夫婦の共有不動産でも持分を変更すれば贈与税がかかる!贈与税を減らせる控除も解説します

不動産 夫婦 共有 贈与税

不動産の贈与は、夫婦間であっても贈与税が課税されます。不動産全体の贈与だけでなく、共有不動産の持分割合を変えるとき(持分移転)でも贈与税がかかります。

また、共有名義不動産の場合は「不動産購入の支出割合」に合わせて登記しないと、贈与とみなされてしまうので注意しましょう。

夫婦間での贈与は気軽におこなってしまう人も多いですが、しっかりと制度を理解し、贈与税がどれだけかかるか把握しましょう。制度を知っていれば、控除制度を利用して節税することも可能です。

なお、贈与の目的が単純な財産整理や、相続税対策の場合、状況次第では贈与より売却したほうがよいこともあります。

共有不動産や共有持分を売却するときは、専門の買取業者へ相談しましょう。通常では価格のつかないような小型物件・トラブル物件でも、専門業者独自のネットワークで収益化できるので、高額買取が可能です。

この記事のポイント!
  • 共有不動産は持分割合と支出割合に差があると贈与税が課される。
  • 後から不動産の持分割合を変更する場合も贈与税が発生する。
  • 基礎控除や配偶者控除の特例を使えば贈与税を減らすことができる。
目次
  1. 夫婦で不動産を購入するときは「持分割合」を正しく登記しないと贈与税が発生する
  2. 後から不動産の持分割合を変更する場合も贈与税が発生する
  3. 贈与税の計算式
  4. 夫婦間での「不動産の生前贈与」は相続税の節税になるのか?
  5. 夫婦間の不動産贈与は控除を活用しよう

夫婦で不動産を購入するときは「持分割合」を正しく登記しないと贈与税が発生する

夫婦で不動産を購入したときは「持分割合」を決め、法務局で登記申請する必要があります。

持分割合とは、共有名義の不動産において各共有者がどれぐらいの割合で所有権をもっているかを表すものです。各共有者がもつ所有権を「共有持分」といいます。

例えば、夫婦が所有権を半分ずつで共有する場合「夫と妻がそれぞれ1/2の持分割合で共有持分をもっている」といえます。

持分割合によって「不動産に対してできる行為」の範囲が異なり、持分割合が大きいほど共有持分のみを売却したときの価値も高くなります。

不動産の購入時は持分割合を正しく登記しないと、贈与税が課されてしまうので注意しましょう。

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持分割合と支出割合に差があると贈与税が課される

持分割合は、不動産を取得するときの支出割合にあわせるのが原則です。

例えば、3,000万円の購入費用に対して夫が2,000万円、妻が1,000万円を支出すれば、持分割合は「夫が2/3、妻が1/3」となります。

上記の例の場合、持分割合を「夫1/3、妻2/3」で登記すると、夫から妻へ共有持分1/3(1,000万円)の贈与があったとみなされます。

「不動産の取得費用」として認められる支出の例

不動産の取得費用として認められる主な支出は、次のとおりです。

  • 購入代金や建築費
  • 仲介手数料
  • 売買契約書などの印紙代
  • 整地や埋め立ての工事費用
  • 古家の取り壊し費用
  • エアコンやガス機器などの設備
  • 登記費用
  • 不動産取得税
  • 固定資産税や都市計画税の精算金
  • ローン保証事務手数料
  • 不動産の使用開始までにかかる住宅ローンの金利

どのように費用を用意するかは問われないので、住宅ローンを借り入れる場合も、預貯金から出す場合も、同じように支出したとみなされます。

親からの資金援助は「直系の子供」の支出として計算する

不動産を購入するとき、資金援助として親から贈与を受けるケースは少なくありません。

住宅の購入を目的とした親からの贈与は、直系の子供が支出した扱いになります。

例えば、妻の親から購入費用の半額を援助してもらった場合、登記上は「妻が支出した」として、妻の共有持分が1/2になります。

また、親から子に対する住宅購入の資金援助には非課税枠があります。非課税枠の上限は変更されることもあるので、最新の情報は税務署や税理士に確認しましょう。

参照:国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

「連帯債務型」の住宅ローンは収入の比率で支出割合を計算する

住宅ローンのなかには、1つのローンを夫婦2人で契約する「連帯債務型」があります。

家計が一緒になるため「どちらが」「どのように」支出を負担しているのかあいまいで、支出割合をどのように計算すべきかわからない人も多いでしょう。

連帯債務型の場合、夫婦間で特別の取り決めがなければ「夫婦の収入割合」によって支出割合も判断するのが一般的です。

例えば、夫が700万円、妻が300万円の収入であったとします。この場合、支出割合は夫7/10、妻3/10で計算します。

参照:国税庁「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」

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持分割合を間違えて登記しても修正できる

持分割合と支出割合は揃えなければ贈与税が発生しますが、登記の際に意図せず異なる割合で申請をしてしまい、そのまま受理されるケースもあります。

持分割合を間違えて登記してしまった場合、更正登記によって持分割合を修正すれば、贈与税が課されるのを防げます。

ただし、贈与税を回避できるのはあくまで「錯誤による登記の修正」です。「一旦は合意して贈与したけど、やっぱり戻したい」といった理由では、贈与税を回避できません。

それどころか、新たに共有持分の贈与があったとして二重で贈与税が課されることになります。

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贈与税の申告時期は不動産取得の翌年2月から3月

贈与税の申告は不動産を取得した年の翌年、2月1日から3月15日の間です。贈与を受けた人が申告と納税をおこないます。

申告先は、贈与を受けた人の住所地を管轄する税務署です。窓口で申告するほか、郵便やe-Taxを使ったオンライン申告もできます。

申告書の作成や手続きに不安がある場合は、税理士に相談しましょう。

参照:国税庁「贈与税の申告と納税」

後から不動産の持分割合を変更する場合も贈与税が発生する

不動産の購入後、なんらかの理由で持分割合を変更する場合もあるでしょう。

会社の持家補助制度を使うために持分割合の変更が必要であったり、相続税対策として不動産の名義を配偶者のものにするケースなどです。

不動産の購入後に夫婦間で共有持分を贈与した場合も、購入時と同じように贈与税がかかります。

贈与税が発生する具体的なケース

具体的に、どのようなケースで夫婦間の贈与税が発生するのでしょうか。

主な例としては、次のようなケースがあげられるでしょう。

  • 不動産を単独名義から共有名義にする場合
  • 共有名義の持分割合を変更する場合
  • 住宅ローンの残債を夫婦の一方が完済する場合
  • リフォームによって支出割合が変わる場合

単純に持分割合を変えるケースと、住宅ローンの返済やリフォーム代などで支出割合が変わるケースがあります。

それぞれのケースについて、詳しく解説していきます。

ケース1.不動産を単独名義から共有名義にする場合

単独名義の不動産を夫婦の共有名義にする場合、登記のうえでは「所有権一部移転登記」になります。

※所有権一部移転登記:所有権の一部を他者に移転する登記。5,000万円の不動産から半分を移転するのであれば、1/2(2,500万円)の共有持分を譲渡することになる。

もともとは単独の所有権を2つの共有持分に分割し、配偶者に贈与する形になります。

ケース2.共有名義の持分割合を変更する場合

もともと共有名義の不動産の持分割合を変える場合、登記のうえでは「持分一部移転登記」もしくは「持分全部移転登記」になります。

※持分一部移転登記:共有持分の一部を他者に移転する登記。

※持分全部移転登記:共有持分をすべて他者に移転する登記。

2つの違いは、自分の共有持分を分割して贈与するか、すべて贈与するかの違いです。

夫婦間で持分全部移転登記をする場合、当然ですが共有状態は解消され、不動産は単独名義になります。

ケース3.住宅ローンの残債を夫婦の一方が完済する場合

名義人ではないほうが住宅ローンを返済したときも、現金を贈与したのと同じなので贈与税が課されます。

ただし、支払った金額にあわせて持分割合を変更すれば贈与ではなく「共有者間での売買契約」となり、課されるのは贈与税ではなく譲渡所得税です。

贈与税と譲渡所得税のどちらがお得かは、個別の事情にもよるので単純な比較はできません。詳しくは税理士に相談してみましょう。

ケース4.リフォームによって支出割合が変わる場合

増改築やリフォームにかかる費用も「不動産の取得費」とみなされます。

そのため、夫婦のどちらかがリフォーム代を負担した場合は、その金額に対して贈与税が課されます。

贈与税を避けるためには、負担したリフォーム代金にあわせて持分割合を変更するか、もともとの持分割合にあわせてリフォーム代金を分担しましょう。

例えば「持分割合が夫2/3、妻1/3」の不動産で、600万円の費用をかけてリフォームするとします。
その場合、選択肢は次の3つです。
・夫がリフォーム代金をすべて負担・・・夫から妻へ600万円の贈与
・持分割合を変更・・・もともとの取得費にリフォーム代金をたして支出割合を計算し直す
・持分割合にあわせる・・・リフォーム代金を夫400万円、妻200万円で分担する

離婚時の財産分与は贈与税の対象にならない

離婚時、財産分与として不動産を譲るケースは少なくありません。

「もしかして財産分与も税金がかかるのでは?」と不安に思う人もいますが、離婚による財産分与は贈与とみなされず、税金も課税されないので安心してください。

ただし、分与された財産が「婚姻中に夫婦が協力して築いた財産」を考慮してあまりにも多大である場合、贈与税がかかるので注意が必要です。

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贈与税の計算式

贈与税の算出は、まず贈与を受けた金額から、基礎控除110万円を差し引いて課税価格を出します。

その後、課税価格によって決まる税率と控除額を計算して税額が算出されます。

課税価格ごとの税率と控除額は次のとおりです。

課税価格
(贈与を受けた金額-基礎控除110万円)
税率 控除額
200万円以下 10% なし
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

例えば、贈与額が500万円の場合、まず基礎控除110万円を差し引くと課税価格は390万円になります。

390万円に上記の税率と控除をあてはめると、課税額は次のように算出されます。

390万円×15%-10万円=48万5,000円

参照:国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」

基礎控除の110万円以内なら申告は不要

贈与税には110万円の基礎控除があり、贈与する金額が基礎控除内であれば贈与税かかからず、申告もいりません。

そのため、例えば1,000万円を10年にわけて贈与し、基礎控除を利用して贈与税がかからないようにする方法があります。

しかし、最初から「まとまった金額を数年にわたって分割贈与する契約」が結ばれているとみなされた場合、税務署からの指摘により贈与税が課されるケースもあるので注意が必要です。

課税を避けるためには、1年毎に贈与契約書を作って「100万円を贈与する契約が10年間続いた」という形にし、1,000万円を10年間にわけて贈与していると見られないようにしましょう。

あわせて、贈与の時期や金額を毎年変えるなど「予定されていた贈与ではない」と説明できるようにしておくことをおすすめします。

婚姻期間が20年以上なら「配偶者控除の特例」で2,000万円まで非課税になる

結婚してから20年以上経っている夫婦の場合、居住用不動産の贈与税には最高2,000万円の控除を受けられます。この控除は、共有持分の贈与に関しても適用されます。

基礎控除とあわせれば、合計で2,110万円まで贈与税がかかりません。

配偶者控除の特例を受ける場合は贈与税の申告が必要なので、忘れずに申告をおこないましょう。

参照:国税庁「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」

夫婦間での「不動産の生前贈与」は相続税の節税になるのか?

高齢の夫婦で「相続税の節税として生前贈与したい」と希望する人もいます。

基礎控除や配偶者控除の特例を使えば、2,110万円まで贈与税が非課税になるのは解説したとおりです。

しかし、夫婦間で生前贈与をおこなっても、実際の節税効果は薄いといえます。

なぜなら、相続税には贈与税以上の配偶者控除があるからです。

相続税の配偶者控除額を考えると生前贈与の節税効果は薄い

相続税には「配偶者の税額の軽減」という制度があり、受け取った遺産のうち1億6,000万円までは非課税となっています。

また、1億6,000万円を超えていても、配偶者の法定相続分(遺産の1/2)までなら同じく非課税です。

つまり、配偶者が相続する遺産が1億6,000万円を超えていて、かつ法定相続分を超える金額を受け取る場合のみ、生前贈与の節税効果が発揮されるといえます。

遺産が高額になる場合を除き、あえて生前贈与をしても大きな節税効果はありませんし、そもそも配偶者の相続税に関して悩む必要もないといえます。

参照:国税庁「配偶者の税額の軽減」

子供への二次相続まで考慮するなら節税効果が見込めるケースもある

「配偶者間の生前贈与に節税効果はそれほどない」と解説しましたが、子供への二次相続を考慮するなら一定の効果はあります。

二次相続では、子供側の観点だと

  • 配偶者の財産も加算されて遺産総額が高くなる
  • 相続人が1人減っているため基礎控除も減る
  • 配偶者控除と同等の控除が子供にはない

といった要因があり、総合的に見て相続税が高くなってしまうかもしれないのです。

二次相続まで考慮して相続税対策をおこなうなら、生前贈与の控除も考慮して最適な対策を考える必要があります。

個々の状況や希望をまとめて、税理士に相談してみましょう。

生前贈与の目的によっては「不動産の売却」のほうがおすすめ

生前贈与の目的が単純な節税だけでなく、遺産相続のトラブルを防ぐためであったり、老後資金や住居の確保が目的のケースもあるでしょう。

高齢になって、配偶者や子供たちのために財産を整理したいと思うのは賢明な判断といえます。

しかし、共有不動産は権利関係が複雑であり、トラブルも起こりやすくなります。血をわけた家族であっても裁判沙汰になる恐れがあるでしょう。

そのため、共有不動産や共有持分は生前贈与ではなく、売却したほうがよい場合もあります。

共有不動産や共有持分の売却に関しては、弁護士と連携した買取業者に相談するのがおすすめです。

弁護士と連携した買取業者であれば、相続に関する悩みごとも相談しつつ、共有不動産や共有持分を売却できます。無料査定を利用して、売却に向けたアドバイスを聞いてみましょう。

夫婦間の不動産贈与は控除を活用しよう

この記事では、夫婦間の不動産や共有持分の贈与について解説しました。

夫婦間で不動産や共有持分の贈与をおこなうときは、基礎控除や配偶者控除をうまく活用して贈与税を抑えましょう。

税理士に相談すれば、課税額の計算や申告手続きだけでなく、具体的な節税方法もアドバイスしてもらえます。

自分1人で悩むより、専門家に相談して適切な贈与をするようにしましょう。

夫婦間の不動産贈与についてよくある質問

夫婦の間で不動産や共有持分を贈与した場合、贈与税はかかりますか?

はい、贈与税がかかります。ただし、110万円の基礎控除や、婚姻20年以上の夫婦が2,000万円まで受けられる「配偶者控除の特例」を使えば、贈与税を減らすことが可能です。

贈与税の「配偶者控除の特例」は、なにもしなくても受けられますか?

贈与があった翌年2月1日から3月15日の間に、税務署で贈与税の申告が必要です。「非課税になるから」と申告を忘れないようにしましょう。

夫婦で共有不動産を購入するとき贈与税が課されるケースもあると聞きました。どんなときに課税されますか?

法務局に登記する持分割合と、不動産を取得するときの支出割合が違うと、差額に対して贈与税が課されます。原則として持分割合と支出割合が同じになるよう登記しましょう。

持分割合を間違えて登記してしまいました。贈与税を支払うしかありませんか?

贈与税の申告前であれば、更正登記を申請して持分割合を修正できます。

持分割合の変更以外で贈与税が課税されるケースはありますか?

住宅ローンを名義人ではないほうが支払ったり、リフォーム代を共有者のだれかが全額負担するなど、支出割合が変化して登記した持分割合とあわなくなったときに贈与税が課税されます。支出割合と持分割合をあわせれば課税されないので、持分移転登記などで調整しましょう。

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