持分放棄で土地の共有名義を解消できる!持分放棄をすべき状況も解紹介します

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共有名義の土地は、各共有者の所有権を割合で表す「共有持分」というものがあります。共有不動産全体の処分には共有者全員の同意が必要な一方、共有持分だけであれば、各共有者は自由に処分が可能です。

共有持分の処分方法には、売却のほかに「持分放棄」というものがあります。持分放棄は、文字通り自分の共有持分を放棄し、共有関係から抜け出す方法です。

他共有者に放棄の意思表示をすれば成立し、放棄した持分は他の共有者へ帰属されます。ただし、実際の手続きとしては他共有者と一緒に持分移転登記をおこなう必要があります。

仮に登記を拒否されても対応策はありますが、訴訟を起こす必要があるので、それなりの手間や費用がかかるかもしれません。登記の協力を得るのが難しそうであれば、売却で処分することも検討してみましょう。

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この記事のポイント!
  • 持分放棄をすれば、土地の共有状態からすぐに抜け出せる。
  • 他の共有者と話し合いが困難な場合や、土地が郊外・農地である場合、持分放棄を検討すべき。
  • 共有持分の専門買取業者なら高額・スピード買取が可能な場合もあるので、放棄する前に無料査定を受けてみよう。

持分放棄をすれば土地の共有状態から抜け出せる

持分放棄は、自分のもっている共有持分(共有不動産における各共有者の所有権)を放棄する手続きです。

通常、不動産は売買や贈与などによる処分しかできず、所有権の放棄はできません。1人しかいない所有者が不動産を放棄してしまうと、不動産を管理する人がいなくなるためです。

しかし、共有名義の場合は1人が放棄しても他の共有者が管理できるため、持分放棄が認められています。

持分放棄なら、売買や贈与のように相手を探す必要がないので、簡単に共有状態から抜け出せるのです。

放棄した持分は他共有者のものになる

放棄された持分は、他の共有者へ帰属されます。帰属とは、権利が特定の人や団体の所有になるという意味です。

民法第255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

引用:e-Govポータル「民法第255条」

他の共有者が1人であれば、放棄された持分はすべてその1人に帰属されます。一方、他共有者が複数人いる場合は、持分割合の比率に合わせて帰属されます。

例えば、土地をA・B・Cの3人で共有しており、持分割合がそれぞれA2/5・B2/5・C1/5だったとします。Aが持分放棄をした場合、放棄された持分2/5をB・Cの持分割合の比率(2:1)で分けると、Bには4/15、Cには2/15の持分が帰属されます。

他共有者には贈与税が課税される

放棄によって持分が帰属された共有者は、受け取った共有持分に対して贈与税が課されます。先に解説した例の場合、Bは持分4/15が課税対象です。

共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄(相続の放棄を除く。)したとき、又は死亡した場合においてその者の相続人がないときは、その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得したものとして取り扱うものとする。

引用:国税庁「相続税法基本通達 第9条《その他の利益の享受》関係 9-12」

持分が帰属されるため損失というわけではありませんが、他共有者に税金の負担があるのは事実です。可能であれば、共有者と話し合ったうえで放棄したほうがよいでしょう。

放棄は贈与と違い相手の同意がいらない

「贈与税がかかるなら、放棄と贈与に違いはあるの?」と気になる人も多いでしょう。2つの違いは、相手の同意や意思確認がいらない点にあります。

贈与はあくまで契約なので、相手の合意が必要です。共有持分を一方的に押し付けるような贈与はできません。

しかし、持分放棄に相手の同意は不要です。「放棄する」という意思表示をすれば、他共有者の同意がなくても持分放棄は成立します。

「可能であれば共有者と話し合ったうえで放棄したほうがよい」と解説しましたが、それはあくまでトラブルを防ぐための、モラルとしての話です。制度上は、一方的な持分放棄も可能となっています。

「放棄に伴う持分移転登記」には共有者の協力が必要

持分放棄は、他共有者への意思表示さえすれば成立します。しかし、放棄に伴う持分移転登記は、放棄する本人と他共有者が一緒に申請する必要があります。

登記とは、不動産の権利関係を法務局に申告し、登記簿に記載してもらうための手続きです。登記をしなければ、持分放棄による共有持分の移転が公的に証明できません。

共有持分の移転を登記しないと、共有持分を巡るトラブルに巻き込まれる恐れがあります。持分放棄をしても、持分移転登記をしなければ実質的に共有状態から抜け出せないのです。

持分移転登記については、下記の関連記事も参考にしてください。

共有持分 移転登記 共有持分の移転登記が必要な状況を詳しく解説!登記費用や税金についても説明します

共有者が協力してくれないときは「登記引取請求訴訟」を申立てよう

持分放棄では、共有者に登記を拒否される恐れもあります。共有者に登記を拒まれると、持分移転登記はできないのでしょうか?

じつは、共有者に登記を拒否された場合、登記引取請求訴訟を起こすことで「裁判所の判決による登記申請」が可能です。この方法なら共有者の協力はいらず、放棄する人が単独で登記できます。

登記引取請求訴訟とは、登記が本来の権利関係に即していない場合、それを修正するための訴訟です。

最終的には必ず登記が可能になるため、実際に登記引取請求訴訟まで発展することはほぼありません。訴訟となる前に、相手が折れて登記に協力してくれるケースがほとんどです。

登記引取請求訴訟の詳しい解説は、下記の関連記事も参考にしてください。

持分放棄の登登記引取請求訴訟 概要記が 持分放棄後の未登記は登記引取請求訴訟で解決!概要や費用について詳しく解説します

所在不明の共有者がいても登記引取請求訴訟はできる

共有持分に関してよくあるトラブルに、共有者の所在が不明で連絡もつかないというケースがあります。

連絡がつかないのであれば持分放棄も成立しないように思えますが、登記引取請求訴訟の訴状に「持分放棄の意思表示」を記載することで、持分放棄が成立します。

要するに、本来は別の手続きである「持分放棄の意思表示」と「訴訟の提訴」を、同時におこなうという方法です。

訴状は裁判所などに掲示されることで「相手に送達された」とみなされます。持分放棄の旨を記載した訴状が相手に送達されたことになり、持分放棄が成立するのです。

持分放棄の条件は「他に共有者がいること」

最初にも少し解説しましたが、不動産は通常、所有権を放棄できません。持分放棄は、共有名義ならではの処分方法といえるでしょう。

しかし、全員が持分放棄をしてしまうと、不動産の管理者は当然いなくなります。そのため、持分放棄をするには「他に共有者がいること」が条件です。

そして、持分放棄は「早い者勝ち」が原則です。共有者が次々に放棄をおこない、最後の1人になった場合、持分放棄ができません。

そのため、持分放棄を検討しているなら、なるべく早く行動に起こすべきです。最後の1人になってしまうと、処分するには売却相手や贈与相手を探さなければいけません。

持分放棄のやり方と必要書類

持分放棄をするときは、どうやって他共有者へ意思表示をするかが大切です。後で証拠として提出できるよう、内容証明郵便で持分の放棄を通達しましょう。

持分放棄の手順を簡単に解説すると、下記の手順になります。

  1. 必要書類を法務局へ提出
  2. 登記申請書を作成
  3. 登記完了証・登記識別情報の交付

また、持分移転登記に必要な書類は、次のとおりです。

共有持分を放棄する人 ・登記済証または登記識別情報
・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
・固定資産税評価証明書
・実印
・本人確認資料(運転免許証やパスポートなど)
・他、必要に応じて住民票や戸籍謄本、地番変更証明書など
共有持分を受け取る(帰属される)人 ・住民票
・認印
・本人確認資料(運転免許証やパスポートなど)

より詳しい方法は、下記の関連記事も参考にしてください。

共有持分 放棄 共有持分は放棄できる!放棄の手順や放棄後の登記も詳しく解説します

持分放棄に関する悩みは司法書士へ相談しよう

共有者とのトラブルがなく、持分放棄の話がスムーズに進めば、自分で登記をおこなうのもよいでしょう。

しかし、必要書類の準備や申告書作成について不安がある場合は、司法書士に相談しましょう。登記の専門家である司法書士なら、適切なアドバイスや代行手続きが可能です。

共有者が登記に協力しないなど、なんらかのトラブルが発生した場合は弁護士に相談するのがおすすめです。登記引取請求訴訟を起こす場合も、代理人として各種手続きを進めてくれます。

持分放棄をすべき状況

持分放棄の制度について解説しましたが、実際にどんな状況であれば、持分放棄をすべきといえるでしょうか?

あくまで個々の事情や希望にもよりますが、次のような状況であれば持分放棄を検討するとよいでしょう。

  • 1.土地の管理や処分について共有者との話し合いが困難な場合
  • 2.共有者が土地全体の売却を拒否する場合
  • 3.郊外の土地や農地で共有持分を売りにくい場合

それぞれの状況について、より詳しく解説していきます。

1.土地の管理や処分について共有者との話し合いが困難な場合

共有名義の土地で起こりやすいトラブルの1つに、関係性の悪化から共有者と話し合いにならないというケースがあります。

共有名義は揉め事が起こりやすく、土地の利用方法や管理負担、維持費や税金の負担など、さまざまな要因で対立してしまいます。

このように「共有者と仲が悪くて話し合いができる状態ではない」という場合、持分放棄で共有状態を解消すれば、すぐに問題を解決できます。

2.共有者が土地全体の売却を拒否する場合

共有持分をなるべく高値で売りたい場合は、土地全体を売却し、売却益を持分割合に応じて分割するのがベストといえます。

しかし、共有名義の土地を売却するには、共有者全員の同意が必要です。1人でも売却に反対していれば、土地全体の売却は不可能です。

「自分の共有持分だけでもすぐに手放したい」と考えている場合、持分放棄は有効な手段の1つといえるでしょう。

3.郊外の土地や農地で共有持分を売りにくい場合

共有の土地が郊外にある場合、需要が極端に低い恐れがあります。土地をまるごと売りに出しても、買主が見つからないかもしれません。

また、共有している土地が農地の場合、より買主を見つけにくいでしょう。農地を購入できるのは農業委員会の許可を受けた農業従事者のみとされているため、普通の土地より需要は下がってしまいます。

農地法第3条
農地又は採草放牧地について所有権を(中略)移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。(後略)

引用:e-Govポータル「農地法第3条」

上記のような土地は、共有持分のみを売却しようと思っても非常に売りにくいといえます。持分放棄で早めに共有名義から抜け出すのも、検討すべき手段の1つといえるでしょう。

持分放棄以外に土地の共有状態を解消する方法

ここまで持分放棄について解説してきましたが、土地の共有名義を解消する方法としては、共有持分の売却や、土地の分割という方法もあります。

持分放棄はなんの対価も得られないため、資産を処分する方法としてはもったいないという考え方もあります。

まずは持分売却や土地分割を検討してみて、それらの方法がむずかしい場合に持分放棄をするとよいでしょう。

共有持分専門の買取業者に買い取ってもらう

自分の共有持分のみ売却するのであれば、放棄と同じように共有者の同意はいりません。加えて、共有者に売却することを伝える義務もないため、他共有者と一切関わらないまま売却も可能です。

共有持分のみを売却する場合、一般的な仲介業者ではノウハウがないため、取り扱いを断れられることがほとんどです。

そのため、共有持分を専門に取り扱う買取業者に相談するとよいでしょう。実績が豊富な専門買取業者に依頼すれば、共有持分のみでも高額で買い取ってもらえます。

弁護士と連携した買取業者ならトラブルのある共有持分でも高額買取が可能

共有持分専門の買取業者といっても、インターネットで検索すると多くの業者がヒットします。

共有持分の売却は一般的と不動産取引とはいえないため、情報も少ないのが実情です。数ある買取業者から、どのような基準で選べばよいかわからない人も多いでしょう。

共有持分は権利関係が複雑になりやすいため、取り扱いには法律知識が必須といえます。そのため、弁護士と連携している買取業者はとくにおすすめです。

弁護士と連携している買取業者なら、トラブルが起こっている共有持分でも高額で買取をおこなえます。一般的な不動産会社では断られるような共有持分でも、積極的に買い取ってもらえます。

まずは無料査定を利用して、自分の共有持分が売れるのか、売れるとしたらいくらになるか調べましょう。併せて、法律面の疑問や不安について相談すれば、適切なアドバイスをもらえます。

共有物分割請求によって土地を分割する

共有名義を解消する方法として、土地を分割するという方法もあります。一方的に持分放棄をする前に、他共有者に土地の分割を提案してみましょう。

ひとくちに分割といっても、具体的な方法はいくつかあります。土地全体を売却して現金で分割する方法や、共有者間で持分を売買して名義をまとめる方法などです。

また、土地の場合は持分割合にそって切り分ける「現物分割」も可能です。切り分けた土地は各共有者の単独名義になるので、利用や処分も自由になります。

共有者のだれかが「共有物分割請求」をおこなえば、全共有者は共有物の分割に向けた話し合いをしなければいけません。制度を活用して土地分割を実現させましょう。

共有物分割請求については、下記の関連記事を参考にしてください。

共有物分割請求とは 共有物分割請求とは?共有物の分割方法や訴訟の手順・費用を詳しく解説

持分放棄は「すぐに共有状態を解消したいとき」に有効な方法

持分放棄の基本的な解説と、検討すべき状況について紹介しました。

持分放棄は「すぐに共有状態を解消したい」という場合におすすめの方法です。共有者がいないと放棄はできないので、なるべく早く行動に移しましょう。

ただし、持分のみの売却が可能な場合は、放棄より買取業者に相談するほうがおすすめです。弁護士と連携した買取業者なら、トラブルなく最短数日で買い取ってもらえるでしょう。

持分放棄についてよくある質問

共有持分とはなんですか?

共有持分とは、複数人が共有する不動産において「各共有者がどれくらいの所有権をもっているか」を指すものです。「持分1/2」というように、割合で表記します。

持分放棄とはなんですか?

自分のもっている持分を放棄する手続きです。他共有者に放棄することを通知するだけで成立します。ただし、持分放棄に伴う持分移転登記は、他共有者と共同でおこなう必要があるので注意しましょう。

共有者が放棄に伴う持分移転登記に協力してくれません。

共有者が登記に協力してくれない場合、登記引取請求をおこなえば、判決によって登記申請が可能になります。弁護士と相談のうえ、訴訟手続きを進めましょう。

放棄した共有持分はどうなりますか?

他共有者に、持分割合に応じて帰属されます。例えば「Aが1/2、BとCが1/4ずつ」という持分割合で、Aが持分放棄したとします。BとCの持分割合の比率が1︙1なので、放棄された持分も半分ずつ(1/2÷2=1/4)分配され、最終的には「BとCが1/2ずつ(1/4+1/4)」という持分割合になります。

持分放棄に費用はかかるのでしょうか?

持分放棄にともなう、登記申請の費用がかかります。また、他共有者は帰属によって得られる持分に対して贈与税が課されるので、事前に伝えておきましょう。

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