不在者財産管理人とは?仕事内容や選任方法をわかりやすく解説

不在者財産管理人とは

不在者財産管理人とは、行方不明の「不在者」が所有する財産を代理で管理できる人物です。

相続発生時に他相続人が音信不通の場合や、兄弟などで不動産を共有している際に他共有者が行方不明になった場合、不在者の合意がないと遺産分割や共有不動産の処分ができません。

こうした場合、不在者財産管理人を選任することで、他相続人・他共有者が行方不明の状態でも遺産分割や共有不動産の処分が可能です。

ただし、不在者財産管理人の選任には時間がかかるため、共有不動産をすぐ手放したい場合、自分の共有持分だけを売る方法もあります。

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この記事のポイント!
  • 不在者財産管理人とは、行方不明の他相続人・他共有者の代わりに財産を管理・処分できる人物。
  • 他相続人・他共有者が行方不明で相続財産・共有不動産を処分できない場合、不在者財産管理人の選任が必要。
  • 不在者財産管理人を選任するには、家庭裁判所に申立てをおこなう必要がある。

不在者財産管理人とは

「不在者財産管理人」とは、他相続人や他共有者が行方不明の場合に、その人物の財産を代理で管理・処分できる人物です。

不在者財産管理人については、民法第25条でも以下のように定義されています。

民法第25条
従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

引用:e-Govポータル「民法第25条」

不在者財産管理人には弁護士や司法書士など、不在者と利害関係のない第三者が選任されるケースが多いです。

不在者財産管理人がおこなえる仕事の内容

不在者財産管理人がおこなえる仕事の内容は、基本的に次の2種類です。

  • 不在者が所有する財産の管理・処分
  • 不在者の代理で遺産分割協議に参加する

遺産分割協議が進まずに相続できていない不動産や、共有者全員の同意が集められずに処分できていない共有不動産も、不在者財産管理人を選任することで、処分できるようになります。

それぞれの仕事内容を1つずつ解説します。

不在者が所有する財産の管理・処分

1つ目の仕事内容は、不在者が所有する財産の管理・処分をおこなうことです。

たとえ不在者が行方不明でも、その財産を他人が勝手に管理・処分することはできません。

しかし、財産を管理する人物がいないと、ゴミ屋敷同然の空き家が放置されるなど、他人に不利益をもたらす事態が起きる恐れもあります。

そのため、不在者財産管理人を選任した場合のみ、不在者の財産を他人が管理・処分することが例外的に認められているのです。

不在者の代理で遺産分割協議に参加する

2つ目の仕事内容は、不在者の代理人として、相続時の遺産分割協議に参加することです。

遺産分割協議では、相続人全員で話し合って、合意しない限り、遺産分割は成立しません。

つまり、相続人のなかに1人でも不在者がいると、遺産分割がおこなえなくなり、他の相続人も遺産を相続できなくなってしまうのです。

これを防ぐため、不在者財産管理人には例外的に、行方不明である不在者の代理人として遺産分割協議に参加する権利が与えられています。

不在者財産管理人への報酬は不在者の財産から支払う

不在者財産管理人が選任された場合、仕事内容に対する報酬を支払わなければなりません。

なぜなら、不動産・株式などを管理するには、ある程度の経費や労力がかかるからです。

不在者財産管理人への報酬は、不在者の財産を換価した費用から支払われるのが一般的です。

ただし、不在者の財産だけでは報酬が払えない場合、不在者財産管理人の選任申立てをした人物が支払う必要があるため注意しましょう。

不在者財産管理人が必要となるケース

不在者財産管理人が必要となるケースは、主に以下の2パターンです。

  1. 他相続人が行方不明で遺産分割が進まない場合
  2. 他共有者が行方不明で共有不動産を処分できない場合

他相続人や他共有者が行方不明の場合、代理人として不在者財産管理人が必要となります。

それぞれのケースを順番に見ていきましょう。

1.他相続人が行方不明で遺産分割が進まない場合

1つ目のケースは、他相続人が行方不明で遺産分割協議がおこなえない場合です。

被相続人の遺産を複数人で相続する場合には、遺産分割協議をおこない、各相続人が相続する遺産の分け方を決定します。

しかし、遺産分割協議で決定した内容は、相続人全員の同意がないと法的効力をもちません。

不在者財産管理人を行方不明となった相続人の代理人とすれば、その人物から同意を得ることで遺産相続を成立させることが可能です。

ですので、他相続人が行方不明となった場合、不在者財産管理人を選任することが多いです。

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2.他共有者が行方不明で共有不動産を処分できない場合

2つ目のケースは、他共有者が行方不明で共有不動産の処分がおこなえない場合です。

複数人で共同所有している共有不動産の場合、共有者全員の同意がない限り、売却したり解体することができません。

民法第251条 
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

引用:e-Govポータル「民法第251条」

不在者財産管理人を行方不明となった他共有者の代理人として、その人物から合意をもらえば共有不動産を処分できます。

そのため、他共有者が行方不明となった場合、不在者財産管理人を選任することが多いです。

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不在者財産管理人を選任する方法

不在者財産管理人を選任する場合、具体的にはどのような方法でおこなうのでしょうか?

不在者財産管理人を選任する方法には、大きく分けて以下の2ステップがあります。

  1. 必要書類・費用を準備する
  2. 家庭裁判所に申立書を提出する

必要な書類・費用を準備した後、申立書と共に管轄する家庭裁判所へ提出すれば大丈夫です。

それぞれの手順を順番に見ていきましょう。

【手順1】必要書類・費用を準備する

まずは、不在者財産管理人の選任申立てに必要となる書類・費用を準備しましょう。

必要書類は裁判所のホームページ・市区町村役場などで、各種書類を集める必要があります。

必要な費用は郵便局で購入した切手・収入印紙で納めるので、事前に準備しておきましょう。

必要書類と費用の種類について、それぞれ詳しく解説していきます。

不在者財産管理人の選任に必要な書類

不在者財産管理人の選任に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 申立書
  • 不在者の戸籍謄本
  • 不在者の戸籍附票
  • 不在者の財産に関する資料
  • 不在者の不在を証明する資料
  • 不在者財産管理人の候補者の住民票もしくは戸籍附票(候補者がいる場合)
  • 申立人と不在者の関係性を証明するもの(申立人の戸籍謄本や賃貸契約書など)

不在者財産管理人選任の申立書は、裁判所のホームページからダウンロード可能です。

その他の必要書類は市区町村役場の窓口などで発行できるので、準備しておきましょう。

参照:「不在者財産管理人選任の申立書」(裁判所)

不在者財産管理人の選任に必要な費用

不在者財産管理人の選任に必要な費用は、以下のとおりです。

  • 連絡用の郵便切手
  • 収入印紙(800円)
  • 予納金(必要な場合)

連絡用の郵便切手にかかる費用は、裁判所によって異なりますが、およそ2,000円程度です。

収入印紙は郵便局で購入したものを、申立書に貼り付けて提出すれば問題ありません。

予納金の金額はケースによりますが、一般的に30〜100万円程度の費用が必要になります。

【手順2】家庭裁判所に申立書を提出する

つづいて、申立書をはじめとする必要書類を、管轄する家庭裁判所に提出しましょう。

提出先となる家庭裁判所は、不在者の住所地または居所地を管轄している家庭裁判所です。

管轄区域については、裁判所のホームページで調べることができます。

参照:「裁判所の管轄区域」(裁判所)

不在者財産管理人の選任申立てができる人物

不在者財産管理人の選任申立ては誰でも手続きできる訳ではありません。

不在者財産管理人の選任申立てができる人物は以下のとおりです。

  • 相続人など利害関係人
  • 検察官

利害関係人とは、以下のように不在者がいないことで利害関係が生じる人物を指します。

  • 不在者のせいで遺産分割協議が進まない他相続人
  • 不在者が遺産を相続しないと不利益を被る不在者の親族
  • 遺産分割協議が進まないせいで債権回収ができない被相続人の債権者

申立てから選任にかかる期間は2〜3ヵ月程度

選任申立てをしても、すぐに不在者財産管理人が決まる訳ではありません。

家庭裁判所による審理が実施されるため、不在者財産管理人の選任には、申立てから2〜3ヵ月程度の時間がかかります。

また、遺産分割や財産の処分には家庭裁判所の許可が必要になるため、実際に遺産相続や不動産の処分ができるのは約6ヵ月後になります。

どうしても遺産を相続したい場合は待つしかありませんが、共有不動産をいますぐ処分したい場合、自分の共有持分だけを売却するという方法もあるので、検討してみるとよいでしょう。

共有持分を売却する方法を知りたい人は、以下の記事もあわせて参考にしてみてください。

共有持分 売却 共有持分は他共有者の同意なく売却できる!売却先や相場を解説

不在者財産管理人を選任するときの注意点

不在者財産管理人を選任する場合、以下の3点に注意しましょう。

  • 不在者に不利益をもたらす行為はできない
  • 不在者財産管理人となる人物は裁判所が決める
  • 必要書類の準備に時間や手間がかかる

不在者財産管理人の選任には手間がかかる上、すぐ確実に財産を処分できるとは限らないため注意が必要です。

それぞれの注意点を1つずつ確認していきます。

不在者に不利益をもたらす行為はできない

不在者財産管理人が選任されても、どのような行為でも認められる訳ではありません。

なぜなら、不在者財産管理人は不在者に不利益をもたらす行為をおこなえないためです。

遺産分割や共有不動産の処分をおこなう場合も、不在者財産管理人の独断では実施できず、家庭裁判所の許可が必要になります。

例えば、不在者の共有持分を放棄して共有関係を解消するような行為は認められず、不在者も利益を得られるよう売却する形が一般的です。

不在者財産管理人となる人物は裁判所が決める

不在者財産管理人は不在者に不利益をもたらす行為をおこなえないため、家庭裁判所によって選任される人物が慎重に決められます。

基本的に、不在者と利害関係にある人物が不在者財産管理人に選ばれることはありません。

共有不動産の処分に反対する人物が選ばれるケースもあるため注意しましょう。

そうした場合、自分の共有持分だけであれば、他共有者の同意がなくても自由に売却できるので、手放してしまうことをおすすめします。

必要書類の準備に時間や手間がかかる

先述したとおり、不在者財産管理人を選任するには膨大な必要書類を集める必要があります。

必要書類の準備を自分でおこなう場合、非常に時間も手間もかかるため注意しましょう。

必要書類の準備が面倒な場合は、弁護士などの専門家に依頼すれば手間もかからず便利です。

また、急いで共有不動産を処分したい場合は、自分の共有持分だけであれば、最短数日で買取してもらうことも可能です。

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他相続人や他共有者が行方不明の場合は不在者財産管理人を選任しよう

他相続人や他共有者が行方不明である場合も、不在者財産管理人を選任すれば、相続予定の不動産や共有名義の不動産を処分できます。

ですので、他相続人や他共有者と連絡がとれないため、不動産を処分できずに困った場合は、不在者財産管理人を選任するのが一般的です。

ただし、不在者財産管理人の選任には、さまざまな書類が必要な上、申立てしても選任まで、2〜3ヵ月はかかることを覚えておきましょう。

共有不動産をいますぐ処分したい場合、自分の共有持分だけを売却すれば、最短数日で共有関係を解消して、自分の持分を現金化できます。

不在者財産管理人を選任するべきか、自分の共有持分だけを売るべきかはケースによるため、まずは不動産業者に相談して、どちらの選択肢を選ぶべきか、アドバイスを貰いましょう。

不在者財産管理人に関するよくある質問

不在者財産管理人とは何ですか?

行方不明の不在者に代わって、その財産を管理・処分できる人物で、申立てをすることで裁判所によって選任されます。

不在者財産管理人はどのような仕事をおこなえますか?

不在者が所有する財産を管理・処分したり、不在者の代理で遺産分割協議に参加することが認められています。

どのような場合に不在者財産管理人が必要ですか?

他相続人が行方不明で遺産分割が進まない場合や、他共有者が行方不明で共有不動産を処分できない場合に、不在者財産管理人が選任されます。

どうすれば不在者財産管理人を選任できますか?

申立書をはじめとする必要書類・費用を準備した後、それを家庭裁判所に提出しましょう。申立てから通常2〜3ヵ月程度で不在者財産管理人が選任されます。

不在者財産管理人を選任する際、注意点はありますか?

不在者に不利益をもたらす行為はできない点、不在者財産管理人となる人物は裁判所が決める点、必要書類の準備に時間や手間がかかる点に注意しましょう。いますぐ共有不動産を処分したい場合、自分の共有持分だけを売却することをおすすめします。
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