共有名義の建物は建て替え・取り壊しできる?費用の負担割合も解説します

共有名義 建て替え 取り壊し

建物の老朽化などによって、建て替えや取り壊しを検討する人もいるでしょう。

しかし、建物が共有名義の場合は「共有名義の建物を建て替え・取り壊ししてもよい?」といった疑問や悩みがあるかと思います。

結論からいうと、共有名義の建物を「建て替え・取り壊し」するには共有者全員の同意が必要です。

また、共有名義の建物における建て替えや、取り壊し費用の負担割合は持分に応じて決めるのが原則です。

もしも、建て替え・取り壊しの同意が得られない場合や、費用を負担してもらえない場合は、弁護士と提携している買取業者に相談してみてください。

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この記事のポイント!
  • 共有名義の建物を「建て替え・取り壊し」するには共有者全員の同意が必要。
  • 共有名義の建物における建て替えや取り壊し費用の負担割合は持分に応じて決める。
  • 建物を取り壊すと固定資産税や都市計画税が高くなる恐れがある。

共有名義の建物を「建て替え・取り壊し」するには共有者全員の同意が必要

共有名義の建物を「変更」するには共有者全員の同意が必要とされています。

民法第251条

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
引用:e-Govポータル「民法第251条」

共有物の変更とは、建物の売却や取り壊しなど「共有物の形や性質に変更を加えること」です。

つまり、共有名義の建物を建て替えたり、取り壊すためには共有者全員の同意が必要です。

倒壊の危険性が極めて高い場合のみ単独でも「取り壊し」できる

建物の老朽化を放置してしまうと、倒壊や破損などの危険性が高まります。

建物が倒壊してしまうと、近隣住民にも被害を及ぼしてしまうことでしょう。

建物が老朽化していて倒壊の危険性がある場合、その建物の解体は「保存行為」に該当すると考えられます。

民法第252条

共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
引用:e-Govポータル「民法第252条」

つまり、取り壊しを検討する理由が「倒壊の可能性が極めて高い」場合は、単独の判断でも取り壊しをおこなえます。

しかし、他共有者に黙って取り壊しをおこなってしまうと、のちにトラブルになってしまうかもしれません。

老朽化によって建物の取り壊しを検討する場合も、他共有者に連絡・相談するとよいでしょう。

なお、老朽化によって取り壊しをおこなった場合でもあっても「建て替え」をおこなうには共有者全員から同意を得る必要があります。

他共有者の同意を得ずに建て替え・取り壊しすると「損害賠償請求」され裁判になる恐れがある

「他共有者と疎遠になっているから、同意を得ずに売却したい」と考える人もいるでしょう。

しかし、そのような場合でも、勝手に建て替え・取り壊ししてはいけません。

共有名義の建物における持分所有者は、それぞれ建物を活用する権利を持っています。

ですので、他共有者から同意を得ず勝手に売却してしまうと、損害賠償請求をおこされてしまう恐れがあります。

損害賠償請求に発展すると、裁判が必要になるため予想外の出費や時間がかかることでしょう。

また、裁判で争うことになると、親族関係が悪化することも考えられます。

共有名義の建物における建て替えや取り壊し費用の負担割合は持分に応じて決める

共有名義の建物を取り壊したり、建て替える際の費用は誰が負担すべきなのでしょうか?

法律では「共有物の管理にかかる費用は持分に応じて負担すべき」とされています。

民法第253条

各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用:e-Govポータル「民法第253条」

ですので、取り壊し・建て替え費用の負担割合は、共有持分の割合をもとに決めましょう。

例えば、取り壊しにかかる費用が「150万円」の建物を、3人で「1/3ずつ」共有していたとします。

このとき、取り壊しにかかる費用はそれぞれ「50万円」ずつ負担する必要があります。

もしも、持分割合を無視して負担割合を決めてしまうと、贈与税がかかる恐れがあります。

建て替えにともなう取り壊し費用の相場

建物の取り壊しにかかる費用の相場は以下の通りです。

構造 単価
木造 坪4~5万円
軽量鉄骨造 坪6~7万円
鉄筋コンクリート造 坪7~8万円

※建物の状況やエリアによって異なります。

例えば「木造」「30坪」の建物を取り壊す際にかかる費用は

5万円 × 30坪 = 150万円

です。

平均的な一戸建て(30坪)の取り壊しにかかる費用は、およそ「150万円」といえるでしょう。

取り壊す建物に住宅ローンが残っている場合は金融機関の承諾が必要

住宅ローンが完済できていれば、共有者間の同意のみで取り壊し・建て替えをおこなえます。

しかし、住宅ローンが残っている場合は「借入をしている金融機関の承諾」が必要です。

一般的に、住宅ローンを受ける際には、その住宅に対して抵当権を設定しています。

抵当権・・・住宅ローンの支払いが滞ったときに、強制的に売却する権利

抵当権が設定されたままだと、建物の取り壊しができません。

もしも、抵当権が設定されているにもかかわらず、取り壊しをおこなうと住宅ローン契約の違反となってしまいます。

ですので、住宅ローンが残っている建物の取り壊しを検討する際は、金融機関に相談しましょう。

残債の一括返済を求められるケースがほとんど

ほとんどの金融機関が、抵当権を解除する条件として「残債の一括返済」を求めます。

残債を現金で一括返済できる場合は、問題ないでしょう。

しかし、残債の返済が困難な場合は、新たにローンを借り入れるなど、資金を用意する必要があります。

なお、金融機関によっては一括返済でなく、分割返済を認めてもらえるかもしれません。

ですので、建て替え・取り壊しを検討した際は、借り入れしている金融機関に相談してみるとよいでしょう。

建物を取り壊すと固定資産税や都市計画税が高くなる恐れがある

建物が建っている土地には「住宅用地特例」という減税措置が適用されています。

住宅用地特例・・・固定資産税を課税標準の1/6、都市計画税を1/3に軽減される制度。

建物を取り壊すことで、住宅用地特例の適用が解除されるため、土地に課される税金が「住宅用地特例を受けている場合の6倍」になります。

建物を取り壊して更地にすることで、固定資産税や都市計画税が高くなる恐れがあります。

「1月1日」の課税タイミングにあわせて取り壊しのスケジュールを決めよう

固定資産税は「1月1日」に1年間の税額が決定されます。

「1月1日」に住宅用地のままであれば、住宅用地特例を受けられます。

一方で「1月1日」までに取り壊しが終わり更地になっている場合、住宅用地特例は受けられません。

ですので、取り壊し工事をおこなう際は、1月1日を待ってから取り壊しをおこなう方がよい場合もあるでしょう。

共有者全員の同意が得られない場合における対処法

先ほどもお伝えしましたが、共有名義の建物を建て替えたり、取り壊すには共有者全員の同意を得る必要があります。

もしも、同意が得られない場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?

以下2つが、共有名義の建物を取り壊す・建て替える際に、共有者全員の同意が得られない場合の対処法です。

  • 共有者から持分を買い取って自分の単独所有にする
  • 「共有物分割請求」をおこなって共有名義の建物を分割する

次の項目からそれぞれの方法を詳しく説明します。

【対処法1】他共有者から持分を買い取って自分の単独所有にする

他共有者からの同意が得られない場合、他共有者に対して持分を売ってもらえないか、交渉してみるとよいでしょう。

他共有者からすべての持分を購入できると、不動産は自分の単独所有になります。

自分が単独で所有する不動産であれば、自分1人の意志で建て替えや取り壊しをおこなえるようになります。

共有名義の建物に居住している場合など、不動産を活用したい場合にこの方法をとるとよいでしょう。

ただし、相場価格よりも安すぎる価格で購入してしまうと、贈与とみなされ購入者に税金が課せられる恐れもあるので、価格には注意が必要です。

【対処法2】「共有物分割請求」をおこなって共有名義の建物を分割する

建物の共有状態を解消するために「共有物分割請求」を提起できます。

共有物分割請求とは、共有者同士で共有物の分け方を話し合う交渉のことです。

共有物分割請求によって、建物を単独名義にできれば建て替えや取り壊しが可能です。

なお、共有物分割請求は、共有者同士の話し合いで解決することもあれば、最終的に裁判が必要になるケースもあります。

もしも、裁判になると判決によって強制的に分割されてしまうかもしれません。

共有物分割請求を提示する際は、慎重に話し合いを進める必要があるでしょう。

共有物分割請求とは 共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説

共有名義の建物を取り壊しや建て替えする際は共有者全員の同意を得よう

共有されている建物でも、建て替え・取り壊しはおこなえます。

ただし、共有名義の建物を取り壊したり、建て替えするには共有者全員の同意を得る必要があります。

共有名義の建物をどう扱うかは、必ず他共有者と相談して決めましょう。

また、建て替え・取り壊しにかかる費用負担は共有持分の所有割合に応じて決めましょう。

もしも、共有持分の所有割合を無視してしまうと、贈与税が課せられる恐れがあります。

なお、他共有者から建て替え・取り壊しの同意が得られない場合は、共有持分を買い取ったり共有物分割請求を提示すべきです。

自分の単独所有である建物なら、自分の意思だけで建て替え・取り壊しをおこなえます。

共有不動産を建て替え・取り壊しする際によくある質問

共有名義の建物でも、建て替え・取り壊しできる?

共有名義の建物を「建て替え・取り壊し」するには共有者全員の同意が必要です。つまり、共有者全員の同意があれば、共有名義の建物でも、建て替え・取り壊しができます。

共有名義の建物における建て替えや、取り壊し費用は誰が負担するの?

共有名義の建物における建て替えや、取り壊し費用は持分割合に応じて、負担すべきです。例えば、取り壊しにかかる費用が「150万円」の建物を、3人で「1/3ずつ」共有していたなら、それぞれ「50万円」ずつ負担する必要があります。

住宅ローンが残っていても、取り壊せる?

取り壊す建物に住宅ローンが残っている場合は、金融機関の承諾が必要です。ですので、住宅ローンが残っている建物の取り壊しを検討する際は、金融機関に相談しましょう。

建物を取り壊す際に注意すべきことは?

建物を取り壊すことで、固定資産税や都市計画税が高くなることに注意しましょう。最大で現在の税金より「6倍」高い税金を課される恐れがあります。

共有者から建て替え・取り壊しの同意を得られなければどうすべき?

「共有者から持分を買い取って自分の単独所有にする」「共有物分割請求をおこなって、共有名義の建物を分割する」ことで、建て替え・取り壊しが可能になります。

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