不動産を所有している人には、固定資産税を毎年支払う義務があります。
共有不動産の固定資産税は、複数いる所有者(共有者)全員に支払義務があります。持分割合に応じて分担し、代表者が取りまとめて納めるのが一般的です。
共有者の誰かが支払いを怠った場合は、他の共有者が立替えないと共有不動産が差し押さえられるかもしれません。
固定資産税を支払う余裕がないときは、自分の共有持分を売却して共有関係を解消するのがおすすめです。
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- 共有不動産の固定資産税は共有者全員に納付義務がある。
- 代表者が滞納すると共有者全員が差し押さえの対象となる。
- 固定資産税の支払いから逃れたいときは共有関係を解消しよう。
共有持分における固定資産税の支払い方法と納付金額の割合
共有不動産の固定資産税は、地方税法により共有者全員が連帯して納付する義務があるとされています。
そのため、共有者の誰かが滞納したら、他共有者がその分も納付しなければなりません。
例えば、A(持分1/2)、B(持分1/4)、C(持分1/4)で所有している共有不動産に30万円の固定資産税が発生したとすると、持分割合に関係なく全員が30万円の納付義務を負います。
共有者間で納付額は持分割合に応じた金額にしようと決めていたとしても、Aが納付を怠った場合、その分をBとCが納税しなければならないのです。
代表者がまとめて支払う
共有不動産における固定資産税の納付書は一括で代表者のもとに届き、代表者がまとめて支払います。
共有者ごとに納付書をわけることは原則できません。
まず、不動産を共有で所有することになったら共有者間で話し合い、代表者を決めて自治体に届け出をしましょう。
代表者の届け出をしなかった場合、自治体が代表者を選定します。
選定方法は自治体によって多少異なりますが、主に用いられる基準は次のとおりです。
- 持分割合が大きい人
- 登記簿で上に記載されている人
- その共有不動産を利用している人(実際に住んでいる人など)
代表者の変更方法
自治体に変更届を提出すれば、代表者の変更が可能です。
ただし、代表者の変更は共有者全員の同意が必要なので注意しましょう。
変更届はウェブサイトからダウンロードできる自治体も増えています。
自治体によって様式が違うので、共有不動産を管轄している自治体に問い合わせをしてみてください。
基本的に持分割合に応じて支払う
民法第253条には、
民法第253条
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。引用:e-Govポータル「民法第253条」
とあります。
前の項目で述べたように納付は代表者が一括でおこなうので、共有者は持分割合に応じた金額を代表者に直接支払うのが基本です。
また、代表者は期日までに共有者から振り込みがなかったとしても、納付しなければなりません。
共有者間で固定資産税の支払いに関するやり取りをしっかりと定めておき、期日までに必ず振り込みができる状態にしておきましょう。
共有持分の固定資産税を支払えないときは減免制度を利用しよう
万が一固定資産税を滞納してしまうと、差押えの対象となってしまいます。
固定資産税の差押えは裁判所を通さずにおこなえるため、ある日急に給料や財産が差押えられる可能性があります。そうなると全額支払い終わるまで解除は原則できません。
さまざまな事情によりすぐの納付が難しいときは、自治体の窓口で減額や納付猶予ができないか相談してみましょう。
代表者が滞納すると共有者全員が差し押さえの対象になる
共有持分に応じた金額を代表者へ支払っていても、代表者が集めたお金を納付しなければ共有者全員が差し押さえの対象です。
自治体は督促状を発送してから10日が過ぎても納付されない場合、差し押さえの準備に着手できます。
また、自治体は徴収しやすい資産を予告なく差し押さえることが可能です。
そのため、実際に支払いを怠ったのが代表者だったとしても、自分の財産が強制的に差し押さえられる可能性があります。
督促状が届いたらすぐに差し押さえられるというわけではありませんが、強制執行される前に自治体に連絡して固定資産税を支払う意思があることを伝えましょう。
延滞金の計算方法
固定資産税を滞納すると、延滞金が課せられます。
延滞金は以下の式で求められます。
- 延滞金=滞納税額×延滞日数×延滞金の割合(年利)÷365
滞納税額が2,000円未満の場合は滞納金がかからず、1,000円未満の端数があるときは端数を切り捨ててから計算します。
延滞金の免除や支払猶予が申請できる場合もあります。自治体によって判断が異なるので、管轄の自治体窓口に問い合わせてみてください。
固定資産税には減額や免除制度がある
固定資産税を期限までに納付できない場合は、納付期限が過ぎる前に自治体の窓口に相談しましょう。
災害による大きな被害を不動産に受けていたり、生活保護を受給している場合など、減額や免除されるケースがあります。
減免の基準は自治体によって異なるので、支払いができないときは督促状の送付や差し押さえがある前に、まずは窓口へいって相談するとよいでしょう。
また、減免が適用されない場合でも、分割での支払いに対応してくれることがあります。
自分が納税の代表者であるとき固定資産税を他の共有者に請求する方法
前の項目でも述べたように、共有者は全員が固定資産税の納付義務を負っており、代表者には他共有者に固定資産税を請求する権利があります。
こういったことから自分が代表者となっている場合に、他共有者が固定資産税を支払ってくれず困ってしまうケースがあります。
そんなときに適切な対処ができるよう、状況に合わせた請求方法を押さえておきましょう。
不動産を誰も利用していなければ持分に応じた固定資産税を請求する
固定資産税の対象となる不動産を誰も利用していない場合は、持分割合に応じた金額を共有者に請求できます。
前の項目でも説明したように、共有不動産における固定資産税の納付義務は共有者全員が連帯して負い、金額は持分割合に応じたものとなります。
そのため、不動産を共有で所有している以上はその不動産を利用していなくても、固定資産税の支払い義務があるのです。
滞納してしまうと全員が差し押さえの対象になることを伝え、持分割合に応じた金額を支払ってもらいましょう。
また、誰も利用していないなら一括で不動産を売却するのも1つの手段です。
共有名義不動産の一括売却については、のちの項目で説明していますので参考にしてください。
自分が不動産に住んでいるときは家賃を支払ってから固定資産税を請求する
自分が固定資産税の対象となる不動産を利用している場合、固定資産税に関する取り決めを確認してみましょう。
不動産に住んでいる人が納税の代表者のとき、家賃を支払わない代わりに他の共有者へ固定資産税を請求しないと取り決めることがあります。
そのため、自分が家賃を支払っていない場合に固定資産税を請求すると、共有者からは家賃を請求される可能性があります。
固定資産税の支払いを求めるときは、家賃を支払ってから請求するようにしましょう。
ただし、家賃を支払っている上に固定資産税も負担しているという場合は、もちろん持分割合に応じた固定資産税を請求する権利があります。
共有者が請求に応じない場合は求償権を行使できる
共有者が固定資産税の支払い義務があるにもかかわらず、請求に応じない場合は求償権(きゅうしょうけん)を行使できます。
求償権とは、他人の債務を代わりに支払った者が、肩代わりした分を返還請求できる権利のことです。固定資産税の支払いに関しては、固定資産税も債務と同じように取り扱われます。
ただし、求償権には消滅時効(10年)があるので注意しましょう。
連絡の取れない共有者がいる場合は不在者財産管理人を申し立てる
不動産登記上、共有不動産の所有者欄には原則共有者全員の住所が記載されています。
連絡の取れない共有者がいる場合は、この住所をもとにして戸籍や住民票を取り寄せて現在の居所を調査しましょう。
それでも所在がわからない場合は、不在者財産管理人の申し立てをしましょう。
不在者財産管理人とは、行方のわからない人に代わって財産を管理できる人のことです。
不在者財産管理人の選任方法については、以下の記事を参考にしてください。
不在者財産管理人とは?仕事内容や選任方法をわかりやすく解説参照:最高裁判所
他の共有者に固定資産税を請求されたときの対応
いままで固定資産税を払っていなかったのに、あるとき、急に他の共有者から固定資産税を払ってほしいといわれるケースは少なくありません。
それまであやふやだった固定資産税の支払いを正しい形で分担しなおすのならよいですが、不動産の利用状況によっては支払う必要がないこともあります。
状況別に対処法を説明していきますので、自分に合った方法で解決しましょう。
共有不動産に住んでいるときは家賃と固定資産税を相殺していることがある
不動産に住んでいる人が納税の代表者ではない場合、家賃と固定資産税を相殺しているケースがあります。
これは「納税の代表者が住むとき、家賃を支払わない代わりに固定資産税を請求しない」という取り決めの逆パターンです。
このように、共有者のだれかが不動産に住むとき、家賃を支払う代わりに固定資産税は負担しないのか、それとも家賃とは別に固定資産税も支払うのか、共有者間の取り決めが重要になります。
最初にどのような取り決めをしていたか、共有者同士でしっかりと確認しましょう。
離婚後は住まないのであれば名義を変更する
離婚後、家を出ていったのに固定資産税を請求されるケースがあります。
固定資産税は不動産の所有者に支払い義務が生じます。自分が住んでいなくても名義が共有のままであれば、共有者は固定資産税を請求できるのです。
そのため、離婚が決まったら速やかに住み続ける方の名義に変更しましょう。
ただし、ローンの返済状況によっては離婚時の名義変更が難しいことがあります。別の記事で離婚時の共有持分の取り扱いを解説していますので、参考にしてみてください。
共有持分の売却は離婚調停で不利!財産分与における共有持分の扱いを詳しく解説します
共有不動産の固定資産税から逃れるための共有関係解消方法
固定資産税は不動産を所有している間、必ず支払わなければなりません。
自分が不動産を利用している場合であれば、支払うのも当然だと思えるかもしれませんが、利用していない不動産なら固定資産税の支払いを免れたいと考える人も多いと思います。
その場合、共有関係を解消して共有持分を手放すことで固定資産税の支払いから逃れることが可能です。
ただし、固定資産税は1月1日の時点での所有者に納付義務があります。
そのため売却や放棄により共有関係から抜けたとしても、その年の固定資産税は支払う義務があるので注意が必要です。
他の共有者と不動産全体を一括で売却する
他の共有者とともに、不動産を一括売却することで共有関係を解消できます。
売却後は売却利益を持分割合に応じて分配するのが一般的です。
共有持分だけでは売却価格が下がってしまうことがほとんどですが、一括での売却なら市場相場と変わらない価格での売却価格で交渉ができるというメリットもあります。
他の共有者に持分を売却する
共有者に自分の持分を売却することで、共有関係の解消ができます。
共有名義不動産は共有者全員、もしくは持分割合における過半数の同意がないとできないことが多くあります。
そのため他の共有者が不動産を利用している場合、共有者が不動産を単独名義にしたいと考えていることも多く、売買交渉に応じてくれる可能性は高いでしょう。
ただし、売却の際に相場よりも大幅に低い価格で取引すると贈与税がかかることがあるので、価格設定には注意しましょう。
第三者に持分を売却する
第三者に自分の持分を売却することで、共有関係を解消できます。
共有不動産の売却には他共有者の同意が必要ですが、自分の持分のみであれば単独で売却が可能です。
ただし、売却後の権利関係は第三者が入ることで複雑になります。
共有者は固定資産税の支払いも見ず知らずの第三者とおこなうことになるので、第三者に売却する場合は共有者に相談したほうがよいでしょう。
共有持分専門の業者に売却するのがおすすめ
共有持分は買い取っても運用が難しいため需要が低く、買取価格は相場よりも大幅に低くなってしまうケースがほとんどです。
とくに個人で買主を探すのは難しく、買主が見つからずに時間が経ってしまうと、次年度の固定資産税を負担しなければならなくなってしまいます。
そこで、共有持分の売却は専門の業者に依頼するのがおすすめです。
共有持分専門の業者であれば、知識や経験も豊富にあり相場と変わらない価格で売却ができる事例も多くあります。
以下の記事で共有持分の取り扱いを専門とする、買取業者を紹介していますので、参考にしてみてください。
【共有持分の買取業者おすすめ28選!】共有名義不動産が高額買取業者の特徴と悪質業者の見極めポイント!持分を放棄する
自分の持分を放棄することで、共有関係を解消できます。
持分を放棄すると、その権利は持分割合に応じて他の共有者に帰属されます。
ただし持分の放棄は税法上、贈与とみなされ持分を取得した共有者に贈与税がかかる場合があるので注意しましょう。
また、共有持分の放棄は共有者に相談することなく単独で実行できますが、放棄後の登記には共有者の協力が必要となるので、相談してからおこなうのがよいでしょう。
放棄後は登記しないと所有権は移ったことにならず、固定資産税の支払い義務も発生するので注意が必要です。
固定資産税は共有者間で連携して必ず納税しよう
共有不動産の固定資産税は、基本的に持分割合に応じた金額を払わなければなりません。
共有者の誰かが納税を怠ると、他の共有者には連帯での納税義務があるため、財産を差し押さえられる場合があります。
ただし、不動産の利用状況によっては家賃と相殺しているケースも多くあります。
他の共有者から固定資産税を請求されたり、自分が他の共有者に固定資産税を請求するときは当初の取り決めがどうなっているか確認しましょう。
不動産を誰も利用していない場合は、固定資産税も割高でかかってきてしまいます。
また、管理費もかかりますし、一括での売却を共有者に持ちかけるのも1つの手段です。
共有持分専門の買取業者に依頼すれば、不動産を「一括で売却する場合」「持分のみ売却する場合」両方のケースについて相談に乗ってくれるので、まずは気軽に無料査定を利用してみてください。
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共有持分の固定資産税についてよくある質問
共有不動産全体の固定資産税に、持分割合をかけて計算します。
代表者のもとに固定資産税の納付書が届くので、共有者それぞれの負担分を取りまとめて納付します。各共有者へ個別に納付書を送ることは、原則ありません。
税金の納付手続きとしては、代表者が他共有者の分も立て替えて支払えます。ただし、代表者は立て替えた分を共有者に請求できる(求償権を行使できる)ので、他共有者の負担義務が消えるわけではありません。
自治体によって、不動産が差し押さえられてしまいます。滞納してすぐに差し押さえられるわけではありませんが、滞納しそうになったら早めに役所へ相談しましょう。
自治体によっては、減免や免除の制度があります。もっとも確実な方法は、共有持分を売却するなど、共有関係を解消することです。