不動産の共有名義は、単独名義にはないメリットとデメリットがあります。節税効果などでお得になる場合もありますが、処分や利用・管理に大きな制限があるため、トラブルも起こりやすいのです。
現状は問題なくでも、各共有者の状況が変わったり、相続が発生したりで、問題が表面化するかもしれません。共有者が親族であっても訴訟問題に発展するケースがあるため、共有名義は基本的に避けることをおすすめします。
すでに共有名義の不動産をもっているなら、共有者間で話し合って共有名義を解消するか、自分の共有持分だでもけ売却するとよいでしょう。
共有持分の売却に各共有者の同意は要らず、いつでも自由におこなえるので、すでになんらかのトラブルが起こっていても共有名義を解消できます。
ただし、一般的な不動産会社では共有持分を取り扱っていない場合があるので、専門の買取業者に相談しましょう。共有持分専門の買取業者なら、どんな共有持分でも高額買取が可能です。
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- 不動産の共有名義は節税などのメリットがある。
- 不動産の使用や管理に制限があることなど、権利関係の複雑化がデメリット。
- デメリットの解消はむずかしく、トラブルも起こりやすいので、共有名義はなるべく避けたほうがよい。
不動産を共有名義にするメリット
不動産を共有名義にするメリットは3つあり、そのうち2つは節税効果、1つは不動産を相続するときの手軽さがあげられます。
- 住宅ローン控除を共有者の数だけ受けられる
- 売却時にかかる税金の「3,000万円特別控除」を共有者の数だけ受けられる
- 遺産分割を簡単に済ませられる
新たに不動産を購入するとき、夫婦や親子など複数人で出資しあえば税制面でお得になるといえます。
また、相続にあたって遺産が不動産1つしかない場合など、分割がむずかしいときに共有名義で相続することで、協議をスムーズに終わらせられるでしょう。
メリット1.住宅ローン控除を共有者の数だけ受けられる
共有不動産を購入する場合、親子や夫婦などで住宅ローンを借りるケースが多いでしょう。共同で住宅ローンを借り入れた場合、住宅ローン控除を共有者の数だけ受けられます。
住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高にあわせて、各年の所得税が控除されるというものです。「年末の住宅ローン残高×1%」で控除額を計算しますが、上限額は40万円までとなっています。
しかし、住宅ローンを共同で借り入れる「連帯債務」や「ペアローン」は、借り入れた人それぞれが控除を受けられます。
しかし、この住宅ローンが「夫と妻で2,500万円ずつ借り入れたローン」であれば、夫と妻それぞれが控除を受けられるため、控除額は「夫25万円+妻25万円」で50万円となります。
上記のように、不動産を購入する際に共同で住宅ローンを借り入れることで、結果的に控除額が高くなるのです。
住宅ローン控除の仕組みを詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
住宅ローン控除とは?控除額・適用条件・申請方法をわかりやすく解説参照:国税庁「住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
住宅ローンの「団体信用保険」に同時加入できる
共同で住宅ローンを借り入れるメリットとして、団信の同時加入ができる点もあげられます。
団信とは、債務者が死亡・高度障害状態になったとき、住宅ローンの残債をゼロにする保険です。近年の住宅ローンでは、ほとんどの金融機関で団信の加入を必須にしています。
団信に加入できるのは債務者1人のみですが、夫婦などが連帯債務やペアローンを組んだ場合、両方とも団信に加入できるケースがあるのです。
団信に入っていれば、共有者のどちらかが死亡した場合、死亡した人が負担するはずだった残債を帳消しにできます。
死亡した共有者と遺された共有者が「被相続人と相続人」の間柄であれば、残っていた住宅ローンを負担することなく、共有持分※を引き継げます。
メリット2.売却時にかかる税金の「3,000万円特別控除」を共有者の数だけ受けられる
住宅ローン控除と同じように、不動産を売却したときに受けられる3,000万円の特別控除も、共有者の数だけ受けられます。
3,000万円の特別控除は、マイホームを売却したとき、3,000万円までの売却益なら譲渡所得税が非課税となる制度です。
この控除も共有者ごとに受けられるため、仮に夫婦の共有名義不動産を売却した場合、最大で6,000万円の売却益まで税金がかかりません。
一方、共有名義で「夫の持分3/5、妻の持分2/5」であった場合、夫は3,000万円、妻は2,000万円の控除を受けられるため、控除額を合計すると5,000万円となり、譲渡所得税がかかりません。
メリット3.遺産分割を簡単に済ませられる
不動産を相続するとき、相続人の共有名義で相続することで、手続きを簡単に済ませるという考え方があります。
遺産分割の方法としては、不動産を売却して現金で分割するなど他の方法もありますが、どうしても時間や手間がかかってしまいます。
共有名義での相続は書類上の手続きですぐに済ませられるので、相続財産をスムーズに分割するという点では、簡単かつ公平な方法といえるでしょう。
不動産を共有名義にするデメリット
不動産を共有名義にするデメリットは下記の5つがあげられ、主に権利関係の複雑化が問題となります。
- 不動産の処分に共有者全員の同意が必要
- 不動産の使用や管理に共有者間の話し合いが必要
- 離婚時の財産分与が複雑になる
- 相続によって共有者が増えていく
- 持分割合と出資割合を揃えないと贈与税が発生する
1つの不動産を複数人で共有するため、使用・管理・処分においてトラブルが起こりやすくなるのです。
また、メリットの項目では節税効果があることを紹介しましたが、場合によっては余計な税金が発生する恐れもあるので注意しましょう。
デメリット1.不動産の処分に共有者全員の同意が必要
共有名義の不動産は処分に共有者全員の同意が必要であり、1人でも同意を取れない共有者がいると処分できません。
処分には、建物の取り壊しや土地の造成といった物理的なものと、不動産全体の売却といった権利的なものがあります。
老朽化した建物の解体や、空き家になって維持費や税金だけかかるような物件の売却も、共有者全員から賛成の意思を確認する必要があるのです。
単純に反対者がいるだけでもトラブルになりますが、共有者が認知症になったり、行方不明になっている場合は、問題がさらに複雑化します。
共有不動産の処分にあたって他共有者の同意が取れない、もしくは意思疎通や連絡がむずかしい場合は、弁護士に相談して適切な対処をアドバイスしてもらいましょう。
空き家の共有不動産を売却する方法!共有空き家のリスクや売却反対者への交渉方法なども解説しますデメリット2.不動産の使用や管理に共有者間の話し合いが必要
不動産の使用や管理にも共有者間で話し合いが必要になるため、不動産を自由に使えないケースが多くなります。
例えば、次にあげる行為は「共有持分の過半数※」が同意しなければいけません。
- 使用方法の決定(共有者のだれが住むかなど)
- 「5年超の賃貸借契約」の締結・更新
- 内装のリフォームなど「不動産の性質を変えない範囲」での改良
共有名義にして最初のうちはトラブルが起こらなくても、年月が経つにつれて共有者それぞれの事情や考え方が変わり、使用や管理について揉めるケースが少なくありません。
共有持分の割合はどう決まる?計算方法や持分割合に応じてできることを詳しく解説しますデメリット3.離婚時の財産分与が複雑になる
不動産を夫婦の共有名義にする場合、離婚時の財産分与が複雑になり、離婚協議が長引くかもしれません。
財産分与では「婚姻中に築いた財産はすべて折半する」のが原則であるため、不動産も共有持分の割合に関係なく、半分ずつ分割するのが基本です。
離婚協議で「売却して現金で折半する」と合意できれば話は早いのですが、実際は「離婚後も住みたいから家が欲しい」「共有持分の割合にそって分割したい」といった内容でトラブルになりがちです。
また、住宅ローンが残っている場合、金融機関が売却や名義変更を認めないという問題もあります。
共有不動産の財産分について、詳しくは関連記事も参考にしてください。
【離婚時における自宅の財産分与】自宅はどうなる?財産分与の方法を状況別に詳しく解説 離婚による自宅の名義変更における手順や必要書類!かかる費用や税金もわかりやすく解説します!デメリット4.相続によって共有者が増えていく
共有名義での相続を繰り返すことで、共有者が増え続ける点も重大なデメリットです。
「親の不動産を子供が複数人で相続し、それぞれの共有持分を今度は孫が複数人で相続する」というように、相続のたびに共有持分を分割すれば、際限なく共有者が増えていきます。
各共有者のもつ共有持分の価値が下がるだけでなく、管理や利用・処分に必要な同意を取る人数が増え、共有者同士の話し合いがむずかしくなります。
デメリット5.持分割合と出資割合を揃えないと贈与税が発生する
持分割合の決め方によっては、贈与税が課税されることにも注意が必要です。
共有不動産を購入するとき、支払った費用の割合と共有持分の割合がずれていると、差額分は贈与があったとみなされてしまいます。
当然、費用をまったく負担していないのに共有者として登記した場合も、贈与税が課税されます。
そのことを知らずに、家族だからという理由だけで共有者として登記し、後から想定外の課税に慌てる事例もあるので注意しましょう。
共有持分の割合はどう決まる?計算方法や持分割合に応じてできることを詳しく解説します共有名義のデメリット解消はむずかしい
共有名義のメリットとデメリットを紹介してきましたが、ここで気になるのは「デメリットの解消方法はないの?」ということでしょう。
しかし、共有名義のデメリットを根本的に解消するのは、むずかしいのが正直なところです。
とくに、不動産の処分や利用・管理を巡るトラブルは、不動産が共有名義である限り、いつでも起こりえます。
日頃から共有者同士でよく話し合い、万が一トラブルが起きたときは不動産問題に詳しい弁護士に相談するのが、数少ないデメリット対策といえるでしょう。
共同出資で購入する必要があるとき以外は単独名義にすべき
共有名義で起こりえるデメリットは、深刻化すれば裁判にも発展します。
一度トラブルが起これば、解決までに年単位の時間と、弁護士費用などのお金が必要です。
そのため、基本的に不動産の共有名義は避けるべきといえます。単独名義にしておけば、共有者間で不毛な争いになることもないでしょう。
「夫婦で共同出資しないと家を買えない」といった事情がない限り、不動産は常に単独名義にしておいたほうが、トラブル防止になります。
共有名義の不動産は共有関係を解消したほうがよい
すでに共有名義の不動産がある場合、なるべく速やかに共有名義を解消するようおすすめします。
共有名義の方法にもいくつか種類があり、自分の共有持分だけ売却するなど、共有者との話し合いが不要な方法もあります。
下記の記事で、共有名義の解消方法について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
共有持分の解消は持分売却がベスト!解消するメリットと3つの解消方法を解説共有持分を売却するなら専門買取業者への相談がおすすめ
共有持分の売却は、自分の意思のみですぐに実行できる「共有名義の解消方法」です。共有者との話し合いがむずかしい場合や、とにかく早く共有名義から抜けたいときにおすすめです。
しかし、共有持分の売却は一般的な不動産売買とはいえず、仲介業者に相談しても取り扱ってもらえないケースが多いでしょう。
そのため、共有持分を専門に取り扱う買取業者に相談するとよいでしょう。
共有持分専門の買取業者なら、共有持分を直接買い取るため、高額かつ最短数日のスピード買取が可能です。
まずは無料査定を受けてみて、自分の共有持分がいくらになるか調べるとともに、共有名義の解消に向けた具体的なアドバイスを聞いてみましょう。
不動産の共有名義はデメリットのほうが大きいので避けたほうがよい
不動産の共有名義にするとトラブルが起こりやすくなるので、なるべく避けたほうがよいでしょう。
節税効果もたしかにありますが、控除の上限額を増やしても、上限いっぱいまで活用できる人は限られます。
基本的には「不動産は単独名義にする」と考え、実際に共有名義にするかどうか検討するときは、各自のライフプランや、共有名義にすることの将来的なリスクをしっかり考えましょう。
共有不動産についてよくある質問
1つの不動産を、複数人が共有している(複数の名義人がいる)状態を共有名義といいます。一方、共有名義の不動産において、各共有者がどれくらいの割合で所有権をもっているかを表すのが共有持分です。
住宅ローン控除やマイホーム売却時の特別控除などが二重で受けられるため、税制面で有利といえます。また、遺産分割のときに手続きが簡単になるのもメリットといえるでしょう。
処分や管理・利用に各共有者との話し合いが必要なことや、共有者の増加などで権利関係が複雑になることがデメリットです。裁判になるケースもあり、解決に時間や費用がかかる恐れもあるでしょう。
共有名義のデメリットを根本的に解消する方法は、残念ながらありません。普段から各共有者と交流し、話し合いをしやすい環境を作っておくとよいかもしれません。
共有者全員で不動産全体を売却できればベストですが、反対意見があってむずかしい場合は、自分の共有持分だけ売却するとよいでしょう。自分の共有持分だけなら他共有者の了承はいりません。専門買取業者なら、高額かつスピード買取も可能なのでおすすめです。→最短12時間で価格がわかる共有持分の買取査定はこちら