夫婦で共有不動産を購入し、2人でローンを返済している家庭は少なくないでしょう。
順調に返済できていればなんの問題もありませんが、なかには夫が病気などで職を失い、収入も失ったことで返済できなくなるケースがあります。
ローンの返済が滞ると家が差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。
夫が働けずに住宅ローンの支払いが難しい場合、金融機関に猶予や減額を申請するほか、不動産を売却してローン返済に充てることを検討しましょう。
不動産を売却する場合、住宅ローンが残っていると「任意売却」という特殊な手続きが必要です。法律知識が重要になるため、弁護士と連携した共有持分や共有不動産の買取業者に相談しましょう。
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- 夫がローンを返済できないと支払い義務は連帯保証人に移る。
- 夫が働けずに住宅ローンを支払えないときは金融機関に猶予や減額を申請しよう。
- 夫が高度障害で働けない場合は団体信用生命保険を適用できる可能性が高い。
共有不動産のローン返済中に夫が働けなくなったらどうなる?
夫婦で住宅ローンを組む場合、2人の共有名義にするケースは多いです。
しかし、夫の健康状態に不安がある場合などは、ローン返済中に夫が働けなくなったらどうなるのか、気になるのではないでしょうか。
そこでこの項目では、共有不動産のローン返済中に夫が働けなくなったらどうなるのかについて、詳しくお伝えしていきます。
連帯債務者や連帯保証人に夫の支払い義務が移る
夫婦の共有名義でローンを組む場合、以下の3パターンがあります。
- ペアローン・・・2人でそれぞれ契約する。お互いの連帯債務者になることが多い。
- 連帯債務型・・・連名で契約する。主契約者の返済が滞ったら連帯債務者に支払い義務が生じる。
- 連帯保証型・・・契約は1人。契約者の返済が滞ったら連帯保証人に支払い義務が生じる。
どの場合も、夫婦のどちらかが主契約者で、もう片方を連帯債務者や連帯保証人とするケースがほとんどです。
そのため、夫が働けなくなって返済不能となると、夫の支払いを妻が肩代わりしなければなりません。
住宅ローンの滞納が続くと住宅ローン残債を一括請求される
住宅ローンの滞納が続くと、契約で定めた期日までは分割での返済ができる権利である「期限の利益」を喪失します。
そのため、債権者である金融機関は住宅ローン残債を一括請求できるようになるのです。
一般的に、滞納から3ヶ月程度で一括請求を受けます。
また、滞納をすると1日ごとに遅延損害金や延滞金も発生するため、支払金額は滞納日数が長いほど高額となります。
一括請求に応えられないと、住宅の差押えに移行するのが一般的です。
一括請求に応じられないと住宅は差押えられる
金融機関からの一括請求に応えられないと、住宅は差押えとなって競売にかけられてしまいます。
競売となった物件は、相場よりも低い価格で落札されるのがほとんどです。
また、指定日までに退去しなければなりません。
通常、住宅ローンの滞納から6ヶ月ほどで債権者は競売を申立てます。その後、裁判所が物件の現状調査などをおこない、滞納から1年ほどで競売が実行されます。
競売を回避するには、その間に住宅ローン残債を一括返済するか任意売却をするのがよいでしょう。
任意売却については、のちの項目で詳しく解説するので参考にしてください。
共有不動産のローン返済中に夫が働けなくなったときの対処法
前の項目でお伝えしたように、共有名義の住宅ローンを返済中に夫が働けなくなってしまうと、夫の支払い分を妻が肩代わりしなければなりません。
肩代わりできずに滞納すると、最悪の場合、住宅が差押えられてしまいます。
そのような事態に陥らないような返済計画を立てるのがベストですが、急な病気やケガなど予期せぬ事態が起こってしまう場合もあります。
では、そのようなときはどうしたらよいのでしょうか。
この項目では、共有不動産のローン返済中に夫が働けなくなったときの対処法を、詳しくお伝えします。
夫の復職目処が立っているのなら金融機関に返済猶予を交渉する
夫が働けないのが一時的であり、復職の目処が立っているのなら金融機関に返済猶予の交渉をするとよいでしょう。
その際は、滞納をしてしまう前に交渉することが大切です。
返済猶予が認められた期間は、利息のみを支払うのが一般的です。その期間は元金の返済が進まず、総返済期間は長くなります。
そのため、総返済金額も上がってしまうことに注意しましょう。
返済猶予が認められる期間は個々の事情によって異なりますが、フラット35では最長で3年の返済猶予が認められます。
減額されれば返済可能なら金融機関に住宅ローン減額を交渉する
夫が働けなくなったとしても、ある程度減額されれば住宅ローンを支払い続けるのが可能なら、金融機関へ減額を交渉してみましょう。
住宅ローンの減額措置は、主に以下の2つの方法があります。
- 返済期間は変わらず一定期間のみ減額
- 返済期間を延長し、ずっと減額
一定期間減額した場合は、減額された分が一定期間後に上乗せされるため、減額期間終了後は月々の返済金額が以前よりも高くなります。
返済期限を延長した場合は、利息を支払う回数が増えるため返済総額が増えることを確認しましょう。
金融機関へ交渉する際は、収入が減少することを証明できる給料明細などの資料を持参するとよいでしょう。
団体信用生命保険の適用を申請する
ペアローンや、夫が主契約者でローンを組んでいる場合、団体信用生命保険に加入していることがほとんどです。
団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者が仕事をするのに困難な高度の障害状態に陥ったり、死亡したときに適用される保険です。
団体信用生命保険の適用が認められると、住宅ローン残債の支払いはすべて免除されます。
ただし、高度障害に該当せず団体信用生命保険を受取れないケースも少なくありません。
その場合は「住宅ローン疾病保障保険」や「住宅ローン返済支援保険」に加入していないか確認してみましょう。
また、勤務先から傷病手当や労災保険がおりる可能性もあるので、あわせて確認するとよいでしょう。
団体信用生命保険についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
夫婦名義の住宅ローンで配偶者が死亡したときに残債をなくせる「団信」と相続手続きをわかりやすく解説!住宅を売却してローンを完済する
夫が働けなくなり、妻だけでは住宅ローンの返済が難しい場合は、住宅の売却も考えたほうがよいかもしれません。
売却価格が住宅ローン残債を上回っていれば、売却価格で住宅ローンを完済して残りは売却利益として手元に残せます。
住宅ローンの返済に困ったら、一度住宅の査定をしてみるとよいでしょう。
また、夫婦どちらかの共有持分を手放して、住宅ローンの返済に充てる方法もあります。
ただし、共有持分の売却は相場よりも低くなってしまうのが通常です。そのため、共有持分専門の買取業者へ査定を依頼するのがおすすめです。
共有持分専門の買取業者であれば、買取後の活用や転売の経験が豊富なため、相場と変わらない買取をおこなえます。
無料での査定を受け付けている業者も多くあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
【共有持分の買取業者おすすめ28選!】共有名義不動産が高額買取業者の特徴と悪質業者の見極めポイント!住宅ローン残債が売却価格より高い場合は「任意売却」となる
住宅ローン残債が住宅の売却価格よりも高く、住宅の売却価格でローンを完済できない場合は、住宅の通常売却はできません。
その場合、売却するには金融機関の許可を取る必要があります。
これを「任意売却」といい、金融機関が売却活動をするのが一般的です。
任意売却での価格を住宅ローン残債から差し引き、残りを分割で返済していきます。
任意売却については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
任意売却なら競売を回避できる!メリット&デメリットや具体的な手順と費用を解説!夫が働けない場合に共有不動産を所有する方法
ここまで、共有名義不動産の住宅ローン返済中に夫が働けなくなった場合の対処法をお伝えしました。
ただ、なかには住宅の購入時に夫が働けない状態で、共有不動産を所有したいと考えている人もいるのではないでしょうか。
夫が働けず、収入がない状況でも夫婦の共有名義で不動産を所有することは可能です。
そこでこの項目では、夫が働けない場合に共有不動産を所有する方法をわかりやすくお伝えします。
夫の貯金で頭金を支払う
まず、夫の貯金で頭金を支払う方法があります。
共有不動産の共有持分は、通常出資した金額に応じて分配します。
そのため、夫が住宅ローンの返済をしなくても頭金を支払えば、共有名義で不動産を所有することが可能です。
例えば、5,000万円の不動産を以下の出資額で購入した場合の共有持分割合を説明します。
・妻が4,000万円をローンで返済
この場合、共有持分割合は夫1/5、妻4/5とするのが一般的です。
夫の共有持分を出資額以上にすることもできますが、その場合は妻から夫へ贈与されたとみなされて、夫に贈与税の支払いが発生します。
年間に贈与を受ける額が110万円以下であれば控除が受けられるので、持分割合はその間で調整するのがよいでしょう。
夫が働けない状態でペアローンを組むのはほぼ不可能
夫婦で共有不動産を所有するには、夫婦でペアローンを組む方法があります。
しかし、ペアローンの審査に通るには、一定の所得基準を満たさなければなりません。
そのため、夫が働けないのであれば、ペアローンの審査に通るのはほとんど不可能でしょう。
夫に少しでも収入があれば、連帯保証型や連帯債務型の住宅ローンを組める可能性はあります。
夫婦の収入がわかる資料を持って、一度金融機関へ相談してみるとよいでしょう。
連帯債務型のローンについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
夫婦や親子で住宅ローンを組む「連帯債務」を解説!メリット・デメリットや共有名義のリスクも紹介します
妻が夫へ共有持分を贈与する
妻が夫へ共有持分を贈与して、夫婦の共有不動産にすることができます。
ただし、前の項目でもお伝えしたように年間に贈与を受ける金額が110万円を超えると、贈与を受ける側に贈与税が課せられます。
妻から夫へ贈与をする場合の、贈与税の計算は以下の通りです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
※基礎控除後の課税価格=110万円を差し引いた後の金額
ただし、以下に当てはまる場合は、基礎控除に加えて最大で2,000万円の配偶者控除を受けられます。
- 婚姻期間が20年以上である
- 贈与対象の財産が居住用不動産または居住用不動産の購入資金である
- 贈与を受けた翌年3月15日までに贈与を受けた者が住んでおり、その後も住み続ける予定である
配偶者控除を受ける場合は、納税地を所轄する税務署に申告書の提出が必要です。
税務署の窓口では申告に関する相談も受け付けているので、気になることがあれば確認してみるとよいでしょう。
最寄りの税務署は、以下の国税庁ホームページから検索できます。
夫が働けない場合は共有不動産の支払義務は妻にあるケースがほとんど
夫婦の共有名義で所有している不動産は、住宅ローンの支払いも夫婦で主契約者と連帯債務者や連帯保証人となっている場合が多いです。
その場合、夫が働けなくなると夫の支払義務は妻へ移行します。
もしも、夫の支払いを肩代わりできない場合は、以下の方法を検討してみてください。
- 金融機関に返済猶予や減額を交渉する
- 団体信用生命保険の適用を申請する
- 住宅を売却してローンを完済する
何も対処をせずに住宅ローンを滞納すると、住宅を差押えられてしまう恐れがあります。
すでに滞納している場合は、早急に対処しなければなりません。弁護士と提携している不動産業者であれば、不動産の査定に加えて競売を回避する方法についても、法的な観点からアドバイスがもらえます。
無料相談を実施している不動産業者もあるので、共有名義不動産で悩んでいることがあれば一度相談してみてはいかがでしょうか。
失職と住宅ローンについてよくある質問
連帯債務者や連帯保証人が返済を引き継ぎます。夫婦の場合、配偶者が連帯債務者や連帯保証人になっているケースが多いでしょう。
滞納から3ヶ月程度で残債の一括返済を請求されます。それも放置していると、住宅は差押えとなって競売にかけられてしまいます。落札代金は返済に充てられますが、不足した分は引き続き返済をしなければいけません。
金融機関にローンの減額や返済猶予の相談しましょう。もしくは、自分で家を売却して返済に充てましょう。働けない理由が重い病気や高度障害の場合、団体信用生命保険に加入していれば残債がなくなる可能性もあります。
売却益が残債を上回れば、問題なく売却できます。下回る場合も「任意売却」という特殊な手続きで売却可能です。
任意売却とは、債権者と合意のうえでローンの残る住宅を売却する方法です。通常、売却益を返済に充ててもローンを完済できない住宅は、ローン規約によって売却できません。債権者である金融機関と交渉し、売却を認めてもらう手続きを任意売却といいます。