共有物分割請求をして、共有関係から離脱したいと考えている人は多いのではないでしょうか。
そこで、共有物分割請求にはどれくらいの弁護士費用がかかるのか気になりますよね。
共有物分割請求における弁護士費用は、共有持分の時価に比例して高くなります。
そのため、所有している共有持分の時価がわかればおよその弁護士費用が算出できます。
この記事では、弁護士費用の算出方法をわかりやすく解説していますので、参考にしてください。
また、弁護士費用を安く抑える方法や、共有物分割請求以外で共有関係を解消する方法もお伝えします。

- 共有物分割請求の弁護士費用は、共有持分の時価から算出できる。
- 着手金や相談無料の弁護士に依頼すれば、弁護士費用を抑えられる。
- 弁護士費用の捻出が難しいときは、共有持分を売却して共有関係を解消するのがおすすめ。
弁護士費用は訴訟に発展すると高くなるのが一般的
共有物分割請求の弁護士費用は、請求が訴訟に発展すると高くなります。
一方で弁護士を挟んだ交渉や、調停によって解決できれば弁護士費用は安く済むのが一般的です。
ただし、弁護士費用の内訳は弁護士事務所によって異なるので、相談の段階でよく確認しましょう。
また、弁護士に相談する際は実費についてもよく話し合っておくと、請求の際に想定よりも弁護士費用が大幅に高額となってしまうのを防げます。
交渉や調停で解決すると弁護士費用は2/3程度で済む
共有物分割請求が交渉や調停の段階で解決すると、弁護士費用は訴訟に発展したときの2/3程度で済むことが一般的です。
例えば、訴訟に発展した場合の弁護士費用が50万円だとしたら、交渉や調停の段階で解決できたときの弁護士費用は約35万円です。
交渉や調停はあくまでも話し合いであるため、訴訟よりも手続きなどが少なく弁護士費用も低い傾向にあります。
共有物の分割に反対している共有者がいる場合や、共有者が行方不明の場合などは弁護士を挟んで共有者に分割の交渉をすると、成功するケースが多いです。
調停とは、民間の有識者や弁護士から選出された調停委員を挟んだ話し合いのことで、法的根拠に基づいた主張ができた方が有利です。
そのため交渉や調停であっても、自分でおこなうよりも弁護士へ依頼したほうがよいでしょう。
ただし、調停の段階で訴訟に発展した場合と同じ費用がかかる弁護士事務所もあるので、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
弁護士費用の内訳
弁護士費用の内訳は、基本的に以下のとおりです。
- 相談料・・・弁護士に依頼の相談をする費用。
- 着手金・・・弁護士が依頼を引き受ける際の費用。結果に関わらず必ず発生する。
- 報酬金・・・案件の成功程度に応じて発生する費用。
- 実費・・・収入印紙代、郵便切手代、交通費、通信費、宿泊費など弁護士が依頼を解決する際に発生する費用。
相談料の相場は1時間あたり1万円ですが、無料で相談を受け付けている弁護士事務所も多くあります。
実費は後に大きな出費となるケースもあるので、依頼する際に弁護士とよく話し合っておきましょう。
例えば、移動の際は電車を利用するかタクシーを利用するか、宿泊での出張が伴うなら宿泊施設はどこを利用するかなどを、あらかじめ確認しておくことが大切です。
共有物分割請求にかかる弁護士費用の算出方法は2パターン
着手金と報酬金の算出方法は主に2パターンで、それに上記で解説した実費や相談料などを足した金額が弁護士費用です。
ただ、共有物分割請求にかかる弁護士費用は、共有持分の時価に比例することが一般的なので、明確な相場がありません。
算出方法を明示している弁護士事務所がほとんどなので、共有持分の時価がわかればおよその金額が算出できます。
共有物分割請求における、着手金と報酬金の算出方法をそれぞれ詳しく説明します。
持分の時価1/3を経済的利益の額として報酬金を算出するパターン
まずは、共有持分の時価1/3を経済的利益の額として算出するパターンです。
経済的利益とは依頼した案件が解決した際に、依頼者が得られる経済的な利益です。これをお金に換算して計算します。
この場合、着手金も経済的利益に比例するのが一般的です。
例えば共有持分の時価が300万円の場合、経済的利益の額は100万円です。そして着手金が経済的利益の8%、成功報酬は16%としている弁護士事務所に依頼をした場合は、以下の算出方法となります。
・報酬金=100万円(経済的利益)×16%(0.16)=16万円
そして着手金と報酬金に、実費などを合わせた合計が弁護士費用となります。
着手金と報酬金の割合は、経済的利益の額によって以下の表のように定めている弁護士事務所が多いです。
経済的利益 | 着手金 | 成功報酬 |
---|---|---|
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円を超え3,000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18 万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円を超える | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
経済的利益の5~10%を報酬金とするパターン
次に、経済的利益の5~10%を報酬金として算出するパターンです。
着手金や経済的利益の何%を報酬金にするかは、弁護士事務所によって異なるので相談の際に確認するとよいでしょう。
前の項目と同様に時価が300万円である共有持分の分割請求を、着手金が30万円、経済的利益の5%を報酬金としている弁護士事務所に依頼した場合の弁護士費用を算出してみます。
・報酬金=300万円(共有持分の時価)×5%(0.05)=15万円
着手金と報酬金に加えて、実費や相談料がかかります。
着手金は30万円とする弁護士事務所が大半ですが、上記例のように経済的利益が低い場合は着手金も低くなる弁護士事務所が多いです。
次の項目では、弁護士費用例を共有持分の時価ごとに算出していきます。
どちらの算出方法でも総額はほとんど変わらない
B:経済的利益の5~10%を報酬金とするパターン
として、複数の共有持分の時価を用いて算出します。
※Aにおける着手金と報酬金の割合は、前の項目で用いた表に基づいて算出しています。
共有持分の時価が1,000万円の場合の算出方法
【Aパターン】
着手金=333万(経済的利益)×5%+9万≒26万円
報酬金=333万(経済的利益)×10%+18万≒51万円
着手金+報酬金=77万円
【Bパターン】
着手金=30万円
報酬金=1,000万(共有持分の時価)×5%=50万円
着手金+報酬金=80万円
共有持分の時価が3,000万円の場合の算出方法
【Aパターン】
着手金=1,000万(経済的利益)×5%+9万=59万円
報酬金=1,000万(経済的利益)×10%+18万=118万円
着手金+報酬金=177万円
【Bパターン】
着手金=30万円
報酬金=3,000万(共有持分の時価)×5%=150万円
着手金+報酬金=180万円
共有持分の時価が5,000万円の場合の算出方法
【Aパターン】
着手金=1,666万(経済的利益)×5%+9万≒92万
報酬金=1,666万(経済的利益)×10%+18万≒185万
着手金+報酬金=277万円
【Bパターン】
着手金=30万円
報酬金=5,000万(共有持分の時価)×5%=250万
着手金+報酬金=280万円
例を見てわかるように、AとBどちらの方法で算出しても合計金額に大きな差異はありません。
ただ今回はBを一律5%で算出しましたが、5%よりも高い割合を設定している弁護士事務所もあるので、相談の段階で確認するとよいでしょう。
また、訴訟が失敗した際も着手金はかかるので、共有持分の時価が高い場合はBの算出方法を採用している弁護士事務所に依頼するのがおすすめです。
共有物分割請求で弁護士費用を抑える方法
共有物分割請求における弁護士費用の算出方法は、前の項目で解説したとおりです。
ただし、着手金や経済的利益における報酬金の割合などは、弁護士事務所が自由に決めることができます。
そのため、着手金の安い弁護士事務所や相談が無料の弁護士事務所を選べば、弁護士費用を抑えられます。
また司法書士への依頼や本人訴訟でも、弁護士費用を抑えることが可能です。
もしも経済的な事情で弁護士に依頼が難しい場合は、法テラスの費用立て替え制度を利用するのもよいでしょう。
次の項目から、弁護士費用を抑える方法を詳しくお伝えします。
相談無料や着手金が安い弁護士に依頼する
着手金は、弁護士事務所がそれぞれ設定できます。
そのため着手金が安い弁護士事務所に依頼をすれば、弁護士費用を抑えられます。
また、報酬金の割合を低く設定している弁護士事務所を選ぶのも、弁護士費用を抑える方法の1つです。
初回の相談は無料でおこなっている弁護士事務所も多くあるので、そのような弁護士事務所に依頼するのもよいでしょう。
着手金などの金額は、弁護士事務所のホームページで確認できます。
載っていない場合は弁護士事務所に直接問い合わせると、教えてもらえる可能性が高いです。
法テラスの費用立て替え制度を利用する
法テラスは、国民が法的支援を受けやすいように国が設立した機関です。
法テラスでは、法的トラブルに関する相談を無料で受け付けています。
また法テラスには、経済的事情で弁護士へ依頼するのが難しい方へ向けた「費用立て替え制度」があります。
- 収入等が一定額以下であること
- 勝訴の見込みがないとは言えないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
上記の法テラスが定めた基準を満たせば弁護士費用を立替えてもらうことができ、その後分割で法テラスへ返していきます。
さらに法テラスでは、電話やオンラインでの相談も受け付けているので、活用するとよいでしょう。
参照:法テラス
司法書士に依頼する
共有物分割請求は、弁護士ではなく司法書士に依頼ができます。
司法書士への依頼費用は、弁護士よりも安いことが一般的です。
ただし、司法書士は140万円を超える案件を扱うことが法律で禁止されています。
そのため共有持分の時価が140万円を超える場合は、司法書士ではなく弁護士に依頼しましょう。
また司法書士は、140万円を超える案件だと本人訴訟支援もできないので注意が必要です。
本人訴訟を検討する
本人訴訟とは、弁護士に依頼せず自分で裁判の手続きをおこなうことです。
本人訴訟であれば、弁護士費用をかけずに共有物分割請求ができます。
請求金額が弁護士費用よりも低い見込みの場合などに、よく使われる手段です。
ただし、訴訟は法的根拠に基づく主張が有利なのが一般的です。そのため相手に弁護士がついている場合の本人訴訟は、法的知識がないと非常に不利となるので注意しましょう。
共有物分割請求以外で共有関係を解消する方法
共有物分割請求は、弁護士に依頼しないと不利になることが多かったり、状況によっては権利濫用が適用されて棄却されることもあります。
そうなると共有物の分割ができないどころか、弁護士費用が無駄になることも考えられます。
そこで共有物分割請求をしなくても、共有関係を解消できる方法も検討してみてはいかがでしょうか。
費用をほとんどかけずにおこなえる方法や、他共有者の同意がなくても実行可能な方法もあります。
この項目では、共有物分割請求以外で共有関係を解消する方法をお伝えします。
他共有者に共有持分を買取ってもらう
他共有者に共有持分を買取ってもらうことで、共有関係を解消できます。
他共有者への交渉が必要ですが、他共有者が共有不動産を利用している場合などは交渉に応じてくれるケースも多いです。
ただし、共有者同士の買取請求に強制力はなく、他共有者が共有不動産を利用しているからと無理に買取らせることはできないので注意しましょう。
他共有者が買取に同意した場合は、自由に価格設定ができます。
相場よりも大幅に低い金額で売買すると売主から買主へ譲渡されたとみなされる可能性があるので、価格設定は相場を参考にして大幅な差異がないようにするとよいでしょう。
他共有者の共有持分を買取って不動産全体を売却する
他共有者から共有持分を買取って、単独不動産として売却する方法があります。
誰も共有不動産を利用していない場合に、交渉が成立しやすいです。
共有持分を買取るための資金が必要になりますが、単独不動産として売却できれば十分に回収できます。
また、共有不動産が利用できる状態であれば、住居や駐車場などとして貸出して利益を得るのもよいでしょう。
共有持分のみを売却する
自分の共有持分のみであれば、他共有者の同意なく売却ができます。
共有者が共有不動産を手放すことを拒否したり、買取請求にも応じてもらえない場合におすすめの手段です。
ただし、共有持分のみの売却は不動産全体の売却よりも、大幅に価格が下がってしまうことがほとんどです。
また共有持分はそのままでの活用が難しく、買取をしていない不動産業者も多くあります。
そこで、共有持分専門の買取業者に買取を依頼するのがおすすめです。
共有持分専門の買取業者は、共有持分を買取った後に収益化する手段を持っており、共有持分のみでも相場と変わらない値段での買取が可能です。
また弁護士と提携している専門業者もあります。
そのような業者は、手放すことを反対している共有者へも法的根拠に基づいて買取の説得ができます。
そのため、共有物分割請求が棄却されたような事情のある共有持分でも、積極的に買取しているケースも多いです。
無料査定をおこなっている業者も多くあるので、まずは相談してみるとよいでしょう。

共有持分を放棄する
共有持分を放棄することでも、共有関係を解消できます。
共有持分の放棄は他共有者の同意なくできますが、共有持分を無償で手放すことになります。
また、放棄した持分は他共有者へ持分割合に応じて分配されるため、特定の共有者に多く譲ったり第三者に共有持分を譲ることはできません。
そのため共有持分の対価を得たい場合や、特定の人に共有持分を譲りたいときは放棄以外の方法を選択するのがよいでしょう。
また共有持分の放棄を完了させるための登記は、他共有者の協力が必要です。
共有持分の放棄については、以下の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。
共有持分は放棄できる!放棄の手順や放棄後の登記も詳しく解説します
まとめ
共有物分割請求における弁護士費用は、共有持分の時価を把握することでおよその金額が算出できます。
ただし、弁護士事務所によって着手金が異なったり、交渉内容によっては実費がかさむこともあるので注意が必要です。
弁護士費用を事前に知りたいときは、共有持分の時価を調べて無料相談をしている弁護士事務所に相談するのがよいでしょう。
また不動産業者と提携している弁護士事務所であれば、時価の算出手段も持ち合わせていることが多いのでおすすめです。
また、共有持分の売却や放棄であれば、ほとんど費用をかけずに共有関係を解消できます。
共有持分をすぐに現金化することもできるので、まずは共有持分専門の買取業者に査定を依頼するのがおすすめです。