共有名義の工場を売却する3つの方法!売却費用や必要書類も詳しく解説!

共有名義の工場 売却

事業の廃止や資金調達を目的に、工場を売却したいと考える人も多いでしょう。

工場の売却は、一般的な不動産売買と違って法律や経営の知識が重要です。さらに、工場が共有名義であれば、共有者の同意も必要になります。

共有名義の工場を売却したいときは、自分の共有持分のみ売却する方法を検討してみましょう。

共有持分のみの売却なら、共有者の同意は不要です。弁護士と連携している買取業者なら法律知識も豊富なので、高額かつスピーディーな買取ができます。

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共有名義の工場を売却する方法

ひとくちに工場といっても、その規模はさまざまです。

少人数で操業する小さな工場から、面積が1,000㎡を超える大きな工場まであります。

売却方法という観点から考えると、通常の不動産売却のほかに「事業用不動産ならではの方法」も検討するとよいでしょう。

具体的には、下記の3つが売却方法としてあげられます。

  • 1.工場全体を売却する
  • 2.自分の共有持分だけ売却する
  • 3.不動産M&Aをおこなう

【方法1】工場全体を売却する

共有名義の工場を、まるごと売却する方法です。一般的な不動産売却と同様に、仲介業者に売却を依頼するのが一般的です。

ただし、仲介業者は契約の種別によってメリットとデメリットがあるので注意しましょう。

メリット デメリット
専属専任媒介契約 ・1週間に1度、販売状況を報告してもらえる。
・他社と競合しないので、業者側は販売活動に力を入れやすい(早く売れやすい)。
・自分で買主を見つけるのは禁止。
・1社にしか依頼できない。
専任媒介契約 ・2週間に1度、販売状況を報告してもらえる。
・他社と競合しないので、業者側は販売活動に力を入れやすい(早く売れやすい)。
・自分で買主を探してもよい。
・1社にしか依頼できない。
一般媒介契約 ・複数の会社に依頼できる。
・自分で買主を探してもよい。
・他社と競合するので、業者側は販売活動に力を入れにくい(売れるのが遅くなりやすい)。

また、仲介業者ではなく買取業者に直接買い取ってもらう方法もあります。

買取業者は「仲介手数料が不要」「短期間で現金化ができる」などのメリットがあります。反面、売却価格は仲介業者と比べて安くなるのがデメリットです。

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「なるべく高く売りたい」なら工場全体の売却がベスト

工場全体を売却する最大のメリットは、他の方法と比べて高値で売却できる点です。

同じ業種の事業者に売却できれば、機材や什器も一緒に売却できるため、売却コストを抑えられます。

ただし、共有名義の不動産を売却するときは、すべての共有者が売却に同意している必要があります。1人でも反対者がいれば、工場全体の売却はできません。

反対者とは、粘り強く交渉するしかありません。あるいは、共有物分割請求をおこなうという手段もあります。

※共有物分割請求とは?
共有名義の解消を求めて協議・調停・訴訟をおこなう手続き。共有名義の解消方法としては、不動産全体を売却する「換価分割」や、共有者同士で持分を売買する「代償分割」がある。
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【方法2】自分の共有持分だけ売却する

共有名義の工場を売却するときに問題となるのが、共有者の同意です。上記で解説したとおり、共有名義の不動産は共有者全員が同意していなければ売却できません。

しかし、自分の共有持分だけであれば、共有者の同意がなくても売却できます。

※共有持分とは?
共有名義の不動産における、各共有者の所有権。「共有持分1/2」というように、割合で表す。

売却を共有者に通知する義務もないので、共有者と一切関わらないままでの売却も可能です。

ただし、工場がまだ操業中の場合は注意が必要です。第三者が工場の共有持分をもつため、今後の経営に影響が出る可能性があります。

トラブルを避けるためには、例え共有持分のみの売却でも、事前に共有者と相談しておきましょう。

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「自分だけでもすぐに工場を手放したい」なら持分売却がおすすめ

持分売却(共有持分の売却)は共有者との話し合いが不要なので、いつでも自分の好きなタイミングで売却できる点がメリットです。

ただし、共有持分の売却は一般的な不動産売買とはいえません。取り扱い例も少なく、仲介業者に売却を依頼しても断れられるケースや、いつまで経っても売れないケースが多くあります。

そのため、持分売却は専門の買取業者に買い取ってもらうのが基本です。共有持分の専門知識が豊富な買取業者なら、最短数日での高額買取も可能です。

とくに、弁護士と連携している専門買取業者なら、複雑な権利関係の調整や、工場の処分に必要な法的手続きもしっかりとサポートしてもらえます。

【方法3】不動産M&Aをおこなう

法人が工場を売却する方法として、不動産M&Aがあります。不動産M&Aとは、不動産を直接売買するのではなく、株式の売買に伴って不動産の名義を移転する手法です。

簡単にいえば、事業を売ることで工場も一緒に譲渡するという方法です。

また、会社分割によって「不動産を所有するだけの子会社」を設立し、子会社と不動産を売却する方法もあります。

不動産M&Aは法律や経営の知識が必要なので、まずは専門の業者に相談するとよいでしょう。

また、工場全体を譲渡するにあたって、共有者の同意が必要な点は変わらないので注意しましょう。同様に、共有持分の譲渡で同意が不要な点も変わりません。

「高い節税効果」が不動産M&Aの特徴

法人が不動産売却をおこなう場合、法人税や法人住民税、法人事業税などが課されます。事業規模や自治体によって異なりますが、税率は合計で30~34%程度です。

また、法人が建物を売却する場合、消費税も課されます。

一方、不動産M&Aで課税されるのは株式の譲渡所得に対するものだけで、税率は20%程度です。普通に売却するより、税率は大幅に下がります。

ただし、不動産M&Aは専門の仲介業者に高額の手数料を支払うのが一般的です。おおむね売買金額の5~8%で、一般的な不動産売買の仲介手数料より高くなります。

また、不動産M&Aは通常の不動産売買より時間もかかります。早く工場を手放したい場合は不向きといえるでしょう。

工場売却後も事業は続けたい場合の対処方法

工場売却後も、事業は続けたいという人は少なくありません。

理由としては、自身の収入源として事業を維持したい場合や、従業員や取引先への影響をなくしたい場合があげられるでしょう。

工場の売却後も事業を継続できる方法として、下記の2つを紹介します。

  • リースバックをおこなう
  • 不動産M&Aで事業を引き継ぐ

リースバックをおこなう

リースバックとは、売却後に売主が賃貸物件として借りることを条件とした不動産売買です。

工場の所有権は他者に移転しますが、その後は賃料を支払うことで工場を使用し、売却前と同様の操業が可能です。

事業を継続しつつ、工場売却によってまとまった資金を調達できます。

不動産M&Aで事業を引き継ぐ

上記でも解説したとおり、不動産M&Aは工場単体の譲渡ではなく、事業を承継する方法です。

買主側の企業が「事業を継続する」と判断すれば、従業員の雇用や取引先の影響を抑えられます。

ただし、買主側が事業の継続にメリットを見出している必要があります。赤字が続いている場合、不動産M&Aでの事業継続はむずかしいでしょう。

共有名義の工場売却にかかる費用

工場売却にかかる費用は、どのように売却するかで異なります。

具体的には、工場のまま売却するのか、工場を撤去して売却するかで大きく変動します。工場を撤去する場合、解体費用や土壌の浄化作業に多額の出費が必要です。

また、不動産の所有者が法人か個人で、税金の種類も異なるので注意しましょう。

不動産 売却にかかる費用 不動産売却にかかる費用を徹底解説!費用を抑える方法を3つ紹介します

解体費用は1坪あたり3万円から

工場のままで売却できないときは、建物の解体が必要です。

解体費用は建物の構造や建材などによって変わりますが、1坪につき3万円が目安となります。

また、面積が小さすぎても広すぎても、単価は高くなるのが一般的です。面積が10坪未満や50坪以上の場合、1坪あたり5万円程度が目安です。

土壌の浄化費用は1㎡あたり5万円から

汚染物質が発生する工場は、売却前に土壌の浄化作業をおこなうケースがあります。

浄化費用も汚染物質の種類などによって変動しますが、1㎡あたり5万円~10万円が目安です。

土壌の浄化費用を安く抑えるには、事前に土壌汚染調査をおこなうとよいでしょう。汚染の状況を正確に把握すれば無駄な浄化作業を削減できるため、総合的に費用を抑えられます。

税金は法人か個人事業主かで変わる

工場売却にかかる税金は、売主が法人なのか個人事業主なのかで制度が異なります。

法人の税金は会社全体の損益を計算して課税されます。不動産M&Aの解説で節税効果が高いと解説しましたが、他の事業の損益次第で実際の課税額は変わるのです。

例えば、他の事業で損失が出ていれば、不動産の売却益と合算(損益通算)することで、課税額を圧縮できます。

個人事業主の場合、不動産の売却益は他の所得と分離して課税されます。仮に他の所得が赤字でも、工場売却の利益と相殺できない(損益通算ができない)ので注意しましょう。

いずれにしろ、工場売却に伴う税金の計算や申告は、税理士に相談することをおすすめします。税理士なら、個々の状況に合わせた節税方法の提案が可能です。

共有名義の工場売却に必要な書類

共有名義の工場を売却する際、必要となる書類は下記のとおりです。

  • 登記事項証明書と各種図面
  • 登記識別情報もしくは権利証
  • 固定資産税の納税通知書
  • 建築確認済証
  • 物件状況報告書

上記以外にも、個々の状況に応じて必要な書類が追加される場合もあります。

取得に時間のかかる書類もあるので、不動産会社などと相談しつつ、早めに準備をはじめましょう。

登記事項証明書と各種図面

登記事項証明書とは、登記簿に記載された不動産の情報が書かれたものです。登記簿が電子化される前は登記簿謄本ともいいました。

登記事項証明書は、法務局に申請すれば取得できます。最近はオンラインでの申請も可能です。

また、同じく法務局で申請する書類に、下記の図面があります。

  • 公図(もしくは14条地図)
  • 地積測量図
  • 建物図面(各階平面図)

上記は、土地や建物の状況について書かれた図面です。登記事項証明書と一緒に申請すれば、手間が省けるでしょう。

参照:法務局「各種証明書請求手続」

登記識別情報通知書もしくは権利証

登記識別情報通知書もしくは権利証は、新しく名義人となったときに法務局から発行されるものです。

共有名義のように所有者が複数いるときは、それぞれに発行されます。

買主に名義を移転する際、必ず添付しなければいけません。

もしも紛失してしまった場合、再発行はされません。

紛失時は司法書士に依頼して代替書類を作成してもらうか、法務局に申請して「事前通知」という手続きを取る必要があります。

固定資産税の納税通知書

固定資産税の納税通知書は、毎年6月ごろに各都道府県から送付されます。

売却日以降の固定資産税は、買主に負担してもらう形が一般的です。

そのため、固定資産税の納税通知書は、売却時に固定資産税を精算するために必要となります。

ただし、共有不動産の納税通知書は代表者1名にしか送られません。

手元に納税通知書がなければ、代わりに役所で固定資産評価証明書を発行してもらいましょう。

建築確認済証

建築確認証とは、建物が建築基準法の規定にしたがって建築されたことを証明する書類です。

役所から建築会社に発行され、建物の引き渡し時に購入者へ渡されます。

建築確認通知書を紛失した場合、再発行はできません。

紛失した場合、代わりとして建築計画概要書や台帳記載事項証明書が必要です。これらは役所の建築指導課などで発行してもらえます。

物件状況報告書

物件状況報告書は、売主から買主に対して不動産の現況を説明するための書類です。

雨漏りなどの瑕疵(欠点や欠陥)や、引き継ぎ書類の内訳などが記載されています。

基本的には、不動産会社が用意するフォーマットにしたがって作成します。

共有名義の工場売却は手間や費用のかからない「共有持分の売却」を検討しよう

工場は特殊な不動産なので、売却には法律の深い知識が大切です。

加えて、共有名義の場合は他共有者との協議も必要です。

「工場を短期間で、自分だけでも手放したい」といった場合は、自分の判断のみでおこなえる持分売却をしましょう。

専門の買取業者に相談すれば、数日での現金化も可能です。

共有名義の工場についてよくある質問

共有名義の工場は売却できますか?

はい、売却可能です。ただし、工場全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。

工場の共有持分のみ売却することは可能ですか?

はい、売却できます。自分の共有持分であれば自分の意思のみで売却可能です。他共有者に確認を取る必要もありません。

共有持分を売却するときは、どんな業者に相談すればよいですか?

共有持分の取り扱いに不慣れな大手不動産会社より、共有持分を専門としている買取業者のほうが高額で買い取ってもらえるでしょう。とくに、弁護士と連携している専門買取業者に相談するのがおすすめです。→弁護士と連携した買取業者はこちら

工場を売却するとき、どんな費用がかかりますか?

工場を撤去して売却する場合、解体費用や土壌汚染の浄化費用が必要です。解体費用は1坪3万円、浄化費用は1㎡あたり5万円が相場です。

工場を操業したまま売却できますか?

はい、可能です。「工場は売却したいけどその後も事業は継続したい」という場合は、売却後に工場を賃貸物件として借りる「リースバック」がおすすめです。

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