持分放棄後の未登記は登記引取請求訴訟で解決!概要や費用について詳しく解説します

登記引取請求訴訟 概要

共有持分を放棄した後の登記において、他共有者の協力を得られずに困っている方も少なくないと思います。

登記しないと不動産の所有権は移ったことにならず、固定資産税も支払い続けなければいけません。

このように他共有者の協力を得られないときの解決策として、登記引取請求訴訟があります。

ただ、本当に訴訟を起こすべきなのか悩んでいる方も多いのではないのでしょうか。

この記事では、登記引取請求訴訟の概要を詳しく解説するとともに、どういったときに訴訟を起こしたほうがよいのかについても触れていきます。

※ちなみに、共有持分の放棄のやりかたは別の記事で解説しています。そちらもぜひご参照ください。
共有持分 放棄 共有持分は放棄できる!放棄の手順や放棄後の登記も詳しく解説します

この記事のポイント!
  • 登記が完了しないと持分の放棄は成立しない。
  • 共有者に対して持分登記を求める訴訟を起こせる。
  • 登記引取請求訴訟は原則棄却されないので、話し合いでの解決が難しいときの最終手段。

登記引取請求訴訟は「共有者に登記の引取を求める」という登記引取請求権を行使すること

持分の放棄をした後、相手が登記に協力してくれないと固定資産税の納税義務などが変わらずにかかってしまいます。

そこで、登記に協力してくれない相手に対して「登記名義を引き取るべき」と訴訟を起こすことができます。これが登記引取請求訴訟で、そのような主張ができることを登記引取請求権といいます。

法律上、登記引取請求権を認める条文や規定はありませんが、以下の判例により双方向からの登記請求が認められ、活用されています。

「真実の権利関係に合致しない登記があるときは、その登記の当事者の一方は他の当事者に対し、いずれも登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請求権を有するとともに、他の当事者は右登記請求に応じて登記を真実に合致せしめることに協力する義務を負うものというべきである。」
引用:最高裁判所 判例(昭和36年11月24日)

登記引取請求訴訟が認められると、単独で登記申請ができるようになります。

登記請求権と登記引取請求権の違い

不動産の登記手続きにおいての「登記権利者」と「登記義務者」とは以下のとおりです。

  • 登記権利者・・・不動産の権利を取得した者
  • 登記義務者・・・不動産の権利を失った者

登記の共同申請が必要な場合、片方の協力が得られないときに協力を要請する権利があります。

  • 登記権利者から登記義務者に協力を要請する権利→登記請求権
  • 登記義務者から登記権利者に協力を要請する権利→登記引取請求権

つまり、登記請求権と登記引取請求権の違いは、登記の協力を要請するのが不動産の権利を取得した側であるか、失った側であるかです。

持分放棄による登記引取請求訴訟は原則棄却されない

次の条文が民法第255条に書かれています。

民法第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。引用:e-Govポータル「民法第255条」

共有者の誰かが持分を放棄したら、その持分は他共有者へ持分割合に応じて分配されることが民法により定められているのです。

そのため、他共有者の意思に関係なく持分が分配されることになります。他共有者が登記に協力することを拒否したとしても、民法に則って持分放棄者側の登記引取請求訴訟は原則棄却されないことが一般的です。

登記引取請求権には原則5年もしくは10年の消滅時効がある

不動産などの財産に対する権利には、大きく物権と債権にわけられます。

物権は「物に対して直接的に支配する権利」で、債権は「特定の人になにかの行為を求める権利」とされます。

物権には「何年たったら消滅する」という消滅時効はありませんが、債権には存在します。

登記引取請求権は債権的な請求権とされされるので、権利を行使できると知ったときから5年間行使しないとき、もしくは権利を行使できるときから10年で消滅するという消滅時効が適用されます。

ただし、消滅時効は事情に応じて異なりますので、迷ったら早めに弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

登記引取請求訴訟を起こす前にできること

前の項目で登記引取請求訴訟は基本的に棄却されないと述べましたが、できれば訴訟までは起こしたくないと考えている人も多いのではないでしょうか。

しかし、実際に訴訟を起こさなくても、訴訟の可能性があると示すことで話し合いを有利に進められるとも考えられます。

この項目では、登記に協力しない共有者に対して訴訟を起こす前にできることを説明していきます。

登記引取請求訴訟を盾に共有者を説得する

「持分放棄の登記」を目的とした登記引取請求訴訟は、起こせば基本的に負けることはありません。

つまり、他共有者がいくら登記の協力を拒んでも、訴訟さえ起こせば最終的にほぼ間違いなく登記できるということです。

ただし、訴訟には双方に労力や費用もかかります。

「裁判で争うのはお互いにメリットがない」ということを冷静に伝え、登記に協力してもらうように説得するのがよいでしょう。

しかし、話し合いをしても共有者が納得してくれなかったり、そもそも話し合いに応じてくれない場合は登記引取請求訴訟を起こしましょう。

持分放棄における登記引取請求訴訟の流れと費用

登記引取請求訴訟の流れと、費用について説明していきます。

ただし、必要な書類や費用に関しては、不動産の状況や自治体によって異なる場合もあります。

実際に訴訟を起こす際は、不動産に詳しい弁護士に相談したり、不動産を管轄する自治体に問い合わせるのが確実です。

共有者へ内容証明郵便を送り放棄の通知をする

持分の放棄を決めたら、内容証明郵便を共有者へ送り放棄の通知をしましょう。

内容証明郵便は「いつ、どんな内容を、誰から誰へ通知したか」を証明する制度です。

内容証明郵便に法的拘束力はなく送ることは義務でもありませんが、持分放棄の意思を示したという証拠になるため、送った方がよいでしょう。

ちなみに、内容証明郵便で証明できるのは上記の内容を含む文書が存在する事実であり、文書内容の真偽を証明するものではありません。

「内容証明郵便さえ送れば嘘の内容でも認められる」わけではないことに注意しましょう。

登記引取請求訴訟の準備をする

登記に共有者の協力が得られず、登記引取請求訴訟の提訴を決めたら訴訟の準備をします。

登記引取請求訴訟は通常の訴訟よりも立証事項が少ないため、訴訟から判決までの期間が比較的短い傾向にあります。

それでも半年から1年程度はかかることが一般的なので、訴訟の準備は早めに始めたほうがよいでしょう。

登記引取請求訴訟にかかる費用

登記引取請求訴訟にかかる費用は以下のとおりです。

  • 弁護士への費用
  • 必要書類の取得費
  • 裁判所に納める手数料

それぞれ説明していきます。

弁護士への費用

弁護士に依頼する場合、かかる費用は弁護士事務所によって大きく変わりますが、相談金や成功報酬などすべて含めると50万円を超えることもあります。

民事訴訟では弁護士に頼らない「本人訴訟」も認められているので、費用を抑えたいときは本人訴訟を検討するのもよいでしょう。

必要書類の取得費

登記引取請求訴訟に必要な書類は基本的に以下のとおりです。

  • 内容証明郵便など証拠書類の写し
  • 登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書

内容証明郵便など証拠書類の写しはコピー代がかかります。内容証明郵便を送る場合、費用は以下の通りです。

郵便の基本料金+一般書留の加算料金(+435円~損害要償額により変動)+内容証明の加算料金(440円~枚数により変動)

固定資産評価証明書の発行手数料は自治体によって異なり、東京23区の場合は1件400円が基本となります。詳しくは、不動産所在地を管轄する市区町村に問い合わせてみましょう。

参照:東京都主税局「固定資産に関する証明書等の手数料について」

登記事項証明書は登記所又は法務局証明サービスセンターの窓口のほか、オンラインからも申請できます。こちらも交付方法によって手数料が変わりますが、480円~600円となっています。

参照:法務省「不動産登記,商業・法人登記における主な登記手数料」

裁判所に納める手数料

手数料は、裁判手続きを利用する際に裁判所に納付するもので、裁判の種別によって定められています。

収入印紙を使い、訴状や申立書といっしょに納付しますが、手数料の金額が100万円を超えると日本銀行やその他代理店に現金で納めることもできます。

金額については、最高裁判所のページを参考にしてください。

参照:最高裁判所ウェブサイト

持分放棄をするときの注意点

持分の放棄は他共有者の許可はいらず、自分の判断でおこなえます。

しかし、共有者へ放棄の通知をしただけでは手続きは完了しません。

また、放棄によって贈与税が発生する可能性があることも頭に入れておきましょう。

持分放棄をするときの注意点を詳しく説明していきます。

持分移転登記をしないと放棄が完了したことにはならない

持分の放棄を決めて共有者に通知を送ったとしても、持分移転登記をしないと持分の移転は完了しません。

固定資産税の支払いは不動産における登記上の所有者に支払い義務があります。

そのため、持分の放棄を完了させるには共有者に協力してもらい、持分移転登記をしましょう。

放棄をした年の固定資産税は払う必要がある

共有者に協力してもらい、持分放棄が完了しても固定資産税の納付書が届くことがあります。

なぜなら、固定資産税はその年の1月1日時点での所有者に支払い義務があるためです。

自分が代表者でなく納付書が届かなくても、放棄をした年は固定資産税を納付する必要があります。他共有者と話し合って、どのように納付するか決めましょう。

他共有者に贈与税がかかる場合がある

持分を放棄すると、その持分は他共有者へ持分割合に応じて帰属されます。

他共有者は無償で持分を譲り受けることになるため、税法上は贈与とみなされ、贈与税が発生する場合があります。

贈与税は、年間で受け取る総額が110万円以下であれば控除されます。すべての贈与を合算してから控除されるので、贈与を受ける人は年間で受けとる総額に注意しましょう。

話し合いで解決が難しいときは登記引取請求訴訟を検討しよう

持分放棄後の登記には共有者の協力が必要です。

持分を放棄しても登記を完了しないと固定資産税の納税義務はなくなりません。

話し合いによる解決が望ましいですが、難しい場合は「登記引取請求訴訟」を提訴できます。

登記引取訴訟は基本的に棄却されず、訴訟が認められると単独で登記申請ができるようになります。

また持分を放棄し登記しても、その年は固定資産税を支払う必要があることを覚えておきましょう。

この記事を参考に登記引取請求訴訟に関する理解を深め、なるべくなら訴訟の前に話し合いで解決できるとよいですね。

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