者は詐害行為取消権を行使する可能性があるので注意しましょう。
詐害行為取消権の詳細は民法第424条から426条を参考にしてください。
競売にかけられた他共有者の持分を自分で落札する
競売になった共有持分が落札前であれば、自分で落札することができます。
共有持分を落札することで、自分の持分割合が増えると共有不動産の利用もしやすくなります。
また、競売での価格は市場相場よりも低い価格であることがほとんどです。
そのため、不動産を手放したくなく、資金も用意できるなら自分で落札するのもよいでしょう。
落札者へ持分の買取を持ちかける
落札後であれば、落札者に買取を持ちかける方法があります。
ただし、前の項目でも説明したように、落札者は利益を得る目的で共有持分を落札していることがほとんどです。
そのため、「落札価格+見込んでいた利益」でないと買取を拒否される可能性があります。
資金が用意できそうであれば、落札後に交渉するよりも自分で落札するほうがよいでしょう。
自分の持分を第三者に売却して共有関係から抜ける
前の項目で述べたように、他共有者の持分が第三者の手に渡ってしまうと、不動産業者や投資家から買取請求や訴訟を持ちかけられることがほとんどです。
そこで、自分の持分も第三者へ売却し、共有関係から抜けることで解決する方法があります。
共有持分のみでの利用や売却は難しいため、個人の買主を探すのは難易度が高い作業となります。
そのため、共有持分の売却は専門の買取業者へ依頼するのがおすすめです。
自分の持分を放棄して共有関係を解消する
共有関係から抜ける方法として「持分の放棄」があります。
持分の放棄は、自分の共有持分を放棄して他の共有者に分配させるというものです。他共有者の同意は必要なく、自分の意志だけでおこなえます。
ただし、放棄そのものは自分の意志でおこなえても、それを証明するための「登記」は他共有者の協力が必要になります。
持分の放棄により共有関係から抜けたい場合は、弁護士に相談するのがよいでしょう。
持分の放棄に関しては、別の記事で解説しています。
共有持分は放棄できる!放棄の手順や放棄後の登記も詳しく解説します
他共有者が競売におちいる前にできること
競売にかけられた後でも対処できる方法があるとはいえ、できることなら競売となる前に解決したいと思う人が多いのではないでしょうか。
顔も知らない第三者と共有関係になる可能性など、面倒事を避けたいのであれば先手を取って対応する必要があります。
他共有者の共有持分が競売となる前にできることを説明していきます。
共有不動産全体で一括売却する
共有者と共同で不動産を一括売却し、その売却利益で負債を返済することで競売を阻止できます。
共有持分だけでの売却は需要が低く、市場相場よりも低い価格での売却となってしまうことがほとんどです。
それに比べて、一括売却であれば市場相場と変わらない価格で売却交渉ができるメリットもあります。
共有者の代わりに負債を支払う
債権者と交渉して、共有者の負債を支払うことで不動産が競売にかけられるのを防ぐ方法があります。
その場合、のちに返還請求が有効となるように共有者とは書面による借用書を残しておくとよいでしょう。
一般的には共有者に返済能力がないことが多いため、負債を支払う代わりに他共有者の共有持分を取得するケースが多いようです。
のちのトラブルを防ぐために、弁護士に間に入ってもらうのがおすすめです。
他共有者の持分が競売になったら自分の持分も売却しよう
競売で共有持分を落札するのは主に不動産業者や投資家です。
共有持分を落札した不動産業者や投資家は、買取請求や売却を持ちかけて利益を得ようとすることが一般的です。
買取請求に法的効力はありませんが、拒否すると共有物分割請求訴訟を起こされてしまうこともあります。
そういった事態を回避するには、自分の持分も売却して共有関係から抜けてしまうのが、手元に売却利益も入るのでおすすめです。
また、資金がある場合は自分で落札したり、買取請求に応じるのもよいでしょう。
状況によっては競売となる前に解決できる方法もあるので参考にしてみてください。