「共有持分を売却したいけれど、売却価格の相場がわからない・・・」
「買取価格を見積もりしてもらったけれど、相場より安いか高いかわからない・・・」
共有持分の売却に関する相談において、こうしたお悩みは少なくありません。共有持分に限らず不動産は物件の状態や立地といった条件ごとに売却価格が変わるため、一概にはいえませんが、共有持分の売却価格は、まず売却先で大きく変わるのが通例です。
下記は売却先ごとの価格相場とそれぞれの特徴です。
売却先 | 売却価格の傾向 | 主なメリット | 留意点 |
---|---|---|---|
他の共有者 | 「不動産全体の市場価格×持分割合」が期待できる | 持分を買い増すことで権利が強化される / 過半数を取得すれば意思決定が容易になる / 2人共有なら単独所有が可能 | 買い手が限られるため、交渉が成立しない場合もある |
不動産買取業者 | 「不動産全体の市場価格×持分割合×1/2~1/3程度」が通例 | 契約不適合責任が免責される / 短期間で現金化できる / 仲介手数料が不要 | 売却価格は共有者への売却より低くなる |
このようにそれぞれの特徴があるため、売却先の選び方は重視するポイントによって変わります。少しでも高く売りたい人には他の共有者への売却が向いていますし、スピードや安心感を優先したい人には不動産買取業者への売却が適しています。
とはいえ、高く売る可能性をはじめから除外する必要がなく、他の共有者と交渉できるのであれば、まずは他の共有者に売却できないか交渉し、それが難しいようなら買取業者に相談するのが良いでしょう。
共有持分を高く売却するには、複数社に査定を依頼して比較するのが有効です。「イエコンの一括査定」なら、窓口が複数社への依頼や業者とのやり取りを代行してくれるため、手間をかけずに査定結果を確認できます。
また「なるべく高額査定の業者だけ知りたい」「士業と連携している業者に依頼したい」など、希望条件に合わせた依頼も可能です。効率的に比較できるため、納得感のある売却先を見つけやすくなります。
本記事では、共有持分の売却相場や買取事例、高く売却しやすい共有持分の特徴を解説します。併せて、買取業者への売却がおすすめの理由やなるべく高く売却するコツ、実際に売却する際の流れにも触れていきます。
共有持分の売却相場は?売却先による目安の違い
共有持分とは、複数人で所有する共有名義不動産における所有権の割合を指します。共有者2人で持分を半分ずつ分けている場合は、それぞれが1/2の共有持分を持つことになります。
なお、共有持分を所有する人は、その不動産を使う権利をもち、さらに自分の共有持分に関しては自由に売却が可能です。ただし、不動産全体の売却や賃貸、大規模なリフォームなどを行う際には、他の共有者全員の同意が必要となります。このような制約があるため、共有持分は買主にとって使い勝手が悪く、一般の人が購入するケースはほとんどありません。
そのため、共有持分の売却先となるのは、「他の共有者」または「共有持分を専門とする不動産買取業者」に限られるのが実情です。
それぞれの売却価格の目安は以下のとおりです。
- 他の共有者に売却:不動産全体の市場価格×持分割合
- 不動産買取業者に売却:不動産全体の市場価格×持分割合×1/2~1/3
なお、共有不動産の市場価格を知りたい場合、国土交通省が公表している取引価格情報で近隣にある不動産の売買価格を確認すると良いでしょう。
他の共有者が買い取るなら「不動産全体の市場価格×持分割合」が目安
共有名義不動産をともに所有する共有者が、共有持分を買い取ってくれる場合は、「不動産全体の市場価格×持分割合」が売却価格の目安となります。例えば、市場価格が3,000万円の不動産の共有持分1/2を売却する場合は、1,500万円程度が売却価格の目安となります。
不動産買取業者よりも高く売却できる傾向があるのは、共有者にとって買い取るメリットが大きいためです。例えば、2人兄弟で1/2ずつの共有持分を所有している場合、弟が兄に持分を売却すれば、兄が単独所有者となり、不動産を自由に利用・売却できるようになります。
共有者に「不動産を手放さず所有し続けたい」という意向や、買い取るだけの資金力があるかどうかによっても状況は変わりますが、条件が整えば不動産買取業者に売却するよりも高値での取引が期待できるでしょう。
共有者間で売買する際は価格設定に注意
共有者同士での売買では価格設定に注意が必要です。近隣相場より大幅に安い価格で取引すると「実質的に贈与した」とみなされ、贈与税がかかるおそれがあります。
例えば、市場価格3,000万円の不動産の1/2の共有持分なら相場は約1,500万円ですが、これを500万円で売却すれば、相場より1,000万円も安く譲ったことになります。この差額が贈与と判断されると、基礎控除110万円を差し引いた残額に対しての贈与税が課税されます。仮に1,000万円の贈与とみなされた場合、安く購入した共有者には177万円程度の贈与税がかかる可能性があります。
そのため、取引価格は相場を意識して設定することが大切です。共有持分を取り扱った実績のある不動産会社に相談すれば、相場の確認ができます。
また、共有者間の売買であっても後々のトラブルを避けるため、不動産会社に仲介に入ってもらうことをおすすめします。第三者が関与することで価格の妥当性が担保され、安心して取引を進められるでしょう。
買取業者などの第三者への売却なら「市場価格×持分割合×1/2~1/3」が目安
不動産買取業者などの第三者に共有持分を売却する場合は、「不動産全体の市場価格×持分割合×1/2~1/3」が売却価格の目安となります。例えば、市場価格が3,000万円の不動産の共有持分1/2を売却する場合は、500万~750万円程度の売却価格になるイメージです。
他の共有者に売却するよりも価格が下がるのは、買取業者が買い取り後の不動産にかかるコストを考慮して、査定額を算出するためです。買取業者が共有持分を買う目的は、「残りの持分も買い取って、単独名義不動産として売却する」「共有名義不動産を活用して、賃料収入を得る」などです。
多くは、単独名義不動産としての売却が目的ですが、そのためには、登記や測量、残りの共有者との交渉に加えて、リフォームや場合によっては解体などの追加コストも必要になります。これらのコスト分を差し引くため、どうしても査定額は低くなりがちです。
なお、売却価格は下がるものの、買取業者への売却には多くのメリットがあります。詳しくは「共有持分は専門の買取業者に売却するのがおすすめな理由」で解説しますが、手間や時間をかけずに共有持分を現金化することが可能です。
売却後は所有権が業者に移るため、共有者からの問い合わせや対応窓口は業者側となり、売却した本人がトラブル対応をする必要はなくなります。
一般の人に共有持分を売却するのは難しい
共有持分を一般の個人に売却できるケースは、実際にはほとんどありません。仲介業者に依頼して買主を探しても見つからないことが多く、不動産の買取相談では「仲介業者に相談したが断られた」という声が寄せられることもあります。
その理由は、共有持分が単独で自由に使えない「不便な権利」だからです。共有名義不動産は複数人で所有しているため、以下のように多くの行為に他の共有者の同意が必要となります。
行為 | 具体例 | 条件 |
---|---|---|
処分・変更行為 |
・売却 ・建物の取り壊し ・抵当権の設定 |
共有者全員の合意が必要 |
管理行為 |
・建物の増改築やリフォーム ・宅地の整地 ・短期の賃貸契約(土地5年、建物3年以下) |
共有持分の過半数分にあたる、共有者の合意が必要 |
保存行為 |
・建物の修繕 ・不法占拠者への対処 |
単独で実施可能 |
一般の買主の多くは、実際に不動産として住むことや、自由に利用することを望みます。そのため、上記のような共有持分の制限は足かせでしかなく、購入するメリットがないため、売却につながらないのです。
共有持分の買取事例と買取価格
先述した、共有持分の売却相場はあくまでも目安であり、実際の買取価格はケースごとに異なります。
例えば、他の共有者とのトラブルを抱えた共有持分の場合、買い取り後の交渉に費用や労力がかかる可能性があるため、売却価格は下がる傾向にあります。一方、共有者が少なく、買い取り後の交渉が比較的スムーズに進みそうな場合は、売却価格が高くなる可能性があります。
そのため、共有名義不動産の市場価格から計算する売却相場だけではなく、実際の買取事例を確認することも重要です。ここでは、以下の買取事例を紹介します。
- 他共有者に売却を反対された土地の共有持分1/3を4,000万円で買取
- 仲介業者に断られた土地の共有持分3/5を1,800万円で買取
- 価値の低い古家付き土地の共有持分1/4を1,500万円で買取
- 利用方法で揉めていた土地の共有持分75/100を4,600万円で買取
- 遺恨がある共有者と会わずに土地の共有持分1/3を1,760万円で買取
※この項目の買取事例は共有持分専門業者のクランピーリアルエステートからの提供情報を参考にしております。
他共有者に売却を反対された土地の共有持分1/3を4,000万円で買取
Aさんは埼玉県にある土地の共有持分を所有していました。
持分割合 | 土地:1/3 |
---|---|
買取価格 | 4,000万円 |
物件の所在地 | 埼玉県さいたま市 |
他共有者に共有名義不動産の売却を反対されており、なんとか現金化できないかと考えていました。
過去にAさんが共有名義不動産の売却に反対した経緯があり、今回Aさん自身が売りたいときに反対されてしまったそうです。
土地はAさんの許可なく駐車場として利用されており、活用できずに困っていました。
そこで、共有持分を専門に取り扱う買取業者へ相談したところ、Aさんの持分1/3だけを4,000万円で買取してもらえました。
仲介業者に断られた土地の共有持分3/5を1,800万円で買取
Bさんは神奈川県にある土地の共有持分を所有していました。
持分割合 | 土地:3/5 |
---|---|
買取価格 | 1,800万円 |
物件の所在地 | 神奈川県横浜市 |
他共有者1名とその家族に土地を占有されており、日常的に嫌がらせも受けている状態でした。
Bさんは売却したいと考えましたが、他共有者は話し合いにも応じてくれず、共有名義不動産を放置せざるを得ない状況に。
後々、不動産仲介業者へ相談してみましたが「共有持分だけでは買い取れない」と断られてしまい八方塞がりの状態でした。
そこで、共有持分を専門に取り扱う買取業者へ依頼したところ、相談から12日後にはBさんの持分1/3だけを1,800万円で買取してもらえました。
売却後は、共有名義不動産に関する窓口が買取業者になり、他共有者とのやり取りはすべて買取業者が対応することになったため、嫌がらせを受けることもなくなったそうです。
価値の低い古家付き土地の共有持分1/4を1,500万円で買取
Cさんは東京都渋谷区にある土地の共有持分を所有していました。
持分割合 | 古家付き土地:1/4 |
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買取価格 | 1,500万円 |
物件の所在地 | 東京都渋谷区 |
当初は不動産全体を売却しようと考えていましたが、売却に反対する共有者がいたため、共有持分のみを売却することに。
不動産仲介業者の査定を受けてみましたが「土地に建っている古家の資産価値が低いため、査定額が安くなる」とのことでした。
そこで、共有持分を専門に取り扱う買取業者へ依頼したところ、古家付き土地の共有持分1/4でも1,500万円で買い取ってもらえることになりました。
利用方法で揉めていた土地の共有持分75/100を4,600万円で買取
Dさんは東京都世田谷区にある土地の共有持分を所有していました。
持分割合 | 土地:75/100 |
---|---|
買取価格 | 4,600万円 |
物件の所在地 | 東京都世田谷区 |
不動産を複数人で相続したDさんは、相続した土地の利用方法について、共有者と話し合いがまとまりませんでした。
土地に建っている家が古いといった理由から、Dさんは建て替えや売却を検討していましたが、建物に住んでいる他共有者が無許可でリフォーム工事をしてしまったそうです。
共有持分を専門に取り扱う買取業者へ相談してみると、リフォーム工事を取り消すのは困難とわかりました。
Dさんは、そのまま相談した買取業者に、共有持分75/100を売却したところ、4,600万円で買取してもらえました。
遺恨がある共有者と会わずに土地の共有持分1/3を1,760万円で買取
Eさんは神奈川県にある土地の共有持分を所有していました。
持分割合 | 土地:1/3 |
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買取価格 | 1,760万円 |
物件の所在地 | 神奈川県横浜市 |
不動産を共有名義で相続しましたが、共有者である兄弟と実質的に絶縁状態となっており、不動産を売りたいが協力してもらえそうにない状態でした。
親の生前に、一度売却について兄弟と話し合ったところ、口論となってしまい話は進みませんでした。
また、土地に建っている家は誰も住まない空き家になっており、管理状態も悪いためボロボロの状態。
依頼を受けた買取業者は、Eさんの共有持分1/3のみを1,760万円で買い取ったため、Eさんは兄弟と対面することなく共有状態を解消できました。
高く売却しやすい共有持分とは
先述した通り、共有持分の売却相場はあくまでも目安であるため、実際の売却価格はさまざまな条件によって変動します。
不動産買取業者に共有持分を売却する場合は、持分割合や物件自体の資産価値、登記の状態やトラブルの有無、さらに他の共有者との関係性などが、売却価格に影響します。また、土地・建物の両方の共有持分が揃っている方が、どちらか一方の共有持分であるよりも売却価格は高くなります。
具体的には、以下のような条件が整っている共有持分であれば、比較的高く売却できる可能性があります。
- 持分割合が大きく、共有物全体に対する影響力が強い
- 物件自体の資産価値が高い(立地・形状・用途・接道など)
- 持分の登記内容が明確で、法的トラブルを抱えていない
- 他の共有者が売却に協力的または交渉可能な関係性にある
持分割合が大きく、共有物全体に対する影響力が強い
買取業者による共有持分の査定には、持分割合と共有者の人数が大きく影響します。持分割合が大きいほど物件全体に対する影響力が強まり、査定額も高くなります。
例えば、持分割合が過半数を超えていれば、建物の増改築やリフォーム、短期の賃貸契約などについて決定できる権利があるため、買取業者にとって利用価値が高くなります。一方、持分割合が少ないと活用の自由度が限られるため、評価も低くなりがちです。
さらに、共有者の人数が少ない方が、買取業者にとって買い取り後の交渉や調整の手間が減るため、比較的高値がつきやすくなります。
物件自体の資産価値が高い(立地・形状・用途・接道など)
不動産全体の資産価値が高い場合は、共有持分の売却価格も高くなります。特に立地や土地の形、接道状況などは査定額に直結する重要なポイントです。
例えば、次のような条件の物件は資産価値が高く、共有持分の売却でも高額査定につながる可能性があります。
- 都心部や駅から徒歩圏内など、需要の高いエリアにある
- 築年数が浅い・床面積が広い・日当たりが良いなど条件が良い
- 正方形や長方形など整った形状の土地で、無駄なく活用しやすい
- 商業地・住宅地など用途が幅広く、将来的な活用価値も高い
- 前面道路が広く車の出入りがしやすい
- 角地など、複数の道路に接している利便性の高い
持分の登記内容が明確で、法的トラブルを抱えていない
共有持分の登記が明確で、権利関係に問題がない場合は、適正な価格での売却が期待できます。
具体的には、次のような条件が挙げられます。
- 持分割合や面積が登記簿に正しく記載されている
- 接道状況が建築基準法を満たしている
- 隣の土地との境界トラブルがない
- 住宅ローンの残債がなく、抵当権が付いていない
反対に、相続登記が済んでいないまま放置されている場合や、共有者の一部が所在不明で連絡が取れない場合は注意が必要です。こうしたケースでは、買取業者が相続登記をやり直したり、裁判所を通じて不在者に代わる手続きを進めたりする必要があり、時間や費用がかかる分、査定額が下がります。
また、共有名義不動産に居住者がいる場合も、売却価格に影響します。例えば、共有者の一人が住んでいて退去に応じないケースでは、買取後の活用が難しくなり、買取業者にとってリスクが高まるため、査定額が低めに設定されやすいです。

他の共有者が売却に協力的または交渉可能な関係性にある
買取業者が共有持分を買い取る場合、最終的な目的は不動産を単独名義にして活用や売却をすることです。そのため、他の共有者が売却に協力的であるか、交渉が可能な関係性であるかは査定額に影響します。
例えば、親族同士で連絡が取りやすく「将来的には売却してもいい」といった合意が得られる見込みがある場合、買取業者としても買い取った後の手間が少なくなるため、高めの査定額をつける場合があります。
一方で、他の共有者が売却に強く反対していたり、所在不明で連絡が取れなかったりする場合は、交渉や裁判手続きなどに時間と費用がかかるため、査定額が下がる傾向にあります。
実務でも「兄弟姉妹の1人が賛成しているが、もう1人は音信不通」といったケースは少なくありません。その場合、買取業者は後の手続きや交渉にかかるコストを見込んで、査定額を下げて提示することになります。
共有持分は専門の買取業者に売却するのがおすすめな理由
共有持分は、他の共有者に買い取ってもらえれば比較的高値で売却できます。しかし、実際には共有者同士が疎遠になっていたり、関係が悪化していたりして交渉が難しいケースも少なくありません。
そのような場合には、共有持分の取り扱いに慣れている専門の買取業者へ相談するのがおすすめです。専門業者に依頼することで、次のようなメリットが期待できます。
- 仲介よりも短期間で現金化できる
- 仲介手数料がかからない
- 広告不要のため他者に知られることなく売却できる
- 基本的に契約不適合責任が免除になる
- 相場より高く買い取ってくれる業者もある
仲介よりも短期間で現金化できる
買取業者に売却する大きなメリットは、現金化までのスピードです。買取業者が直接共有持分を買い取るため、契約から入金までの流れがスムーズに進みます。対応が早い業者であれば、数日から1週間ほどで現金化できるケースもあります。
一方、仲介で売却する場合は、単独名義不動産であっても、買主を見つけて契約を結ぶまでに数週間から数ヵ月かかるのが一般的です。さらに共有持分は使い勝手が悪く、買主がほとんど現れないため、売却までに長期間を要したり、そもそも仲介を断られることも少なくありません。
他の共有者への売却が難しい場合、スピーディーに現金化したい場合は、買取業者への売却が現実的な選択肢といえるでしょう。
仲介手数料がかからない
買取業者に共有持分を売却する場合は、仲介手数料が発生しません。売却時の手間や費用をかけずに、スピーディーな現金化が可能です。
一方で、仲介業者を通じて売却する場合には仲介手数料が発生します。仲介手数料は法律で上限が決められており、「売却価格の3%+6万円+消費税」が一般的な計算式です。例えば、1,000万円で売却できた場合、最大で39.6万円が仲介手数料として必要になります。
広告不要のため他者に知られることなく売却できる
共有持分を買取業者に売却する場合は、売主と買取業者の間だけで取引が完結します。仲介のように買主を募集する広告を出す必要がないため、ご近所や知人に売却の事実が広まる心配がありません。
「近隣に知られたくない」「他の共有者に伝わるのは避けたい」といったケースでも、安心して共有持分を手放すことが可能です。
基本的に契約不適合責任が免除になる
買取業者との売買契約は、契約不適合責任を免除とした契約が一般的です。簡単にいうと、売却後に物件に欠陥が見つかっても、売主が責任を負う必要がないという取り決めです。
例えば、売却後の物件にシロアリ被害や雨漏りといった不具合が発覚しても、免責条項があることで損害賠償や契約解除を求められることはありません。
さらに、売却後は共有持分の所有権がすべて買取業者に移るため、残る共有者との交渉やトラブルが起きても、対応するのは買取業者です。多くの業者は弁護士などの専門家と連携しているため、法的な問題への対処もスムーズに進みやすいでしょう。
ただし、すべての買取業者が免責対応をしているわけではありません。契約前に契約書の内容を確認し、免責条項が明記されているかをチェックすることが大切です。
相場より高く買い取ってくれる業者もある
共有持分の買取実績が豊富な買取業者であれば、相場よりも高値で買い取ってくれる場合があります。実績のある業者は、買取後に必要となる他の共有者との交渉や法的手続きに慣れているため、余計なコストや時間をかけずに問題を解決できるためです。再販売や活用までの費用を抑えられる分、高めの査定額をつく可能性があります。

共有持分をなるべく高く売却するコツ
共有持分を手放すなら、できるだけ高く売りたいと考えるでしょう。共有持分を売却するのなら、以下のコツを押さえておきましょう。
- 複数社への査定依頼で相場感をつかむ
- 共有状態や登記の不備を事前に整理しておく
複数社への査定依頼で相場感をつかむ
共有持分を高額買取してもらうのであれば、複数の買取業者で査定を受けて、査定額を比較しましょう。
共有持分の買取価格は明確なルールがないため、業者によって大きく異なります。例えば、A社で300万円と査定された持分が、B社では600万円で査定されることも珍しくありません。
できるだけ多くの買取業者で査定を受けて、その中から高額買取してくれる業者を選びましょう。
高値で買取してくれる買取業者を探す場合、一度に複数の買取業者で査定を受けられる不動産一括査定サイトの利用がおすすめです。
「イエコンの一括査定」では、担当窓口が複数社への査定依頼や連絡を代行してくれるため、煩わしいやり取りは不要です。さらに「高額査定の業者だけ知りたい」「士業と連携した業者に依頼したい」といった希望条件にも対応しています。共有持分の売却相場を知りたい方は、ぜひご活用ください。
共有状態や登記の不備を事前に整理しておく
共有持分を高く売却するには、権利関係をできるだけ明確にしておくことが大切です。登記内容が整理され、共有者同士の関係も良好であれば、売却がスムーズに進み、価格も下がりにくくなります。
一方、共有者の所在が不明だったり、相続登記が未了だったりすると、業者側に追加の手間や費用がかかるため、その分査定額が下がってしまいます。
共有持分を買取業者に売却する流れ
複数社の買取業者に査定依頼をし、納得できる買取価格の買取業者を選んだら、実際に共有持分の買取を依頼しましょう。買取依頼した後、ほとんどの手続きは買取業者が代行してくれますが、売主の協力も必要になります。
主な流れは以下のとおりです。
- 必要書類を用意する(登記簿謄本、本人確認書類など)
- 不動産売買契約書に署名・押印する
- 代金受領後に持分移転登記を行う
必要書類を用意する(登記簿謄本、本人確認書類など)
共有持分を買取業者に買取してもらう場合の必要書類は以下のとおりです。
書類 | 概要 |
---|---|
権利証(登記識別情報) | 権利証とは、不動産の所有権を証明する書類。過去の売買や相続時に法務局から交付される。2005年からは「登記識別情報」という12桁の番号の交付に移行している。 |
身分証明書 | 本人確認に必要。運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどが利用できる。 |
印鑑証明書(発行から3カ月以内) | 実印が本人のものであることを証明する書類。市区町村役場やコンビニで取得可能。 |
実印 | 売買契約や登記申請に必要。事前に市区町村で登録が必要。 |
固定資産税評価額の証明書 | 不動産の評価額を証明する書類。不動産所在地の市区町村役場(資産税課など)で取得可能。 |
土地測量図・境界確認書(土地の場合) | 土地の形や境界を示す資料。既存図面は法務局で取得、新たに必要な場合は土地家屋調査士に依頼。 |
住民票(現住所が登記簿上と異なる場合) | 登記簿上の住所と現住所が異なる場合に必要。市区町村役場やコンビニで取得可能。 |
委任状(代理人に委任する場合) | 本人が手続きできないときに代理人へ権限を委任する書類。自作したものでも良い。 |
不動産売買契約書に署名・押印する
重要事項や条件などを確認した後、買取業者と共有持分の売買契約を結びます。「基本的に契約不適合責任が免除になる」で解説した、契約不適合責任の免責条項についてもしっかりと確認しておきましょう。
共有持分を買取してもらう場合、買取後のトラブルを避けるために売買契約書という書類を作成して、契約内容を書面に残します。不動産売買契約書とは、共有不動産の所在や共有持分の買取価格などを記載した書類で、基本的に買取業者が作成してくれる場合が多いです。
不動産売買契約書に売主と買取業者が署名・押印を済ませると、共有持分を買取する不動産売買契約が成立します。
「宅地建物取引業法」により買取業者は売買契約書を作成する義務があるため、作成しない場合は依頼しましょう。また、契約書の内容の確認に不安がある場合は、不動産に詳しい弁護士にリーガルチェックを依頼する手もあります。

代金受領後に持分移転登記を行う
売買契約を締結したら、その内容に従って買取価格が買取業者から入金されます。入金を確認したら、売主から買取業者へ持分の名義を移すための「持分移転登記」を行いましょう。
持分移転登記には、以下のような書類が必要です。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報(売買契約書)
- 権利証書または登記識別情報通知
- 固定資産税評価証明書
- 印鑑証明書
「持分移転登記」の方法は買取業者が熟知しているので、指示通りに手続きすれば問題ありません。
まとめ
共有持分の売却相場は、売却先によって異なります。できるだけ高く売却したい場合は、まず他の共有者への売却を検討するのがおすすめです。ただし、共有者と疎遠であったり関係が悪化している場合は、専門の買取業者に相談すると良いでしょう。
買取業者であれば直接共有持分を買い取ってくれるため、現金化までがスピーディーです。手間や時間をかけずに現金化したい方に適した方法といえます。
なお、買取業者での売却相場は「不動産全体の市場価格×持分割合×1/2~1/3」程度が目安です。相場を理解したうえで複数の業者を比較し、条件を見極めながら選ぶことで、納得のいく売却につながるでしょう。