共有持分の「所有・取得・譲渡・売却」にかかる税金を解説!税負担を軽減する公的制度もあわせて紹介!

共有持分 税金

不動産と税金は密接な関係にありますが、共有持分の場合はとくに複雑で、税金の制度をしっかり理解しておかないと、損失をしてしまう恐れがあります。

共有持分の税金は、大きく分けると「所有」「取得」「譲渡」の3つのタイミングで課税されます。

「それぞれどのような名目で、いくらぐらい課税されるのか?」をしっかりと把握しておくことが大切です。

また、税負担が苦しく支払いが困難な場合は、共有持分の売却も検討してみましょう。共有不動産ではなく共有持分だけであれば、他共有者の同意がなくても売却できるので、まずは気軽に共有持分専門の買取業者に相談してみることをおすすめします。

目次
  1. 共有持分を「所有」「取得」「譲渡」したときに税金が発生する
  2. 共有持分の所有にかかる税金と税負担軽減制度
  3. 共有持分の取得にかかる税金と税負担軽減制度
  4. 共有持分の譲渡にかかる税金と税負担軽減制度
  5. 取得・譲渡の両方に関わる税金
  6. 共有持分の売却時にかかる税金・税率と確定申告の方法
  7. 共有持分における税金の計算や申告手続きは税理士に任せるのがおすすめ

共有持分を「所有」「取得」「譲渡」したときに税金が発生する

共有持分において税金が発生するタイミングは、「所有」「取得」「譲渡」の3つにわけられます。

「所有」とはそのままの意味で、共有持分を持っている状態を指します。

「取得」は共有持分を手に入れたときです。購入や贈与を受けたとき(受贈)、相続が含まれます。

「譲渡」は共有持分をだれかに譲ることです。有償で譲る売却と、無償で譲る贈与があります。

それぞれのタイミングで、各種の税金が発生すると覚えておきましょう。

共有持分の税金は「持分割合に合わせて負担」が基本

共有不動産の税金は、共有者全員がそれぞれの持分割合に応じて負担するのが基本です。

  • 民法 第253条
    各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
  • 引用:e-Govポータル「民法第253条」

     

    ただし、共有者のだれかが共有不動産に住んでいるときに「家賃を徴収しない代わりに固定資産税を支払わない」といった取り決めをしていることがあります。

    これらの取り決めは口約束でも有効ですが、可能な限り書面に残しておいたほうが将来のトラブルも防げるでしょう。

    共有持分の所有にかかる税金と税負担軽減制度

    所有することでかかる税金は、共有持分を持ち続ける限り毎年関わるものです。

    不動産は数年~数十年単位で持ち続けるものなので、所有にかかる税金はもっとも理解しておくべきです。しかし、継続的に支払っているために「現状維持でいいだろう」と考えるケースも多くなります。

    これから共有持分を取得する人はもちろん、現在持っている方もこの項目を読んで、自分の税金負担を見直すことをおすすめします。

    不動産の価値をもとに市町村が課税する「固定資産税」と「都市計画税」

    固定資産税も都市計画税も、市町村(東京23区は区)が主体となって徴収する地方税です。毎年1月1日時点における固定資産の所有者に対し課せられます。

    固定資産税は立地に関わらず課せられ、税率は1.4%が標準となっています。ただし、自治体によっては税率が変わることもあります。

    固定資産税については別の記事でも取り扱っているので、ぜひご参照ください。

    共有持分 固定資産税 共有関係の解消で支払いから逃れられる!共有持分の固定資産税納付方法について詳しく解説

    都市計画税は、市街化区域内(家屋や商業施設が密集しており積極的に開発すべき区域)にある土地および家屋が対象です。各自治体が課税するかどうかを決めるもので、区域内でも課税されていない不動産があります。税率は0.3%が上限とされています。

    計算方法は、それぞれ下記のようになります。

      固定資産税・都市計画税の計算式
    • 固定資産税=固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
    • 都市計画税=固定資産税評価額×0.3%(制限税率)

    共有持分の固定資産税・都市計画税は代表者ヘ請求される

    固定資産税・都市計画税の納税通知書は、4月~6月に各自治体から発送されます。支払いは一括か、4期にわけての分納です。

    納税通知書は、持分の多さなどから各自治体が決めた代表者1人に送られます。代表者を指定・変更する届け出も可能ですが、共有者各自へ持分に応じた納税通知書を送ることは原則としてありません。

    固定資産税・都市計画税には連帯納税義務があり、全額支払う義務を共有者全員が等しく負います。形式としては代表者がまとめて支払い、共有者間でそれぞれの負担額を清算することが一般的です。

    建物があると土地の固定資産税・都市計画税が安くなる

    固定資産税・都市計画税の節税対策として「土地は更地にせず建物を建てる」というものがあります。

    「住宅用地の特例」といい、居住を目的とした家屋に使う土地の税負担が軽減されるためです。土地の広さによって、軽減率は下記のように変わります。

      住宅用地の特例における軽減率
    • 小規模住宅用地(住宅・アパートなどで200㎡以下の部分)・・・固定資産税:価格×1/6、都市計画税:価格×1/3
    • 一般住宅用地(住宅・アパートなどで200㎡超の部分)・・・固定資産税:価格×1/3、都市計画税:価格×2/3

    共有不動産を貸し出すときの「所得税」と「住民税」

    不動産を貸し出しているとき、その賃貸料収入と他の所得を合算した所得税と、住民税が課税されます。

    所得税は国に納める税金で、1月1日から12月31日の間に得られる収入を税務署に確定申告します。翌年の2月16日〜3月15日の期間に確定申告のうえ納税しなければいけません。

    所得税額 ={総所得金額(不動産所得+給与などその他所得金額)-各種所得控除額}×税率−控除額−各種税額控除-源泉徴収税額

    税率は5%~45%と、所得金額によって幅があります。

    住民税は地方税ですが、税務署に確定申告することで同時に申告されるので特別な手続きは不要です。給料から源泉徴収される「特別徴収」と、市町村から送られる納付書で納める「普通徴収」があります。

    住民税の課税額は10%が基本ですが、自治体により多少違うことがあります。

    所得税や住民税を減額する「住宅ローン控除」

    住宅ローンを組んだとき、所得税や住民税が10~13年間控除される制度があります。

    控除される金額は以下の3つのなかから、もっとも低い金額が所得税から差し引かれます。また、所得税を差し引いて余った控除額を、住民税から差し引くことになります。

      住宅ローン控除の金額
    • 限度額40万円
    • 年末時点での住宅ローン残高×夫婦それぞれの負担割合×1%
    • 建物価格×2%÷3(11~13年目のみ)

    住宅ローン控除の仕組みを詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせて参考にしてください。

    住宅ローン控除とは わかりやすく 住宅ローン控除とは?控除額・適用条件・申請方法をわかりやすく解説

    共有持分の取得にかかる税金と税負担軽減制度

    共有持分を取得する理由は、購入・贈与・相続にわけられます。

    購入は金銭を対価に取得すること、贈与は無償で持分を贈られることで、不動産業界ではこの2つを合わせて譲渡ともいいます。

    相続は財産の所有者が死んだときに、家族や親戚に分配することです。相続トラブルは財産の多寡に関わらず起こり得るので、生前のうちに遺言書などで分配の道筋をつけておくといいでしょう。

    それでは、取得にかかる税金とその軽減制度について解説していきます。

    共有持分の購入・贈与で課税される「不動産取得税」

    不動産取得税は、購入・贈与で共有持分を取得したときに都道府県が課税するものです。相続による取得には課税されません。

    取得後6ヶ月〜1年半ほどで各都道府県から納税通知書が届き、金融機関で納付します。

    計算式は以下のとおりです。

    土地・建物の税額 = 固定資産税評価額 × 4%(標準税率)

    共有物の分割をおこなったとき、もともとの持分割合までの取得は非課税となります。

    例えば、500万円の不動産のうち1/2の持分を所有した場合、分割で250万円分の不動産を取得したときは非課税です。しかし、250万円を超えて不動産を取得すると、もともとの持分割合を超えてしまうため課税されます。

    不動産取得税の軽減措置

    要件として下記を満たし、都道府県の税事務所に申告することで、不動産取得税の控除を受けられます。

      不動産取得税の控除を受けるための要件
    • 床面積が50㎡以上240㎡以下
    • 取得者の居住用、またはセカンドハウス用の住宅
    • 1982月1月1日以降に建築されたもの、または新耐震基準に適合していることが証明されたもの

    建物の場合、新築した年によって控除額が変わります。

      不動産取得税の控除額(建物)
    1. 1997年4月1日以降:1200万円
    2. 1989年4月1日~1997年3月31日:1000万円
    3. 1985年7月1日~1989年3月31日:450万円
    4. 1981年7月1日~1985年6月30日:420万円
    5. 1976年1月1日~1981年6月30日:350万円
    6. 1973年1月1日~1975年12月31日:230万円
    7. 1964年1月1日~1972年12月31日:150万円
    8. 1954年7月1日~1963年12月31日:100万円

    土地の方は、上記の要件を満たす建物がある場合に、下記のいずれか多い金額が控除されます。

      不動産取得税の控除額(土地)
    • 4万5000円
    • 土地1m2当たりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(200m2が限度)×税率(3%)

    申告期限は条例によって定められているので、税事務所に確認するようにしましょう。

    不動産の「消費税」には非課税のものがある

    消費税は日常から身近な税金ですが、金額の大きい不動産においてはその影響も大きくなります。

    そのため、不動産売買においては「土地の購入」と「個人間での中古住宅の売買」は消費税の非課税対象となります。

    また、共有物の分割より得た不動産は、不動産取得税と同じように「もともとの持分割合までの取得」は非課税となります。

    共有持分を無償で受け取ったときにかかる「贈与税」

    贈与税は、財産を無償で受け取ったときにかかるものです。不動産においては、土地や建物を渡したり、購入資金の援助などが関係します。

    1月1日~12月31日までに受けた贈与財産に対し、翌年2月1日~3月15日までの期間に贈与税の申告および納税をおこないます。贈与した人や回数・財産の種類に関係なくすべてを合算して申告します。これを暦年課税といいます。

    これとは別に、2,500万円までの贈与を限度に贈与税を納めず、贈与者が亡くなったときに相続税と合わせて課税・精算する相続時精算課税もあります。必然的に将来の相続が発生する間柄での贈与に限られ、ほかにも一定の条件があります。

    贈与税の税率や控除・特例などは、下記の記事を参考にしてみてください。

    共有持分 譲渡 【共有持分の譲渡の仕方】やり方と方法別の税金制度についても解説!

    共有持分の放棄で手に入れた持分は「みなし贈与」の対象になる

    各共有者は、自らの意志で自分の持分を放棄できます。

    放棄された持分は他の共有者に帰属することになり、これを「みなし贈与」として税制上では贈与と同じ扱いになります。

    持分の放棄は共有者間のトラブル解決方法として使われますが、放棄による帰属は拒否することができないため、逆にトラブルの元となる可能性があるので注意しましょう。

    詳しくは、下記の記事で解説しています。

    共有持分 放棄 共有持分は放棄できる!放棄の手順や放棄後の登記も詳しく解説します

    相続時に発生する「相続税」

    相続税は亡くなった人の財産を引き継ぐときにかかる税金です。相続開始日から10カ月以内に税務署に申告し、一括で納めます。

    金融機関の窓口、クレジットカード、コンビニエンスストア、税務署で納めることが可能です。

    不動産だけではなく、金銭や株など亡くなった人の財産すべてを合算して相続人で分配します。だれがどの財産を取得するかは、遺産分割協議により話し合うことになります。

    共有持分の相続については、下記の記事もご覧ください。
    共有持分 相続 共有持分の相続は「売却」でリスクを防げる!相続から売却までの流れを解説します

    共有持分の譲渡にかかる税金と税負担軽減制度

    譲渡とは「譲り渡す」と書くとおり、自分の持っているものを他者に渡すことをいいます。売却も譲渡に含まれます。

    共有持分では、譲渡が有償である(=対価が発生する)ときに課税されます。対価には主に金銭(=売却)と不動産(=交換)があります。

    それぞれどのように課税されるのかと、非課税や控除の特例を見ていきましょう。

    不動産の売却にかかる「譲渡所得税」と「住民税」

    不動産を売却したときの譲渡所得は所得税・住民税の対象ですが、ほかの所得とわけて計算する「分離課税」となっています。

    売却価格から諸経費を差し引いた金額が、不動産を取得したときの金額を上回ったときに課税されます。

    贈与税と同じように、不動産譲渡にかかる税金は下記の記事を参考にしてください。

    共有持分 譲渡 【共有持分の譲渡の仕方】やり方と方法別の税金制度についても解説!

    「マイホームを売ったとき」or「相続で手に入れた空き家を売るとき」に使える特例

    マイホームを売却するとき、もしくは相続で取得した空き家住宅を売るとき、売却価格から3,000万円を控除できます。

    2つの特例は併用することも可能ですが、併用すると控除の上限は2つ合わせて3,000万円になるので注意しましょう。

    詳細は、下記の記事にて紹介しています。
    空き家 共有不動産 売却 空き家の共有不動産を売却する方法!共有空き家のリスクや売却反対者への交渉方法なども解説します

    固定資産の交換は一定の条件を満たせば非課税になる

    金銭ではなく、共有持分や単独名義の不動産を交換することも可能です。通常、固定資産の交換は譲渡と同じとされ差額に課税されますが、所得税法の特例が適用されると課税されません。

    条件は以下のとおりです。

      所得税法における交換の特例
    • 交換する固定資産が同じ種類、同じ用途
    • 資産価格の差額が20%以内
    • 1年以上所有しており、交換のために取得した資産ではないこと

    例えば、1,000万円の土地甲と、500万円の土地乙があったとして、以下のような所有状態とします。

    土地甲:AとBの共有で持分1/2(500万円ずつ)
    土地乙:Aの単独所有

    このとき、土地甲のB持分と土地乙のA所有権を交換したとします。どちらも土地であり、資産価格も同じ500万円です。このような交換のときは譲渡自体がなかったとされ、譲渡所得税が課されません。

    参照:e-Govポータル「所得税法第58条」

    取得・譲渡の両方に関わる税金

    所得・譲渡に関わらず、共有持分を動かすときにかかる税金があります。それが「登録免許税」と「印紙税」です。

    登録免許税は登記全般にかかり、印紙税はお金に絡んだ書類全般にかかるものです。

    不動産全体の取引から見ればそれほど大きな金額ではありませんが、それゆえに不動産取引の予算を組むときに見落としがちです。しっかりと把握しておきましょう。

    共有持分を登記するときに支払う「登録免許税」

    登録免許税は、登記申請するときに納める税金です。登記とは不動産の権利を当事者以外に示すための制度で、登記しなければ自分の所有権を証明できず、トラブルが起こった際に不利になります。

    税額は、固定資産税評価額に税率をかけた金額になり、税率は0.1%~2%と登記の種類で変わります。期間限定で、2022年3月31日まで住宅用家屋の軽減税率が設定されています。

    詳細は、国税庁のウェブサイトで確認しましょう。

    参照:国税庁 登録免許税の税額表

    売買契約書などの課税文書にかかる「印紙税」

    印紙税は、経済活動において作成された契約書や領収書などの書類に対して課税されます。通常、書類を発行した側が支払いものです。

    税額は200円~60万円で、書類の額面によって決まります。額面が1万円以下のものには課税されません。

    不動産取引では、不動産の売買契約書、建築工事請負契約書、金銭消費貸借(ローン)契約書が主な課税対象です。

    こちらも詳細は国税庁のサイトをご覧ください。

    参照:国税庁 印紙税額の一覧表(その1)

    共有持分の売却時にかかる税金・税率と確定申告の方法

    共有持分を売却すると、譲渡所得税が課されます。

    譲渡所得税は給与所得など他の所得税とは合算せず、単独で計算されます。

    譲渡所得税の税率は、不動産の所有年数によって大きく変わるので共有持分を売却するときは所有年数も考慮するとよいでしょう。

    また、法制度の改正によって税率が変わることもあるので、税金の計算や確定申告をするときは国税庁・税務署で最新情報を確認するか、税理士に依頼するのが確実です。

    この項目では、共有持分の売却でかかる譲渡所得の計算方法や、主な特別控除(税額を低くして納税者の負担を軽くする措置)を紹介していきます。

    共有持分の売却でかかる税額をだすための「譲渡所得」の計算式

    共有持分の売却でかかる税額(=譲渡所得税)を計算する前に、その元となる「譲渡所得」を、下記の計算式で算出する必要があります。

    ・譲渡所得=共有持分の売却価格-(取得費+譲渡費用)

    取得費は不動産を購入したときの価格、譲渡費用は不動産の売却にかかった必要経費のことです。

      【共有持分の売却価格から差し引ける「取得費」の一覧】
    • 購入代金、建築代金、購入手数料
    • 設備費や改良費
    • 不動産の取得時に納めた登録免許税、不動産取得税、印紙税など
    • 借主を立ち退かせるために支払った立退料
    • 土地の埋立てなどの造成費用
    • 土地の取得時に支払った測量費
    • 所有権などを確保するために要した訴訟費用
    • 土地利用目的で購入した建物付き土地の、建物分の購入費用や解体費用
    • 不動産の使用開始日までの期間における、ローンの利子
    • 不動産の購入契約を解除して、他の物件を取得することとしたときの違約金

    参照:国税庁「取得費となるもの」

    共有持分の場合は、どちらも不動産全体で考えたときの価格から、売却した持分割合をかけて計算します。

    建物の経年劣化による価値の低下は「減価償却費相当額」で計算する

    建物の場合、経年劣化により価値が下がるため、取得費を求めるときは購入代金や建築代金から、低下した分の価値を差し引かなければなりません。

    これを「減価償却費相当額」といいます。

    事業用以外の一般的な住居などの場合、減価償却費相当額は下記の計算式で算出します。

    ・建物の取得価額×0.9×償却率(下記参照)× 経過年数(6ヶ月未満切り捨て、6ヶ月以上繰り上げ)

    ただし、減価償却費相当額の上限は取得金額の95%です。

    償却率は建物の用途と材質に応じて異なり、居住用建物の場合は以下のとおりです。

    建物区分 償却率
    木造 0.031
    木骨モルタル 0.034
    (鉄骨)鉄筋コンクリート 0.015
    金属造①※ 0.036
    金属造②※ 0.025

    ※「金属造①」・・・軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3㎜以下の建物
    ※「金属造②」・・・軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3㎜超4㎜以下の建物

    参照:国税庁「建物の取得費の計算」

    取得費が「不明なとき」or「低すぎるとき」は「売却価格の5%相当額」になる

    取得してから長い年月が経っていたり、先祖代々の土地で取得費用がわからない場合など、売却価格の5%相当額を取得費として計算できます。

    また、取得費がわかっても売却価格の5%を下回るのであれば、同じように5%相当額が取得費となります。

    「取得費が0円なので税額も上がってしまう」といった負担の増加を、ある程度軽減できる制度です。

    参照:国税庁「取得費がわからないとき」

    共有持分の売却価格から差し引ける「譲渡費用」の一覧

    譲渡費用とは、不動産の売却に必要な費用です。

    以下のものが譲渡費用に含まれます。

      譲渡費用の例
    • 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
    • 印紙税で売主が負担したもの
    • 借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
    • 土地などを売るために、その上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
    • 売買契約を締結した資産を、更に有利な条件で売るために支払った違約金

    上記のような不動産を売るために直接必要となる費用しか、譲渡費用の対象になりません。

    不動産を維持・管理するための費用は含まれませんが、売却前に市場価値や需要を高める目的のリフォームは譲渡費用に含まれることがあります。

    参照:国税庁「譲渡費用となるもの」

    共有持分の所有年数が5年以下の場合「短期譲渡所得」で合計39%の税率

    前の項目で説明した方法により、譲渡所得額がわかったら、税率をかけて実際の税額を計算します。

    この税率は所有期間によって変わり、5年以下の場合は短期譲渡所得になります。

    「5年以下」という期間は、売却した年の1月1日時点での所有年数が基準になるので注意しましょう。

    例えば、共有持分を2015年6月1日に取得した場合、2020年1月1日時点では4年6ヶ月しか経っていないので、2020年6月1日以降に売却しても短期譲渡所得になります。

    短期譲渡所得の場合、税率は39%であり、その内訳は「所得税30%」「住民税9%」です。

    参照:国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」

    また、令和19年までは東日本大震災の復興費用にあてるための「復興特別所得税」が課税されています。譲渡所得税額の2.1%を、所得税と併せて申告・納付が必要です。

    共有持分の所有年数が5年を超える場合「長期譲渡所得」で合計20%の税率

    共有持分の所有年数が5年を超えるとき、長期譲渡所得となり短期譲渡所得の場合よりも税率が下がります。

    すでに解説したとおり、所有年数の基準は売却した年の1月1日が基準となることに注意しましょう。

    共有持分を2015年6月1日に取得した場合、2021年1月1日時点で5年6ヶ月となるため、2021年以降の売却から長期譲渡所得の対象となります。1月1日に5年を超えているかどうかが重要です。

    長期譲渡所得の場合、税率は20%であり、その内訳は「所得税15%」「住民税5%」となります。

    参照:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」

    また、こちらも短期譲渡所得と同じように、令和19年までは譲渡所得税額の2.1%を課税される「復興特別所得税」を申告・納付します。

    贈与や相続で手に入れた不動産は所有年数や取得金額が引き継がれる

    贈与や相続によって取得した共有持分は、取得期間や取得費用が前の所有者から引き継がれます。

    前所有者が4年、自分が1年所有していれば所有期間は5年となり、長期譲渡所得の対象です。

    ただし、他共有者の放棄により取得した共有持分は、取得時期も取得費用も引き継がれません。

    持分放棄の場合、取得時期は「放棄を受けて持分が帰属されたときから」で、取得費用は「0円」とみなされます。

    取得費用は、その金額が低すぎる場合は「売却価格の5%相当額」で計算されるので、実務上0円となることはほぼないでしょう。

    マイホームの売却には2つの大きな減税措置がある

    不動産の譲渡所得には、税金の負担を抑えるための特別控除があります。特に大きなものは、マイホームの売却時に適用される2種類の控除です。

    1つ目が、譲渡所得から3,000万円を控除するものです。共有持分の場合、この特例は共有者ごとに受けられます。

    例えば、譲渡所得が6,000万円の不動産を1/2ずつ共有しているのであれば、2人とも控除を受ければ課税額は0円となります。

    2つ目が、10年超の所有期間で税率が下がる特例です。譲渡所得が6,000万円以下の部分は「所得税10%」と「住民税4%」、6,000万円を超えた部分は「所得税15%」と「住民税5%」となります。

    譲渡所得 所得税 住民税 合計
    6,000万円以下の部分 10.21% 4% 14.21%
    6,000万円超の部分 15.315% 5% 20.315%

    この2つは併用できるので、マイホームの売却を検討するときはぜひ覚えておきたい制度です。

    参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」

    参照:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

    マイホーム以外にも使える特別控除

    限定的ではありますが、もし2009~2010年に取得した土地があれば、その譲渡所得から1,000万円を控除する特例もあります。

    ただし、上記のマイホーム売却時における3,000万円の特例とは併用できないので、注意してください。

    また、低未利用土地などの譲渡でも特別控除があります。低未利用土地とは、現在だれも使用していない土地などです。

    これを500万円以下で売却したときは、譲渡所得を100万円まで控除できるというものです。

    いずれも細かい条件があるので、国税庁のホームページを確認して税理士などに相談してみましょう。

    参照:国税庁「平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」
    参照:国税庁「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」

    共有持分売却後の確定申告は共有者全員・個人関わらず個別で申告

    共有持分を売却したあとは、必ず確定申告が必要です。

    しかし、会社勤めで確定申告をしたことがないという方も多いと思います。

    確定申告は1年分の税金に関する申告を、翌年の2月16日から3月15日の間にしなければならず、遅れた場合は無申告による加算税や延滞税が課せられます。

    個人で持分だけを売却した場合はもちろん、共有者全員で共有不動産の一括売却をした場合も個別での確定申告が必要です。

    なぜなら、共有持分は共有者各自の資産なので、税金もそれぞれに課されるためです。

    確定申告で必要な書類

    確定申告に必要な書類のうち、主なものを紹介します。

    受けたい控除によっては更に必要な書類もありますので、実際の申告は税理士に依頼するか、税務署の窓口で相談しながら準備を進めましょう。

      国税庁や税務署で書類を取得して記入
    • 確定申告書B様式
    • 分離課税用申告書
    • 譲渡所得の内訳書
      会社勤めの場合に必要な書類
    • 源泉徴収票
      不動産を取得した時の資料
    • 売買契約書
    • 取得時の仲介手数料や登記費用などの領収書
      不動産を売却した時の資料
    • 売却時の仲介手数料測量費
    • 登記費用などの費用の領収書
    • 不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)

    共有持分の売却でかかる税金の支払時期

    確定申告を済ませたら、実際に納税する必要があります。

    所得税は確定申告と同じく2月16日から3月15日の間に納税しなければいけません。

    確定申告で税額が確定したあと、税務署の窓口や金融機関から払い込みます。税務署で申請すれば、1ヶ月後に引き落とされる振替納付も可能です。

    住民税は6月頃に住民税納付書が送られてくるので、一括支払いか4期の分割支払いで納税します。

    それぞれの納付時期をしっかりと確認して、確実に納付しましょう。

    共有持分における税金の計算や申告手続きは税理士に任せるのがおすすめ

    共有持分に関わる税金について解説しましたが、税金の制度は非常に複雑です。不動産によって状況が細かく違うため、申請の仕方で課税額が大きく変わります。

    また、普段の仕事や生活に忙しく、自分で計算や申告する時間が取れない人も大勢います。

    もし税金にあまり詳しくないのであれば、すべて税理士に任せてるのも1つの方法です。税理士はただ書類を作るだけではなく、節税の面からもアドバイスしてくれます。

    いずれにせよ、税金は正確に納めなければ延滞金が発生したり、最悪の場合は脱税容疑をかけられることもあります。正しい申告・納税を心がけるようにしましょう。

    共有持分と税金についてよくある質問

    共有持分とはなんですか?

    共有持分とは、複数人が共有する不動産において「各共有者がどれくらいの所有権をもっているか」を指すものです。「持分1/2」というように、割合で表記します。

    共有持分にも税金はかかりますか?

    はい、かかります。通常の不動産と同じように、固定資産税や相続税、譲渡所得税の対象です。不動産全体の税額に、持分割合をかけ合わせたものが共有持分の課税額になります。

    共有持分の税金について相談したいときは、だれに相談すればよいですか?

    税申告の専門家である、税理士に相談しましょう。申告手続きだけでなく、節税の方法についてもアドバイスをしてもらえます。

    共有者の1人が不動産全体の固定資産税を支払えば、他の共有者は納税しなくても大丈夫ですか?

    納税手続きとしては、共有者のうちだれか1人が、不動産全体の固定資産税を納めることに問題はありません。ただし、代表して納めた人は、他共有者に対して立て替えた分を取り立てる権利(求償権)をもつため、他共有者の負担義務が消えるわけではありません。

    税金を支払いたくなく、共有持分を処分したいのですが、どうすればよいですか?

    不動産全体の売却がむずかしいようであれば、自分の共有持分のみ売却することをおすすめします。共有持分専門の買取業者に相談すれば、他共有者との話し合いも不要で数日中に売却できます。→【最短12時間で価格がわかる!】共有持分専門の買取査定窓口はこちら

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