共有持分における使用貸借の概要や強制退去させる条件|賃料請求が困難な理由も解説!

共有持分 使用貸借

「自分の許可なく共有不動産の土地や建物が利用されている」とお悩みの人は多いかと思います。

金銭を介する「賃貸借」とは違い、無償で共有不動産を貸す「使用貸借」は話し合いを介さず成立しているケースもあるため、契約が曖昧になりがちです。

また、共有不動産の貸し出しには共有者の同意が必要ですが、その同意を取っておらず「違法な使用賃借」の状態になっているケースもあります。

違法な使用賃借は、利用者の強制退去も可能となります。また、違法ではない使用貸借も過半数の持分があれば契約解約が可能です。

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この記事のポイント!
  • 他共有者の許可なく共有不動産を使用貸借することは違反。
  • 使用貸借で居住している人物を退去させることはできるが賃料は徴収できない。
  • 使用貸借の賃料を取れない場合は共有持分だけ売却することも検討してみよう。
目次
  1. 共有不動産は使用貸借として無償で貸すことができる
  2. 共有不動産の使用貸借が違法になるケースもある
  3. 持分割合によっては共有不動産から退去させることも可能
  4. 使用貸借している共有不動産の賃料を取ることはむずかしい
  5. 賃料請求ができないなら共有持分だけを売却するのも得策
  6. 賃料の取れない共有不動産は持分だけ売却して現金化しよう

共有不動産は使用貸借として無償で貸すことができる

通常、人に不動産を貸すときは賃料を取るのが普通です。しかし、無償で貸し出すケースもあります。

金銭を介さないで無償で貸す「使用貸借」と、金銭を介して有償で貸す「賃貸借」については、法律上では全くの別物として扱われます。

共有不動産でも、使用貸借することは可能です。ただし、共有者全員が同意している場合に限ります。

まずは「使用貸借」と「賃貸借」の違いを確認しておきましょう。

無償で不動産を貸す「使用貸借」

金銭を受け取らずに無償で不動産を貸す契約を「使用貸借」といいます。

わかりやすい例では「兄弟の家に無償で居候している場合」などが使用貸借になります。

家を建てるために親から土地を借りている場合など、使用貸借は多くありますが、ほとんどの場合が口約束だけでおこなわれるため、契約を法的に証明することはむずかしいケースがほとんどです。

ちなみに、民法では以下のように解釈されています。

民法第593条 
使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。引用:e-Govポータル「民法第593条」

金銭を介して不動産を貸す「賃貸借」

不動産を貸す代わりに金銭を受け取る契約は「賃貸借」と呼ばれます。

アパートやビルのテナント契約など、不動産の貸し借りで一般的に用いられる方法です。

賃貸借では契約書の作成が義務付けられているので、権利が曖昧になるケースは少ないです。

民法第601条 
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる引用:e-Govポータル「民法第601条」

共有者の1人が住む場合も使用貸借or賃貸借の関係になる

不動産に居住する人が共有者の誰かであっても、他の共有者と不動産を貸し借りしている状態といえます。

なぜなら、共有不動産は共有者全員に、不動産全体を使用する権利が等しくあるからです。

例えば、AさんとBさんが1/2ずつ共有持分をもっている不動産があるとします。
Aさんが自宅として不動産を占有している場合、Bさんはその不動産を使用できません。言い換えれば、AさんがBさんの「不動産を使用する権利」を邪魔していることになります。
そのため、BさんはAさんに対して、共有持分の割合に応じた家賃を請求できます。不動産の家賃相場が10万円なら、1/2の5万円が請求可能です。
以上のことから、BさんがAさんから家賃を取っていれば賃貸借、賃料を取っていない場合は使用賃借が成立するとみなされます。

居住者が共有者の場合、使用貸借の解除は非常に困難です。上記の例の場合、Aさんを追い出そうとすれば、今度はAさんの「不動産を使用する権利」を阻害することになるからです。

共有不動産の使用貸借についてトラブルになっているとき、居住者が共有者の場合は、賃貸借契約に切り替えてもらうよう交渉する必要があります。

もしくは、共有持分を売却して、共有状態そのものを解消するのもひとつの手段でしょう。

共有不動産の使用貸借が違法になるケースもある

共有している不動産は全員の共有物なので、個人が勝手に貸し出すと違法になるケースもあります。

共有者全員の同意がない場合などには、使用貸借を違法として不服を申し立てることが可能です。

そうした場合、使用貸借の契約が「短期間」であるか「長期間」であるかがポイントになります。

不動産の貸し借りについて、民法では3~5年までの契約を「短期賃貸借」としています。

民法第602条
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三 建物の賃貸借 三年
四 動産の賃貸借 六箇月

引用:e-Govポータル「民法第602条」

条文によれば、一般的な土地の賃貸借は5年、建物の賃貸借は3年が短期賃貸借の上限とわかります。

短期間か長期間かによって、使用貸借に必要な条件が変わるため、契約内容によっては強制的に解約できる可能性があります。

短期間の使用貸借契約で持分割合過半数の同意がないケース

短期間の使用貸借契約(建物の場合3年・土地の場合5年まで)は、法律でいうと「管理行為」にあたります。

法律上では、共有不動産の性質を変えない範囲で利用したり改良する行為を「管理行為」といいます。
具体的には、不動産を貸す契約を結んだり、土地の用途を変えずに整地することなどです。

共有不動産を貸すような「管理行為」には過半数の持分が必要であることが法律で決められています。

民法第252条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。引用:e-Govポータル「民法第252条」

ですので、契約が短期間かつ貸主の持分割合が過半数に満たなければ、使用貸借を解約することが可能です。

長期間の使用貸借契約で共有者全員の同意がないケース

長期間の使用貸借契約(建物の場合3年・土地の場合5年以上)は、法律では「変更行為」として扱われます。

「変更行為」とは、共有不動産の性質を物理的または法律的に変えてしまう行為のことです。

長期間の使用貸借も法律的な変化を伴うと判断されるので、「変更行為」という括りに入ります。

民法では、共有不動産の「変更行為」には共有者全員の同意が必要であると定められています。

民法第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。引用:e-Govポータル「民法第251条」

そのため、長期間の使用貸借は共有者全員の合意がないと違法になり、反対するだけで解約させることが可能です。

ただし、使用貸借が「管理行為」と「変更行為」どちらにあたるかは裁判官の判断によるので、注意が必要です。

返還期限のない使用貸借を違法だとした判例

過去の裁判では、返還時期を決めていない使用貸借を「変更行為」と判断した判例があります。

東京地裁で平成18年1月26日判決されたケースを紹介します。

①母親Aさんが6/10、三男Cさんが4/10の持分割合で土地を共有していた。
②長男Bさんは建物所有を目的とする使用貸借契約によって、返還期限を決めずにAさんから土地を借りた。
③Bさんが借りた土地に新しい建物を建てようとしたところ、Cさんが反対した。

この裁判では、「所定の5年を優に超える相当長期間にわたり存続させる結果となること」ため、使用貸借契約が「変更行為」に当たると判断されています。

そのため、AさんとBさんの使用貸借契約は無効であるとして、建物の建設を禁じました。
参照:一般財団法人不動産適正取引推進機構 RETIO No.66

このような過去の事例もあるため、返還期限のない使用貸借契約は無効にできる可能性が高いです。

共有持分の使用貸借は法律で認められていない

一方で「共有持分を借りれば、共有不動産を無償で利用しても違法ではない」という考え方もできます。

なぜなら「共有持分の持ち主は共有不動産を利用できる」という権利が民法で認められているためです。

民法第249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。引用:e-Govポータル「民法第249条」

しかし、賃貸借に関する部分では、貸し借りできる対象を「物」と指定しています。

民法第601条
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。引用:e-Govポータル「民法第601条」

共有持分は目に見えない権利でしかなく、この法律上でいう「物」、つまり現物ではないため、使用貸借が認められていません。

こうした法的根拠に基づき、もし利用者が反対してきたとしても、使用貸借契約を無効にできます。

持分割合によっては共有不動産から退去させることも可能

共有者全員の許可を得ていない場合など、違法な使用貸借を見落としているケースは多いです。

    【退去させることのできる使用貸借契約】

  • 3~5年以上の使用貸借契約であれば、1人でも反対すれば違法
  • 3~5年未満の使用貸借契約でも、貸主の持分割合が過半数を超えなければ違法

こうした違法な使用貸借契約であれば、利用者を合法的に退去させることができます。

民法でも「貸主が返還を求めた場合、借主は応じなければならない」と定められています。

しかし、利用者が素直に退去せず、抵抗するケースも少なくありません。

ここでは、そうした場合でも退去させることのできる法律について把握しておきましょう。

違法ではない使用貸借も過半数の持分があれば契約を解約できる

よく問題になるのが「そもそも使用貸借の解約を貸主側で申請できるのか」という点です。

使用貸借の契約が自由にできないように、解約も個人ですることは不可能という解釈もできますが、過去の最高裁では、賃借契約の解約が「管理行為」であると判断した例があります。

共有物を目的とする貸借契約の解除は、共有者によつてされる場合は、民法第二五二条本文にいう「共有物ノ管理ニ関スル事項」に該当すると解すべきであり、右解除については、民法第五四四条第一項の規定は適用されない。

引用:最高裁 昭和39年2月25日判例

そのため、過半数の持分があれば、違法ではない使用貸借契約を後から解約することも可能です。

使用貸借には借地借家法が適用されない

ケースによっては、借主を守る「借地借家法」という法律が問題になります。

これは「建物所有が目的の場合に限り、土地を借りる期間を30年まで保証する」という法律です。

借地借家法第3条
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。引用:e-Govポータル「借地借家法第3条」

しかし、使用貸借は貸主の権利を法的に証明(登記)していないため、借地借家法が適用されません。

そのため「貸主はいつでも返還請求できる」という民法の通り、30年経過していなくても土地の返還を要求できます。

貸主が死亡した場合も使用貸借を解約できる

貸主あるいは借主が亡くなったとしても、どちらも使用貸借契約を解約できます。

まずは貸主が亡くなった場合を見ていきましょう。

通常の遺産相続のように、貸主の権利は相続できるので、相続人が新しい貸主になります。

そのため、通常の使用貸借と同じように、貸主から一方的に契約を解約して問題ありません。

一方で、借主が亡くなるケースでは「使用貸借における借主の権利は相続できない」という法律が適応されます。

民法第599条
使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。引用:e-Govポータル「民法第599条」

借主の死亡に伴って、使用貸借は自動的に解消されるので、相続人に不動産の利用権はありません。

前の借主が死亡しても遺族などが共有不動産に居座る時は、強制的に退去させることが可能です。

使用貸借している共有不動産の賃料を取ることはむずかしい

「使用貸借している利用者から賃料を受け取りたい」という人も少なくありません。

賃貸借と同じように不動産を貸しているのだから、賃料を徴収したいと思うのは当然の考えです。

借主による共有不動産の無断利用が「不当利得」に認められれば、その対価として賃料を請求することが可能ですが、裁判官の判断によります。使用貸借に対する賃料の請求が認められるケースは少ないです。

不当利得に該当すれば使用貸借でも賃料請求できる

許可なく共有不動産を利用していることに対して、対価を請求する権利があるという考えは正しいです。

法律でも、借主が不当に利用して得た利益「不当利得」については返済する義務があるとされています。

民法第703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。引用:e-Govポータル「民法第703条」

不当利得とは「法的な手続きを経ずに、他人の物で得た利益」のことです。

例えば、アパートを借りる場合は賃貸契約という法的な手続きを経ているので、借主の不当利得にはなりません。

同じように使用貸借契約が正当であると判断された場合、借主の不当利益として認められず、賃料を請求できないため注意が必要です。

使用貸借を黙認した場合は不当利得に認められないので賃料請求が難しい

共有不動産の利用を黙認していたケースなどでは、使用貸借契約が成立したと判断されることがあります。

その場合、不当利得に該当しないため賃料を請求することは難しいです。

これとは別に、「借りている物であっても、10~20年以上占有すれば所有権を取得できる」という法律があります。

民法第162条
1.20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2.10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。引用:e-Govポータル「民法第162条」

そのため、使用貸借が10~20年以上続くと、不動産を借主の所有物にされてしまう可能性があります。

賃料請求ができないなら共有持分だけを売却するのも得策

「共有不動産は必要ないので現金にしたい」という場合、共有持分を売却してしまうのもひとつの手段です。

使用貸借している利用者を退去させることは簡単ですが、賃料は徴収できないケースが多いです。

これまでの金銭的負担が退去によって解消されるわけではなく、借主を退去させても結果として損失の方が大きくなってしまう可能性もあります。

そのため、共有不動産を使う予定がないのであれば、売却したほうが得をするケースも多いです。

売却する場合は、共有持分専門の買取業者に依頼するのをおすすめします。

共有持分はその特殊性から、一般的な不動産会社では取り扱ってくれません。使用貸借で賃料が得られない物件ならなおさらです。

共有持分専門の買取業者のなかでも、弁護士と連携している業者なら高額・スピード買取が可能でしょう。使用貸借でトラブルになっている共有持分でも、積極的に買い取ってくれます。

使用貸借されていても不動産の税金は貸主が負担しなければならない

不動産を所有していると避けては通れない問題が「税金」です。

共有不動産であっても、固定資産税と都市計画税を負担する必要があります。使用貸借のせいで不動産を利用できないとしても、税金は毎年負担しなければなりません。

税金を払ってまで不動産を共有するべきか、再度考えてみるのもよいでしょう。

税金についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

共有持分 固定資産税 共有関係の解消で支払いから逃れられる!共有持分の固定資産税納付方法について詳しく解説

共有持分を売ることで賃料代わりの資金が手に入る

共有持分だけを持っていても、共有している不動産自体の売却はできません。

共有不動産の売却も長期間の使用貸借と同じく「変更行為」に当たるため、共有不動産を売りたくても売却できないケースは多々あります。

使用貸借ならさらに、無償で不動産を貸すような共有者が同意するとは考えにくいですが、共有持分だけであれば、個人で自由に売却することが可能です。

共有持分を売却するとまとまったお金が手元に入るので、賃料の代わりとして活用できます。

共有持分を売却するなら専門の買取業者へ依頼がおすすめ

共有持分の売却は、一般的な不動産会社よりも、共有持分専門の買取業者に依頼したほうが高額かつ早く売却できます。

理由は、共有持分のみを取得しても不動産を自由に使えないため、需要が低くなるからです。

共有持分の市場価値は、本来の価値から半額になるのが一般的です。

しかし、共有持分を専門に取り扱う買取業者であれば、共有不動産の権利調整や収益化のノウハウがあるため、高額で買取が可能になります。

多くの業者は無料査定をおこなっており、実際に売却するかは査定価格を見た後に決められます。

当サイトでもおすすめできる共有持分専門の買取業者を特集しているので、そちらもぜひ参考にしてください。

共有持分おすすめ買取業者 【共有持分専門の買取業者おすすめ16選!】共有名義の不動産が高く売れる買取業者の特徴と見極めポイント!

賃料の取れない共有不動産は持分だけ売却して現金化しよう

この記事では、共有不動産を使用貸借された際の対処法を解説しました。

共有者でもある貸主の権利に基づき、使用貸借している利用者をいつでも追い出すことができますが、賃料を請求することは難しいので、不動産自体が必要ないのであれば、共有持分を売却してしまうのもよいでしょう。

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