共有持分は、他共有者の同意がなくても売却できます。しかし、売却したいと思ったときに自分が入院していた場合、不動産を売却できるのか疑問に思う人は多いでしょう。
また、自分自身が共有者でなくても、親や配偶者が認知症などで入院しており、共有持分の売却ができないと悩んでいるケースもあると思います。
共有者が入院していても、持分売却は可能です。
ただし、売却活動や引渡しの立ち会いが困難な場合、代理人を立てて代わりに手続きをしてもらう必要があります。
代理人は、一般的には家族や親戚、もしくは弁護士に依頼するのが一般的です。
弁護士と連携している共有持分の専門買取業者なら、代理人の選定など「入院中の持分売却」に必要な手続きもまとめてサポート可能なのでおすすめです。無料査定を利用して、適切な売却方法についてアドバイスを聞いてみましょう。
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共有持分を売却するときに知っておくべき基礎知識
入院中に限らず、共有持分を売却するときに最低限知っておくべき知識をまずは解説します。
共有持分を持っている当人であっても、共有不動産の複雑な仕組みを理解するのはむずかしいものです。相続で持分を取得したまま、ほとんど関与してこなかった人もいると思います。
知識がまったくない人やあいまいだった人は、次の項目から共有持分に関する基礎知識をおさらいしておきましょう。
共有不動産に対する行為は一部制限がある
共有とは「1つの不動産に対して複数人の所有者がいる」という状態です。物理的に不動産を区分けしているのではなく、あくまで権利の状態を指します。
共有持分とは「所有権をだれがどれくらいもっているか」を表すもので、不動産購入時の出資額を基準に決定します。不動産の取得にあたって2人が半額ずつ出資すれば、それぞれの持分割合は1/2です。
共有不動産は、持分割合によっておこなえる行為が変わります。したがって、共有持分の割合は「共有不動産の処分や管理」において非常に重要といえるでしょう。
共有不動産に対する行為の区分 | 必要な共有者の同意 | 代表的な例 |
---|---|---|
保存行為 | 各共有者単独 | ・最低限必要な修繕 ・不法占拠者への明け渡し請求 |
管理行為 | 共有持分の過半数 ※共有者の人数ではなく持分割合で判断 |
・短期の賃貸借契約 ・不動産の使用方法の決定 |
変更・処分行為 | 共有者全員 | ・不動産全体の売却 ・長期の賃貸借契約 |
共有不動産の売却方法は「持分のみ売却」と「不動産全体を売却」の2択
共有不動産を売却するときは、2つの方法があります。共有者全員の同意を得て不動産全体を売却するか、自分の持分だけを売却する方法です。
共有不動産全体を売却するなら、単独名義の不動産を売る場合と同じように売却できます。適正な市場価格で売れる可能性は高く、工夫や不動産会社の営業力次第でさらに高額で売却できるかもしれません。
ただし、共有者全員の同意が必要であり、売却価格の決定や売買契約の締結にも共有者全員の同意が求められます。話し合いや手続きに時間を取られるというデメリットもあります。
自分の持分だけを売却するなら、他の共有者から同意を得る必要はありません。自己の判断でいつでも売却可能であり、話し合いもいらないため短期間で現金化が可能です。
デメリットは、売却価格が単純に「不動産全体の評価額×持分割合」とはなりにくい点です。先に説明したとおり、共有不動産に対する行為は持分割合によって限定されているため、第三者が持分のみを購入しても自由に管理・処分ができません。その分、売却価格も低くなるのが一般的です。
持分のみを売却するなら「共有者間の売買」か「共有持分専門の買取業者に依頼」
持分のみを売却するとき、それを購入して利益を得られる人は少ないため、売却先も絞られます。具体的には、共有者同士で売買するか、共有持分専門の買取業者に依頼するかが多いでしょう。
共有者間の売買は買主側にも非常にメリットがあります。持分が多ければ不動産の管理・変更に自分の意見を反映させやすく、賃貸料など持分割合にそって分配される収益も増やせるためです。
しかし、共有者に持分を購入する意志があるとは限らず、例え購入意欲はあっても資金がなければ売買できないという問題があります。共有者との仲が悪く、交渉自体がむずかしい場合もあるでしょう。
共有持分専門の買取業者に依頼するメリットは、スピーディーに買い取ってもらえるという点です。早ければ数日で現金化できて、大手の不動産会社が避けたがる少額物件でも買取可能な業者が増えています。
共有持分専門の買取業者を選ぶときは、取り扱いの実績が豊富かどうかを見ましょう。また、弁護士など法律の専門家と連携している買取業者は、不動産に関する権利トラブルの解決も得意なためおすすめです。
【共有持分の買取業者おすすめ28選!】共有名義不動産が高額買取業者の特徴と悪質業者の見極めポイント!
不動産全体を売却するなら仲介業者への依頼も検討しよう
共有者全員の同意が取れて不動産全体を売却するなら、一般的な仲介業者も検討してみるとよいでしょう。
共有持分が売りにくいのは、複雑な権利関係から不動産を自由に管理・処分できないからです。共有者が全員、不動産全体の売却に合意しているなら、単独名義の不動産を売るのと同じ流れで売却できます。
ただし、売却自体の合意は取れていても建物が古く再建築不可となっている場合や、賃借人と賃貸料で揉めている場合など、なんらかの問題を抱えている物件は買取業者に依頼したほうが売却しやすい場合もあります。
売却にあたって用意するもの
下記のリストが、共有不動産の売却にあたって「基本的に用意すべきもの」です。
- 登記簿謄本or登記事項証明書
- 登記済証or登記識別情報
- 不動産購入時の売買契約書と重要事項説明書
- 固定資産税納税通知書と固定資産税評価証明書
- 本人確認書類
- 実印と印鑑証明書
- 住民票(現在の住所が売却予定の不動産が違う場合)
不動産に関する書類は些細なものでもまとめておき、不動産業者になにが必要か確認するとよいでしょう。上記リスト以外にも、不動産の種類や状態によって必要なものが出てきます。
共有不動産全体を売るのであれば、本人確人書類や実印などは全員分用意する必要があります。印鑑証明書や住民票は3ヶ月以内に発行されたものが必要なため、売買契約日が決まってから用意するとよいでしょう。
共有持分権者は共有物の分割を請求できる
共有持分権者とは「共有持分をもつ人」です。
共有持分を持っていれば、その持分割合に関わらず全員が「共有物分割請求」をおこなえます。
共有物分割請求とは、不動産の共有状態を解消するよう他の共有者に求める行為をいいます。他の共有者はこの請求を拒否できず、どのように不動産を分割するか必ず話し合わなければいけません。
話し合いで決まらないときは、裁判所に調停や訴訟を申し立て、どのように分割するか決めることになります。
分割方法には「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3種類があり、不動産そのものを分割する方法や、金銭に替えて分割する方法があります。
共有物分割請求によって、共有者間での持分売買や不動産全体の売却につながる可能性もあるので、選択肢の1つとして覚えておきましょう。
共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説共有持分権者である自分が入院したときに持分を売却する方法
共有持分権者である自分が入院していても、共有持分を売却できます。
書類の準備をだれかにお願いするなどで少し手間はかかりますが、意識がはっきりしており、判断能力があれば不動産の売買契約に問題はありません。
自身の体調を第一に考え、周囲の助けを借りながら売却活動を進めましょう。
売買契約の締結は病院でもできる
自分が入院していることでもっとも影響を受けるのは、売買契約の締結時です。不動産売却は、売主と買主が全員揃った状態で契約を結ぶ必要があります。
売買契約の締結は、一般的に銀行や売主や買主の自宅、不動産会社の事務所でおこないます。
しかし、これらの場所はあくまで慣例であり、契約の締結場所に法的な決まりはありません。買主や不動産会社の担当者に病院に来てもらえれば、病室や併設の待合室などで契約を結べます。
ただし、売買契約に必要な書類の準備は他のだれかに頼まなければいけません。
同世帯の家族であれば、ほとんどの必要書類は本人の代わりに取得できます。新しく印鑑を登録する場合も、家族であれば代わりに手続き可能です。
家族であっても代わりに取得できないものや、そもそも同世帯の家族がいない場合は、代理人を選んで売却を代行してもらいましょう。
代理人へ売却手続きを委任するできる
代理人は本人の代わりに売却活動を進める人で、所有者本人と代理人が結ぶ契約を委任契約といいます。
委任契約の際には委任状を作成します。委任状の書式に決まりはありませんが、最低限下記の内容は必要です。
- 委任した年月日
- 所有者本人と代理人の氏名・住所
- 委任内容(売買契約、所有権移転登記、売買代金受け渡しなど)
- 所有者本人と代理人の実印
- 不動産の表示項目(所在、地番や地目、家屋番号など)
委任内容はできるだけ詳しく記載し、自分にとって不利な売買契約を結ばれないようにしましょう。委任状の文末に「以上」と記載し、内容の追記を防ぐことも重要です。同じ理由で、捨印(訂正印の代わりとしてあらかじめ印鑑を欄外に押すもの)も押してはいけません。
また、委任状のほかに下記の書類が必要となります。
- 所有者本人の印鑑証明書と住民票
- 代理人の印鑑証明書
- 代理人の本人確認書類
代理人は信頼できる人を選ぼう
だれを代理人にするかは本人の自由です。一般的には家族や親戚、もしくは弁護士など法律の専門家に依頼します。
信頼できるという点では、真っ先に家族や親族が候補にあがると思います。しかし、家族が遠方に住んでいたり、仲が悪かったりなどで、頼れない場合もあるでしょう。
弁護士や司法書士、行政書士などの法律職で、不動産売買の代理業務を請け負っているところもあります。法律の専門家に代理人を依頼すると、手数料はかかりますがスムーズに手続きできるでしょう。
親から子へ名義を変更して売却する
相続予定の持分であったり、財産の実質的な管理を子供に任せていたりする場合、親から子への名義変更するも検討するとよいでしょう。親から子へ名義変更するには、子供が持分を買い取るか、親から贈与するという方法を取ります。
親子間の不動産売買は、相続トラブルを避けられたり、早いうちに資産を継承できたりといったメリットがあります。しかし、一般的な個人間売買と同じであるため子供が購入資金を用意しなければならず、加えて下記のようなデメリットもあります。
- 売却価格が市場価格より著しく低い場合は贈与税が課される
- 住宅ローンの審査が厳しい
- 売主側が譲渡所得税の軽減を受けられない
贈与の場合、通常は贈与を受けた側に贈与税が課されます。子供にある程度の負担をかけてしまいますが、売却と比べて手続きが簡単な面はメリットといえるでしょう。
贈与税に関しては、親が亡くなって相続が発生するまで課税を先送りにする「相続時精算課税制度」もあります。
個々の状況によって、売却・贈与のどちらが得か変わります。税金については、税理士に相談するとよいでしょう。
【共有持分の譲渡の仕方】やり方と方法別の税金制度についても解説!自分以外の共有者が入院したときに持分を売却する方法
入院した持分権者が自分ではなく、他の共有者であった場合はどうすればよいでしょうか?
自分の持分を売却するのであれば、入院した他共有者の同意はいりません。
そのため、ここでは「共有不動産の全体を売却するための方法」を取り上げます。
共有者が認知症のときは成年後見制度を使おう
認知症などで意思能力が不十分になったとき、法律的に支援し財産を保護するための制度を「成年後見制度」といいます。
「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類あり、本人の意思能力がない状態で利用するのは法定後見制度です。
家族や四親等以内の親戚などが家庭裁判所に請求し、後見人を選任します。後見人には本人の親族以外に、法律・福祉の専門家、福祉関係の公益法人などが選ばれます。
注意点として「売却に同意する後見人が選ばれるとは限らない」と「後見開始まで数ヶ月かかる」の2点は覚えておきましょう。
法定後見制度の請求手続きは複雑なため、利用する際は弁護士への相談するのをおすすめします。
共有者でなくとも法定後見制度の申し立ては可能
法定後見制度を請求できるのは、下記の人たちです。
- 配偶者
- 四親等内の親族
- 検察官
- 市町村長
上記のとおり、不動産の共有者でなくとも申し立ては可能です。そのため「配偶者or親が持っている共有持分を売却したいけど本人に意思決定能力がない」といったときも、法定後見制度を使えば売却できます。
ただし、あくまで本人の財産を保護する制度なので、本人の不利益となる財産の処分はできません。後見人は、財産の処分にあたって家庭裁判所の監督を受けます。
後見人がついたからといって、本人の財産を好き勝手にできる制度ではないと覚えておきましょう。
入院を口実に話し合いを拒否されるときは「共有物分割請求」を活用
共有者が入院していても、意思能力が低下しているとは限りません。しかし、不動産売却に反対するあまり、入院を口実にして話し合いすら拒否する場合もあります。
そのようなときは、先に解説した共有物分割請求を活用しましょう。請求を禁止する特約を共有者全員で結んでいない限り、共有者は共有状態の解消に関する協議・訴訟を拒否できません。
訴訟でも話がまとまらない場合、最終的に共有不動産は競売にかけられます。競売の落札金額を共有者で分配するのですが、競売による落札相場は市場価格より大幅に低くなるのが一般的です。
競売になると、共有者全員が損するといえます。
ただし、実際は訴訟になる前に売却を渋っていた共有者が譲歩するケースが多いようです。
入院でマイホームを維持できないときの対処方法
ここまでは、共有持分や共有不動産を売却したいという人向けに解説してきました。
しかし、入院をきっかけに売却を検討していても、本心では「売りたくない」と思っている人もいるでしょう。
この項目では、売却してもマイホームに住み続ける方法や、マイホームの売却を避ける方法について解説します。すべての人が利用条件を満たすとはいえませんが、少しでも参考になれば幸いです。
家族や親戚に売却して賃貸として住み続ける
マイホームを売却しても、新しい買主との間に賃貸借契約を結べばそのまま住み続けられます。
賃貸借契約を結べるかは買主との交渉次第ですが、家族や親戚、あるいは信頼できる知人の方が交渉しやすいでしょう。持分のみを売りたいときでも、第三者が共有者になるよりは安心できます。
ただし、売却先が家族や親戚であっても、所有権の譲渡であることには代わりありません。一般的な大家と賃借人の関係になると理解しておきましょう。
リースバックで売却後も住み続ける
買主にリース料を支払う代わりに売却後も住み続けるリースバックという方法があります。
家族や親戚に売却して賃貸借契約を結ぶのと似ていますが、買主が投資家であり、専門の不動産業者が仲介に入るという違いがあります。
物件を一括で買い取ってもらえるため、まとまった金額を短期間で得られます。自分で買主を探す必要がなく、希望すれば将来的に買い戻すのも可能です。
ただし、売却価格が相場より安くなったり、リース料が周辺の家賃相場より高くなったりする可能性があります。また、買い戻すときの価格が売却価格より高くなる可能性もデメリットといえるでしょう。
配偶者の入院で住宅ローンを支払えないときは任意売却を検討しよう
マイホームの場合、住宅ローンを組んでおり土地や建物に抵当権を設定している人も多いでしょう。配偶者などの入院で世帯収入が下がり、住宅ローンの支払いが滞ってしまうケースも珍しくありません。
住宅ローンを滞納・延滞すると、ローンを組んだ金融機関から残りの債務を一括返済するよう求められます。一括返済ができない場合、抵当権を設定した不動産は差し押さえられて強制的に競売にかけられます。
差し押さえ後の競売では、落札価格が市場価格より大きく下がるのが一般的です。また、明け渡しの時期も選べないという点もデメリットです。
競売を回避するために、ローンを残したまま抵当権を解除して不動産を売り出す「任意売却」があります。
任意売却は「住宅ローンの残債があり、不動産を売却しても残債を返しきれないとき」に使う方法です。金融機関に抵当権を外してもらい、不動産の売却益を超える残債は引き続き返済していきます。
任意売却は、弁護士や金融機関、そして不動産会社の協力が必要です。住宅ローンの支払いが苦しくなったとき、弁護士に任意売却を相談してみるとよいでしょう。
任意売却なら競売を回避できる!メリット&デメリットや具体的な手順と費用を解説!債務整理するなら自己破産ではなく任意整理or個人再生を選択する
住宅ローンやその他に借金がある場合、入院によって収入が下がり債務整理を検討する人もいるでしょう。
債務整理には3つの種類があり、方法によってはマイホームを手元に残しつつ借金を減額できます。
任意整理は支払い期間の延長や利子の圧縮を交渉する方法で、どの債権者と交渉するか自分で選べます。住宅ローンを任意整理に含めなければ、マイホームもそのまま維持可能です。
個人再生は、債務を大幅に免責した上で新たに返済スケジュール(再生計画)を組みます。個人再生の免責対象に住宅ローンは含まれませんが、返済スケジュールを無理のない範囲で組みなせます。
自己破産なら借金はすべてなくなりますが、財産をほぼすべて手放す必要があり、マイホームを残せません。
債務整理は借金で苦しんでいるときに非常に有効な制度ですが、手続きは複雑なため、弁護士と相談しながら活用していきましょう
共有者の意思決定が可能なうちに共有持分を解消しよう
共有持分権者である自分や共有者が入院したとき、持分を売却するにはどうすればよいか解説しました。
持分のみも共有不動産全体も、売却自体は入院しながらできます。
ただし、売却にあたって余計な手間がかかるのは避けられません。
入院のような不測の事態で売却しにくくなる可能性を考えると、共有持分は早いうちに売却した方がよいでしょう。
共有持分についてよくある質問
はい、売却できます。自分の共有持分であれば自分の意思のみで売却可能で、他共有者に確認を取る必要もありません。ただし、共有不動産全体を売却したいときは、全共有者の同意が必要です。
はい、売却できます。売買契約の締結はどこでもできるので、不動産業者や買主に病院まで来てもらえば契約の成立は可能です。また、家族や弁護士などを代理人にして、売買契約の手続きを代わりにやってもらう方法もあります。
認知症のように、意思判断能力の低下した人の財産を処分したいときは「成年後見制度」を利用しましょう。成年後見人であれば、後見を受ける人の財産も売却できます。ただし、あくまで本人の財産を保護する制度なので、本人の不利益となる売却はできません。
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